Re:Re:
「新婦様にお会いしたいという方がいらっしゃるのですが。お通ししてもよろしいでしょうか?」
「何さんですか?」
「村瀬さまです」
「…ごめん優、席外してもらえない?」
「後輩くん?」
「そう。」
「なんのようなの?」
「分かるわけないじゃない、なんだろう?」
こんこん
「桜先輩?」
「どうぞ?」
「結婚おめでとうございます。」
「ありがとう?」
目があった気がしたその刹那からの物語。
「いつから?」
明らかに怒った声色の彼。
「つきあってたよね?」
「多分ね。」
「多分って何?要するに浮気ってこと?」
「貴方が浮気ってこと。」
「だろうね、早野さんとは結婚するんだもんね。」
やめてよ、そんなこと言うの。
ほら、声もう震えてるじゃない。
目も合わせられないこんな私に構うことないじゃない。
「何も知らなかったのは俺だけ?」
「…知ってたのは私だけ。」
「知りたくもなかったよ。なんだこれ。」
「なんなんだろうね。」
「せめて目くらい合わせてよ」
「合わせたって何も変わらないもの」
合わす顔がないのよ。
分かって。
声も出ないの。声を出したら泣きそうなの。
こんなになるまでなにもできなかったの。
選ぶことすら私には出来なかったの。
「あなたのこと好きだったのは俺だけってこと?」
「そういうことになってしまうね。」
「なんで他人事なの?先輩のことなんだよ」
「知ってる。」
「こんなに辛いのは俺だけ?」
肩を震わせるあなたに言い訳する言葉もないの。
「何か言ってよ。」
なにも言えないんだよ。
「旦那さんに全てバラす。先輩だけ幸せになんてさせない。」
「別にいいよ。それが罰になるなら。」
「せめて泣いたり騒いだりしてよ、あなたは何がしたかったのさ。」
私が傷つくくらいで済むならそれでいいよ。
でも貴方は泣けないでしょう?
「新婦さま、そろそろお時間の方が…」
「今行きます。」
「ねぇ先輩」
「…なに?」
「せめてこれだけは聞かせて、少しでも俺のこと好きだった?」
「…」
「答えて…」
こんなところまでスーツを着て来てしまうあなたを
こんなに傷つけたのにそれでも泣いてくれるあなたを
最後一度きりの感謝くらい言ったってバチは当たらないんだろうか。
「…あ」
「さくちゃん!ごめん、時間やばい!」
「ごめん、優。今行くね。」
パタパタと去っていく音がした。
好きと伝えるには大きくなりすぎたね。
あの時付き合ってって言われてないから付き合ってないよね、なんてかんがえていたのが懐かしいね。
だからきっと曖昧なくらいが多分私たちらしいね。
「……先輩?」
「仕合わせだったよ。」
扉を閉める。
扉の外側で座り込んでしまう。
私は泣いてはいけない。私が泣いてしまったら彼はなけないだろうから。
「そういう答えが欲しかったんじゃないのにな」
扉の内側から聞こえる声に返事は返せない
どうか、愛した貴方が幸せでありますように。
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