深海(仮)1

いつの時代だっただろうか。あれほど海が荒れはてていたことはなかっただろう。


天気は悪く、くぐもった空に押し寄せてくる高い波。

そんな海の底には、海の住人でも知らないような監獄があった。



「ねえお母さん……なんで僕たちはこんな目にあうの? 何も悪いことしてないのに……」



まだ幼いクマノミの子供だ。



無慈悲にも鞭で叩かれたあとがある。

周りを見渡せば、数多くの魚達が捕らえられているようだ。


みな痩せこけ、目からは輝きを失い、
クマノミと同じように鞭で叩かれたあとが無数にあった。



一体ここはどれくらいの深さにあるのだろうか…。



檻の隙間から見渡した限り、日の届く深さではないのだろう。
あたりは真っ暗だ。



「しっ……見回りが来るみたいよ……」



重たい空気を感じ、母クマノミが子供の口を塞ぐ。するとゆっくりと、イルカが現れた。



「ケッ。なんで俺が見回りなんかしなきゃならねえんだ」



いかにも悪そうな顔をしたイルカは、
檻の外ををゆっくりと、適当にぐるぐると回り始めた。



一言でも言葉を発するようならば、持っている鞭で叩かれるだろう。



その恐怖に誰もが怯えながら、震えて固まっていた。



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深海(仮)1

深海(仮)1

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-05

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