花に埋もれる

花に埋もれる

「触るな、化け物」と叫び、君は僕を突き飛ばした。
カッターナイフを僕に向けて、泣いていた。

怖くないよ、大丈夫だよ。そう言っても、君は怯えて、何を言っているのかわからないとまた泣き出す。

化け物。
君には、僕が見えていないようだった。見えているけど、姿が違うのかな。

来るな。
差しのべた手から、痛みが伝わる。君も、とても痛いんだろうな。

やめて。
やめてっ、て。なにを?



「綺麗な、向日葵畑でしょう。」

ああ、確かに。とても綺麗です。

「昔、よく君と来たでしょう。」

ええ、よく覚えています。

「でも、本当に君だったのかな。」

よく、私も我慢したものだ。

「まだ、化け物は居なくならない?」

こんな化け物と、未だ一緒に居るなんて。

「僕は君に伝えようと思ってたんだ。」

触るな、化け物。
「怖くないよ、大丈夫だよ。」

化け物。
来るな。
やめて。

「ああ、もう、痛いなぁ。」

そして僕は向日葵畑に君を隠した。
せめて夢の中だけでも、幸せになろう。
そう願いを込め、埋めたのだ。

花に埋もれる

花に埋もれる

化け物はどちらだったか

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-15

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