【4万年後の未来の話】 鶴さに
ハローハロー、漆黒猫でございます。
アテンション→漆黒猫は刀剣乱舞、未プレイ民。
前作までとは、全く別の本丸、全く別の審神者さん。
本丸襲撃ネタ・うっすら、刀剣破壊を匂わせる描写・注意。
・・・我ながら、またタイトル詐欺なモノを・・・。
最初、左文字兄弟で書きたかったのですが。
江雪さんとか、平和的に星空見上げるの好きそうだな、とか。
天体観測。
「宇宙+左文字兄弟&審神者」と思って何となくボイジャーの話をネットで漁ってたら、
どうやらビックリ御物ジジイの名を冠した曲がリスト入りしているとな・・・?!
そしていつの間にか、こんな薄暗い鶴さに話が精製されておりました・・・。
左文字兄弟は遠征中です。
誰か・・・誰か・・・!!
鶴丸国永と『鶴の巣篭もり(ボイジャー)』ネタで、明るい鶴さにをお恵み下さい・・・!!
ボイジャー1号・2号→1977年にNASAから打ち上げられた惑星探査機。
ゴールデンレコード→両方のボイジャーに積み込まれた、宇宙人向けのメッセージ。画像やら挨拶やら音楽やら、色々刻まれた、金メッキ銅板レコード。
天鳥船→日本神話に出て来る、神様の乗る船。
【4万年後の未来の話】 鶴さに
宇宙の話が好きな人だった。
天文学者の娘だと言っていた。本当は審神者になどならず、宇宙関係の仕事がしたかったのだろうし、なれたのだろうと思う。
「そういえば、ねぇ、鶴丸。知ってた?
あなた目下現在進行形で、宇宙旅行をしてるのよ?」
「おいおい、トンチキな事を言うなよ、主。
俺の分霊(わけみたま)を荷物よろしく積み込んで、一体どこのNASAが天鳥船(あめのとりふね)を飛ばしたと?」
「『NASA』っていう言葉が自然に出て来る辺りが鶴丸よね。
分霊よりもっと素敵なモノよ、鶴丸。
前に『ボイジャー計画』の話をしたでしょ? 1977年に打ち上げられた、外つ国の天鳥船の話。そこに積まれた『ゴールデン・レコード』の話も。
何と何とっ!!!
そのレコードに日本の音楽代表として刻まれた曲のタイトルがね、『鶴の巣篭もり』っていうのっ♪ 別名を『巣鶴鈴慕(そうかくれいぼ)』っていって、鶴の一生を表現した曲なんですって。」
「鶴・・・。」
「ねぇ、素敵でしょう? 鶴丸国永。
あなたの名を冠した曲を積んだ船が、今この瞬間も、遥か先の未来へ突き進んでいるの。恒星近傍・・・宇宙人に出会えるかも知れない場所まで、4万年もかかるのよ?
そこに辿り着くまでに、どんな風景を見るのかしら。4万年後には、どんな出会いがあるかしら。考えるだけで素敵じゃない?」
「4まんねん・・・君たち人間は、時たま突拍子もない先の話をするんだな。
4万年もあれば確実に、その『ぼいじゃー』とやらは付喪神になってる筈なんだが。日月(にちがつ)の気を浴びれないんじゃぁなぁ。人の思念ってコトなら、天文学者たちの情熱は籠っているだろうが。」
「あら、判らないわよ?
太陽と月の光は浴びれなくても、他の星に出会っているもの。木星や土星、途中で隕石とも擦れ違っているかも知れないし、宇宙空間自体、『気』が無いとは言い切れないでしょう? どんな珍しい『付喪神』になっているか、ちょっと楽しみじゃないかしら。」
「驚きの結果か、ただの機械のままなのか。
賭けでもすれば面白そうだが、確かめる術が無いのが惜しいな。」
「そうあっさり諦めるものじゃないわ、鶴丸。あたしたちは、何百年前だろうが流れた時間を省略して、行きたい場所に行く術を持っているじゃない?」
「ゲートを使えばイイと?」
「政府からご褒美が貰える程に、戦績を挙げれば良いのよ。
『1回だけでイイから、未来の好きな時間の好きな場所にゲートを開ける権利』みたいな? 勿論、宇宙服とか必要経費は全て政府持ちでね。
その為に、全刀制覇、全刀カンスト♪ そして皆で、4万年後のボイジャーに会いに行くの。その時の近侍は鶴丸、あなたにお願いするわ♪」
「素敵な夢だな。」
「素敵な夢でしょ?」
そんな大盤振る舞いが受けられる頃には、この戦争は終わっているだろう。
とは、互いに思っていなかったし、冗談でも言いはしなかった。
4万年。
今の2人には、それくらい悠久の未来の話がちょうど良い。
「鶴丸はどちらに賭ける?
ボイジャーは4万年後、付喪神に成ってると思う?」
「君は成ってると思うんだろう?
なら俺は、成ってない方に賭けるぜ。賭けってのは2人でするモンだからな。」
彼女が笑う。泣きながら笑う。
破壊された本丸の、薄暗い、ささくれ立った木張りの廊下に座り込んで。
仲間たちが、全てひび割れた本丸の、孤独の中央で。
「行こう、主。」
「うん。」
喪失では、否、喪失したからこそ、止められない歩みがある。
鶴丸の手を握り返す彼女の手は温もりを保ち、瞳には確かで強い光がある。
ずっと傍に居る。
今の互いに出来るのは、抱き締め合ったその温もりに、そう約す事だけだった。
―FIN―
【4万年後の未来の話】 鶴さに