*星空文庫

白昼星

マチミサキ 作

仕事帰りにプラネタリウムに寄ってきました。

年間パスポートを持っているので
たまにふらりと入ります。

私の場合、【星空を観る】というより
考え事を纏めたい時に。

勿論、プログラム自体も楽しいのですが
それ以上に此所へ来ると
色々なアイデアが浮かんで来るのです。

今回は
北斗七星を観ていて
思い浮かんだ事を少し
書き込んでみようかと思います。

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今、米大統領選の情報が
毎日の様にニュース番組を賑わせていますが

その昔
アメリカで自由の為に
その半生を戦いに捧げた
ある女性をご存知でしょうか?

【 ハリエット=タブマン 】 女史です。

彼女は1800年代の
黒人奴隷制度が全盛ともいえる時代に
生まれ落ちました。

【 奴隷 】としてです。

少女の頃、頭部に受けた
暴行傷害(事故ともいわれる)により
生涯に渡る持病として
難病【ナルコレプシー】を患います。

運命とは皮肉なもので
この持病と引き換えなのか
彼女はある《特殊能力》を
その身に宿したそうです。

高精度の【 危険察知能力 】とも
大柄な男性にも勝る【超怪力】とも
色々な噂が囁かれていますが
事実は今となっては
わかりません。

しかし、いずれにしても
それは小柄な彼女の最大の武器になったと
伺いました。

当時、
黒人奴隷の脱走を手引きする
秘密結社
地下鉄道(アンダーグラウンドレールウェイ)
という非合法組織があったのですが

彼女自身、まずこの組織の力を借り
脱走に成功したのち

この組織の一員となります。

役職名(ポスト)
最も危険を伴う、とも言われた【車掌】

車掌の主な任務は
脱走奴隷の道案内として
ともに逃走経路に
付き添う事にあったそうです。

いわば案内人でありボディガード。

当然ですが
白人領主としては
黒人奴隷は財産でもあり
その逃亡の追跡は熾烈を極めたそうです。

そういった逃亡専門のプロ賞金稼ぎ達の
追手を
農園から出た事も殆どなく
世間の知識さえほぼ無い奴隷を引き連れ
自由の地まで何百㎞と、ひたすら追撃を
躱して行く訳ですから

苦労などという言葉では
表せないものがあったはず。

無論、捕まれば
無事ではすみません

見せしめとして
私刑(リンチ)の果てに
命を奪われた奴隷達も少なくなかったでしょう。


驚くべきは
このタブマン女史

幾度となく繰り返された逃走劇の中で

ただの一度も失敗がなく
一人の犠牲者も出さなかったそうです。


各車掌は全て独自の逃走ルートを
持っていたと言われていますが

タブマンのルートは
現在の調査でも殆どわかっていません。

【地下鉄道】自体が
文字の記録として情報を残す事を
タブーとしていたのは
有名な逸話で

キルトの模様や聖歌の中に暗号として
記されたといわれています

水呑(みずの)柄杓(ひしゃく)を追いかけろ】

(ブルース)にもなっていますが
コチラもそのひとつなのかもしれません。

【柄杓】とは
北斗七星の事を指します。

精神的・肉体的にもギリギリの
逃走劇のなかで
夜空に燦然と輝く【北斗七星】

その方向にある【自由の地】を
目指し危険な旅を続ける奴隷たち

そして案内人

どのような想いで
夜空を見上げていたのでしょう


その案内人の一人であるタブマン

慎重に慎重を重ねていたのかもしれません。

何処から綻びは始まるか
解りません
失敗はすぐさま命の危機へと直結する
世界で戦うのですから
その用心深さも仕方の無い事だったのでしょう。


女性の中でも特に小柄と言われたタブマン女史

しかし、力強く自由へと導いて行く姿

逃亡奴隷達の目には
どう映っていたのでしょうか

【他人を救う】
軽い口で言葉にするだけではなく

自らの命を賭して
他人の命も背負って。

自由を求め、生存を賭けて
せめぎあう激動の生涯を送った彼女


彼女に対する文献はあまりに少なく
特に日本ではまず知られていません。

なぜなのでしょう


『あらゆる偉大な夢は
それを見る人間から始まってゆく』


彼女の言葉には
《人類に賭ける》
何か重い決意の様なものを感じました。


かつて【賞金首】であった彼女の肖像は
2020年には同国アメリカで
【偉人】として認められ
新$20紙幣に描かれるそうです。

『白昼星』

『白昼星』 マチミサキ 作

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2016-04-27
Copyrighted

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