える「折木さんを見てると何故か頬が熱くなります。」

2ちゃんねるのニュース速報VIP板に投下したSSです。
えるの家を訪れた奉太郎は、彼女の様子がおかしいことに気付く。
なぜ、彼女は赤面しているのか? 奉太郎の推理が始まる。

SSまとめブログ『SS森きのこ!』『SSぷちまとめ』さん等に取り上げていただきました。
http://morikinoko.com/archives/51793588.html
http://ss-putimatome.doorblog.jp/archives/8333638.html

元スレはコチラ (9レス目から)
http://logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/news4vip/1338995448/

前編

9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 00:57:21.08 :g8Ilaadm0

≪千反田家・庭≫

奉太郎「………、相変わらず、凄い家だな」

奉太郎「………自転車が停まってない。ということは、里志はまだか」

奉太郎「まあ、いい。先に上がらせてもらうとするか」


≪同・玄関≫

  ガラッ ――――

奉太郎「………千反田、いるか?」

  シーン ――――

奉太郎「おーい、千反田、いないのか?」

  シーン ――――

奉太郎「俺だ、折木だ。いるなら返事してくれー」

奉太郎「…………。反応がないな。留守か?」

奉太郎(いや、古典部全員で、ここに集まる約束をしたんだ。そんなはずは……)

  パタパタ ――――

える「………す、すいません、折木さん。遅くなりました…」///
 
 
 
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 01:08:01.60 :g8Ilaadm0

奉太郎「……なんだ、いるじゃないか」

える「……………はい」///

奉太郎「何してたんだ? 何度も呼んだのに」

奉太郎(何度も大声を出したから、使わんでもいい労力を消費してしまったじゃないか)

える「…………すいません、ちょっとボーっとしてて、折木さんの声が聞こえませんでした」///

奉太郎「ん、この家にお前一人か? 伊原もまだ来ていないのか?」

える「………はい、折木さんが一番です」///

奉太郎「……そうか」

える「そのうち来ると思いますので、上がって待っていてください」///

奉太郎「そうしよう。玄関に立ちっぱなしでは疲れるからな」

える「………はい」///


≪千反田家・居間≫

奉太郎「………………」

える「………………」///

奉太郎(千反田と二人きりか……)



15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 01:15:21.85 :g8Ilaadm0

える「………………」///

奉太郎(……部室で千反田と二人きりになることは少なくないが、プライベートでは珍しいな)

える「………………」///

奉太郎「……遅いな、伊原と里志」

える「………そうですね」///

奉太郎「どうしたんだろうな」

える「……そのうち、来ると思います」///

奉太郎「……そうだな」

える「………………」///

奉太郎「………………」

える「………………」///

奉太郎「…………………」

奉太郎(…………、間が持たん)

える「あ、あの、折木さん………」///

奉太郎「………ん?」



18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 01:23:18.84 :g8Ilaadm0

える「私、どうしちゃったんでしょうか………」///

奉太郎「なにがだ?」

える「私、折木さんを見てると……」///

奉太郎「俺を見てると…」

える「折木さんを見てると……」///

奉太郎「な、なんだ……?」

える「……頬が熱くなって、頭がポーっとしてしまいます」///

奉太郎「……は、はあ?」

える「な、なぜでしょうか?」///

奉太郎「……なぜと聞かれても…」

える「今まで、こんなことなかったのに……」///

  グイッ ――――

奉太郎「ち、千反田、顔が近い……」

える「私、どうしちゃったんでしょう……」///

奉太郎「……し、知らん、そんなこと!!」



19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 01:34:24.41 :g8Ilaadm0

える「……折木さん、私、変なんです。どうしちゃったんでしょう?」///

奉太郎「………お、落ちつけ千反田!! 確かに、今のお前は何かおかしい!」

える「………折木さん、私…」///

奉太郎「そ、そんなとろんとして眼差しを俺に向けるな……」アタフタ

奉太郎(……い、いかん、俺も何だか、変な気持ちになってきたぞ)アタフタ

奉太郎(………平常心、平常心だ……)アタフタ


  ガラッ ――――

「ちーちゃん、こんにちはー」

奉太郎「………この声は…」

える「………伊原さんですね」///

える「………。…私、出迎えに行ってきます。少し待ってて下さいね」///

奉太郎「………ああ」

える「…………」///

  パタパタ ――――

奉太郎「…………助かった」



22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 01:43:20.21 :g8Ilaadm0

≪千反田家・居間≫

える「………それじゃあ、私、お茶を淹れてきますね…」///

奉太郎「ああ、すまんな、千反田」

摩耶花「……………」///

  パタパタ ――――

奉太郎「……………ふぅ」

奉太郎(伊原が来てくれて助かった……)

摩耶花「…………」///

奉太郎(しかし、千反田がお茶を淹れてくるまでの間とはいえ、伊原と二人きりか…)

奉太郎(これはこれで、また間が持たんな…)

摩耶花「…………」///

奉太郎「…………」

摩耶花「…………なんだか、今日は暑いわね」///

奉太郎「……? そうか? 俺はどちらかといえば、少し肌寒いんだが」

摩耶花「………なんだろう、身体が火照る…」///



23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 01:54:17.58 :g8Ilaadm0

奉太郎「…………伊原?」

摩耶花「………ねえ、折木…、私、アンタのこと嫌いだったんだけど、だけど…」///

奉太郎「…だけど?」

摩耶花「………なんだろう、なんだか今日のアンタを見てると…、頬が熱くなって、頭がポーっとして…」///

奉太郎「…………」

摩耶花「……私、どうしちゃったんだろう?」///

奉太郎「………い、伊原、お前もか!!」


  ガラッ ――――

「おーい、千反田さぁーん!!」

摩耶花「…………」///

奉太郎「……この声、里志か (ナイスタイミングだ、里志!!)」

「おーい、留守なのかなー??」

奉太郎「……千反田の奴、また聞こえてないのか?」

奉太郎「仕方ない。俺が出迎えに行こう。伊原は、ここで少し待っててくれ」

摩耶花「………………うん」///



24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 02:03:25.65 :g8Ilaadm0

≪千反田家・玄関≫

奉太郎(………しかし、どうしちまったっていうんだ、千反田と伊原の2人は…)

奉太郎(……今日のあいつらは、なんだか様子がおかしい…)

  パタパタ ――――

奉太郎「里志、遅かったな……」

里志「……奉太郎、先に来てたんだね。伊原さんは?」///

奉太郎「もう来ている。……そのことなんだがな、どうも変なんだ」

里志「…………変?」///

奉太郎「ああ、千反田も伊原も、頬を赤くして、ポーっとして俺のことを見つめて……」

奉太郎「今日の2人は、どうしちまったっていうんだ?」

里志「………そうなんだ。でもね、奉太郎…」///

奉太郎「ん?」

里志「僕も、奉太郎を見ていると、なんだか頬が熱くなって、頭がポーっとしてきて…」///

里志「……自分でもわからないけれど、なんだか変なんだ」///

里志「……ねえ、奉太郎、今日の僕、どうしちゃったんだろう…………」///



26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 02:12:26.65 :g8Ilaadm0

≪千反田家・居間≫

奉太郎「…………ほら、3人とも、濡れタオル持ってきてやったぞ」

摩耶花「サンキュー、折木……」///

里志「助かるよ、奉太郎……」///

える「すいません、折木さん、ご迷惑をおかけしてしまって……」///

奉太郎「いいから、3人とも横になってろ」

摩耶花「………それにしても、身体が熱い…。ちーちゃん、扇風機ってないの?」///

える「……すいません。扇風機は、もう片付けてしまいまして…」///

里志「………じゃあ、奉太郎に団扇で扇いでもらえばいいんだよ。いいアイデアでしょ?」///

奉太郎「俺はしないぞ、そんなこと。疲れるじゃないか」

里志「……ちぇ、ケチ…」///

奉太郎「どういう状況であれ、省エネ主義に反することはしない。ポリシーだ」

摩耶花「……それにしても、3人が同じタイミングで体調を崩しちゃうなんてね……」///

里志「不思議だね、いったいどういうことなんだろう?」///

奉太郎「季節の変わり目だからな。風邪でも引いたんだろう」



27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 02:23:05.18 :g8Ilaadm0

える「……でも、折木さんは体調を崩していないじゃないですか」///

奉太郎「俺か? ……省エネ主義者だからな。無駄に発熱したりはしないんだ」

える「それは変ですよ。思想信条と体調は、何の関係もないと思います」///

奉太郎「……………」

える「どうして、私たち3人は体調を崩してしまったのか、私、気になります!」///

奉太郎「………またか。変なこと気にしなくていいから、大人しく寝てろ」

える「………で、でも…」///

里志「まあまあ、そう言わずにさ、奉太郎。千反田さんに知恵を貸してやりなよ」///

奉太郎「………しかし…」

える「お願いします、折木さん!」///

奉太郎「………だが…」

摩耶花「ただでさえ頭が熱いのに、さらにちーちゃんに頭を使わせたら知恵熱でちゃうわよ?」///

摩耶花「そうなったら、看病するのはアンタだからね」///

里志「そうなったら、余計な労力がかかっちゃうね。それは、奉太郎の省エネに反すると思うけど?」///

奉太郎「………………」



28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 02:32:48.62 :g8Ilaadm0

奉太郎「…………やれやれ。わかったよ」

える「……知恵を貸していただけるんですね、折木さん!!」///

奉太郎「お前の看病で家に帰れないなんてごめんだからな」

奉太郎(……加えて、年頃の女子と一夜を過ごせだなんて、どうしたらいいかわからんしな)

里志「さっすが、奉太郎!」///

摩耶花「……それで、どうするの?」///

奉太郎「んー、そうだな……。まず、疑わしいのは風邪だが……」

える「私、外から帰ったら、手洗いとうがいは欠かさずにやってます」///

里志「僕も。古典部のみんなと会えない日が一日でもあると思うと寂しいからね」///

摩耶花「私、健康優良児だから、滅多に風邪なんて引かないわよ」///

奉太郎「ふむ…。俺も、市内で風邪が流行っているとは聞いたことがない」

奉太郎「ならば、別の要因があるということになるが……」

える「別の要因……、いったい、なんなんでしょう?」///

奉太郎「それを今、考えてるんじゃないか」

奉太郎「……そうだな。じゃあ、それぞれ3人が、ここに来るまでに何をしていたのかを話してもらおうか」

後編

30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 02:45:58.30 :g8Ilaadm0

奉太郎「じゃあ、まずは千反田から」

える「私からですか? えーっと、そうですね……」///

える「朝、起きてから顔を洗って…、朝ご飯を食べて、歯を磨きました」///

える「その後、日帰りの旅行に出かける両親を玄関で見送りました」///

奉太郎「ふむ、続けてくれ」

える「それからは、宿題が出ていましたので、自室に戻ってそれをやって……」///

える「そうだ、宿題をやっている最中に、宅配便が来ました」///

奉太郎「宅配便?」

える「はい。玄関から呼ぶ声がしたので、宿題は一時中断。受け取りに行きました」///

里志「ちなみに、その宅急便は何だったんだい?」///

える「父の仕事で付き合いがある人からの贈り物でした」///

奉太郎「それで、荷物を受け取った後は?」

える「はい、なまもの注意とあったので、受け取った後は冷蔵庫に入れて、自室に戻りました」///

える「宿題が終わった後は、皆さまがいらっしゃる予定だったので、この居間に掃除機をかけて…」///

える「それが終わった後は、お茶を淹れて、一息をつきました」///



31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 02:55:30.56 :g8Ilaadm0

奉太郎「……お茶を?」

える「はい。実は、新製品の紅茶の葉を母が前日に買ってきたんです」///

摩耶花「紅茶の葉?」///

える「ええ。試しに飲んで美味しかったら、皆さんにもお出ししようと思いまして」///

里志「それで、味の方はどうだったんだい?」///

える「香りが上品で、とっても美味しかったですよ」///

里志「はは、それは残念。こんな状態じゃなきゃ、いただいたんだけどね」///

える「……あとは、折木さんが来るまで、取り立ててなにもありませんでした」///

奉太郎「…………そうか。んー」

摩耶花「どうかしたの?」///

奉太郎「なにか、今の千反田の説明で変なところがあった気がしたんだが……」

摩耶花「……変なところ?」

里志「…どこが変だったんだい、奉太郎?」

奉太郎「………わからん。でも、何かが引っ掛かる…」

奉太郎「…………んん?」



33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 03:08:18.69 :g8Ilaadm0

奉太郎「………まあいい、保留にしよう。じゃあ、次、伊原」

摩耶花「私?」///

奉太郎「ああ、ここに来るまで、何をしていたのか教えてくれ」

摩耶花「買い物よ。自転車でデパートに行ってたの」///

える「デパート…ですか?」///

摩耶花「部活で必要なものがあってね、それを買いに行ってたの」///

里志「古典部のかい?」///

摩耶花「そっちじゃなくて、漫画研究会のほうよ」///

奉太郎「ああ、そういえば、伊原は漫研と掛け持ちしてたんだったな」

摩耶花「……週明けの月曜日、他校の漫画研究会との交流会があってね」///

摩耶花「それで、必要になるものを買いに行ってたの」///

奉太郎「ふーん、漫研の活動で、必要なものをデパートにね……」

奉太郎「で、その後は?」

摩耶花「買ったものを家に置きに帰って、その後は、ちーちゃんの家に直行」///

奉太郎「…………うーん、特に、気になるところは…ないな」



34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 03:23:17.05 :g8Ilaadm0

奉太郎「じゃあ、ラストは里志、お前だ」

奉太郎「そういえば、お前、ずいぶん遅かったじゃないか、この家に来るの」

里志「ああ、悪い悪い、つい時間が経つのも忘れて入れ込んじゃってたんだ」///

える「入れ込んでいた?」///

里志「うん。僕は摩耶花と違って、ずっと家にいたよ。机に向かって、部活の課題をやってたんだ」///

摩耶花「確か、福ちゃんが掛け持ちしてるのは、古典部の他に総務部と手芸部……」///

奉太郎「総務部に課題なんてないだろうから……」

里志「うん、僕がしてたのは手芸部のほう。新作ファッションの構想を練ってたんだ」///

える「新作のファッションですか?」///

奉太郎「ああ、あのいつもの、トンチンカンな格好の……」

里志「失礼だなー。時代の最先端を独走している、と言ってほしいね」///

奉太郎「……しかし、そんな課題、適当に済ましちゃえばいいじゃないか。たかが、部活動の課題だろ」

里志「まったく、わかってないなー、奉太郎は。バラ色の学生生活ってのは、何事も全力で臨まなければ手に入らないんだよ」///

里志「それに、僕は、僕自身を表現するためのファッションに命をかけている」///

里志「素晴らしいアイデアを出すための努力なら、僕はどんなことでもするし、労力を捧ぐことも惜しまない」///



36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 03:38:24.59 :g8Ilaadm0

奉太郎「で、労力を惜しまなかった結果、ここへ来るのが遅れたわけか」

里志「いやー、ふと時計を見てビックリしたよ。まさか、あんなに時間が経ってるとはね」///

摩耶花「それで、どうしたのよ、福ちゃん?」///

里志「急いで準備をして、ここに直行したよ。古典部の活動も、疎かにするわけにはいかないからね」///

奉太郎「………ふむ」

える「それで、どうですか、折木さん?」///

奉太郎「3人が、どうして揃って体調を崩したのかか?」

摩耶花「そう、何か推測立った?」///

奉太郎「うーん、推測と言ってもなあ……」

奉太郎「千反田は、宿題をして、掃除をして、紅茶を飲んで一息入れ…」

奉太郎「伊原は漫画研究会の活動で必要になるものをデパートに買いに行き…」

奉太郎「そして、里志は自宅で、手芸部の新作ファッションを必死に考えていた、と」

奉太郎「………3人の行動は、てんでバラバラだ」

奉太郎「なにか、3人ともが共通して体調を崩すような行為をしてたんじゃないかと思ったんだが……」

奉太郎「………………むむ」



37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 03:48:25.99 :g8Ilaadm0

える「………あの、折木さん…」///

奉太郎「……ん、どうした、千反田? なにか、わかったのか?」

える「………いえ、そうではなくて、額のタオルが温くなってしまったので、もう一度冷やしてきてもらえませんか?」///

奉太郎「……あ、ああ」

里志「じゃあ、僕のも頼むよ、奉太郎」///

摩耶花「私のもお願い」///

奉太郎「…………」


≪千反田家・台所≫

  ジャー ――――

奉太郎「タオルを水で濡らして……」

  ギュッ ――――

奉太郎「充分に水を絞る……っと」

「おーい、奉太郎、まだかーい?」

「遅いわよ! まったく、トロいんだから!!」

奉太郎「今、水気を絞ってるところだ。すぐ持っていくから、少し待ってろ」



40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 04:01:56.76 :g8Ilaadm0

奉太郎「たかが水に濡らして絞るだけとはいえ、三枚あると、そこそこな労働だな」

奉太郎「……………ん?」

奉太郎「………………」

奉太郎「………そうか、さっきの違和感はこれか…」

奉太郎「だとすると、時期は絞り込める。でも、それだけだ、2つクリアしなければ答えは導き出せない」

奉太郎「そう、2つ。直接の原因と、まったく違うことをしていたはずの他2人にも、同様の症状が出た理由の2つ」

奉太郎「…………ん、床に何か落ちてる。……これは、包み紙か?」

奉太郎「…………ということは」

  ガチャッ ――――

奉太郎「こういうことは行儀が悪いんだろうが、許してくれ、千反田」

  ゴソッ、ガサガサ ――――

奉太郎「あった、これだな。………どれ」

  パキッ!! ――――

奉太郎「うっ……、これは…、匂いがキツイな………」

奉太郎「……1つクリアだ。原因はコレだな」



41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 04:11:45.35 :g8Ilaadm0

奉太郎「でも、他の2人はまったく違うことをしていた。なんで、似たような症状が出たんだ?」

奉太郎「………………」

奉太郎「そうか、俺は情報の受け取り間違いをしていたし、情報を引き出し損なっていたんだ」

「折木さーん、なにかあったんですかー?」

「どうしたのさ、奉太郎?」

「どこまで、タオルを絞りに行ってるのよー」


≪千反田家・居間≫

  トテトテ ――――

折木「悪いな、遅くなった」

摩耶花「随分、遅かったじゃない」///

える「もしかして、迷っちゃいました?」///

折木「いや、わかったんだよ。3人が体調を崩した理由がな」

里志「本当かい、奉太郎?」

折木「ああ、俺は、3人が各々違った行動をしていたと考えていた」

折木「でも真相は、お前たち3人は、ここに来るまでに同じ行動をしていたんだよ」



42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 04:26:18.01 :g8Ilaadm0

里志「3人が同じ行動をしていた…?」///

える「えっと、私は、宿題をして、掃除をして、紅茶を飲んで……」///

摩耶花「私は、漫画研究会の活動で必要なものがあるから買いに行って……」///

里志「僕はずっと、新作ファッションの構想を練っていた」///

摩耶花「ちょっと、3人行動、バラバラじゃない」///

里志「どういうことか、説明してくれないかい、奉太郎?」///

奉太郎「そうだな。じゃあ、まずは違和感について話そうか」

摩耶花「そういえば、アンタ、違和感がどうとか言ってたわね…」///

奉太郎「そう、千反田の話を聞いたときにな。……なあ、千反田」

える「はい、なんでしょうか?」///

奉太郎「お前、俺が訪ねてきたときに、しばらく玄関口に来なかったよな。どうしてだ?」

える「それは…、なんだか頭がポーっとしてて、折木さんが来ていることに気付かなかったからです」

奉太郎「でも、宿題をしている最中に宅配便が来たことには気付いた」

える「はい」

奉太郎「つまり、宅配便が来た時点では千反田の体調は悪くなかったということになる」



44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 04:38:48.93 :g8Ilaadm0

える「そうです。その時点では、頭もハッキリしてました!」///

奉太郎「俺がこのことに気付いたのは、台所にタオルを濡らしに行って、里志たちに声を掛けられたときだ」

摩耶花「つまり、ちーちゃんが宅配便を受け取ってから、折木が訪ねてくるまでの間に…」///

里志「体調を崩すようなことがあったんだね?」///

奉太郎「そうだ」

摩耶花「その後にしていたことというと、掃除と紅茶か…」///

里志「でも、奉太郎、千反田さんの具合が悪くなった原因がわかっても、それが僕と摩耶花にも関係があるのかい?」///

奉太郎「言っただろう、お前たち3人は、まったく同じ行動をしていた」

奉太郎「だから、千反田が体調を崩した原因と、里志と伊原が体調を崩した原因は一緒なんだ」

奉太郎「まずは、伊原からいこうか。なあ、伊原、お前は漫研の交流会で必要なものを買いにいったんだよな」

摩耶花「うん、そうだけど……」///

奉太郎「俺は、漫画研究会の活動に必要なものだから、てっきり漫画用紙とかインクとか、執筆道具を買いに行ったと思っていた」

奉太郎「だが、これは勘違い、情報の受け取り間違いだったんだ」

奉太郎「日常的に部活動で使用する道具なら、わざわざ交流会のために買いにはいかない」

奉太郎「つまり、伊原が買いに行ったのは、交流会のためにわざわざ購入しなければならないものということになる」



45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 04:51:58.19 :g8Ilaadm0

折木「部活動の、それも文化系の集まりで買いに行く物といったら、だいたい予想はつく」

折木「ずばり、飲み物と食べ物だ。……そうだな、伊原」

摩耶花「うん、飲み物は他の子が買いに行くことになってたから、私は食べ物――お菓子を買いに行ったの」///

摩耶花「何にしようかなってお菓子売り場をウロウロしてたら、新商品の試食をしていて……」///

摩耶花「二口食べたら……」///

里志「試食なのに二口も食べたのかい?」///

摩耶花「い、いいじゃない! 美味しかったんだから!!」///

える「それで、それを買ったんですね?」///

摩耶花「うん、それを買って、家の冷蔵庫に入れて、その後にここへ来たってわけ」///

奉太郎「なるほど。……じゃあ、次に里志だ」

奉太郎「里志、お前、新しいファッションを生み出すためなら、どんな労力も惜しまないって言ったな」

里志「うん」///

奉太郎「具体的に、何をしたんだ?」

里志「分厚い古今東西ファッション図鑑に目を通して、ネタが落ちてないかネットを検索して、他には…」///

奉太郎「頭の回転をよくするために、糖分を摂取した……だろ?」



46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 05:01:53.84 :g8Ilaadm0

里志「そうそう、甘いお菓子を食べたんだ。よく気付いたね、奉太郎」///

奉太郎「つまり、俺は情報の引き出し損ないをしていたわけだ」

奉太郎「…最後に千反田。お前、もしかして、紅茶を飲んだ時に、一緒にお菓子も食べたんじゃないか?」

える「……はい、紅茶だけでは寂しかったので、一つだけ…」///

奉太郎「宅配便の中身だな」

える「はい」///

奉太郎「台所の床に、お菓子の包み紙が落ちていた。それで、ふと思ってな……」

奉太郎「失礼だとは思ったんだが、冷蔵庫の中にある宅配便の中身を調べさせてもらった」

奉太郎「……えーっと、ポケットの中に…」

  ガサゴソ ――――

奉太郎「あった、これだ。……お前たち3人が食べたのは、このお菓子だな?」

える「はい、それです」///

里志「僕もだよ。糖分摂取に、それを食べたんだ」///

摩耶花「私もよ。それを食べたの」///

奉太郎「お前たちが食べたのは、洋酒入りのチョコレート“ウイスキーボンボン”……。つまり、体調を崩した原因は……」



47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 05:14:45.62 :g8Ilaadm0

≪数時間後、千反田家・玄関≫

える「でも、よかったです。少し眠ったら、3人とも体調が回復して……」

摩耶花「だけど、古典部の活動、何にも出来ないまま一日が終わっちゃったわね……」

奉太郎「心配はいらん。多分、健康だったとしても大した活動はしないだろうからな」

摩耶花「……ちょっと、一言多いわよ、折木!!」

える「ふふふ。……では皆さん、また週明けに学校でお会いしましょう」


≪帰り道≫

里志「しかし、まさか原因が“酔っぱらっていた”だとはねえ……」

里志「でも、不思議だな。ああいうお菓子って、食べて酔っぱらったりするものなのかい?」

奉太郎「まあ、普通はしないだろうな。ただ、試しに一つ頂戴して、割って中身を嗅いでみると……」

奉太郎「お菓子だとは思えないくらい、随分とアルコールの匂いがきつかった」

奉太郎「新商品らしいから、たぶんアルコール度数を間違えた初期ロットの不良品が出回ってるんだろう」

奉太郎「そのうち、ニュースになるだろうし、そのときに真相はわかるさ」

里志「ふーん。………ところで、奉太郎さ」

里志「もし、今回みたいな事故じゃなくて、本当に千反田さんが、奉太郎を見て頬を赤くしてたらどうしてたんだい?」



48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 05:35:05.33 :g8Ilaadm0

奉太郎「………なんだ、そりゃ? ありえない仮定だな」

里志「奉太郎も、灰色じゃなくてバラ色の学園生活に乗ることに決めたんだろ」

里志「青春は何が起こるか分からない。ありえない仮定じゃないと思うけどね」

奉太郎「千反田が、か?」

里志「僕はお似合いだと思うよ。千反田さんと奉太郎のカップル」

奉太郎「そうか? 当人としては、そうは思えんがな。千反田のほうも、俺に気なんか寄せないだろ」

里志「そんなふうに思っているのは、当人たちだけだと思うよ」

奉太郎「……。……しかし、そうだな、もしそういう事態になったときには……」

里志「なったときには?」

奉太郎「告白するのは、俺の方からだろうな」

里志「ほう?」



50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/07(木) 05:37:05.79 :g8Ilaadm0

里志「これはまた、奉太郎らしからぬアクティブさ」

奉太郎「お互いの気持ちを確認できずにヤキモキし続けるなんて時間の浪費。すっぱり言った方が省エネになる」

奉太郎「俺は俺の生活信条に従うだけだ。恋愛でも、何事にもな」

里志「ふーん」

奉太郎「しかし、そうせずに今現在、俺が何もアクションを起こさないということは……」

奉太郎「俺は千反田に気はないし、千反田も俺に気を寄せていないだろうということだ」

奉太郎「以上、論考終了」

里志「ふーん」 ニヤニヤ

奉太郎「なんだよ、ニヤニヤして」

里志「まあ、奉太郎がそう考えるなら、そういうことにしておくよ。今のところの2人の関係はね」 ニヤニヤ

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おしまい

える「折木さんを見てると何故か頬が熱くなります。」

える「折木さんを見てると何故か頬が熱くなります。」

2ちゃんねるのニュース速報VIP板に投下したSSです。 えるの家を訪れた奉太郎は、彼女の様子がおかしいことに気付く。 なぜ、彼女は赤面しているのか? 奉太郎の推理が始まる。

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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-06-13

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  1. 前編
  2. 後編