見慣れない朝へ

見慣れない朝へ

朝の空気は冷たかった。午前6時30分。冷たい空気をくぐり抜けて、駅を目指す。持ちなれない黒いバックの感触と冷たい空気を肌に感じながら。
私と似たような様式の人たちが、ちらほらと見えてきた。駅に近づくほど、増えている。
駅の改札を抜けると、ホームへ繋がる階段が見えてきた。
その階段を降りていく。
見えてきたのは、人の列が敷き詰められたホームだった。
それを見て、どこか不思議なさまに見えてしまった。何かのアート作品のようにも見えなくもない。ある程度パターン化された列の群れは、ただ立ち尽くしている。電車を待っているのだろうが、それでも見慣れない私にとっては、ハッとする感覚をもたらすものだった。
もう少しで、私もその一部だ。加わってしまえば、不思議さは消え去ってしまった。
いつか、私も、あの列に馴染むのだろう。平日の朝、当たり前に群れになってしまうのだ。そうなれば、 もうこの感覚は消えてしまうだろう。
今。私は、列の一部になった。
けれど、馴染めてはいないだろう。きっと、浮いて見えるはずだ。
けれど、大丈夫。と、言い聞かせる。選んだ未来の一歩だから進むしかないのだから、と。
いずれは、いつか、私は一部に、一部は私に。きっと慣れないスーツも着こなせるはず。きっと素敵な大人にだって。
だから、大丈夫。

見慣れない朝へ

ふと、書きました。

見慣れない朝へ

たくさんの人たちが迎える朝の一つ。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-04-14

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