リツタムカ

「紫陽花って欲張りな花よねェ」
 雨の日は特にする事がないから彼女の言葉を思い出すことにしている。
 紫陽花を欲張りと言った彼女は年中晴れの国へ飛んで行ってしまった。たまに送られて来るポストカードには水着姿の彼女と、そして隣にはいつも違う男の人が写っている。僕は彼女も紫陽花に負けないくらい欲張りだと思うのだけれど、そんな事を書いて送ったらきっと彼女はとても怖い顔をするし、それを見た隣の男の人もびっくりしてしまうだろうから返事のポストカードには書かないでおく。それに、なんでも思った事を口にするところは僕の良くないところだといつの日か彼女が言ったから。
 送られて来たポストカードをコルクボードに貼り付ける。彼女に言われた通りにやっていたら、いつの間にかコルクボードは貼る場所が無くなるくらい彼女からのポストカードでいっぱいになっていた。そう言えば、彼女はこのコルクボードがいっぱいになる頃には帰ると言っていたから近々この雨の国に帰って来るかもしれない。
 彼女の希望で部屋の真ん中に飾られた別世界が広がるコルクボード。
 やっぱり彼女は紫陽花みたいに欲張りだ。そしてとても酷い人だ。
 それでも僕は、やっぱり紫陽花が好きだと思う。

リツタムカ

リツタムカ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-06-24

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