みずのはごろも物語
むかし、とあるちいさな国にさいほう職人の若い娘がいました。
才能にあふれていた娘は他の国でも有名で、どんなものでも作ってしまうことができました。
そのうち世界中の貴族や王族からも服の仕立てや作成をまかされるほど有名になりました。
私はどんなものでも作れる この世の中に私の作れないものなんてない
娘は自信にみちあふれ次第に態度も高慢になっていきました。
お金を払えない人には目もくれなくなり高い値段で依頼を引き受けるほどになりました。
町の人々はとても困っていました。
けれど町の外れにあるもうひとつのさいほう屋のことを知ると、服の仕立てをおねがいするようになりました。
そのさいほう職人は平凡な娘でしたが決しておねがいを断ることなく、明るく笑顔で引き受けてくれる彼女に人々の人気は次第に高くなっていきました。
そんなとある日、大陸で一番大きな国から服の仕立ての依頼がきました。
才能のあるさいほう職人の娘はおしろでお姫さまから仕立てる服のことを聞きました。
あなたはどんなものでもつくれてしまうほどの職人であるとききました
どうかわたしのおねがいをきいてもらえないでしょうか
とても美しいお姫さまは古びた紙をとりだすとさいほう職人の娘に見せました。
わたしが織ってほしいものは、とあるころもです
そのころもはどんな青よりもうすく透きとおるほど美しく
着ていることをわすれるくらいに軽く
しゃくねつのほのおさえもその身ひとつ焦がすことはありません
今までそんな服を作ったことがない娘は首をかしげながらもうなづきました。
その古い紙のとおりの素材を探して行商人や貴族に聞いてまわりました。
行商人のひとりがとあるさいほう職人のところなら、素材のことをくわしく知っているかもしれないと教えてくれました。
それは娘が住んでいる国のもうひとりのさいほう職人の娘のことでした。
人気に嫉妬していた娘は不機嫌になりながらも彼女のところへ行きました。
わたしはこの紙に書いてある素材を探しています
あなたに聞けば知っていると言われましたがなにか知っているでしょうか
笑顔の娘はいくつか行商人から好意でもらったものがあります、と娘に手渡しました。
その素材できっとすてきな服を仕立ててあげてください、と言いました。
素材を受け取った娘はすぐに店から出ていこうとしましたが引き止められてしまいました。
服を仕立てるまえにこのはなしをしておかなければなりません
それはさいほう職人にとってとてもたいせつなおはなしです
そして心優しい娘は、彼女に語るように話しました。
このころもは遠いむかしにたったひとりの男がつくりました
ただひとりの愛するひとのために
ひとつのいとをひとつひとつていねいにおりこんで
ねむることもたべることも忘れて ただ ただ その愛するひとのために
たったひとばんで出来たそのころもはどんな青よりもあわいほどに透きとおり
布であることを忘れるかのようにかるく
たとえしゃくねつのほのおでさえも身をこがすことはありませんでした
愛するこころをこめればきっとあなたにも織れるでしょう
しかし娘はその言葉にとても激怒しました。
さいほう職人に必要なのは腕と才能なのだと言うと店を出ていきました。
そして高価ないとを使いあっというまに ころも を仕立てました。
しかし何回も何回も作り続けましたがひとつとして満足にできるものは作れませんでした。
とうとうあきらめてしまった娘は一番できのよいものをお姫さまに渡します。
お姫さまは嬉しそうにそのころもを手に取りました。
ありがとうございます
これでわたしのたいせつな結婚式をとりおこなうことができます
あなたのことは今後わすれることはないでしょう
-----------------------------------------------
少しの時がたち、お姫さまの結婚式が開かれました。
お姫さまのドレスはとても美しく、貴族や王族もその美しさに感動しました。
けれどひとつの不幸がお姫さまに訪れました。
突然あらわれた魔物のほのおに焼かれたお姫さまはとてもひどいけがを負いました。
結婚式は取りやめになって、王さまはすぐにさいほう職人の娘をとらえるように命令します。
そして娘は牢屋に入れられてしまいました。
どんな言い訳も考えられず誰のせいにもできないほどに娘は絶望していました。
才能だけは一番にあると思っていた娘は、初めて服を仕立てることができなかったのです。
そしてそのできごとは大陸中に広まりました。
どんなに日が流れても娘は立ち直ることができずにいました。
とある日のこと、さいほう職人の娘は牢屋から出ることができました。
王さまからお許しが出たわけではなくとてもとても不思議な出来事でした。
町の人々にすぐに話を聞きました。
すると、もうひとりのさいほう職人の娘がとらえられたということがわかりました。
どうしてそうなったのか分からない娘は町の人々に聞いていきます。
あの心優しい娘は王さまにこう言ったそうです。
わたしこそがせかいでいちばんの才能をもっているさいほう職人です
とらえられている娘はわたしの見習いです
なぜならいちばんの才能をもったわたしが失敗なんてするはずがないからです
あの娘をろうやから出してあげてください
そのかわり見習いの失敗はわたしの失敗です
わたしを牢屋に入れてください
それを知った娘はとても激怒しました。
わたしはこんなにも才能をもっていると信じてしまいとても愚かだったことを
そんな愚かなわたしをまもるためにみがわりとなった娘のことを
やさしい娘のことばの意味にきづけなかった自分のことを
すぐにさいほう屋に戻ると娘は ころも をいとから織り直しました。
溢れる涙で濡れながら、あまつゆのような いと を織り続けました。
素材が足りなくなるたびに家にあるものを売りました。
どんな高価なものでもどんなに大切なものでも全てを売りました。
そしてどんなに時間がかかっても娘は食べることも寝ることも忘れていとを織りました。
日がたち、とてもみずぼらしい姿になった娘はすぐに大きな国の王さまのところへ行きました。
あまりに変わり果てた姿の娘をみてお姫さまもおどろきました。
娘は王さまにおねがいをしました。
わたしにはとてもたいせつなともだちがいます
そのともだちはとてもへいぼんな才能でまちのひとびとの服をいっしょうけんめいにしたてていました
そんなともだちはわたしに服を仕立てることのたいせつさをおしえてくれました
そしてひとを愛することもおしえてくれました
こんなちせつでひんそうな才能しかないわたしではありますがお姫さまのしあわせのためだけに服をしたてました
このくつもドレスも髪飾りも ただ ただ あなたのためにいっしょうけんめいにしたてました
これでどうかわたしのたったひとりのたいせつなともだちをかえしてはくれないでしょうか
わたしはどうなってもかまいません どうかおねがいします
ひざをつき、頭をさげる娘の服をお姫さまはとてもていねいに受け取りました。
そしてお姫さまはまとったドレスをお披露目しました。
なんて美しいことでしょう
この透きとおるような青いいろはまるであなたのこころのようです
このはねよりもかるい布はあなたとともだちの罪よりもかるいのでしょう
そしてお姫さまはたいまつを手に取るとみずからに火を当てました。
このしゃくねつのほのおでさえもこのからだひとつ焼けることがないのはあなたがほんとうにわたしの幸せをおもってくれたのでしょう
お姫さまは牢屋にとらわれていた娘を出してあげました。
娘は彼女の姿を見ると泣いて抱きしめました。
心優しい娘はみずぼらしい姿にまでなってくれた娘に嬉しさがとまりませんでした。
帰る家さえもなくした娘はともだちの温かい心で一緒に住むことになりました。
どんな人へも愛情を忘れずに二人はいつまでも仲良く幸せに服を仕立てました。
おしまい
みずのはごろも物語
みずのはごろも物語 というのはドラゴンクエスト10で みずのはごろも という防具を作るためのレシピ(消費アイテム)になります
このレシピは使うと防具を作るための素材だけを覚えることができます そしてさいほう職人が作成することができます
物語、という名前がついているのに使うとただ防具のレシピを覚えれるだけ というのになんとなく寂しさを感じていまい 内容を書いてみました
何気ないもの ただの普通 そんなものにも ひっそりとしたストーリーを 与えてくれるドラゴンクエストが大好きです それを想像 創造 するのがプレイヤーの醍醐味かな、と
ただのレシピに 物語 とアイテム名につけてくださったのですから