N THE BED 5STORY

好きな子の夢を見たくて
枕の下に写真を潜らせたつもりが
どうしてか僕は間違えて
その日の授業で使った
羊の写真を入れてしまった

ロマンティックな風景の中で
僕を待っていたのは
ショートカットの良く似合う
あの子じゃなくて
もこもこの毛に真っ黒な鼻の
二本足で立つ羊だった……

IN THE BED FIRST STORY

好きな子の夢を見たくて
枕の下に写真を潜らせたつもりが
どうしてか僕は間違えて
その日の授業で使った
羊の写真を入れてしまった

ロマンティックな風景の中で
僕を待っていたのは
ショートカットの良く似合う
あの子じゃなくて
もこもこの毛に真っ黒な鼻の
二本足で立つ羊だった……

「羊!??」

目をマン丸くした僕に
羊はたいそう驚いた様子でいた
しばらくの沈黙を破って
羊が喋った…羊が喋った!?

「なんだよ!呼んだのはそっちだろ?」

ああ。夢だ。
それだけは分かった。
そう思ったら急に楽になった。
夢なんだから羊と会話したって
変じゃない、夢なんだから。
そ、夢自体変なもんだもの。

僕はしばらく羊の話を聞いてみたくなった。
だからこう聞いたんだ。
「どういう経緯でここにきたの?」

そういった途端、羊は真っ白い毛に火でもついたみたいにほっぺたを真っ赤にして怒り出した。
分からないけど、どうやら聞いちゃいけないことだったらしい。
羊は僕を睨みつけるとマシンガンのように一方的に話し出した

「どういう経緯?まさか、まさか!どうしてここに来たかが知りたいの?
ああ、こんな事なんじゃないかと思ったんだ!!!
だから僕は引き受けたくなかったんだ、だいたい前の日ならまだしも当日のこんな直前の予約に「行け!」なんておかしいと思ったんだよ!!
どう見たって…ああ、どう見たって違う!なんにも分かってない顔だ、寝る気なんてさらさらないだろ?
はめられた!!もうおしまいだ、俺の記録もパーじゃないか!」
全部を吐き切ったのか、羊は深いため息をつくと頭を抱えて座り込んでしまった。

僕が何をしたっていうんだ。僕はその時はまだ自分が枕の下に美味しそうに草を食べる羊の写真を忍ばせてたなんて知らなかったから、
申し訳なさも感じることもできなかった。

またしばらく沈黙が続いた。
今度は前よりちょっと長かった。
僕はこの夢はなんなんだろ、って考えてたし。
羊は羊で僕の顔を覗き込んでは頭を抱えてたし。
お互い何かを考えてるのに全然違うことを頭に浮かべてるんだなって思ったらなんだか面白かった。

沈黙を破ったのはまた羊の方だった

「過ぎたことだ、仕事は仕事。一応聞いておくか。
君、ああ、名前も聞いておこっか、名前。
君はさ、最近眠りが浅くて何度も目が覚めたりした事ある?
1度目を閉じたのに頭の中が騒がしいって言う感じでさ、ほら、なんかそーだなー。そ!遠足の前の日!みたいなさ、あるかい?」

当然ない。ここ最近夢を見たくたって気づいたら朝だ。
僕は素直に首を横に振って答えた。

「僕の名前はレム。質問の答えだけど、ごめん。ここ最近はぐっすりで一度も目が覚めたこともないよ。
ねぇ、今度は僕から質問してもいい?」

羊は質問させてはくれなかった。
言いたいことが分かってる、と言わんばかりに僕の声を遮って話始めた。

「僕には時間がないんだよ!時間が!
聞きたい事なら想像つく!だから答えから先に言ってあげよう。
君は何かと間違えて枕の下に羊の絵か写真か、その類を敷いて寝たんだ。
それはつまり、眠りが浅くて困ってます!ぐっすり眠らせてください!ってSOSなんだよ、それで僕が来たらこのざまだ!
君のほかにも今日たくさん回らなきゃいけないところがある。ライバルとそのタイムを競ってる。
これが罠だって気づいてたら僕はきっと君の家には行かなかっただろう。
どうしたってこれじゃ勝てない。僕の連勝記録もこれでおしまいさ!」

あんまりにも早口でまくしたてるので僕は全部を飲み込むのに少し時間がかかったけど
僕のせいでこの羊は困ってるってことだけはわかった。

お母さんが言ってた言葉を思い出した。
どんな時でも困ってる時には手を差し伸べてやりなさい。
それがどんなに理不尽でも助けたって証拠があればきっと良いことがやってくるから。

僕は羊のもこもことした腕をつかんで透明でおっきな瞳を見つめてこう言った。

「じゃあ僕の順番を最後にしたらいい!悪いことをしたのなら手伝うよ!
終わるころにはちゃんとぐっすり眠るから!」

羊はしばらく僕を見ていた。
何かを考えていたのかもしれない。
時折ふさっと額の上の毛が揺れるのが、真剣な顔とミスマッチで何とも言えない気持ちになった。
僕の目を覗き込んでしばらく、羊はまた深いため息をつくと渋々納得したのか

「わかったよ。レム。
でもね、二つお願いがある。
一つ!頼むから僕の足は引っ張らないでおくれ?君はこの仕事の大変さも何もわかっちゃいないんだ。
余計な手出しは無用だからね。
二つ!今から君をいれて五人、だから君が家のベッドに飛び込むまでに四人の家に行く。
それまでに、間違っても。寝たりしないでくれよ?君が眠るのはそこのふかふかの羊が敷いてあるまくらのあるベッドの上だ。
いいね?」

僕は首を縦に振った。
そしてここから羊と僕との
夢から夢へ。
ベッドからベッドへ
一夜の物語が始まることになったんだ。

N THE BED 5STORY

WIRDというオリジナルTシャツを作っているしょぴといいます。この度は作品をよんでいただきありがとうございます。本書きを本気でめざしている、という人から見たら片手間で、と思われてしまうかもしれませんが。書くときには同じように悩んだり考えたり、そして楽しんだり。読むのも書くのも大好きで、始めました。どうぞよろしくお願いいたします。

N THE BED 5STORY

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-06-29

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