【ボクらは幸福な夢を見る】 小狐丸+乱+一期一振+切国 他
ハローハロー、漆黒猫でございます。
アテンション→漆黒猫は刀剣乱舞、未プレイ民。
【『レア』の対価】と同じ本丸です。
そちらを先にお読みいただいた方が判り易いかも知れませんが、
こちら単品でも、問題ないかと思いまする。
←どっちなんだ。
どっちでも大丈夫です。
リンクの貼り方が判らんバカ猫で申し訳ない。
やはり、審神者は出ません。
次郎太刀、同田貫正国、一期一振と呑んでる小狐丸の所に、乱が寝に来る話。
ド健全です、念の為。
三条の中では、小狐丸は末っ子希望。
クセの強い4人の兄上に、振り回されて苦労してる苦労性不憫系鳴かない狐を希望する。
穏やかな物腰は、菓子折持って被害者の許に謝罪しに行く過程で形成された・・・!! みたいな♪
でも手段問わずのガチ武力になったら、一番強いのは狐だったり。
ラリマー。
いち兄に、最も似合う石のひとつではないかと。
ロイヤルでノーブルな雰囲気からすると、美しい透明感のある、ブルートパーズかとも思うのですが。ロンドン。
粟田口の長兄として、弟思いの一面を鑑みると、ミルキーで穏やかで優しい、
青空のような色合いが、いち兄らしいかと。
ドミニカでしか採れん希少性、石としての値段もかなりお高い、鉱物コレクター泣かせのそのロイヤルさよ・・・。
『総隊長』って立場は、
他の40振以上の刀剣たちや、2振目たちを合わせると相当な人数になるであろう年数の経った本丸に必要な、
他の刀剣たちのまとめ役、代表者、的な立ち位置だと思ってます。
(だから人数少ない本丸では必要ない。)
『所詮写し』とコンプレックス拗らせつつ、
乱の為に頑張ってる系切国なのでした。
【ボクらは幸福な夢を見る】 小狐丸+乱+一期一振+切国 他
ウチの小狐丸は黒い。
性格だとか腹がとかいう話ではなく、単純に髪が黒いのだ。所謂『亜種』というヤツで、本人自慢の毛艶と相俟って、太郎太刀並の美しい黒髪である。彼や次郎と演練に行くと、ストレートの美髪と癖っ毛の美髪、両方の良さが際立ってかなりの存在感だ。
そして何よりの彼の特徴は、
「こぎにい・・・。」
「いかがした、乱♪」
極度のブラコンである。
それも三条ではなく、他の刀派の短刀に御執心ときた。
とある夜半、仲間と呑んでいた小狐丸の部屋を、フラリと訪れたのは短刀部屋で寝ている筈の乱だった。
諸般の事情があり、小狐丸は太刀部屋ではなく1人部屋を使っているのだ。
乱の意識は8割方眠っているらしく、他の連中が視界に入っていない。真っ直ぐ小狐丸の許へ行くと、彼の胡坐の膝にストン、と座り込んだ。横座りが可愛らしいが・・・その細い肩といい、華奢な体の線といい・・・女の子にしか見えない。
その『女の子にしか見えない』乱は、そのまま何も言わず、小さい側頭を逞しい胸板に預けて眠り込んでしまう。
大人の男連中の只中に、少女(にしか見えない男の娘)がただ1人。
纏っているのは白い夜着1枚、細腕に黒狐のぬいぐるみを抱えている辺りが、絶妙なロリ感を醸し出している。
当の黒狐はといえば、誉れ桜をチラチラと舞い散らせつつ、少女(にしか見えない男の娘)の肩を抱え直して盃を傾けていた。
口許が上機嫌に緩んでいる。
「はてさて、怖い夢でも見やったかな。」
「何度見ても、何というか・・・言葉を失う光景だよね、アンタたち。」
「長い付き合いなれば。
山姥切の国広と3人、この広い本丸で身を寄せ合う日が長かったのでな。互いの体温に慣れてしもうたのだ。不安事があれば、1人でおるより国広か乱の傍で眠りたくなるのは私も同じよ。
2回目の鍛刀で降りた私と、3回目の蜻蛉切の間に3か月も空いてはな。
私が来るまでの半年放置と合わせて、結局9か月。あの頃のぬしさまが何をお考えでいらしたのやら、今となっては計りかねるが・・・。
乱にとっては、辛い9ヶ月であったのだろうな。コレは構われたがりの気がある故。まぁ、私も人の事は言えないが。」
「いや、アンタは全然平気でしょ。充分自立してんじゃん?
ヌシデレって何語? ってレベル。」
「アンタがウチの主にデレてるトコとか、俺ら見た事ねぇ。
ハバネロ対応。こないだ演練場の受付に『小狐丸が懐いてないから』とかいう理由で代理だと思われてたろ。」
「さて、何の事やら。
小狐は野生の亜種なので、判りかねまする♪」
次郎と正国とがまじまじと見つめる先で、小狐丸が後生大事に抱えた乱は、安らかな寝息で眠っている。彼から与えられる守護を、寸分も疑っていない寝顔だ。
顔の上半分がベタ塗りになってしまうのは『ロイヤル長兄』一期一振である。
「『こぎにい』って・・・『小狐兄(こぎにい)』って・・・!!
乱に『いち兄』と呼んで貰えるのは、私だけの特権だったのに・・・!!」
「何やらすまぬな。
乱が私を兄と呼ぶのは、本当に寝惚けて眠い時だけじゃ。普段『小狐丸』一択なのは存知ておろう? あるいは『ボクの小狐』とやら。
それで許せ、長兄殿。」
「小狐丸、それトドメ。
普段内心『こぎにい』って呼んでるのが、無意識に出ちゃうってコトだろ?」
「アンタ絶対確信犯だよな。タチ悪ィ。
大体アンタにゃ今剣が居んじゃん? あっち可愛がれよ。」
「いやいやいや、待たれよ各々方。
大兄(たいけい)たる壱の兄上を可愛がれとは、知らぬとはいえあまりにむごい仰せよう。」
「大兄?」
「今そなたが私の弟扱いした、三条の短刀の事じゃ、同田貫よ。壱の兄上とか今の兄上とも言っていたな。兄弟間で名前呼びが定着したのは、割と最近だ。
殊更訂正しない限り、10人中10人に誤解されたままで終わるのだが。
末子(すえご)は、私じゃ。」
『・・・・・・。』
「うっそぉ――――っ!! 三日月じゃなくて?!」
「冗談きついぜ、狐の旦那。
化かすならもっと捻った化かし方してくれよ!!」
「嘘でもなければ化かしでもないわっ!!
大体あの御方は、元は6尺5寸の大太刀だからなっ?! 霊体の尺とて岩融の次に高かったのだ。長兄としてのあのヒトの圧政ときたら・・・!!
パシリどころの話では、」
「ぼくがどうかしましたか、こぎつねまる。」
「い、今の兄上っ。
何ぞ御用で・・・?」
「いいえ、乱がうなされてから、むゆうびょうのようにどこかへいったので、心配でようすみにまいったまで。
あなたのところにいるならば、安心です。
おやすみなさい、ぼくらのすえご。」
「お休みなさいませ、大兄。」
『・・・・・・・。』
音もなく障子を開けて、幼げな風貌を半分だけ見せた今剣。コレは怖い。普通にコワい。紅の瞳が底光りし、下ろした白銀の長髪が弧月に照らされ、月そのもののように煌々と輝いている。
口許だけは可愛らしく微笑んでいる辺りがまた。
彼の気配が、完全に消えるまで小狐丸の額からは冷や汗が消えなかった。
「・・・順繰りに話そう。なに、簡単な話なのだ。
我ら三条、上から今剣、岩融、石切丸、三日月と来て、私が末子。まぁ、三日月とは本当に僅差なのだが・・・口惜しいながら、上は上よ。
別にソレが辛いの悲しいのという訳ではないのだ。イイ年した男ばかり5人兄弟ならば、『あんなモン』であろう。
訳ではないのだが・・・私にも、兄貴風を吹かせたい願望はあってな。」
弟が欲しいと周囲を見回していた小狐丸だが、そう扱える相手は結局現れなかった。三条宗近は当然の如くあの5人以外にも刀を打ったが、5人と肩を並べる程の名剣と成り得た者は少なく、更に付喪の神と成り得た者に至っては、誰も居なかった。
小狐丸は『末子』のまま。
彼を慕う者自体は後を絶たなかったが、小狐丸の望みとは、形が違っていた。例えるならヤクザの大親分とか、筋モノたちの頭目とか、そういうモノとして、だ。
小狐丸は自分の組を立ち上げたいのではない。
もっと単純に、家族としての『弟』あるいは『妹』が欲しかったのだ。
「あぁ、なんか判るかも。アンタ、見た目がヤクザかホストみたいだもん。
普段からスーツ着て、酒はシャンパン、みたいな。」
「な。隠れ凶暴厨に『見える』ってか・・・『優美な強面』? 『慇懃無礼な丁寧語で容赦なく借金取り立ててく、喧嘩の強いインテリヤクザ』?
舎弟侍らせて煙草に火ィ付けさせてそう。」
「『判る』って、そっちかっ?! 兄弟願望ではなくっ?!
設定を盛るんじゃないっ、私は服は和服、酒は日本酒! 煙草などという嗅覚殺しの中毒モノ、野生の狐が吸う訳がなかろうっ! 乱と国広に汚らわしい匂いが移ったらどうしてくれる!!」
「はいはい、どうどう。」
「判ってるって。」
「そうして『弟妹欲しい熱』に炙られて干乾びそうな所に、コレよ。」
小狐丸の爪が、指先が、眠る乱の髪を撫で付ける。
男らしい節ばった指先が、獣じみた鋭い、しかしよく手入れされた爪先が、ピンクが勝ったオレンジ色の髪の間を梳き通っていく。
色白の男の肌を、少女(にしか見えない男の娘)の紅茶色の髪が滑っていく様は・・・絶妙な色気がある。
沈黙を守る長兄の、柔和でロイヤルな口許にひとつ、青筋が立った。
「これでも最初は、嫌われておったのだ。」
「?!」
「否、嫌われておると思っておったのだ。
何せ私が顕現した折、国広はぬしさまを責めたし、乱は『我慢』という言葉を使いおった。何故に一期一振ではないのかと。一期一振でなくとも我慢する、と。」
「・・・・・・。」
「が、今は、コレよ。」
「?!!」
「いや、努力はするモノよな。
諦めんで良かったわ。年下の兄弟マジ可愛い。最高。天使。
居てくれるだけで、誉れ桜満開よ。」
「小狐丸殿っ!
ゆくたてをっ! その境地に辿り着くまでの経緯を是非にっ!! この一期一振、乱の兄として、イチからやり直す所存っ!!」
「何を焦っておるか、長兄殿。
やり直すも何も、乱の兄は元よりそなたであろう、一期一振。私や国広が『弟』にしたいと思う乱に育ったのは、そなたの躾の賜物であろう?
乱はいつも、私と国広に長兄自慢をしておったぞ。」
「・・・小狐丸殿・・・!!
その・・・ご迷惑でなければ、私も・・あ、兄上とお呼びしても宜しいでしょうか・・・?」
「応とも、構わんぞ♪
ロイヤルな弟が出来て、私も鼻が高いわ。そなたを我が自慢とするとしよう、弟よ。」
「兄上・・・♪」
泣いた御物がもう笑う。
狐に懐きまくりな弟の件で、今まで何処か隔意の抜けない所のあった長兄の瞳が、一瞬でハートマークになっていた。長く『一番上の子』だった一期一振の中の『何か』を、小狐丸の漢前発言がぶっ壊した、といった所か。
ハートマークを飛ばす『出来立ての弟』と、カラカラと鷹揚に大笑して『弟』の頭を撫でる『兄』。
この分では、粟田口の兄弟が全員、小狐丸の『弟』になる日も近そうだ。
「いーなぁ。アタシも年下の兄弟欲しい。
取り敢えず明日、兄貴に『お兄ちゃん♪』ってデレて来よ。」
「俺はあんま、兄弟願望はねぇけど・・・俺自身が集合体だからな。
だが自分の外に兄弟が居るってのは、確かに面白そうだ。」
「・・・前から不思議だったんだけど。」
太郎太刀という兄に思いを致す次郎太刀。
自分の中に無数の『双子の自分』が居るような存在の、同田貫正国。
ふと思いついた次郎は、長身を屈めて正国の金瞳を覗き込んだ。一期一振の明るい金や、光忠の蝋燭の灯を映し込んだような金とも違う。
茶みが勝った、濃い金色。
「たぬきの中の『ソイツら』ってさ、喋ったりするのかい? アンタに話し掛けたりとか、アンタと同じモノを見たりとかしてンの?
もしかして、今アタシと話してるアンタと違うアンタが出てきたりとか?」
「ソレもう二重人格だな。
そんなんじゃねぇよ。話し掛けても来ねぇし。漠然と複数の存在、気配みてぇなモンを感じるだけだ。
ただ、単純な喜怒哀楽はあるみてぇだな。俺が機嫌が悪ィとザワついてて余計に苛ついたり、楽しけけりゃ浮かれてるのが伝わってくるし。だがそれも、切れ端程度の代物だ。
俺に取って代わる程じゃぁねぇよ。」
「へぇ・・・面白いねぇ。」
「次郎殿、同田貫殿♪
見て下され、兄上が指輪を下さったのです、兄弟の証にと♪ 似合いますかなっ?!♪」
「似合う似合わねぇで言えば、確かに似合うが・・・。
似合い過ぎて逆にキモイ。」
「うっわー、サイズぴったり怖いわー。
手袋の上からサイズぴったりとか、ナニこの狐マジで怖いわー。
このブラコン、何でンなモン持ってんだい? 乱のじゃなく、一期一振のサイズな辺りがマジで引くわこの黒狐。」
「フフフ、狐に咬み殺されたいか、狸と花魁。
乱が長兄殿、否、我が新しい弟を待望して泣いていた頃にな、よすがの一端にと職人に創らせた代物よ。サイズは他所の本丸の一期一振に付き合うてもらって、測らせてもらった。
ちゃんとした専門店で石から選んだ一点モノだぞ。
乱に遣ろうと思うておったのだが、まぁ色々とあって機を失ってな。
今の今まで箱に仕舞い込んでおったのだ。元々は乱から『この本丸の』一期一振に贈ったら良いと思うて誂えたモノだし、私から贈っても良かろうよ。
我らが末弟が知ったら、盛大に拗ねるかも知れんが。」
「ふふふ、明朝が楽しみですな、兄上♪」
「楽しみよな、弟。」
眠る乱の頬を突っつきながら、ご機嫌の2人の周囲に誉れ桜が降り積もっていく。
台座はゴールド、センターにはカボションカットの大粒のラリマー。流水の彫刻が高貴な青空の石を取り囲み、ラウンドカットされた3種の色石が、水飛沫のようにラリマーに寄り添っている。
凛とした青緑、優しい紅茶、全体を引き締める、艶やかな黒。間違いなく、それぞれ山姥切国広、乱藤四郎、小狐丸の象徴だろう。柔和な空色は当然、一期一振だ。
3人の義兄弟レベルの仲良し振りも、一期一振の兄弟思いも。
知っている身には、思わず気恥ずかしくなる指輪である。
「アタシも兄貴に、何かあげようかなぁ・・・。」
「俺には自分を飾る趣味はねぇんだが。」
「小狐丸。悪いが寝かせてくれ。イヤな夢、を、・・・?!」
「おや、アンタも来たのかい、ウチの総隊長殿。」
眠そうなカオで小狐丸の部屋を訪れた客人は、次郎への返事も忘れて瞠目した。
ウキウキと頬を染めた一期一振と、彼の左手の中指に嵌められた指輪とを見比べて、青緑の瞳を見開いている。
「国広殿、見て下され♪
小狐丸殿が、私の兄上になって下さった証にと。私が顕現する前から、私の為にご用意頂いていた品だと伺いました。
大切に致します♪」
「そうか・・・その指輪は、無事にアンタの指に嵌まったんだな。
嵌める事が出来たんだな、小狐丸。」
「あぁ、国広。
今の私は、大層気分が良い。」
フワリと、何処か安堵したように淡く微笑する金髪の青年。
とても美しいのに、褒めればやはり怒るのだ。彼もまた『亜種』だが、そんな所は他所と変わらなかった。
「国広殿? 兄上?」
「いや、いいんだ、一期一振。
『俺たちの』アンタに出会えるまで、長かったから。感慨深いなと。
綺麗だな。よく似合ってる。」
「はいっ♪」
『・・・・・。』
次郎と正国は、黙って顔を見合わせた。ウチの『始まりの3人』は、たまにこういう3人にしか通じない会話をする。
でも、まぁ、今はいいか。
「さぁ、酒宴は開きぞ。そなたらも休め、次郎にたぬき。
国広に一期一振。今宵は乱と4人、添い寝と参ろう。」
「はい、あにうえっ♪♪」
一期一振の幸福そうな笑顔を見ていると、深く掘り下げようと思う気も失せる。まして、小狐丸も国広も笑っているのだから。
素直に部屋に戻った2人は、各々の『きょうだい』と遊ぶ幸福な夢を見た。
―FIN―
【ボクらは幸福な夢を見る】 小狐丸+乱+一期一振+切国 他