ラーメン

握り飯などその程度では済まされる訳がない。夕食など遠い昔の思い出だ。
いつものように寝る前はおとなしく本を開くつもりだった。まだ序盤のもくもくとページを消化する段階だったからか、しおりの代わりにテレビのリモコンで横着したからか、流れるように代わりにテレビをつけたのがいけなかった。
パッと目に映ったのは油でギトギトのテーブルに暖色の明かりがてっかりと反射する木目を下地に、さあさあと食い進んでるようすの濁った液面をたたえる深い器。やや崩れた字体の木彫りのメニューがちらりと視界に、そして次杯はまだかまだかと湯切りを待つ極太の麺…。
誰か何か店の雰囲気についてコメントしていたかもしれない。次に私は寝間着のまま上着を羽織るや草履をひっかけ白い吐息を後ろへ、後ろへとたなびかせた。

ラーメン

ラーメン

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-10

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