stand by men

久しぶりに
お蕎麦が食べたい

あの店の。

ちょっと遠いのですが
それだけの価値のあるお店

世間的にはどうだか知りませんが
私にとっては
名店なので。

別にこのお蕎麦屋さんに限らず
私がよく利用させて頂く
外食店には幾つかの共通項があります。

○いつ行っても空いている
○綺麗で清潔
○味・量・値段ともにちょうど良い
○店員・客の良い距離感があり馴れ合わない

などですかね。


逆に苦手とするお店は

○『っらっしやっっいあすエィッッ!!』
と、青筋を立てながら威嚇してくる

○【ウチはこだわってますんで!】感を
前面に押し出してくる

○隣の客と肘がぶつかるほど、
そして店員さんが
背中スレスレを疾走していくほどに狭く
混雑している

○単純に汚い

○店員さんが横柄、なれなれしい

○味と量と値段にどうにも納得がいかない


私の場合【美味かどうか】は
これらの次の次の次くらいになります。

要は

私が外食に最も求めているのは
【美味】より【満足感】なのだと
思います。

いくら【美味しいお店だから!】

と、誘っていただいても
(くつろ)げないのでは
私にとっては魅力を感じられません。

たとえば

自称【ラーメン王女】を名乗る

ドンナ…(´д`|||)…オーコク ダ…

やたら味に(こだわ)る知人が居るのですが、


『 行っておかないと人生に悔いを残す・・!』

そう【王女】に言わしめたほどの
【イチオシ】ラーメン屋さんへと

無理矢理、そのお供として連れ出され
行ってきたのですが

炎天下30分ほど並び
ようやく入ったのは
ぎゅうぎゅう詰めのカウンター

すぐ隣には
オオゥ( ;∀;)ショートレンジ

『 ブフォゥ…ブフォゥ… 』

と、荒い鼻息の太目の男性客が
食べる前から
滝の様な汗を流しています。

暑々(あつあつ)の店内で熱々(アツアツ)のラーメン

何人(なんぴと)たりとも(しゃべ)(こと)(まか)()らぬ・・

無言の圧力にも似た
店内独自の【暗黙のルール】の中

誰もが
修行僧の様に(けわ)しい顔で一心不乱に
ラーメンを(すす)り込んでいます。

ふと後ろを振り向くと
《一刻も早く食え》とばかりに
亡者の様な顔をした
行列客が並んでいるのです。

コッチ… (´д`|||) …ミンナ


《味》が、どうこうの前に
もう疲れてしまいました。


人によるでしょうが
そこまでして
私は繁盛店に(こだわ)り食べたくありません。


それなら我が家の台所にストックしてある

【 蒙古○ンメン中本 】カップ麺を

(※某コンビニ限定ではあるが
辛味系カップ麺では
自分史上では最も好みの衝撃的な美味。
その為 常に5、6個のストックがある)


オウチでテレビを観ながら
あはは、うふふ♪と
笑いながら
のんびりゆったり食べた方がマシなのです。

『どう!おいしーでショ♪』

食事を終え退店した
【王女】は至極、満足そうな
笑顔を浮かべていましたが・・・。


みんな、そうなのでしょうか?

だからあれ程の行列が出来るのでしょうか?


ここで冒頭にもどり

とある、お蕎麦屋さんの話を
聞いていただきたいのです・・・


私がそのお蕎麦屋さんに
入ったのは

学生時代にお世話になった
恩師のお見舞いに行った帰り道での事。

長期の入院により
すっかり痩せ細っていた恩師は


『この近くに美味しい所があるから
是非寄って行きなさい』

帰り際、そう私に仰有いました。

分かりづらいから、
と渡されたメモを頼りに
林道を歩く事しばし

━━━道を間違えたかなぁ━━

そう不安に思い出す頃


・・・こんな所に!

と、いうような森の中に
そのお店は突如現れました。

昔話に出てくる様な・・
小川沿いに
水車が回る小さなお店

暖簾もなく

【蕎麦処】

と、書かれた紙が
ただ1枚貼ってあるだけ

入り口にある
一輪挿しには
白い鉄仙が見えます。

『一輪挿しに花が在ればやっているよ』

恩師のお言葉を思いだし
少しホッとします。

店内に入ると

『いらっしゃい』

の静かな御挨拶

70は越したであろうお爺さんが
トコトコと出迎えてくれました。

お昼には少し早い時間なのか
他にお客様は居ないようです。


『どれにしますかな』

メニュー表には

○せいろ
○天ぷらせいろ
○かけ
○天ぷらそば(温)

の四種類のみ


どれも

値段が書いてありません。

「あの、お値段は・・」

の質問が終わらないうちに

『 ○○先生の教え子さんでしょう、
もう貰ってますから 』

と、お爺さん。

どうやら
恩師が電話をしてくれていた様です。

迷っていると

『若いから【天ぷらとせいろ】だね』

とのお言葉。

「厚かましいようで恐縮ですが
・・・ではそちらでお願い致します」

そう答えると
お爺さんは
ニヤリと笑い

『苦手なモノはありますか?』
そうご質問

「いえ、特別には…」

その言葉に頷くと
お爺さんは調理場へと
消えて行きました。

数分後チラリと顔を出すと

『ごめんね時間かかるよ、
悪いけどそれでも飲んでいて』

そう指差すガラスの冷蔵庫には
一升瓶が見えます。

だいぶん歩いてきた事もあり
喉はカラカラです、

よく冷えた一升瓶とコップを
では、お言葉に甘えて…と、
取り出すと
中身は琥珀色の

【蕎麦茶】

トプトプと注ぐと
恐る恐るいただいてみます。


━━━━━━━━ウマぁ━━━━━━━ッッ!

・・・・っ!

なにこれ
美味しい!

蕎麦茶なんて
緑茶の代用品、くらいに
考えていましたが

これはべつもの!

本当に美味しい!

汗をかいた分を差し引いても
オツリがきます!!

清水、そう山奥の湧水っぽいのです、
それに【香ばしいソバ風味】が
染み込んだ感じ。

【一升瓶】がまた
良い味を出しているのですよ。


そんな中
ガサガサ、という
物音に外を見てみると

お爺さんが
お店のすぐ側の菜園で
野菜を収穫しています・・・!

ソコカラ Σ( ̄ロ ̄lll) デスカァー!

恩師の面子もあります。
今さら出られません。

覚悟を決め
待つ事・・・一時間

もはや待たされている怒りは消え
不安になってきました。

その間も
私以外に来客はゼロ

まさか、
調理中に何か有ったのでは
ないだろうな・・?!

イキテル…(´д`|||)…ヨネ?

きき耳をたてると
調理場の方から気配がするので
大丈夫なようです。

そこから
さらに20分が過ぎた頃

『ごめんくださーい?』

私を除けば初の来客、
熟年のご夫婦です。

久しぶりに見るお爺さんが

『ごめんなさいね、今日はもう・・』

そう申し訳なさそうに
蕎麦茶を夫婦に
せめてこれだけでも、と注ぐと
頭を下げています。


おいおい?
私しか居ないじゃ無いですか?
ホンキカ( ´д`υ)ジーチャン

するとお客さんは
蕎麦茶を飲み干すと
『じゃ、また今度ね』

そういって
チラリと私を見ると
笑顔で
去って行きます。

私も歩いて来たから
わかります。

ここに辿り着くには
大通りから結構な距離があるのです。
車の音もしませんでしたし
きっと歩いて来たのでしょう。

・・・・・

そういえば!

ふと気になり
表に出ると
一輪挿しから鉄仙が消えています。


…つづく。

すいません
緊急連絡がありちょっと出てきます

また急用が出来てしまいました。
m(__)m
明日
また書きます。

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  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-06-30

Copyrighted
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