とんかつ

学生時代、最後に
アルバイトをしたのは
園芸店でした。

なかなかの重労働では
ありましたが

好きな花々や果樹の苗に囲まれ
振り返れば
充実した気分で働かさせて
頂いていた貴重な時間であったと思います

大きな専門的でしたので
それなりに
珍しい種類の植物も
取り扱っていて
勉強にもなりました。

温室などもありましたね。

元より凝るタイプの性格だったのか
お客様の相談にも
お答え出来る知識を得ていく事が
嬉しく
当時はアレやコレやと
随分植物について調べたものです。

卒業も間近に迫ったときには

━━このまま、ウチに来ない?

そんなお誘いを
光栄にも受け
とても誇らしく嬉しかったのを
覚えています。

この園芸店はグループ企業の一部で
それなりに大きなチェーンでもあり

今はどうだか分かりませんが
当時は創業からの伝統として

【 年に三回のボーナス 】

これがあり
本気で悩んだものです。

メンセツ(о´∀`о)ナイシ

まあ、紆余曲折を経て
結局そちらでお世話に成る事は
ありませんでしたが

今でも
あのまま就職していたら
どんな人生を歩んでいたのだろう・・

そんな事を考える時があります。

酒屋サンに
お好み焼き屋サン

この2つと並んで
最も長く続けさせて頂いた
アルバイトでした。

さて、そんな
園芸店でのアルバイトも
最終週に迫ったある日


━━━最終日の夜は空けておいてよ♪
送別会するから!

そう伝えられた時は
ちょっと驚きましたね

私などは
所詮アルバイトですし
皆様は正社員です。

勿論、私1人ではなく
アルバイト仲間も何人か居て
その中の何人かは同じく卒業を理由に
辞める事になっており
その仲間達の送別会も含めての事では
ありましたが。


あの時は
まだまだ子供で
その【有り難さ】に
充分に気がつけて
いなかったのですよね。


私は割と色々なアルバイトを
した方だと思いますが
わざわざ
【送別会】
を行って頂いたのは
その時だけだと
記憶しています。


━━━【ステーキ】と【トンカツ】
どちらが良い?


そう質問され
まごまごしているうちに


トンカツに決まりました。


実は私的には
【ステーキ】の方に魅力を感じて
いたのですが
アルバイト仲間の男子が
咄嗟に『トンカツ!』と発言し

青筋立てて反対するのも・・・ナ・・。

ステーキモ(´д`|||)ステキダト…

まあ、そんな感じで。

貧乏学生でしたし
どちらにもあまり縁はありませんでしたが

それでも
トンカツはまだ
スーパーに行けば
手の届く値段で買えるじゃないですか?

定食屋さんでも
少し頑張れば頼めますし・・

それに比べ
ステーキハウスの【ステーキ】ですよ!?

ソンナン( ;∀;)クータトキ…ナイ

まあ、
どちらにしても
タダです、

選り好みはいえません。

そして最終日、無事に仕事を終え

それぞれ仲の良い
社員さんの車に同乗させてもらい
【トンカツ店】
へ到着しました。

まあ、小さなお店では
あったのですが

━━━━予約していた者ですが。

その言葉に多少なりとも驚きました。
この【トンカツ店】って予約しないと
入れないレベルなの! と。

大人数ならともかく
せいぜいが七人ほどであったと
記憶していますし


それまでの人生で
飲食店に予約するような事は
まず無かったので。


いえ、予約するような飲食店に
行った事がない、


・・それが正しい言い回しですか。


綺麗な品の良い玄関

それを入ってすぐに
水槽がありまして


山育ちの田舎者で【生け簀】なんてものを
あまり知りませんでしたから
本当にペットとして
飼っているのだろう・・

イセエビΣ( ̄ロ ̄lll)オンデ

そんなトンチンカンな事を
考えていました。


そして奥のお座敷に通され

・・うん、
キラキラして見えましたね~

けして大きな部屋ではありませんでしたが

清潔極まる室内
趣味の良い調度品

なにより明るさが
本当に良かった!

あれは【幸せの明るさ】です。

今でもあの調光ほど具合の良い
お店は滅多に見掛けません


座敷へ上がると私の小汚い靴を
スッと並べ直す
和服の女将さん

ブチョウホウ(´д`|||)デ…スミマセン

感じの良い女将さんで
本当に接客というものを
よくご存知の
【プロは斯くあるべし】

そんなかたでしたね。

さて、メニューについては
一応意見は訊かれるものの

とにかく
すべてが
【それなりのお値段】の為

おいそれと
好みのものを頼むには
抵抗があります。

学生向け食堂のトンカツ定食とは
明らかに値段が違いすぎて。

これは…道理で
【ステーキ】との選択を迫られるはずです、

そういった金額でした。

迷う学生陣に
それでは、と社員の皆様が

お店一番のオススメ

店の名前が冠された
【〇〇定食】を
人数分、

それに1品料理を幾つか

それに【生ビール】を

注文してくれました。


まず
お通しと1品料理

それにビールで祝杯


そして待つこと数十分

続々と運ばれてくる
【名物〇〇定食】

これが
驚きました!

大きな大きな

本当に大きな青い模様の平皿に

〇巨大エビフライ
〇ヒレかつ 丸一本
〇キャベツ
〇レモン

言葉にすると
大したことない様に思われて
しまうかもしれませんが
いずれも学生の目には
高級そのものと映りました

何気なく敷かれている【杉の青葉】も
下手をしたら
食べてしまいそう・・

味がまた素晴らしい!

プリンとしたエビは
さっくり衣で
カットされた部分部分のひとつひとつが
ほお張る大きさ

コレガ(*´ω`*) ウレシイ!

自家製タルタルソースには
粗く刻まれた茹で卵がこれでもか!

とばかりに
配合されて濃厚そのもの

それが異常なまでに
エビフライに合うのですよ


ヒレかつも
【ヒレかつらしい上品さ】

これを併せ持ちながらも

【ヒレかつにあるまじき】
戦慄のボリューム

柔らかく
それでいて肉を噛み締める
独特の歯応え


それまで
格別、トンカツというものに
あまり魅力を感じた事のない
私でしたが、

ムシロ (´Д`) マズ…タノマナイ

これは衝撃的に美味しかった!

高価なのは高価なのですが

明らかに
それ以上の価値がある!

これぞ、【 ハレ の ご馳走 】!!


そう痛感しました。

夢心地で送別会は終わり
感謝の意を拙いながらも
皆で精一杯お伝えし

その時は感動の余韻に浸りながら
帰途につきました。


その後も数年に渡り

何か
臨時収入があったり
特別な日には

こちらのお店を
利用させて頂いていたものです。

いつ訪れても
安定した美味しさ

感動が薄まる事のない
希有なお店でしたね。

どんなに

トンカツは苦手・・

そういう知人を連れていっても
目を丸くして
驚いていた所をみると

私の【贔屓の引き倒し】ではなく
本当の名店だったのでしょう

調理人でもある店主さんの引退と共に
お店は永遠に暖簾を下ろして
しまいましたが

あのお店の名物【〇〇定食】を超える
トンカツ定食に
出会った事は未だありません。

あの雰囲気のなか

あの味を

もう一度

食べてみたいものです…。

とんかつ

とんかつ

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-07-29

Copyrighted
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