お面屋

始まりの面-般若-

いつもと同じ朝だった。いつもと同じ時間に起き、いつもの朝食を食べ、いつも通りの準備をして学校へ向かう。おかしい事なんて何一つ無かったじゃないか。さっきまで授業中だったじゃないか。それがなんで、なんでこうなったんだ。そこにあるのはいつもの授業風景などではない。日常からもっともかけ離れた非日常の風景。辺り一面は真っ赤に染まり、そこらじゅうには千切れた体、腕、頭。原形すらとどめていない真っ黒な肉塊。逃げなきゃいけないのはわかる。あの乱入者から、とても人とは思えない、あの怪物から逃げなきゃいけないのはわかっている。しかし、身体は動かず呆気にとられ、尻もちをついたまま。地面に縫い付けられたかのようで。どうしてだ。なんで動けないんだ。逃げなければ行けないのに、足が竦んで、体が凍っているようでまるで動かない。それは、ゆっくりと僕を見た。鬼ような、般若のお面のようなその顔は僕を捉えて歩き出す。のそりのそりと、1歩ずつ、べしゃり、べしゃりと。黒く淀んだリノリウムの床を非日常が、僕との距離をまた1歩、また1歩と縮めていく。
訳の分からないまま、死ぬだけしかないのか。この怪物に真っ二つにされるのか、頭を砕かれるのか、それとも、ただの肉塊になってしまうのか、何度も何度も刻まれるのか、どれも痛そうだ。助かる想像も、方法も何も思いつかない。
それなら、何も出来ないなら何をやっても無駄になるなら、僕の頭はもはや正気じゃなかった。
「ヴぁ…うぁぁ…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
せめてビビってくれたなら、自分を鼓舞して少しでも動けたなら、なにか出来るなら、僕は戦ってやる。逃げられない。この化物からどうやっても。だったら、死ぬだけなら足掻いて死んでみるのだって悪くないだろ。
「うぁぁぁア゙ア゙ぁああ!!」
眼前に化物の足。それ目掛けてタックルをするも見事にかわされそのまま床へとダイブ。どしゃっという音と共に背中から憎悪、憎悪、憎悪。突き刺さる圧迫感。
「ははっ…死んっ…。」そこで僕の意識は飛んでいった

語る面-翁-

「あぁぁぁあぁ!!」
夢を見た。何ともまぁ現実味のない夢だった。自分の学校の生徒、先生全員が惨殺されていた。血の海の中心に立つ鬼の面を着けた何か。僕は立ち向かったのか、脚が竦んで動けなかったのか、わからない。気づいたら起きていて、そこら中汗だらけになって目が覚めた。いつもの、自分の部屋。なのに寒気がする。あの夢の中の鬼が未だに頭の中に住み着いて、僕の体を恐怖で支配しているように思えてうまく動けない。
「くそ、情けないな…」
たかが夢だ。でもリアルだった。少し考えた後に体は動くようになっていた。
「学校、行かなきゃな。」
さっさと身支度を済ませて朝ご飯すませる。いつもより少し早めの登校だな。外はギラギラと太陽が輝いていて全く夏らしい。それなのに背中に残るあの夢の、あの寒気が未だに僕にこびりついて離れない。
しばらくすれば寒気もなくなるだろうと、自分の中にある不安を振り切るように家を出た。僕の家から学校まではそう遠くない。歩いて20分程度の距離だ。しかし何かに押されるように胸の中に疼く不安をかき消すように早歩きになってしまう。思いのほか学校に早くついてしまった。こんな時間でも、ちらほらと何人かの生徒はいるようだ。しかし当たりを見回せばなんだか、何かがおかしいと思ってしまった。ここで感じてしまった違和感。ありえないはずのその違和感は僕の中で大きくしかし確実に膨らんでいった。
「皆、同じ…顔?」
分からない。見間違いかもしれない。しかしこれはこの違和感は、拭えない。一度出てきたこの違和感は中々消えない。不安になる。時間が経ち、人が増えるにつれて同じ顔が、同じ表情で、笑っている。話している。怒っている。困っている。何なんだこれどうして同じなんだ。僕はまだ夢を見ているのか。違う、夢じゃないこれは本物だ。偽物なんかじゃ決して無い。
「おい、大丈夫か?」
「ちょっと、具合が悪い。保健室にいってくる」
僕の顔色がよほど悪く見えたのだろう。誰かは分からないが心配させてしまった。しかし、少し休んだところで現状が変わるわけがないが、それでも考える時間がほしい。少し休みながら考えるか。
「すいませーん」
返事がない。いないのか?
がらがらっとドア少し開けると先生の姿があった。なんだいるじゃないか。
……あ、れ、おい、何だあれ異様に先生がでかいぞ。背丈が2m近くある。おい、おいおい、勘弁してくれよ、あれは人じゃないだろ!!突如、異様な者の顔が180度回転した。ゴリャゴリャゴリャゴリャと無理矢理首を回したものだから骨と骨がぐしゃぐしゃにひしゃげるきみの悪い音共に、人ではない、何か面のような物が顔にのっぺりとひっついたおぞましい何かがそこにいた。
「似てる!夢に出てきた、あの鬼の面のヤツと!」
まずい、このままだと殺される。少なくともただじゃ済まない。考えるよりさきに足が動いた。ここから玄関まで一直線に走り出す。
「よしっ!出れるぞ!」
玄関の取っ手は掴んだこのまま外に、出れない。いや正確に言うと出たには出たが

お面屋

お面屋

良くありがちな少年の復讐劇みたいなもの。舞台設定とかは細かくはしてませんが主にお面を使った和風?能力系バトル、学校での事件をきっかけにお面の化物と戦う決意をする。とにかく主人公が酷い目に合います。

  • 小説
  • 掌編
  • アクション
  • ホラー
  • SF
  • 青年向け
更新日
登録日
2016-05-28

Copyrighted
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  1. 始まりの面-般若-
  2. 語る面-翁-