IN THE BED SECOUND STORY

IN THE BED SECOUND STORY

初仕事を終えた余韻で
僕はしばらくぼーっとベッドですやすや眠る少年を見つめていた。
今はどんな夢を見てるのだろう。
起きた時にどんな顔で母や父にどんな話をするんだろう。
そんな事を考えていると、羊が僕の服を引っ張ってさあいくぞと急かした。

しぶしぶ僕は子供部屋を後にした。

外の風が程よく涼しい。
まだまだ真っ暗闇の中で、僕は羊の背中を眺めていた。
これからまた違う人の夢の中に行く、今度はどんな夢が待っているのだろう。

羊は振り返り、僕の顔を見た。
「君は順応性が高いね、それはいい事だ」
多分褒めてくれたんだと思って、僕は少し嬉しそうな顔をした。
羊はそれを確かめたかったのか、確認すると、鼻を鳴らした。

強い風が吹く。
最初と同じぶわっと体を持ち上げていく。

僕と羊は夜空の下、街ををまたぐように飛んだ。
数十秒、多分それくらいのうちに次のいえと思われる家の前に着いた。
壁はひび割れて、草が絡まっている古い古い家だ。
言い方は悪いけどホラー映画に出てくるような、お化け屋敷みたいなお屋敷。

「ここ?なの?」
僕は少々心配げに聞いた。
羊はそれを察して
「大丈夫、何も幽霊退治をお願いしてるわけじゃないから」
と僕に諭した。
分かってはいたけども、それを聞いてほっとした。

タップを踏んで中に入る。
意外にも中はとても綺麗だった。
物はきちんと整頓されているし、掃除もしてある様子だし。
床はやっぱり古いからか、気をつけて歩かないとギシギシ言うけども、突然物が動き出したり、壁の絵から手が出てくる事もなさそうだ。

僕はそれでも少し怖くって羊のモコモコの背中の毛を見ながら歩いた。なんとなく。それが安心できる気がしたから。

部屋の前でタップ。
扉がすーっと透明になっていく。

中には色鮮やかな花に囲まれた寝室があった。
今度は子供部屋ではないのが部屋の置物や香るコロンから分かる。

寝室で眠っていたのは年老いたおじいさんだった。
しわしわの顔に真っ白い髪の毛、手入れのされてない眉毛が垂れ下がり気味で優しい印象がする。

「この人の夢の中だ、行くよ。時間を無駄にはできないからね。」
羊は老人の額を指さして静かにおまじないをする。

「夢見が丘の真ん中を羊が一匹今飛ぶよ、数えてご覧、見てご覧、気づいた時にはもう朝だ」

僕は透明になる羊を追いかけるように、おまじないを唱える。

「夢見が丘の真ん中を羊が一匹今飛ぶよ、数えてご覧、見てご覧、気づいた時にはもう朝だ」

半透明な自分の視界が見えなくなる前に部屋の周りを見渡した。
タンスの上に置いてある小さな粘土で作られた指輪が箱の中で眠っている。

子供からのプレゼントだろうか。
考えている間に僕の視界は完全に透明な闇の中に消えていった。

IN THE BED SECOUND STORY

IN THE BED SECOUND STORY

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-06-29

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