【Che cosa è la differenza tra “K” e “Y”?】

ピアノラボ

 あるピアノの先生のご自宅へ、調律に伺った時のことです。
 その日のレッスンは既に終わっているはずの時刻に到着したのですが、おそらく最後の生徒さんでしょうか、高校生ぐらいの女の子が残っていて、先生と何やらお喋りを楽しんでいました。
 入室した私は、挨拶を済ませ、「気にしないで作業してくださいね」という先生のお言葉に甘え、二人を横目に作業に取り掛かりました。するとその時、女の子が話し掛けてきました。

「ピアノって、YとKではどう違うのですか?」

 日本を代表する二大メーカーの比較……実は、これは最もよく受ける質問の一つです。そして、いつも返答に悩む質問でもあります。
 と言うのも、そもそも「YとKでは」という括りだと、曖昧過ぎるのです。

 ピアノは、一台一台に個性が宿ります。年代や機種により、材質や設計も異なりますし、たとえ同じメーカーの同じ機種であっても、設置環境や使用頻度、メンテナンスのやり方など様々な要因の積み重ねにより、全く違うピアノに育つのです。
 もちろん、持って生まれたポテンシャルにも個体差がありますので、その差異はますます多様性を帯びてきます。

 しかし、その一方で、大雑把な括りでは確かにそのメーカーの「らしい」音もあるでしょう。つまり、YならY、KならKで、幾らでも例外はあるにしろ、それっぽい音の共通性も存在するのです。そして、おそらくはその説明を問われているんだな……ってことは、分かっているつもりです。

 問題は、音という目に見えないものを、言葉でどう説明すれば……ということです。
 音に限らず、色、臭い、味、明るさ、手触り、歯応え……そういったものは、言葉だけで正確に伝達することは困難です。なぜなら、個人的な主観に左右される要素が、あまりにも大きいからです。

 例えば、Yの音が好きな人は、「明るく華やかな音色」と感じたとしましょう。キラキラと輝く音、硬質でクリアな響きといった表現をするかもしれません。
 一方で、そういった音色を好まない人が、全く同じ音を言葉で表現すると、「金属的で不快な音色」になるかもしれないのです。物理的に、全く同じ波動であっても、聞き手の感性や好みにより、表現は全く違ってくるのです。
 同様に、Kの音を、「柔らかく落ち着いた音色」という人もいれば、「湿っぽい篭った音色」という人もいるでしょう。視認出来ない感覚を、言葉のみで伝達することの難しさは、どうしても発信者の主観に委ねざるを得ないことに尽きます。

 YとKではどう違うのか……やはり、非常に説明が難しい質問です。その違いが完全に対極にあればまだしも、決してそうではありません。なので、もし分かりやすく説明しようと試みるなら、どちらかに基準を置いてもう一方は……という比較論に陥ってしまうでしょう。それがいけないわけではありませんが、比較論での説明は、どうしても優劣の判定と受け取られてしまう可能性も孕みます。

 ほんの数秒、そんなことに思いを巡らせ、慎重に言葉を選びながら口を開こうとした時、先生が私に代わって説明してくれました。

「要はね、スーパードライと一番搾りみたいなものよ!」

 はははっ!
 思わず笑ってしまいました。でも……うん、なるほど、すごく的を得ている気もします。それに、とても抽象的なのに、とても面白く、ニュアンスも何となく伝わる表現です。
 音やタッチという、目に見えないものを取り扱う仕事をしている以上、技術や知識を磨くことは当然ですが、言葉による表現能力も高める必要があるでしょう。こういう端的な比喩、私も使えるようにならなければいけないと思いました。

【Che cosa è la differenza tra “K” e “Y”?】

【Che cosa è la differenza tra “K” e “Y”?】

日本を代表する2大ピアノメーカー、 その違いを端的に表現するには?

  • 随筆・エッセイ
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