【最期の息で呼ぶ名前】 歌仙兼定+武闘派審神者
ハローハロー、漆黒猫でございます。
アテンション→漆黒猫は刀剣乱舞、未プレイ民。
前作までとは、全く別の本丸、全く別の審神者さん。
本丸襲撃ネタ注意。
といっても、結局このヒトら、生き残りますが。しかも全員。主も刀剣男士も、全員・・・!
男審神者、それもゴリゴリの武人で軍人。
そんな人が選んだ初期刀は、文系名刀でした☆
でもあくまで『自称』文系名刀だからネ☆
何やかやで、上手く歯車が噛み合ってたよ☆
歌仙さんには、そういう男審神者も合うのじゃないかと思ったのです。
何せ、自称だからネ☆
一番合わないのは、『インテリ秀才系品行方正』科学者な男審神者じゃないかと思われ。
女の子だったら、ほぼ100%ウェルカムな印象があるのは何故だろう。
タイトル、もっと捻ろうと思ったのにコレ以外思い付かんかったです。
この歌仙さんなら、主の真名知ってそう。
戦友や盟友、副官的な立ち位置ですので、体育会系軍人武闘派男審神者なら、信の証とか言って内緒で教えそう。
【最期の息で呼ぶ名前】 歌仙兼定+武闘派審神者
歌仙兼定は『雅』を好む。
そう言うとごくたまに『みやび』とは何か、具体的にナニを指すのか、などと無粋な事を訊ねてくる輩が居るのだが・・・そういう無粋な発言をする奴は嫌いだ。それこそ『みやび』ではない。
ザシュッ ガリッ
「そういや、そんな事もあったなぁ、歌仙。
お前を顕現させて、俺が最初に投げた言葉がまさにソレだった。」
「正直一瞬、頭が真っ白になったよ。
初期刀に僕を選んだ理由ときたら、コレがまた・・・『虎徹の切れ味よりも、細川由来の血腥さの方が俺に相応しい。』だなんて。
どう返したらいいか判らなくて困ったよね、実際。」
「アレはイタい沈黙だったな、お互い。」
ビチャッ・・・ッ ギィ・・ンッ!!
敵の鎧をかち割った刹那、主の手に在った刀が折れた。無銘だが切れ味鋭い、良刀だったのに。
背中合わせに戦っていた歌仙は、舞うような足運びで主の正面に回り込むと、敵大太刀の一撃を受け流す。そのまま一思いに相手の腕を斬り飛ばした。
苦悶の咆哮を上げる敵を、顧みもせず。
歌仙兼定の青い瞳は、砕け、折れ散らかった玉鋼を一瞥する。
昼だというのに薄暗い。襲撃してきた時間遡行軍の纏う瘴気のせいだ。歌仙が丹精した庭木も池も、一足先に全滅している事だろう。アレらは美しい代わり、少しのダメージですぐ傷む。まぁ、その儚い風情、風流さが、歌仙は好きなのだが。
「とうとう、折れてしまったねぇ。僕より付き合い古かったのに。
一度くらい、顕現を試みてみれば良かったのに。」
「付喪の神が降臨給うかも、か?
ねぇよ。鍛刀から10年も経たん新品だ、お前らとは違う。」
大した思い入れもなかったから、思念もまるで溜め込んじゃいなかったろう。と、歌仙の主は肩を竦め、飄々と己が初期刀の隣に並び立った。
男2人、共通の敵を見上げる。
死というモノを、常に隣に『座らせて』いる人だった。へばりつかれている訳でもなく、むしろ自分から死の手を引っ掴んで、隣に正座させているような。豪胆というか、胆が据わり過ぎているというか。『奇人』というより、『鬼人』の類だ。
刀剣男士だけでなく、自らをも、この戦争の駒のひとつと割り切っていた。政府に使われる無名の駒だと。故にこそ本丸が滅びに瀕した今この瞬間も、恐怖の一片も抱かずに済んでいるのだろう。
武断一辺倒。
顕現させた刀剣男士に『武』しか求めない主だった。
シニカルで厭世的。苛烈なまでにレベル上げに拘り、出陣数は他所の本丸のソレを、3倍以上、余裕で超えた。
アレで手入れだけは欠かさず小まめにしてくれていなかったら、ブラック審神者として政府に願い出ていた所だ。
書類仕事は歌仙に丸投げし、内番も最小限に、自分の考えた訓練メニューで刀剣たちを・・・『下士官』を鍛え上げた。
現世での職は、軍人。それも内戦国の外国人傭兵部隊。
霊力を、それ以上に軍人としての腕を見込まれて、戦う為に呼ばれた男だった。
『刀剣連中を集めて軍を作る。俺が司令官で、お前が総隊長だ。付き合え。』。彼はそう言った。見慣れぬ軍人を相手に、歌仙があまりに接しかねていたので、彼なりの口説き文句のつもりだったのだろう。
(あくまで自称とはいえ)文系で在りたい名刀を誘うには、あまりに物騒な台詞回しと、血の滴るような野獣の笑み。
彼なりのデレだったのかも知れないと気付いたのは、かなり後だった。
「まぁでも、思ったよりは楽しめたよ、君の初期刀、っていう役回りは。
第一印象は最悪だったけど。」
充満する破壊の熱気の只中で、口許を笑ませながら交わすのは、やはり穏やかな会話。
歌仙は本体の血糊を払いながら。主は、短刀を抜いてケンカ殺法の構えを取りながら。
互いを責めるような言葉は、何故か出て来なかった。
「どうせ『うわぁ、ダメだコイツ。僕いつ折れよう? つか今すぐ折れたい・・・!』とか思ってたんだろ? お前、結構すぐ顔に出るよな。
腹芸出来ねぇタイプ。」
「君だって出来ないじゃないか、そんな器用な真似。
ねぇ、主。辞世の句を詠む前に、これだけは素直に言っておこうと思う。」
「・・・・・・・。」
「君は確かに、良い主であり、良い司令官だった。
本丸襲撃から四半日。僕が総隊長を務める君の軍は、君の刀は、誰ひとり折れていない。分断されて大分経つし、君との契約を起点に気配を探っただけだから。細かい傷の状態までは判らないけどね。意識を保って生きているのは確かだ。
信じられるかい? 全員だよ?
常から君が、上質な訓練を施しておいてくれたお陰だ。君の采配は優秀だった。
仲間たちを代表して礼を言うよ、我が主。」
「・・・ふん。いつもの小言はどうしたよ、歌仙兼定。」
「うん。まぁ欲を言えば、もう少し生活に雅さや風流さが欲しかったけど。
君にそれを理解させるのは、早々に諦めたからねぇ。」
「うるさい黙れ。
俺たちは軍人だ。戦の為に『配備』された道具だ。俺も、お前らも。生活に潤いなど要らん。お前は俺の為に、書類仕事と指揮と軍用食作りに勤しんでりゃイイんだよ。」
「ちょっ、ナニソレ♪ 近侍も結局最後まで、僕に固定したままだったし。
ワークバランスに一考の余地が無いかい?」
「細かい事は気にするなと、鶯丸も言ってたろ。
なぁ、歌仙。」
「何だい、主。」
「・・・無性に、今すぐ、お前の作ったビーフシチューが食いたい。」
「戦闘中に肉料理か、ホントに僕の主ときたら血の気の多い。
厨が粉々にされていてね。主の手で作り直してくれるなら、作って差し上げよう。」
「よぉし、約束したからなっ?!」
多少は体力が回復したらしい主の、空元気半分な声に苦笑する。
あぁ、しまった。辞世の句を詠むタイミングを、完全に失ってしまったじゃないか。こういうトコが雅じゃないんだよね、ウチの主は。
そして多分ほぼ確実に、こんな心揺らす言霊で僕を元気にしておいて、無事に生き残って真っ先にする事と言ったら厨を直す事なんかじゃなく、新品の刀をねだりに政府に直談判しに行く事なんだ。
うん、判ってる、大丈夫。
最後の最後まで、お供させて貰うさ。初期刀なんだからね。
「左は任せた、歌仙兼定っ!!」
「応っ!!」
歌仙兼定は、本体を構える。
右腕に僅か、主の温もりを感じる。この生命力を想えるのは、あと何刻だろう。
大きく息を吸い込むと、気合と共に刃を振り下ろした。
―FIN―
【最期の息で呼ぶ名前】 歌仙兼定+武闘派審神者