【『レア』の対価】 山姥切国広+乱藤四郎+一期一振 他
ハローハロー、漆黒猫でございます。
アテンション→漆黒猫は刀剣乱舞、未プレイ民。
前作とは別本丸。
そして審神者出ねぇ・・・。
『んば乱』希望ですが、限りなく兄妹です。
ド健全。このCP増えろ祈願なだけ。
可愛いと思うんですが、この2人。
初期刀って単語を前面に出したかった。
そして、基本的には来るのが遅いであろう『レア刀剣』な兄貴ーズは、
場合によっては兄ポジ奪われちゃってる本丸もあるだろうなー、とか。
山姥切国広。
公式からして『コンプレックス拗らせ系男士』とか言われちゃってる彼ですが、
「所詮写しの俺『だから』何やってもorz」
から、
「所詮写しの俺『だが』、〇〇に何かしてやりたい。」
(この場合は乱君。)
になれば、意外と誰よりも兄貴らしかったりするんじゃないかな、とか。
モチベーションが後ろ向きなだけで、意外と尽くしてくれそう。
元々、次兄だし。三兄弟の真ん中。
堀川、頑張れ。キミには山伏と兼さんと新選組が居る。
【『レア』の対価】 山姥切国広+乱藤四郎+一期一振 他
初期刀と初鍛刀の関係は、距離感が微妙だ。
大前提として、刀剣男士は全員が全員、肉体を持つのが初めてである。それはどんな名刀・レア太刀であろうと変わらない。むしろ付喪神として霊体を持って長い太刀の方が、肉の器に馴染むのに時間が掛かるという話もある程だ。
「みだれ。」
「ん。」
初期刀の役目は、新米審神者審が審神者業務を行う際のガイド役。
そして審神者が顕現させた刀剣男士に、肉の器の『扱い方』を教える事。
前者、曲がりなりにも己の職分を弁えている審神者と違って、後者は一筋縄ではいかない。どんなに能力値の高いレア刀剣であろうと、肝心の肉体が使いこなせなければ意味がないが、必然、教わる側の個体差だの、教える側との相性だのは生まれてくる。
初期刀として政府が予め用意した打刀5振には、やはり予め、後進に教えられる程度の『肉の器の使い方』がインプットされているのだとしても、だ。
主君たる審神者以外で、初期刀が初めて導く相手が誰かと言えば、ソレは当然『初鍛刀の刀』である訳だが。
「くにひろ♪」
「ん。」
真冬の夜。
風呂上がりの乱藤四郎。同じく、風呂上がりの山姥切国広。
灯りは煌々と、だが小さく儚げな、燭台の炎ひとつきり。
少女(に見える男の娘)のピンクが勝ったオレンジ色の長い髪を、後ろに膝立った金髪の青年が、愛らしい丸櫛で梳いている。
悪戯っぽく笑んだ少女(に見える男の娘)は、仰向くと人肌に温めた甘い蜜柑をひと房、手ずから青年の口に入れた。
青年の青緑の瞳と、少女(に見える男の娘)の空色の瞳が、かっちりと合わさって笑みを交わす。
雪灯りに照らされた野の花のような、静かで穏やかな時間。
「・・・・・・アレは一体、何ですかな?」
「あ~、アレね。俺たちからは、御愁傷様、としか言えないんだけど。」
そんな2人を柱の影から見守る、一期一振。
顔の上半分がベタ塗りになっている粟田口の長兄に、通りすがりの清光と安定が同情の視線を向けた。実際、彼に『コレ』を見せるのは2人も忍びなかったのだ・・・主に『笑いを堪えるのが大変』的な意味で。
顕現率の関係上、下の兄弟が既に人間関係を構築済みであるのは、レア刀剣の宿命。
とはいえアレは流石に・・・ロイヤル長兄が哀れだ。
「今日顕現したばっかのアンタには、ちょっと早かったかな?」
「僕らの主さん、初期刀が山姥切国広さんなんですよ。
それで、ほら、初期刀の大事なお役目のひとつに、初めて肉体を持った新入隊員に色々教えてあげるっていうのがあるでしょう? 手足の使い方とか、人の生活の流儀とか。
具体的に言うと・・・お風呂の入り方とか?」
「風呂っ?! 弟と風呂っ?!」
「あ、いや、お風呂に限らず、日常全般の話ですけどっ!
一期一振さんの『教育係』は、小狐丸サンでしたよね? その『教育係』が、乱君の場合は、自動的に山姥切さんで・・・それであんなに懐いちゃって。
主さんが初鍛刀した刀は、乱君なんです。乱君を降ろした後、主さん、しばらく・・・半年くらいかな? 事情があって、政府との遣り取りに忙しくなって。
その半年、山姥切さんと乱君、遠征も出陣もなく、2人で過ごしてたんですって。」
「ま、主の指示もないんじゃ出るに出れないってね。レベルは1のまんま、本丸に主は留守がちとくれば。遠征じゃ怪我しないって言ったって、帰りに検非違使に遭遇しないとも限らないし。
主1人の時に、本丸が襲われないとも限らないし。
無理に出陣させなかっただけ、ウチの主は常識的だと思うけど。」
「この広い本丸で2人きり。
乱君はあの通り明るい子で、人のパーソナルスペースに入るのが上手だし。山姥切さんはコンプレックスの塊ではあるけど、基本、優しくて誠実で、一生懸命役目をこなそうとするタイプだし。
初めての連続で他の兄弟にも中々会えなくて、心細い顔を見せてた乱君を、自分が守ってあげなくちゃって。山姥切さんの『次兄心』に火が付いちゃったみたいで・・・あのヒト、山伏さんの弟で堀川さんのお兄さんだから。
乱君をメチャクチャ気に掛けて可愛がって、今じゃシスコン、もといブラコン状態ですよ。乱君からもよく懐いてて、お互い名前呼んだだけで何考えてるか判る、みたいな。」
「2回目以降の鍛刀が丈のデカいヤツばっか続いたってのも、背中に引っ付くようになった理由かもね。蜻蛉切とか太郎太刀とか、短刀からすると馴染みにくいっつーか。
俺らの主、2回目の鍛刀で小狐丸サン呼べてさぁ。普通なら喜ぶトコなんだろうけど。
『三条呼んでドヤ顔してんじゃないっ! 同じレアなら一期一振だろ!』って。『それかせめて、粟田口の短刀兄弟!! 乱がずっと待ってるんだぞっ?!』って。
顕現した場で主に飛び蹴り食らわせてる『山姥切国広』見ちゃって、小狐丸サン今でもトラウマってるんだってさ。
『あの』三条の心を抉る、山姥切国広の飛び蹴り。
マジギレしたウチのまんば、マジ怖ぇ。」
「そして『僕ならまだ我慢出来るからっ、我慢するから、落ち着いて国広っ!』っていう乱君の台詞が、狐耳にこびり付いて離れないとか。
『喜ばれこそすれ、我慢などと言われたのは初めてじゃ・・・。』とか、お酒の席で未だに落ち込んでるよ、小狐丸サン。
無自覚ドSの乱君、抉るよね。演練でも出陣でも日常でも、あの2人、息ぴったり。
痛覚刺激系兄弟・・兄妹?」
「ウチの乱の『国広♪』は堀川じゃないからね。山姥切だからね。
『国広♪』の声に振り向くの、ウチのまんばだけだからね。演練場じゃ9対1の割合で、堀川国広の中にウチのまんばが混ざってる感じだからね。」
「まぁ、仲悪いより、イイに越した事はないけど。
例えば陸奥守が初期刀の本丸に、初鍛刀で僕ら新選組の誰かが行ってご覧よ。取り敢えず血、見るトコから始まるから。」
「それ、逆でも同じだけどな。
俺が初期刀の本丸に、初鍛刀で陸奥守が来たトコ想像してみろよ。取り敢えず、茶に雑巾絞るトコから始めるから。」
「性格悪いなぁ、清光。
ソレ、鶯丸さんに飛び蹴りされても庇えないよ?」
「大丈夫、鶯丸さん優しいから。飛び蹴りなんてするの、まんばだけだから。
ウチの本丸の隠れゴッドファザー、まんばだけだから。」
「ゴッドファザーかぁ・・・。
僕、国広さんのあの白布がさ、たまに聖母様の被り布に見えるんだけど。前に主さんに見せてもらったじゃない? 西洋絵画の画集。
『聖母マリア』がさ、高確率で国広さんと同じ布、被ってるんだよ。
『乱だけを贔屓すると贔屓の引き倒しになるから。』とか言って、結局国広さん、粟田口の他の子とか今剣とか、下手すると大太刀の蛍丸の面倒まで見てるじゃない。
短刀たちも、何かあればまず、国広さんに駆け寄るようになっちゃったし。」
「ゴッドマザー国広。
現実味あり過ぎて笑えない。」
「お二方・・・この本丸には、山姥切国広殿のまことの弟君・堀川殿も顕現されておいでですよね? 堀川殿は、その・・乱の事をどう、思っておいでで?」
「嫉妬して苛めてないか、ってコトですよね?
大丈夫です。攻撃的なヤンデレっていうより、甘えん坊属性構ってちゃん状態になってますから。乱君の事、むしろ目に入ってない系男士。」
「かま・・え?」
「うん、安定の台詞、想像つかないよね。
他所の本丸の『堀川国広』は、和泉守に何でもしてあげる系男士だもんね。構いたがりなトコは想像できても、『構ってちゃん堀川』なんて、想像つかないよな・・・。
でもマジだから。
今は遠征に出てるけど、帰って来たら判るよ。一目で。」
「一目で?!」
「くにひろ・・・ぼく、ねむ・・・。」
「髪も乾いたし、もう休め。
明日の内番、畑当番だろう? よく寝て、暖かくして出ろ。人の体は傷みやすいからな。」
「ん。
くにひろも、厨当番がんばって・・・。」
『山姥切国広』の首に華奢な両腕を回して、ギュッと身を寄せ、鎖骨辺りに額を擦りつける『乱藤四郎』の図。
少女(のような男の娘)の肩と膝裏に掌を添え、抱き上げる国広に迷いは無い。
「みっ、乱っ?! お兄ちゃんと一緒に寝てはくれないのですかなっ?!
みーだーれ―――っ!!」
「あぁ、また1人、『構ってちゃん』が爆誕したぜ、安定・・・。」
「うん、爆誕したね、清光・・・。」
喉の奥で小さく悲鳴を上げ、よよよっと2人の後を付いて行く一期一振の背中を、清光と安定は生暖かい目で見守っていた。
堀川国広の背中がダブって見える。
彼が遠征から戻る日が楽しみだ。この2人はきっと良い仲間になれるだろう。
―FIN―
【『レア』の対価】 山姥切国広+乱藤四郎+一期一振 他