流れ星王国シリーズ第4話 グランマリンバの空飛ぶ車椅子

読んでもらう小さな子供たちへ、そして読んでくれる少し大きな子供たちへ、すべての大人と子供たちへ捧げたいおはなし。
どこかわからないところにいるグランバーバの不思議な旅のお話

流れ星王国シリーズ第4話 グランマリンバの空飛ぶ車椅子

グランバーバのお姉さんは
車椅子に乗った魔法使い
名前をグランマリンバと言います。

毎日、手袋編みの糸通しや
クロスステッチ刺繍をするお仕事をしたり
車椅子のお仲間たちの楽団で
オルガンを弾いたりしています。

孫のいないグランマリンバは
グランバーバと同じように
きらちゃん王女や、ときくん王子のことを気にかけて
まるで自分の孫のように思っていてくれます。

グランマリンバには
お得意な早ワザがあります。
それはお手紙を書くことです。
早いのなんのって
グランバーバのメールよりも早く届きます。
お得意のクロスステッチ刺繍の入ったカードなどは
きらちゃん王女のお誕生日のお誕生会の
お誕生日ケーキを切り分ける時刻きっかりに届きます。
魔法を使わなくてもそうなのですから
魔法を使ったらどんなことをやってのけるのか
それを知ってる人は誰もいません。
だって誰にもわからないようにやってのけるのですから
どこでどんな風に魔法が使われたかなんて
誰にもわからないのです。

これまでで一番すごかった魔法を
ないしょだけれど
こっそり教えてあげますね。

それは、ときめきときくん王子が生まれたときのことです。
いいえ、ときくん王子が生まれてくる前のこと
ときくん王子が
まだママちゃん王妃様のお腹の中にいた時です。

どんな赤ちゃんが生まれてくるのだろうと
グランバーバが占っていると
どこからかふわっと風が吹いて
カードをめくりました。
めくれたのは
「おっとりした賢い男の子」のカードでした。

グランバーバが占おうとしていたちょうどその頃
グランマリンバは
午後のお茶を頂いていたのです。
ふわっと風が吹いて
カードをめくったその時間に
熱いお茶をふうふうっと
吹き冷ましていたのです。
グランマリンバと一緒にお茶を頂いていたお仲間たちさえ
なにが起こったか知りません。

このお話のどこが一番すごい魔法の話なのかって?
ときくんが本当に
「おっとりした賢い男の子」なのかって?
グランバーバが占おうとしていることを
グランマリンバがなぜ知っていたのかって?
カードをめくった風を起こしたのは
グランマリンバの息なのかって?
そもそも、グランマリンバは魔法使いなのかって?

グランマリンバがお茶を吹き冷ましていたちょうど同じ時間に
グランバーバの占うカードの上を
風が吹いて行っただけのことかもしれません。
ただ偶然に。

グランマリンバの車椅子が
本当は空飛ぶ車椅子で
時空を超えたつむじ風になり
カードをめくりに来たのかもしれません。

「おっとりした賢い男の子にちがいない」と思う
グランマリンバとグランバーバの気持ちが風になって
カードをめくったのかもしれません。

何が本当の理由で
何が全く関係ないことなのか
そんなことはどうでも良い気がします。

理由のわからない説明のつかないことが起こると
ひとはおどろいて「奇跡」と呼びますね。

本当にびっくりすることは、いつだって
とても静かに何気なく
あたりまえのように
そして何の理由もないかのように起こります。

びっくりするようなあたりまえのことよりも
びっくりするようなびっくりすることの方が
誰だってびっくりしますものね。
よくわからなくなってきましたか?

グランマリンバが魔法使いであろうとなかろうと
魔法を使ったのであろうとなかろうと
そんなことはどうでもよくて
誰かに喜んでもらいたくて
話しかける
お手伝いをする
贈り物をする
その気持ちよりもすごい魔法など
どこにも存在しないのです。
その気持ちこそが魔法なのです。

いつもなにげなく誰かのことを思いやっている
グランマリンバは
そんな魔法使いなのです。
だからやっぱり
グランマリンバは魔法使いです。
空飛ぶ車椅子のこともないしょですよ。

流れ星王国シリーズ第4話 グランマリンバの空飛ぶ車椅子

流れ星王国シリーズ第4話 グランマリンバの空飛ぶ車椅子

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-12

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