味の記憶

食べ物が人と人の心をつなぐ。
そんな日常のふとした場面を切り取りました。

味の記憶

渋谷のライブハウスでのこと。
その日私はケータリングとして出店していた。

心地よい音楽に浸っていると、視界には豚肉丼を頬張る少女。
そして、そこを通りかかるちょっぴり年上のバンドマン。

「お!旨そうなの食べてんじゃん!」
「食べたいな。腹へったなぁ。でも金ねぇなぁ。うーん…。」
「先輩!いつもお世話になってるんで奢りますよ。」
「いやいや。わりぃよ。」
「大丈夫ですよ。豚肉丼、もう一つください!」

目の前で繰り広げられる会話にほっこりしつつ、せっせと豚肉丼を拵える。

美味しそうに頬張る二人。
食べ物が心と心をつなぐ。

二人がいつか。
今日の日に想いを馳せて、懐かしむ日が来たらいいな。そこに寄り添えたら幸せだろうな。

音楽が懐かしい記憶を突如呼び覚ますように。
味の記憶もきっと。
どんなものでもその人にとってはかけがえのない想い出なのだ。

味の記憶

味の記憶がいつだって人々の心に寄り添っていますように。

味の記憶

渋谷のライブハウスでのこと。 食べ物が人と人との心をつなぐ。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-05-01

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