秘密
「話して欲しいこと」
「知らなくていいこと」
なんとなくのテレパシーってものがあるとして、この子には僕は惚れない、なんてわかるものだろうか?
答えは否だ。そこには希望的観測が入る。
あの子は今は僕のことを好きじゃないけれどいつからかは僕のこと好きだったらいいのに、なんて願ってしまうのだ。
その結果何が起こるかなんで自明である。
…あの子のこと僕好きなのかもしれない、なんて声が浮かぶのだ。
これが恋愛テレパシーってやつだと思う。
大したことはない。相手が自分の事が好きかもしれないという思いがすり変わるのだ。自分が相手を好きだという妄想に。
かれこれ数年こういう気持ちからしか恋をしていない。恋愛テレパシストってやつだ。
いやー、そういう…
「いつにもまして存外痛々しいな、どうした。」
「独白に紛れ込まないでよいい調子だったんだよ?」
「テレパシストとか気取るんじゃありません。ただの手の届く果実食べたい症候群でしょうに。」
「そうともいう…」
「そうとしか言いません!」
「間髪いれずに言わなくたって…」
「またいらない者拾ってくるでしょうがそうやっていっとかなきゃ。」
「者の漢字おかしくなかった?」
「表記法につっこむんじゃありません。」
「はいはーい。」
彼の優しさの元に生かされている、となんとなく気づいている。
嘘つきで、ワガママで、暗い過去持ちの私をなんとなくふわっと受け入れてくれている。
まぁそれでも現在進行形で嘘を積み重ねてはいるのだが。
『知らなくていいことはある』それは誰と誰の間にだってそうだ。
そして、その知らなくていいこと、を知らせないためにはいくらだって嘘をつくことは許されるはずだなんて思っているクズ人間、それが私だ。
「またいらないこと考えてたな?クズじゃありません。」
「読まないでよもうー。」
「どうせろくなことじゃないもの。さぁ話そうか、321」
「いやいやいや無理だって。というか得意のさとりでもしたらいいじゃない。」
「さとり妖怪舐めてんな?読みたくないこともあるんだよ」
「無理なの?」
「もういっかいいうけど読みたくないの。話して。」
「無理だよ。」
本当に知らなくていいことなんだもの。
○*のためだけに*を¥☆てて現在進行形で☆○中だなんて知らなくたっていいじゃない。
「吐きなさい。そして思考に靄をかけないでよもう。」
「やーだー」
「そんなやりかたすんの君だけだよ」
「簡単だよちょっと意識そらすだけだもん。」
「…気が向いたら教えてな。」
「気が向いたらねー。」
いつになるかは、知らないけどね。
「なるべく早くな。」
「うん。」
秘密