*星空文庫

江戸うしろ

マチミサキ 作

【 うなぎ 】が食べたい・・・。

この所ずっとそう感じていました。

が、なかなかのお値段により
断念していました。

うなぎ おいし かのかわ
こぶな つりし リリース

小鮒など要りません

私が食べたいのはウナギ

子供の頃はガチで
近所の川で獲れたものです。

釣るのではなく
竹筒を加工した【ウナギ筒】を用います。

この中に生臭いエサを入れて
シオ(*´ω`*)カラ
2~3日、放置しておくと
よく入っていたものでした。

これを近所の《USO》

【ウナギ裂きオジサン】の所へ
持っていくと蒲焼きにしてくれるのです。

しかし、一匹では悪いので
頼む時は少なくとも4匹くらいは
捕まえなくてはなりませんでした。

(オジサンの取り分は一匹)

ある夏休みの朝などは
いそいそと仕掛けを見に行くと

引き上げる前から
筒からはみ出している
極太のシルエットが!

凄いのが
獲れてしまった・・!

サンニンマエ( ´∀`)クライ?

そんな事を思い

逃げる前に急いで引き上げると
実は【マムシ】
オオゥ(´д`|||)クエナクハ‥ナイ

泳いでいるマムシはたまに見掛けましたが
水中に入っているのを
見たのは初めて でしたので
思わず腰を抜かしたものです。


マムシは(うち)の祖母に見せると
皮を剥いで物干し棹に吊るされてしまうので
逃がしました。

マムシを逃がした、などと言うと
地区住民の逆鱗に触れるので
秘密にしてましたね。

本題に戻り

という訳で
私にとって【ウナ丼】はUSOによる
いわば半素人(はんしろうと)・料理でしたので

ウナギといえばザクザクというか
歯応えのあり、やたら香ばしい料理
だったのです。

それが社会人になり
初めてお店の【ウナ重】を
食した時には驚きました。

メッサ Σ( ̄ロ ̄lll) ヤーラカイ

なるほど、ウナギは職人のお仕事なのだな‥と。

いえ、USOはソレはソレで
悪くないのですけどね。

当時、なかなか食べられないご馳走として
ウナギに並ぶ【メニュー】としては
《すき焼き》と《お寿司》でしたが

こちらの 2品 は質を問わなければ
随分安くなりました。

食べようと思えば毎日でも食べられる程。

しかし、ウナギはそうはいきません。

ますます値上がりしていますし
スーパーですら半額はまず見掛けません。
ワンパック ( ´д`υ)¥1800 ダトゥ‥!

更にお店で食す、となると
一年でも数回

そんな中どうしても食べたくなり
専門店に食べに行ってきました。

友人3名で赴き

メニューを拝見し、長考すること暫し…。

【 ウナ重・竹 】× 3
一人前2800円也×3

です。

死ぬ気というほどの値段ではありませんが
私にとっては安いものではありません。

おそらく口には出しませんが
友人2名にしても同様、
皆に決意の表情が(うかが)えます…!

店員サン
『竹、3人前でよろしいですか?』

私達
「・・・ハイ!!」

店員サン
『お飲みものは?』

私達
「けっこうでござんす…!!」

それは、もちろん正直いえば
冷酒と【うざく】位は欲しい…。
シ…ι(´д`|||)シラヤキ‥モ

でも、もう無理…。

今はこれが精一杯…。

私はともかく
皆、家庭があるのです。

友人達も自分のみご馳走を食す事に
抵抗を感じているはず。

1食約【三千円】は・・ね。


これが【焼き肉】【お寿司】なら(むしろ)
安く感じるのに
なぜ【ウナギ】となると
この不思議な背徳感が生まれるのでしょう…?

【量】か…?
一品(ひとしな)】だからなのか…?

私達だけかもしれませんが
不思議な感覚にとらわれます。


奇妙な緊張感に包まれ
待つことしばし

15分程でしょうか?


店員サン
『お待たせしましたァ~』

私達
「・・・えっ?!」

はやい!

ウナギにしては早すぎる!

高速ウナギ!

ウナギといえば
待つのは常識。

江戸時代には長時間、待機する為
ウナギ屋の一階はお風呂になっていた
お店もあるほどです。
ニカイ( ´∀`)ショクドー


まさか、手を抜かれたのでは・・?!

一同の中に更に緊張がはしります

店員サン
『ごゆっくりどーぞー』

そんな私達の内情も知らず
そそくさと立ち去る店員さん

友人A
『なんか、コレ…豪勢すぎない?』
友人B
「そうだねー」


『オーダーミスかな?』

卓上に並べられた
【ウナギ尽くし】とも
いえる小鉢の数々。

うざく、ウ巻、トロロ、肝吸い、
サラダ、お新香…。
+ウナ重 (かなり大ぶり)

メニューには写真はありません。

店内を見渡すには客は私達3人と
先客として間もなく
食べ終えそうな方が2人だけ。

オーダー伝票にも
《ウナ重・竹 × 3》

・・・うん、間違ってない。・・・

初めて入ったお店ですが
随分サービスが良い。

なんだ、【うざく】まで付いていたのね♪

この不況にこの値段です。
ウナギ屋さんも大変なのかな?

ケチるのではなく
逆発想の営業努力とは凄いものだ!

と、感心し、

ありがたくいただきます。

味もかなりのもの!

友人達も
自分の判断は間違っていなかった…。
人生とは素晴らしい!

そんな表情で
和やかな時間が過ぎていきます。

多少の出費と考えても
お釣りのくる満足感

ウナ重のウナギも
スーパーでは、まずお目にかかれない大きさ!
ハミダシ(σ≧▽≦)テルシ


7割ほど食べ進めたところで


奥座敷の(ふすま)
ガラリと開きました。



『まだか!長すぎないかねッ!』


いかにも
どこぞの会社の役員風の紳士が
怒ってらっしゃいます…。

…(´д`|||)…

・・・・よく見るとお部屋の前に
【革のくっく】が3くみ・・・・・


店員サン
「すみませーん!間もなくです!」



…無言で一度、箸をおく 私達3人…。

…うん…まず…間違いない…ね…?

友人達とのアイコンタクトによる
意志疎通が淀みなく行われます。


店員サン
「お待たせしましたァ!」

奥座敷に運ばれていく
明らかに小ぶりなウナ重みっつ。


友人A
『…ガッツリ…イっちゃったね…』
友人B
『…ね…』


「…私なんて…全部たべちゃったよ…」


罪の意識から
思わずその場で声をかける
友人A

重役おじさん、店員さん、私達…。

様々な想いが交錯していきます。。


そこへガラリと更に襖が開き
社長風なボスが登場


社長サン
『お嬢さんがた!
ここのは旨いでしょう!』

私達
「…ハイ…トテモ…」

青い顔の店員サン
『すぐ、作り直しますッ!』

社長サン
『いや、それでよろしい!君たちも
健康に気を配ればこのくらいだな!』

重役風のおじさん達に
有無を言わせずビシリと言う社長。

社長サン
『うるさくして悪かったね!
ゆっくり食べなさい。』

私達に向かい直すとそう告げられます。

いえ、私に至ってはもう食べ終えていますが…。

ペコペコ店員サン
「申し訳ありません!」

こちらにもペコペコ。
しかし、その胸の内はいかばかりか…。

察するに余りあります。


和やかだったムードも一変し
友人達も一刻も早くとばかりに
残りを食べ進めます。


さて、お会計です。


『やはり、間違いだったのですか…?』

店員サン
「ええ、すみませんでした」


『ちなみにメニューは?』

店員サン
「あちらは【ウナギ御膳・特上】になります」


『おいくら…になりますか?』

店員サン
「いえ、けっこうです!」

……払う、とはまだ言ってないのですが…。

やはり、払うしかあるまい。

友人達には
とりあえず先に店を出てもらい
話を続けます。


『いえ、お支払いさせて下さい、
美味しかったですし。』

もう、3人前でオーバー分は
私が払う覚悟は出来ています。
誘ったのは私ですし。

友人達が気を遣わないよう
あとで上手く伝えよう、と もう考えも
まとまっています。


店員サン
『いえ、実はもう…お座敷のお客様から
いただいてしまっていて。』

社長は
私達が変な気を遣わない様
もう支払いを済ませていたのです。


しかも、
元からのウナ重分¥2800×3まで。


ご厚意は有難いですが
私も【コ〇キ】ではありません。

食べた分はキッチリお支払します。

しかし、ただ意地を張るのも
面白味がない…。


『そちらの方々はお酒は召し上がれますか?』

店員サン
「はい、お運びしていますが…?」


『では、本来 足りないとは思いますが
コチラでお好みのお酒と小料理など少し
そのお席へお礼として
お願いできますか?
ご馳走様でした、ともよろしくお伝え下さい。』

そう伝え、無理矢理に店員サンに握らせると
お店をあとにしました。

寸志を渡した事は友人達には伏せ
一連の流れを説明

友人達
『気前いいねー♪ラッキー♪♪』

キャピキャピと喜ぶ姿は
きっと、社長には期待通りの姿なのでしょう

それに比べ
わたしの可愛げの無さ…。

きっと、ここら辺の【融通の利かなさ】が
家庭を持った友人達に比べ
私が未だに独身の理由なのかもしれない…。

そんな事を考え帰途につきました。

ウナギの中に
人生の縮図が見えてしまった

そんな出来事でした。

『江戸うしろ』

『江戸うしろ』 マチミサキ 作

  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2016-04-27
Copyrighted

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