知より愛をこめて

知より愛をこめて

何時もの様に家族との時間を過ごし、一人で夜の散歩に出かける私であったが、茂みと林の奥から見たことのないもやもやとした、光が瞬き。私は畏怖の念を打たれる。その光の先にあったのは決して見たことのない物体であった。
これが全ての前菜に過ぎないと知った時、私は全ての種にたいする頂点だと確信するのだが…

知より愛をこめて

知から愛をこめて


私はいつもどうり、夕飯を食べ、家族と一緒に帰宅した。
私の妻は可哀想にまだ小さい息子に時間をとられ、残っている家事と、息子の遊びに付き合っている。ふむ、この状況だと、まだまだ息子は寝ない、あと数時間遊んだ後にまぶたが重くなるであろうにと、私は考えた。
そこで気晴らしに夜の散歩へと出掛けた。

外はベタつく程に蒸し暑い。
ここの環境はそうなのだ、私はため息を吐く。

雨が降った後がよくわかる土の上を餅をこねる様に歩き、泥が飛びはね正直言って汚い。
しかし家を出る前に見た、妻の機嫌が悪い表情を思いだした。帰りに、妻の好きな食べ物でも持って帰ろうと小さなくしゃみを出して思った。

と、ツバが飛んだ遠くの方向から青白い光がもやもやと茂みと林の空から見える。
あれは何だ?
誰か、人とかが焚き火でもしているのではないか?
そういった自問自答をする。
しかし、何も燃えるような臭いもしない。また火の燃える熱さも私の皮膚は感じ取らない。

私は好奇心からその光を発する光源に、ジリジリと近寄り、鮫の肌に似た木の木目に指をかけ、心臓の音を消して覗いた。

その先には見たことのない飛行機があった。
いや、飛行機ではない、ロケットなのか、嫌違うわからなかった。ただ今までの歴史の中で人の乗っている乗り物ではない。友人からも親族からもそれは聞いたことはなかった。

銀の丸い円盤。畏敬の念が私を包み込む。
どうやらその丸い円盤から青白い光が出ていた様だ。

ガチャガチャ、ガチャ

円盤の底からエスカレーターに似た動く鋼材が伸びてきて、その上には機械的な服を身に付けた顔の青い者が周囲を見渡しながら降りてくる。

そして、地に脚をおろし物珍しそうに草や花、土をボックスの箱に詰めては、詰める。

私はこの状況から見てはいけない物を見たと察知し、好奇心から恐怖心へと変わる自分に気づいてこの場から、逃げようと背中をむけた。
と、急いだために足を崩してしまう。

ポキッ

私はハッとする、やってしまった。小枝を折り音をたててしまったのだ。私は振り向くと、案の定、顔の青い彼らはこちらに気づいた様子である。
彼らはすぐに機械的な服のポケットから光線銃を取りだし、私に向けて撃ち放った。
茂みの中で断末魔が、私の喉奥から発せられる。私はその瞬間から見えている景色はもやもやと、薄れていき意識は何処かへと消えていくのだった。

いくら時がたったのであろうか。白い空間と、まばゆい証明、そして熱したヨモギが焦げた様な臭いが私を深い意識から呼び戻した。
それと、共に低い声が聞こえた。
「何者なのだ、と言うよりも、なぜ光線銃を受けてこいつは生きているのだ?」
私の鼓膜に一つの文句が聞こえた。
続いてまた、聞こえた。
「それは、知らん。しかし、この地球と呼ばれる天体で生きる一番高度な生物なのだ、コンタクトを取ってみようではないか…」

どうやら、私は運よく生きているらしい。しかし嫌なことに、この声の持ち主は顔の青い奴等だと私は察した。

顔の青い生物は、私が目覚めた事に気づいたらしく私に声をかけた。
「おい、お前、俺の言ってる事が分かるか?」
私はコクリと頷く。
「凄いぞ、私たちの言葉がわかると言うのかね。これは驚いた」
青い顔の奥にある目玉をぐるりと広げる。顔の青い彼らを見ていると私はまた、好奇心が溢れでてきた。
また、どうせ死ぬのなら彼らについて知ろうと考えた。
もちろん、私には恐れはある。けれども、それを打ち消し声をやわらげ、得たいの知れない相手に向かって私は尋ねた。
あなたたちは何者で何が目的なのかと、不思議なものでやはり言葉は通じた。

顔の青い彼らは答えた。
「私たちはパリソポア星からパリソポア人だ」
「地球から約752光年先からラリカルファの超次元ワープを越えて此処まで来たのだ」
「つまり、君たちから見ると宇宙人だってわけさ」
宇宙人?なるほどそれで、見たことのない飛行機や顔なのかと私はなっとくした。

パリソポア人は話続ける。
「この星は素晴らしく美しい、我が星はとても発展はしているが、すべてが岩と溶岩でとても居心地はよくないのだ」
二人目のパリソポア人も喋る。
「その通りだ、先程も見たがここにある木や花、すんだ空気とても良い」
と、他にも後ろで立って見ているパリソポア人も同意の意見を投げ込み、うんうんと頷き偉そうに話す。
私はこのパリソポア人と言う宇宙人が侵略とかではなく、ただ地球の星に憧れがあるのかと思考を巡らせる最中に、パリソポア人の声の中から大きく発する者が出た。
「しかし!その美しい地球を害する害虫がいるのだ!」
その声にまた、「そうだ!そうだ!」と同意し始める。
「そこで、私たちは考えたのだ」
「その害虫を打ち滅ぼしてやろうと」
パリソポア人は腕を大きく上げて叫ぶ。
私は彼らの声をさらに聞く。
「あの害虫どもは空気を汚し、森を切る。花を踏みつける、そこで私たちは文書を書き記し奴等害虫へと送った」
パリソポア人は私に、その送った内容の手紙を見せてくれた。
【これ以上、地球を汚してみろ、お前らを滅ぼすぞ】
パリソポア人は顔を苦めながら言葉を続ける。
「しかし、奴等からは何も返事はこないのだ」
「やはり害虫に知能がない、私たちの知を理解できないのだ」
私は彼らの話す害虫について、理解が出来てきた。だが私はまだ、口を動かさなかった。

パリソポア人はまた熱くなり話す。
「よって私たちは彼らを滅ぼす作戦を立てている最中にある1つの問題点が出てきた」
パリソポ人は何やら恐怖の眼差しで私を見てきた。
「ある地球上の生物で私たちよりも優れている種が存在したのだ」
「その優秀な生物は、極度の乾燥、高温から絶対零度まで耐え、真空まで生き、またもや放射線までを弾き飛ばすのだ」
青い顔の宇宙人は、青ざめているのか、わからないが威勢の良い声の音量がなくなっていた。

私は黙った、なぜならもしかすると、私よりも遥かに〔あいつら〕よりも高い知能を持つ者がその、〔種〕と言っている点でこの、私たちの〔種〕に対して恐れを抱いてあると思ったからだ。
あいつらはもしかして、そのパリソポ人が言う害虫はあいつらなのか、私は非常に滑稽に思えた。
なぜならあいつらは、自分達が頂点で何者にも屈しない自信と巨大な万の力を持っていると思っているからだ。
私はその事に対しておもしろくは思っていなかった。
そんな私の事を気にせず、パリソポ人は考えている私に話す。
「地球上で一番優秀な生物それは、あなた方なのです」
「あなたは絶対的な防御力、そして私たちと会話するテレパシーの能力もあります」
「そこで、私たちはあなたを地球の代表と考えて問います」

パリソポ人は力強く発した。

「地球の美しさを保存する為に害虫を駆除、それも全ての害虫を一匹も残らず駆除するのはどうでしょうか?」
そういい放ち、パリソポ人は透明で中に赤いボタンの箱を私の前に置いた。
「この赤いボタンを押すと全ての害虫の脳を破壊します。どうです?このボタンを押す判断を私たちではなく、あなたが押すかどうか決めてほしいのです」
「でなければ、私たちは押してしまいそうです」
私はこの言葉を聞き、他の見ず知らずの星からやってきた宇宙人のお節介に腹がたったが、向こうの方が高い能力があるので怒りを押さえて言った。
少々言葉が詰まる。
「わかりました…そのボタンは私が押しましょう、しかし、そのボタンを押す時は今ではありません。その機会が来るまで私が預かっておきましょう」

この言葉にパリソポ人は全員納得し、その透明な箱であるボタンを私に丁重に渡した。

その後、私は無事に家に帰され住み慣れた、土地に戻ることが出来た。
パリソポ人は銀の円盤の宇宙船で、どこか遠くに消えていった。
私は帰りが遅くなったので妻に、怒られてしまった。しかし、妻には優しくキスをした。今ある生活に戻れたことに比べればそんなこと、どうだっていいのだ。

そして、自分の部屋に入る。ゆっくりと息をすった後、私はいまわしい、この透明の箱を書斎の奥に隠した。多分、私は少し笑っていたかもしれない。この赤いボタンを押せばあいつらはすぐに死んでしまう考えを巡らせながら…


「隊長」
「どうした」
「先程の地球人、あいてにしなくてよかったですね」
「当たり前だ、奴はこの光線銃がきかなかったんだぞ、勝てるわけあるまい」
パリソポ人の一人が言った。
「地球にて最強の生命体、【クマムシ】この宇宙資料に銘記しておきます」

この出来事は一昨日の事である。しかし、地球人である。地球人は知らない
また、地球人が虫と言う生物が私たちの生命のボタンを持っている事さえ知らないのだから

知より愛をこめて

学生の頃クマムシと宇宙人で話していた教師がいました。ただそれだけです。

知より愛をこめて

あなた自身が全ての種の頂点だと思っているとするなら、それは大きな間違いである。 外の世界からみた人はそうは思わないかもしれません。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-05

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