五里霧中

りんどう

暑さはまだ続くが、暦では夏が終わりに近づく頃。滅多に届かない郵便物が届いた。
高校時代の友人が結婚式を挙げるという知らせだった。
当日、式場へ向かう途中で見覚えのある後ろ姿を見つけた。
「変わらないな。」
思わずそう零れていた。



式の最中、私はずっとその後ろ姿を追っていた。



祝福の言葉で溢れている暖かな空気の中。
寂しげなその姿は、相も変わらず美しい。
主役の花嫁よりもずっと……。
私は今もなお、その寂しい後ろ姿の君を愛しています。

-どうしたの?
-いや、懐かしいなーって思って。
-感傷に浸るなんて珍しい。いや、いつもそんなだったか。まだ……忘れられないんだ?
-もう昔のことだもの。いい思い出だよ。
-そっか。もう、10年か……。



また、君に似合うりんどうをプレゼントに行こう。
悲しんでいる君に、美しいりんどうを……。

ききょう

ずっと好きだった人が、結婚することになった。
告白すればよかった。
そんな後悔、今更すぎるけど。



式場で、久しぶりにみんなの顔を見た。
すっかり大人になってる子もいれば、変わらない子も沢山いて。
あの人も変わらず、太陽のようにあったかい笑顔で幸せそうにしている。
それを見ているだけで幸せだった。
たとえ、その笑顔が私に向いていなくても。
それでもいい。今までも、今も、これからも。
変わらずその笑顔が好き。
永遠の片想いでいい。
どうか、幸せになってください。



結婚式の翌日、私の元へ花が届いた。

-りんどう。
-君にぴったりだと思って。
-似合わないことするよね。
-いいじゃない。また、そのうち来るよ。



知ってる?私が好きな花はききょう。
実はりんどうが似合うのは、私じゃなくて君だってこと。
……いや、本当は二人共ききょうの方が似合うのかも。

五里霧中

五里霧中

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-08-06

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  1. りんどう
  2. ききょう