【ショタについての一考察】 さに→←乱+加州清光

両片思い、エロ皆無なプラトニック☆ 男審神者×乱ちゃん。

自分が真性ショタコンである事にコンプレックスがあって、せめて愛し方は真っ当に、と思う男審神者と、
自分で思うより男審神者が大好きな、無自覚乱ちゃん。

前回までとは全く違う本丸・全く違う審神者氏。

こぎ乱の時はスルーしていた『ショタ』について、ちょっと本気出して考えてみた。

言っておかないと誤解されそうで怖いので言っておきますが、
幼児性愛を肯定している訳ではないので悪しからずご了承のほど。

【ショタについての一考察】 さに→←乱+加州清光

『善人と悪人が居るとする。

 旦那にするなら、どっちがいい?』


 顕現して、まだ日が浅い頃。主さんにそう訊かれた事がある。

 初期刀の清光さんはお茶を噴いてたけど。

 本人は退屈そうですらある、至って真面目な無表情だった。死んだ魚の眼みたい、という表現は言い得て妙だと思う。その黒瞳が光を宿す所も、その適当に切った黒髪が乱れる所も、ボクは未だに見た事がない。その山伏さんみたいに体格の良い体が、血を流す所も。

 ボクは即答した。


『悪人っ♪

 それもね、すっごい超ド級の悪人っ! そこらのチンピラ程度じゃなくて、知性も武力も一級の、一本筋の通った、美学に従って生きるような極悪人がイイ♪♪

 国際犯罪組織の、幹部を大勢従えてるようなボス。でもボクにだけは優しいの。

 そういうヒトにね、特別に愛されたい♪♪♪』


 主さんに借りた映画にそういうのがあって、かなり影響されてた頃だ。

 そういえば主さんの方から貸してくれた映画だった。今にして思えば、ボクが影響される事まで織り込んで選んだタイトルだったんだろう・・・用意周到な人だ。

 無邪気に(あの頃はまだ無邪気だった、うん。)答えたボクに、主さんは言った。


『そーかそーか。

 だったら乱よ。俺の『特別』になるか?』


『?? うんっ♪

 でも清光さんじゃなくていいの?』


『いーの。

 可愛いから初期刀に選んだし、実際有能で助かってるけど。可愛いしお洒落だし、デキる男なクセに『可愛い』オーラ消えねぇトコはマジ凄いなオイ、って思うけど。

 俺的年齢制限にね、引っ掛かる訳ですよ乱さん。

 清光はな~、アレで10歳前後の見た目で、長髪で、もっと髪色薄ければイケるんだけどなー。』


『え~? 清光さんの黒髪ダメ? 綺麗だよ?』


『ダメじゃねぇけど、似合ってるけど。可愛いけど。

 大前提として、年齢がな。』


『ちょっと主っ!! 乱に変な事吹き込まないでよねっ?!

 こんな話題で『可愛い』連呼されても嬉しくないしっ!! 年中ジーパンに白いタンクトップとか、工事現場の親父みたいな格好してる野郎に、お洒落とか語られたくないしっ! 一期一振が来てないからって、好き勝手出来ると思うなよこの真性ショタっ!!』


 聞くに堪えないっ!!

 と叫んだ清光さんに強制終了させられて、その話はそれでお終い。

 だけど清光さんもボクも、気付いていなかったのだ。ボクらの主さんは、欲しい言質なんて疾うにボクから巻き上げていた、という事実に。


 固定近侍になって長い乱にとって、執務室は第二の私室だ。

 但し、この私室にはほぼ例外なく主君たる審神者が付随するが。どの道いつでも傍に置かれているので、近侍でもそうでなくても違いなどは無い。

 一度来客の時に、ナチュラルに膝に乗せられそうになって、肘打ちを入れた事がある。

 とんでもなく硬い腹筋だった。


「主さんてさ、『乱藤四郎』が一番お気に入りなんだよね?」


 やる気の無い見た目と違って、執務には手を抜かない主君だ。

 2人きりの執務室は好都合だった。大きな背中を見つめながら、気になっていた事を訊いてみるには。武力も霊力も、司令官としての資質も。抜きん出ているし、自慢の主なのだが・・・コレで、誰彼構わず『真性ショタ』を公言しなければ。


「微妙に違うぞ、乱。

 『気に入ってる』んじゃない。『愛してる』んだ。」


「その割にエロい悪戯とか、ぶっちゃけ閨事とか? その手の要求一度も無いじゃない?

 どうして?」


「そりゃお前、俺が『一本筋の通ったショタ』だからさ。

 エロい事していいのか?」


「ううん、ダメ。

 単純に気になったから訊いてるだけ。人間の男の人、特に戦闘職種ってそういう欲求強いんだって。演練場で聞こえてきたから、主さんはどうなのかなって。

 手入れの時は問答無用で手伝い札だし、着せ替え人形にされた事も無いなって。」


「軍服マニアでもある身としては、そのままのお前が好みドストライクだしな。ニーハイブーツ最高。結わないロングのストロベリーブロンド、マジそそる。」


「踏まれたいの?」


「いや、脱がしたい。」


「主さんの好みってさ、複雑だよね。

 12歳以下の、女装の似合う女顔の美少年。髪はロング一択、黒髪不可、銀髪より金髪。瞳も明るい方がイイけど、顔立ちは純和風希望。軍服似合う方がイイけど、体格は軍人らしくない方が良くて、肩幅とか胸板とか、華奢な方がイイ。

 好きなのは男やら女やら、和風やら洋風やら、軍人やら非戦闘員やら。」


「女っぽい見た目の男。洋風要素のある和風。非戦闘員っぽい軍人。12歳以下のな。」


「で、全て兼ね備えてるのが、ボク?」


「そういう事だ。

 審神者に任命された時、刀剣男士の一覧表も見せられたんだよ。『こういう連中と一緒に戦ってもらう。』ってな。お前の写真見て、俺は天意を得たと思ったね。

 これは是非とも実物に会わなけりゃ、と思って、初期刀はコイツがイイって、上の連中にゴネたんだよ。普通に却下されたけど。

 自分で鍛刀した方が思い入れが増すだろうって、説き伏せられて、譲歩して。それであの5人の中で一番『可愛い』のは清光だったから。切国は綺麗系だし、陸奥守は精悍系だし、蜂須賀は高貴系だし、歌仙はヤンデレ系だし。

 ってのが、清光を初期刀に選んだ経緯だ。」


「経緯って言う程格好イイ事情じゃないよソレ。清光さんが可哀想だからあんま言わないでおいたげて。

 つくづく見目で判断してるっていうか、前衛的な物欲センサーっていうか。ボクの本霊、よく分霊を遣わす気になったなと本気で思う。」


「ショタなのに?」


「ショタなのに。でも『お触り』は無し。

 不思議。」


「いいか、乱。ココは敢えて直接的な言葉を使うが。

 『幼児性愛』という性的指向の最たる害悪のひとつにな、『生物学的・肉体的に性行為に適さない相手に、強制的に相手をさせる。』ってのがある。勿論、それ以外にも色々と問題はあるが。相手の精神的発達も妨げるしな。

 だがしかし、ペドフィリアを自覚する俺は、この局面で敢えて自分を正当化したい。

 性的接触を一切せず。

 相手の精神が、充分に発達してる事を確認した上で。

 『ショタコン』という言葉の意味を、充分に理解させた上で。

 断る自由を保証した上で。

 正常な精神状態にある相手から、許可を取り付けた上でならば。

 『特別に大事にする』のまでは、アリだ。

 つまり、『プラトニックな貢ぎ愛』だな。」


「確かにエロは無い。

 ボクの場合、応仁の乱以前の生まれだから、確かに精神も発達してる。

 ていうか、ペドって本来『相手の精神が充分に発達してる事を確認した上で。』っていう条件には当て嵌まらない訳だけど。

 ボクはショタコンの意味も知ってるし、断る自由も、まぁあるし? 駆け込む場所も。

 それにずっと前、割と早い段階で言質も取られてる訳だ。『主さんの特別になってあげる。』って。改めて言うと、およそ部下らしくない台詞だけど。

 『特別に大事にする』って、具体的に何を指すの?」


「場合によりけり。『相手の利の為に尽くす。』って事に集約されると思うが。

 一般的に言えば、その子の行きたい道に進ませてやるとか? 勉強教えたり、学資を援助したり、必要な人脈を無償で提供したり?」


「無償でってトコ、ポイントだよね。」


「有償だと、途端に援交になるからな。

 審神者から刀剣男士へと想定するなら、だ。

 たとえ資材遠征であろうと必ず刀装付き。当然、特上金。レベリングは慎重に、且つ何時怪我しても直せるように、資材には常に余裕を持たせとく。固定近侍にするのは基本だな。常に傍に置いて、むしろ俺が護衛してやる。」


「・・・・・・・。」


「基本と言やぁ、真名を」


「教えちゃダメだってばっ。前から言ってるでしょ?!

 何考えてるの主さんっ!!!」


「何をって、お前に好かれる事しか頭にねぇよ、俺は。お前に会いたくて審神者になった男だぜ?

 俺がお前の真名を知ってて、お前が俺の真名を知らない。不公平だろうが。俺が真名で縛ってお前に、それこそエロい無理でも強いたらどうするよ?

 実に不公平だ。『断る自由』なんて、何も保証されちゃいねぇ。」


「・・・主さんはそんなコトしないもん。」


「恋情も性欲も、理性じゃ縛れねぇって事を知らないんだな。俺が選択肢にないって事でもある訳で、オジサンちょっと傷付いたぜ。

 いいから今の内に聞いとけよ。俺の名前は」


「聞きたくない。」


「・・・・・・。」


「聞きたくないの。主さん、ボク好みの『極悪人』だから。

 主さんが政府のお役人から、裏でナニを請け負ってるのか。ボクちゃんと知ってるよ?

 特別で居たいの。

 主さんの、特別で・・・でも関係を始めちゃったら、終わる時が来るのに怯えなきゃいけなくなるから。そういう怖さは、イヤだから。

 だから、聞きたくないの。」


「ホントの『悪』ってのは、誰にも知られずに悪行を重ねるモンだがな。

 俺もまだまだ甘かったか。」


「犯罪組織のボスにも、腹心は居るモノでしょう?

 表のボクは、固定近侍。じゃぁ裏のボクは? ボク、主さんの腹心になりたい。」


「カワイイね、泣けてくるぜ。

 お前を特別大事にしてる極悪人は、お前に裏の世界なんざ見せたくねぇんだよ。政府からは長谷部を6振、貰ってる。アイツらを扱き使えりゃ充分だ。」


「今はそれでいいもん。

 時間はたっぷりあるから。付喪神のボクは、見目が成長しちゃう恐怖には怯えずに済むから。いつか主さんに、裏でもボクが一番だって言わせてみせるもんね。」


「だがお触りは無し、と。」


「ボク、主さんの事、好きだよ?

 主さんが死ぬ時、一緒に折れて欲しいって言われたら折れてもイイって。本気でそう思う程度には、好きだよ?」


「・・・微妙だな。

 おっ死ぬ間際に見るのが、惚れた相手の新鮮な死体って。ンなモンで喜んで安心して死ぬ程、堕ちてねぇんだが。」


「そこで独占欲とかは発動しないんだね。

 主さんがボクに向ける愛情って、ホント複雑。」


「放っとけ。」


 全ては、背中越しの会話。背に向けて問い、背を向けたまま語る。

 これで一体、何処まで互いの意が通じるものか。

 それでも何故かこの手の話の時、乱は傍に寄らなかったし、主も抱き寄せなかった。触れる事はおろか、手招きさえ。

 その一線が、暗黙のルール。実に脆い一線だった。


 乱の部屋は、顕現させた時から変わらない。

 俺の私室の隣に与えてる。兄弟刀と相部屋にさせる事もなく、一室丸々だ。

 襖一枚隔てただけの、隣部屋。

 仕事上がりの一時、襖を半分くらい開けて。乱の寝顔を眺めながら晩酌するのが、俺の密かな楽しみだった。

 言っておくが襖を越えた事は無い。


「・・・・・。」


 今夜は月明かりが強い。障子越しの白い光が、乱の幼い体を浮かび上がらせる。キラキラとストロベリーブロンドの髪が波打つのが幻想的で、いつまでも見ていたくなる。

 審神者を命じられた時。

 あの時、全てに絶望した。態のイイ『幽閉』だと。

 軍人として、恥ずかしくない武勲は挙げて来た筈だった。

 性的指向が生物の理から外れている分、武人としての瑕疵は無いようにと・・・同性が対象なだけなら、まだ解釈のしようはある。が、性的未成熟者が性欲の対象なんて。自分でも判っている。どうかしていると。

 戦場でだって、非道に走った事など無い。むしろ非道に走らせない側で、俺の部隊は軍部一の規律を誇っていた。日常でだって同じ事だ。

 それなのに。

 ナイフを握り、銃を取る手を否定するのか。いびつな俺の、唯一の存在意義を。

 身に宿る霊力など、感じた事は一度も無い。せいぜい傷の治りが早いかな、程度だ。

 審神者になど、なりたくなかった。歴史修正というなら、自分のこの性的指向を修正したい。

 世の中全部壊れちまえ、いっそ俺自身の手で俺の本丸を夜伽強制本丸にしてやるぜぃ♪ 大きいのも小さいのも、任務そっちのけで俺に侍るがいい。

 と荒んだ気分でやさぐれている時、見せられたのが『刀帳』だった。


「主・・・まだ寝ないの?」


「清光か。お疲れさん。

 どうしたよ?」


「・・・主の気配は起きてるのに、乱の気配は寝てるし、部屋に灯りが付いてないのが気になって・・・。」


「睡眠姦は、オジサン好みじゃねぇな。」


「いいからさっさと寝ろ、アル中ショタっ!!」


 俺の理想像そのものだと思った。永遠性まで、全て。

 そうだ、『乱藤四郎』を、俺の審神者ライフの目標にしよう。

 その顕現を。守護を。あの短刀を繋ぎ止め、閉じ込め、占有する為。他の刀剣はその為に戦わせ、俺はその為に本丸を維持するのだ。

 逃げないように真名で縛って、折れないように外に出さず、奪われないように兄弟刀にも、誰にも会わせない。

 俺を愛し、俺を慰め、俺の夜伽をする為だけに存在する、永遠の少年。

 ショタコンにとっては、奇跡のような存在だ。


「蓋を開ければ、縛る事すら出来やしねぇ。

 言う事なんざ何でも叶えてやりたくなる。」


 兄弟刀に会いたいと言えば顕現させたいし、外に出たいと言えば城下に連れ出してやる。本分を果たしたいと言えば慎重にレベリング計画を立て、知識が欲しいと言えばインターネットの使い方を教えてやる。

 それでいて伽的な意味では、指一本触れられない。

 丸っきり言いなり、立場逆転だ。

 最近じゃ一期一振ですら、苦笑して遠巻きに見守るだけと化す始末。せいぜい清光が初期刀として『念の為』様子を見に来るくらいだ。

 どいつもこいつも、手ぇ出せないの判ってやがる。

 乱を自己愛の延長のような玩具として扱うには、俺は『真性』過ぎた。

 本気で愛しちまってるんだから、始末に負えない。


「愛してるぜ、乱。

 この本丸にお前が居る限り、命懸けで戦って、生き残ろうと思う程度にはな。」


 愛する者に盃を掲げて、一息に飲み干す。

 初給料で俺に買ってくれた、安物の盃。そんなモノを後生大事に有り難がっちまう時点で、既にきっと恐らく、俺は人として終わってる。

 今の俺から審神者である事を取り上げたら、何も残らないし、きっとソレが正しい姿でもあるのだろう。全てを捨てて、審神者で在れ。昔を知る者など誰も訪ねて来ない、血と剣戟に溢れ、瘴気と神気の入り混じる、この場所で。

 正気の沙汰じゃない場所でも、乱さえ居れば狂気を保てる。

 自分の狂気を、制御できる。


「・・・・・・。」


 月が綺麗だ。

 明日晴れたら、乱の為に小間物でも買ってきてやろう。




               ―FIN―

【ショタについての一考察】 さに→←乱+加州清光

【ショタについての一考察】 さに→←乱+加州清光

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-06

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