冬に愛された僕

　ここに来てからどれくらい経っただろう
　ここに来てから何度雪を見ただろう
　雪が降れば飽きるまでそれを見て、雪が止んだら灯りのない小屋に戻る、そんな日々。
　何日も雪が降らない時もあった。そんな日は小屋の中を歩いてみたり、小屋の側にぽつんとある木を見上げたりして過ごした。
　寒くもないのにマフラーをしてコートを着て帽子を被って、ただひとり何度も何度も冬を巡った。僕の誕生日はいつしか来なくなった。
　冷たくも暖かくもない雪で白くなった道にただ足跡を作った事もあった。木に登って硬い葉に降りかかっている雪を払ってやった事もあった。唯一持っている本はもう何百回も読んだ。降り積もった雪に絵を描きもした。けれど、どんなに頑張って描いても持って数日、早ければ次の日。僕の絵は何度も誰かに消された。
　ある日、ふと浮かんだ疑問。どうしてここにいるのかと不思議に思い始めた僕は出口を探した。駅は車は人は、いつも僕の絵を消す誰かはどこだってあちこち歩いて回った。けれどすぐに小屋に戻ってきてしまう。よく考えるとここは、朝か夜かもわからない。風もない、音もない。
　ここはいつもと何一つ変わらない。誰も僕を迎えに来ない。もう僕は冬しか、ここでしか生きられないのかもしれない。
　今日も雪がしんしんと降っている。ここはまるで、スノードームみたいだ。