LeSeMoDe

トクマルシューゴさんの「LeSeMoDe」をテーマに書いたつもりだったんですけど、全然違うものになりました。

誰にでもある今日のこと

LeSeMoDe
誰もがなんらかの立ち位置を有している。
それはどこへ行っても変わらないのではないだろうか。
どこへ、というにはあまりに経験が浅すぎる。証明できるものの数があまりに少なすぎる。けれど、自分を支えるためにも希望的観測としてこの考察は持ち続けていたい。

それならば。もしそのように、一人一人に異なった立ち位置が与えられているのならば、僕はなぜこの道を歩いているのだろう。
この道はあの時と何も変わらないままにどこかへと続いている。何も変わらないままに何もない。
僕は馬鹿だ。いつの僕にそう声をかけてやればいい?あぁ、そんなこといつも考えていた。この道をほぼ毎日歩いていたあの日々にも、後悔をし苦しんで「どうしようもないんだ」と遠くを見た。どこまでも続く遠く遠くに視線を移して、広い空に飛行機を見つけては僕がどこかここではない土地で大活躍をする。そんな妄想をいつまでも続けた。そうして家に帰り現実に引き戻された時に至る考え。
僕が生まれたことが一番の失敗だ。
それこそ馬鹿な考えで、僕自身ではなく母親をまで侮辱しているのだ。でもそうすることによって、僕は悪くないと自分自身を甘やかした。

まだここなら、引き返せる。元来た場所へ、引き返すことができる。
引き返したところでどうなる?

引き返そう。そうして、頭を下げて、もう一度やり直そう。



水車は回る。水を受けて回る。東から昇る炎は重い闇夜をこじ開ける。
水車は軋みをあげてグラグラと回る。時に速く、時に緩慢になりながらも回る。回る。確実に時間は流れている。流れる時が水を連れて響く。風も流れる。ススキを揺らす。ススキが水車を向いて言った。気が遠くなるようだ、いまのぼくらにならばできるだろう、あぁ、それでなけりゃまたながぁいじかん、ねむりこけてしまうよ。(SUISHA)



こんなところにいちゃダメだ。やっぱり僕は、まだ、諦めきれないよ。

後ろを向いたその時ものすごい目眩に襲われ、僕の中で、この世界の中で、どちらともなく歪み出した。オープンリールが巻き戻る、キーンという音と雑音。白黒テレビのようなポツポツと現れる砂のような粒。それらが速度を落としたと思えば、テレビの電源をプツンと切れたかのように真っ暗になった。



目を開けると、道の真ん中にいた。清々しい気分だ。逆に言えば目を開ける直前まで、最悪の、不快な、気分だったのだろう。あぁ、なんでだろう。さて、速く会社へ向かわねば。背中を押すように風が吹き、僕は背筋を伸ばした。
この道はやっぱり不思議な道だ。
いつだって何かで落ち込んだ僕の気を晴らしてくれる。ダメだとわかっていても、諦めてはならないと教えてくれる。それがどうしてかはわからないけれど、悪くはない。
そうしてまた僕は歩みを進めた。

僕は清々しい気分で、会社へと向かう。
謝るのは苦手だ。きっとこっぴどく怒られる。
ピンチはチャンスなんだって、誰かが言ってた。
本当にそうかな?


〜そのあと〜
僕はやっぱりこっぴどく叱られた。大人になってこんな思いをするとは思いもよらないほどにみっちり、きっちり。
それでも僕の上司は、僕のことを許してくれた。そして、言った。
「君はただ一人。全く同じ動きをする人はいない。会社は、そして私は、君を選んだんだ。…なんだか恥ずかしいセリフだけれど。
そしてあと一つ。君はもう少し、振り返ってもいいと思うよ。そして、道の先を行けばいい。
私は叱った。君のため、会社のため、私のために。それは、君が大切な存在だからだ。大切な存在だからこそ心配にもなる。振り返ること、都合の良いことを妄想すること、自分自身を許すことも、悪いことじゃあないんじゃないかな。私もたまにそうする。
さぁ、仕事だ。」

このセリフは一言一句間違わずに覚えてしまった。それは、聞いている時に年甲斐も無くなきじゃくるという男として5本の指に入るほどの恥をかいたから、だけでなく上司の「さぁ、仕事だ。」と笑った時の顔にあの道で見た柔らかいススキのようなものが浮かんだからである。

LeSeMoDe

オチはついた。
そこは良かったと思ってます。

LeSeMoDe

全くもってフィクションじゃ。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-07

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