夜のしじまに

夜のしじまに

 皆様今晩は。農家の嫁と申します。
 製本作業がひと段落着いたので、また小説をアップしたいと思います。

 ただその前に、熊本の地震で被災された方に、心よりのお見舞いを申し上げます。そして、亡くなった方には哀悼の意をささげさせていただきます。
 正直、熊本でこんな大きな地震が起きるとは、夢にも思っていませんでした。
 活断層、プレート………いろんな要因が考えられますが、東南海地震が近づいてきているのかなと思います。
 そうなると、徳島で住んでいる私も、無縁ではいられない。日常のすべてが奪われ、こんな風に小説を書くことも、もうできなくなるかもしれません。
 
 そうなって、『何で書いておかなかったのだろう』と後悔することがないように。
 日常がある限り
 許される限り
 私は小説を書き続けようと思っています。付き合える方は、どうかお付き合いください。

 ただ、小説の内容自体は、不謹慎と言われても仕方がない内容なのですが。
 この小説は、『ただひたすらに君を想う』『龍と剣とその拳と』の番外編の位置づけになります。
 読まなくても大丈夫なようにはしていくつもりですが、お読みになりたい方はどうかそちらもお楽しみくださいませ。

 ハヤブサさん×シュバルツさんで、ただ二人がいちゃこらいろいろ致しているだけの小説になると思います。
 少し書く作業から離れていた当方のリハビリも兼ねていますので、どうか軽い気持ちで読んでいただければ、これ幸いかと思います。
 それでは、楽しめる方だけ、どうかお進みください~。このカップリングに不快感を覚える方、男同士の恋愛が理解できない方は、読まないようにしてくださいね。閲覧は、自己責任でお願いいたします。

(ああ、逃げ場がないな)

 枕元に設えてある行燈の揺れる光に照らされる天井を見上げながら、シュバルツ・ブルーダーはふと思った。彼は今、リュウ・ハヤブサとともに、龍の忍者の里である『隼の里』に来ている。これはハヤブサが、強く望んだものだった。


 邪神ラクシャサとの戦いで深手を負ったハヤブサは、キョウジの家で療養していた。その傷も癒え、里に帰らねばならなくなった時、ハヤブサは、シュバルツの手を取っていた。

「お願いだ、シュバルツ………。里に一緒に来てくれないか?」

「えっ………?」
 ハヤブサのその言葉に、シュバルツは戸惑った表情を見せる。その横でパソコンに向かってデータの打ち込みをしていたキョウジが、ハヤブサの方に振り返った。
「シュバルツを里に連れて行くって………まさか、結構長い期間そっちに行っちゃったり、する?」
「いや、そんなに長い期間じゃない。強いて言うなら、3日ぐらいだ」
 キョウジの問いかけに、すぐに明確な答えを返すハヤブサ。
「それぐらいなら、いいだろう?」
 そう言いながらハヤブサは、シュバルツの手を強く握ってくる。

(触レタイ………!)

「―――――!」
 それと同時に流れ込んでくる、ハヤブサの強い『想い』が、シュバルツの奥底を強く波立たせる。咄嗟に身を引こうとするが、ハヤブサの手がそれを許してはくれなかった。
(これは………少しでも反対すると、シュバルツが強引に拉致られかねない流れだな………)
 二人の様子を見て、ハヤブサのシュバルツに対する視線を見て、キョウジは苦笑する。
「ああ、いいよ。行っておいで」
 その言葉を聞いた瞬間、ハヤブサは満面の笑みをその面に浮かべて飛び上がった。

「…………! やった――――――ッ!!」

「お、おい……! キョウジ!」
 対してシュバルツはひどく戸惑ったような表情を浮かべてキョウジに声をかける。しかしキョウジはにこりと笑って、シュバルツをやんわりとなだめるように口を開いた。
「仕方がないじゃないか、シュバルツ。お前は、『ハヤブサの身体回復したら、彼の里に一緒に行く』と、約束しちゃっているんだろう?」
「う…………!」
「ならば、一緒に行ってあげなくちゃ。まさか、ハヤブサとの約束を破るつもり?」
「そ、それは………!」
 痛いところを突かれて、シュバルツは押し黙るしかない。キョウジはにっこり微笑んだ。
「大丈夫だよ、シュバルツ。3日程度でお前はこちらに帰ってこられるみたいだし………そうだよね? ハヤブサ」
 キョウジの呼びかけに、ハヤブサが「ああ」と頷く。それを確認してから、キョウジはシュバルツの背をたたいた。

「じゃあ―――――行っておいで」


 そうして、現在に至る。
 里に着いたハヤブサは、任務や経過の報告をするために、早々に長老の家へと向かった。シュバルツは里の居住区で、里の人たちの仕事を手伝ったり子供たちと遊んだりしながら、ハヤブサが来るのを待っていた。
 刻々と時間は過ぎていく。しかし、日が沈んでも、ハヤブサは一向に帰って来ない。
 風呂の用意ができた旨を告げに来た与助に、シュバルツがハヤブサの動向を問うと、与助は少し困ったような笑みを浮かべながら答えてくれた。

「すみません……。リュウさんは夢幻天神流の里での件、そして今回の邪神封印の件で、事情を説明するのに少し時間がかかっているようです。ラクシャサの封印の方法も話し合われていたみたいですし………もう少し遅くなるかもしれません」
「そうか………」
 腕を組みながら穏やかな笑みを浮かべるシュバルツに、与助は、風呂を入ることを進めてくれた。シュバルツは、素直にそれに従うことにした。


 湯を浴び、用意してくれていた浴衣に着替えて、シュバルツは寝室へと向かう。寄り添うように並べられている布団に、シュバルツの心は妖しく波立つが、その部屋にもやはり、ハヤブサの姿はなかった。
(話し合いが長引いているのかな)
 枕元の行燈に火を灯しながら、シュバルツは思う。
 思えばハヤブサは、長い間この里を不在にしていた。もしかしたらこの里での彼の仕事が、山積みになってしまっているのかもしれない。

(まあ、たまにはこんな静かな夜もいいかな……)

 十中八九、抱かれるだろうと覚悟を決めて、ここまでついてきたのは自分だ。そんな時に、このまま今宵は何事もなく過ごせる可能性が浮上してきた瞬間、なんとなくがっかりしている自分がいることに、シュバルツは少し驚いてしまう。
(馬鹿なことを――――! そんなこと、願っては駄目だ! 自分からハヤブサに、『抱いてほしい』だなどと――――!)
 ハヤブサがハヤテの方を選んだ時、自分は確かにショックを受けた。しかし、同時に心のどこかで安堵もしていた。

 これでいい。
 これでいいんだ。

 やっと、ハヤブサを
 DG細胞の脅威から、『解放』してやれるのだからと。

 人間同士
 幼馴染で忍者同士
 並び立つハヤテとハヤブサは、よく似合っていた。
 『DG細胞』でできたアンドロイドである自分が、その間に入り込む余地などない程に。

 だから自分は、身を引いた。
 ハヤブサの幸せだけをただ祈った。
 自分はこれでいいのだと、無理やりにでも言い聞かせて―――――

 なのに、ハヤブサはまた、自分の方に舞い戻ってきてしまった。
 自分への想いと、ハヤテへの友情がハヤブサの中でせめぎあい、板挟まれてしまったのだろう。その身体はやつれはて、やせ細り――――枕も上がらぬほどの重体になっていた。

「それでも、俺は………お前がいいんだ………」

 朝日の中、自分の腕の中で、儚くも優しく笑っていたハヤブサの姿を、シュバルツは今でも忘れることができない。

 どうして
 どうしてあんな風に、優しく笑うことができたのだろう。
 苦しみぬいた跡が刻まれているあの身体で―――――

 そのダメージから今は回復しているといっても、やはり、ハヤブサは病み上がりなのだ。無理をさせるべきではないと思った。
(とにかく、ハヤブサがここに帰ってくるまでは、起きて待っていよう)
 シュバルツはそう決意して、布団の上で姿勢を正す。
 里の中で忙しく動き回らねばならないハヤブサと違って、自分は客分の身。そんなに疲れているわけでもなかった。
 ならば――――この家の主であるハヤブサが帰ってくるのを待って、それから寝るのが筋というものだろう。
(それにしても………)
 浴衣の襟元を直しながらシュバルツは思う。いったい自分は、ハヤブサにどれぐらいの間、抱かれていなかったことになるのだろう。

 抱かれるのが嫌、という訳ではない。
 ハヤブサがそれで喜んでくれるのならば、寧ろうれしい。
 しかし―――――

(ハヤブサはどうして………私の身体などを抱きたがるのだろう)

 この疑問は何度考えても、シュバルツの中で納得のいく答えが出ない、永遠の謎のようなものだった。
 自分は男で、
 しかも人間ではない。
 歪なもので構成されているこの身体は、濃密に触れ合えば、ハヤブサを殺してしまいかねないリスクも背負っているというのに。

 それなのに、
 どうしてハヤブサは―――――


「シュバルツ………」

 そのとき部屋の出入り口付近で、カタン、と音を立てて、ハヤブサが姿を現した。
「ハヤブサ……!」
 思考を中断して振り返るシュバルツに、ハヤブサは笑みを見せる。
「すまない、湯浴みをしていたら遅くなった………。待っていてくれたのか?」
「ああ………」
 頷くシュバルツの方に、ハヤブサはすたすたと歩み寄っていく。浴衣を纏い、さらりと流れるままに任せてあるハヤブサの琥珀色の長い髪は、まだ水気を含んでいた。
「ハヤブサ……ちゃんと乾かさないと風邪をひくぞ」
 その言葉の間にも、シュバルツとの距離を詰めたハヤブサは、その前に腰を下ろす。そのままそっと、シュバルツの頬に手を添えてきた。
「そうだな……。長老たちとの話し合いが終わってから、すぐにここに来てもよかったのだが――――」
 そう言いながら、ハヤブサの指が、シュバルツの唇に触れてくる。
「久しぶりにお前に触れるのに――――やはり、自分の身は清めておきたかったからな………」
「……………!」
 少し驚いたような表情を見せるシュバルツの顎を、ハヤブサのもう片方の手が優しく捉えて、そのまま少し強引に引き寄せる。

「ハヤ………んぅ………」

 チュッ、と、音を立てて、奪われる唇。何度も何度も優しくついばむように触れてくるその唇は、シュバルツの言葉と呼吸を徐々に奪っていった。

「んむ………! はあっ! は………んんっ!」

 呼吸を求めて開かれた口に、強引に舌を侵入させる。戸惑い逃げるシュバルツの舌をからめとると、愛おしさが命じるままに、そのまま強く吸い上げた。

「ん………う…………」

 唇を奪われ続けるシュバルツから、身体の力が抜けていく。ハヤブサはそれを優しく押し倒すと、ようやくシュバルツの唇を解放した。
「は…………」
 飲みきれなかった唾液を唇の端から溢れさせながら、トロンと瞳を潤ませ、酸素を求めて喘ぐシュバルツが、とても美しくて、たまらなく愛おしい。
「もっと……お前をよく、見せてくれ……」
 ハヤブサはそう言うと、シュバルツの浴衣の襟元に手をかけ、多少強引に前をくつろげさせた。
「あっ!」
 上半身の肌をハヤブサの視線の前に曝され、シュバルツは羞恥ゆえにその身を固くする。
 何を見られてどのように思われているのか分からないから、いたたまれないシュバルツは瞳を閉じて顔をハヤブサからそらした。
 だけど、身体を隠すことはしない。
「見たい」と
 そうハヤブサが望んだから。

「シュバルツ……!」

 白い肌を曝しながら頬を染め、小刻みに羞恥に震える愛おしいヒトの姿を見ながら思う。
 よくぞ―――――
 よくぞ今まで、自分はこの美しいヒトに、触れずにいられたものだと。

 今は二人の間を隔てる物も、理由も何もない。ハヤブサは柔らかく笑うと、帯をするりと解き、シュバルツの肌を隠す最後の一枚を取り払った。すると、ハヤブサの目の前に、欲を孕んではちきれそうになってしまっているシュバルツの牡茎が飛び込んでくる。

「……キスだけで、こうなったのか?」

 問い掛けると、愛おしいヒトの頬が、さらに勢いよく朱に染まった。
「見ないでくれ……! 恥ずかしいから………!」
 そう言って足をもじもじとすり合わせ、恥ずかしそうに身をふるわせるシュバルツの媚態は、もうこちらを煽っているとしか思えない。
「シュバルツ………」
 ハヤブサは柔らかく笑うと、そっとシュバルツの牡茎に手を這わせた。
「はっ! ああっ!!」
 感じてのけぞったシュバルツの首に、優しく唇を落とした。
「硬いな……。一度、抜いてやる」
「えっ? …………あ! 待っ……! ああっ!!」
 シュバルツが制止する間もあればこそ。
 ハヤブサはシュバルツの牡茎と自分のそれを同時に握り込むと、そこを擦り合わせるように扱き出した。
「ああっ!! 駄目だ!! こんな……! の………っ!!」
 先端から溢れだす愛液どうしが混じり合い、くちゅくちゅと淫靡な音を立てる。
「や………!」
 シュバルツはそれから逃れようと必死に身をよじるが、ハヤブサがそれを許してくれない。それどころかシュバルツの抵抗は、牡茎が擦り合わされるのを助長し、それは更なる快感の波を引き起こして、シュバルツを苛む結果となった。
「……んっ! ああっ!! はあっ!!」
「気持ちいいか? シュバルツ………」
 目の前の愛おしいヒトの痴態に陶酔しながら、ハヤブサは問い掛ける。それに対してシュバルツは、涙を飛び散らせながら、フルフルと頭を振った。
「あっ……! もうイク……! イク………からぁ……ッ!」
 離して、と、消え入りそうな声で愛おしいヒトが懇願する。そんな願いを、ハヤブサが当然聞き入れるはずもなく。それどころか、彼をさらに快感の中へと追い立てるべく、その胸でぷくり、と、熟れてきて、存在を主張しだしたその頂を、優しく指で摘み上げた。
「あああああっ!! 駄目……っ!!」
 ビクビクッ!! と、シュバルツの体が震えた刹那、ハヤブサがシュバルツの乳首を甘噛みする。
 その刺激に耐えられず、ついにシュバルツはぴゅる、と音を立てて果ててしまった。

「あ…………!」

 果てた身体は脱力して弛緩し、快感に恍惚とした表情は、正気に返った瞬間、自らの淫らさへの羞恥と後悔に染め上げられていく。
「シュバルツ………」
 その表情の変化すら愛おしくてたまらないから、ハヤブサはシュバルツの唇を優しく奪う。
「ん…………」
 シュバルツもそれに、甘やかに応じてくれた。
「気持ちよかったか……?」
 ハヤブサの少し意地の悪い問いかけに、シュバルツは「馬鹿」と頬を朱に染めながら顔をそらす。ハヤブサはふわりと笑うと、シュバルツの股を強引に開かせた。
「あっ!?」
 腹の下で戸惑うシュバルツには構わず、ハヤブサはシュバルツの入り口を求め、弄る。
 自身がもう悲鳴を上げていた。
 早く―――――愛おしいヒトと、一つになりたいと。
「ぅあっ!! あっ!!」
 指の性急な動きにシュバルツは悲鳴を上げ、その身体が跳ねる。それを押さえつけ、ハヤブサはさらにその中に指を突き入れようとして―――――あることに気付いた。

(………狭い?)

「……………」
 ハヤブサは無言でシュバルツの身体をひっくり返すと、その腰を、強引に高く持ち上げさせる。
「あっ!? な、何を……!?」
 ハヤブサの方に自分の秘所を突き出すような格好に、シュバルツは戸惑い、羞恥が煽られる。
「や………!」
 その格好から懸命に逃れようとするが、ハヤブサの腕がそれを許してくれない。あきらめてシュバルツがその体勢を受け入れると、ハヤブサもシュバルツを押さえつけていた手の力を緩め、片方の手で臀部をやさしく撫でさすりながら、もう片方の手で、秘所のあたりを広げていた。
「…………!」
 ハヤブサの、あからさまに秘所を観察する行為に、シュバルツの羞恥は極限まで煽られ、その身体が小刻みに震えることを止めることができない。
 それでも、懸命にそれを耐えた。
 愛すべき―――――愛おしむべき人が、自分のその痴態を望んでいるのだから。
「………………」
 つぷっと音を立てて、再びハヤブサの指が自分の中に侵入してくる。
「あ………!」
 びくっとしどけない悲鳴を上げるシュバルツに、ハヤブサが問うてきた。

「痛いか………?」

「え………? あ………っ!」
 問われながら指を動かされるから、シュバルツは少し悲鳴を上げる。しかし、ハヤブサのこちらを気遣うような問いには答えねばならぬと思うから、懸命に口を開いた。
「痛くは、ない……が…………ん………っ!」
 ずぶ、と、さらに侵入してくる指の深度が深くなる。
「ん………! あ………!」
 自分の中で蠢く指を感じながらも、シュバルツはふと疑問に思う。
 何故ハヤブサは、いつも以上にこちらを気遣ってくるのだろう?
 いつもの彼であるならば、もっと性急に自分を暴き立てて、中に挿入(はい)ってくるのに。

「どうした………? ハヤブサ………」

 だからシュバルツは、ハヤブサに問いかけずにはいられなかった。
 乱暴な中にも必ず優しさが潜んでいるのが、ハヤブサの行為―――――これに、変わりはない。しかし、今日は、いつも以上に神経質になっているような気がする。
 何故なのだろう?
 やはり、自分を久しぶりに抱くから―――――

 それに対してハヤブサから発せられた言葉は、驚くべきものだった。

「………処女のようになっている」

「えっ?」
 驚いて振り替えるシュバルツに、ハヤブサは少し苦笑すると、再び指をぐっと突き入れた。
「あっ!!」
 びくっと反応するシュバルツの痴態を楽しむかのように、ハヤブサは指を動かし続ける。それをしながら、彼は言葉をつづけた。
「まだ男を知らぬ、穢れのない処女のような菊座になっているんだ……。俺はお前を、どれぐらいの間抱いていなかったんだ?」
「んっ……! 確かな期間は……覚えてはいないが……たぶん、1年以上は抱かれてな―――――」
「もう一本、挿入(い)れるぞ」
 シュバルツの言葉が終わらぬうちに、ハヤブサが突き入れる指の本数を増やしてくる。シュバルツは下腹部に感じる圧迫感と違和感に、悲鳴を上げなければならなくなった。
「ああっ!! うあっ!!」
「狭いな……」
 二本を少し中で蠢かしてから、ハヤブサはそこから指を引き抜く。
「もう少しほぐさないと、お前が辛いぞ……。ほら、これを舐めて……」
 ハヤブサの指が、シュバルツの口の前に突き出される。
「ん…………」
 ちゅぷっと音を立てて、シュバルツの口がハヤブサの指を受け入れた。
「ん………う…………」
 ちゅ…………ちゅぷ………と、官能的な音を立てながら、シュバルツの口がハヤブサの指を湿らせていく。閉じられた瞳と、頬にかかる乱れた黒髪、それに、指を舐める舌と唇の動きが、シュバルツのただでさえ匂い立つ色気に拍車をかけている。もっともっと――――乱れた彼の痴態を見たくて、ハヤブサは、彼の乳首にそろそろと指を這わせた。 
「んっ!!」
 胸を弄られた愛おしいヒトが、びくっと身体を震わせながらくぐもった悲鳴を上げる。そのまま胸を優しく玩び続けていると、指を舐めるシュバルツの表情が、さらに蕩けたものになった。もう片方の手で入り口を弄ると、そこもひくひくと、妖しく蠢いているのがわかる。

 もっと。
 もっとだ。
 もっとお前を蕩けさせないと――――

 チュプン、と、音を立てて、口から指を引き抜く。湿らせて滑りをよくした指を、ハヤブサは再びシュバルツの秘部へと突き入れた。
「ああっ!!」
 その場所は、ハヤブサの指二本をするりと受け入れる。しかし、そこから更に奥に侵入させようとすると、処女性を取り戻してしまっているが故に、ハヤブサの指を締め付け、内側から押し返して、外に排除しようとしてきた。
(やはり、だめだな……。もう少し、ほぐさないと………)
 早くシュバルツと一つになりたい衝動を、なんとか自分の中へ押さえつけて、ハヤブサはシュバルツへの愛撫を続ける。久しぶりに抱く愛おしいヒト。なるべく、苦痛な思いをさせたくはなかった。
 しかし―――――

「ハヤブサ………! もういい……! 来てくれ………!」

 腕の中の愛おしいヒトが、扇情的に腰を揺らしながら懇願してくる。
 実際シュバルツは焦れていた。
 その場所は、処女性を取り戻してしまっているとはいえ――――内側は覚えているのだ。ハヤブサから受けた愛を。その熱を。
 はしたなくも、それを欲した。
 愛情を。
 熱を。
 快楽を。
 誰も触れることができないその場所を、ハヤブサに暴き立ててほしいと願った。

 そしてハヤブサが、自分と早く一つになりたいと願っているのに、自分のことを気遣って、それを懸命に我慢してくれている――――その事実も、シュバルツの中では辛かった。
 ハヤブサが喜んでくれるのなら、自分は、構わないのだ。
 このまま壊されても。
 抱き潰されてしまっても。
 例え、殺されてしまったとしても―――――

 ハヤブサになら、すべてを許せる。
 自分は、ずっと、そう思っている。

「お願いだ……! ハヤブサ………!」

 自ら股を広げ、自らの手で秘部も広げる。
 酷く淫らな行為をしていると、シュバルツは自分でも自覚があった。
 だからもしかしたら、ハヤブサに軽蔑されてしまうかもしれない―――――そんな予感が、シュバルツの中によぎる。しかし、それならそれで構わなかった。
 人間ではない自分は所詮、下卑た存在なのだ。こんな風に、ハヤブサに大切に想ってもらえる資格すら、自分は本来なら有している筈もないのだから。

「シュバルツ………!」

 しかしハヤブサは、その愛おしいヒトの媚態に頭から突っ込んでいった。
 死ぬほど愛したいと願っているヒトに「来て」と言われて、どうして、それに歯止めをかけることができるだろうか。ハヤブサは吸い寄せられるように己が肉棒をその秘部にぴたりとあてがうと、一呼吸のうちに、一気にそこを刺し貫いていた。

「あっ!! ああああああ――――――ッ!!」

 挿れられた衝撃が大きすぎたのだろう。シュバルツの牡茎から、白い液がパタパタと前方に零れ落ちているのが見える。
「………クッ!」
 ただでさえ狭い秘所が、果てた衝動でハヤブサ自身をさらに締め上げ、侵入を拒むかのように押し返そうとしてくる。それを強引に割り開くかのように、奥へ奥へと腰を進めた。

 俺を拒むのは許さない。
 もう一度、俺を受け入れてくれ。思い出してくれ。
 そして、俺だけの物に、なってくれ。

 果てた愛おしいヒトの牡茎を掴み、扱きあげる。胸の頂で鮮やかに色づき、熟れ切った乳首を優しく弄んでやる。
「ああっ!! だめっ!! だめぇっ!!」
 内と外から降り注ぐ刺激に、混乱した愛おしいヒトが、涙を散らしながら身を捩る。腰を揺らす。それがハヤブサの侵入を助長してしまっていることに、シュバルツは気づけない。シュバルツの腰が一揺れするごとに、ハヤブサの浸食は深まっていくばかりだった。
「ああっ!! ああっ!!」
 強引に割り開かれる秘部からもたらされる痛みに、シュバルツは悲鳴を上げる。だが、彼の身体は覚えていた。この痛みはやがて―――――抗いがたい快感と熱に、変わっていくのだということを。
 扱かれ続ける牡茎は、いつしか硬度を取り戻し、愛液を垂れ流し始めている。弄られ続ける胸からもたらされる刺激は、シュバルツの内側に甘やかな喜びを喚起する。
「はあ………ッ!! んあ………ッ!!」
 悲鳴だけだった声の響きに、官能の喜びが混じり始めていたのを、ハヤブサは聞き逃さなかった。
「シュバルツ……! 力を抜いて――――」
「あ…………」
 言われるままに緩む愛おしいヒトの身体を、ハヤブサは後ろから抱きしめる。顎をとらえて唇を求めると、シュバルツも優しく受け入れてくれた。
「ん………う………。んぅ………」
 それをしながらハヤブサは、シュバルツの狭い秘所をかき回すように動く。
「―――――ッ!」
 声にならない悲鳴を上げ、のけぞる愛おしいヒトを宥めるように抱きしめながら、なおもハヤブサは犯す行為を止めなかった。

 思い出してくれ。
 受け入れてくれ。
 お前のこの場所は―――――俺の物だったはずなのだから。

「あ………!」
 やがて、内側を強引にかき回していたハヤブサの物が、シュバルツの最奥にたどり着く。その瞬間、シュバルツの身体がびくっと跳ねた。自分が一番ほしかったその場所に―――――その刺激が与えられたのだから。
「……………!」
 それが、ハヤブサの方にも伝わってしまう。なぜなら、ずっとハヤブサを拒むようにハヤブサ自身をぎりぎりと締め付けていたその場所に、柔らかさが宿り始めたのだから。
「ああっ!! あああっ!!」
 突き上げられるごとに体内を走り抜ける衝撃は、シュバルツが確かに欲しかったもの。
 ハヤブサに与えられたいと、願い続けたものだった。

 しかし、1年以上誰も受け入れず、無垢な状態になってしまっていたその場所であるが故に、それを耐えきるにはその衝撃はあまりにも大きすぎた。その熱は、あまりにも凄まじ過ぎた。

「ああっ!! 駄目ぇっ!!」

 本能的にシュバルツは、身を捩ってその衝撃から逃れようとする。しかしハヤブサは、それを許さない。後ろから羽交い絞めにして、身体の奥を突き上げ続けた。

 逃がさない。
 やっと、捕えた。
 俺だけの場所。
 俺だけのシュバルツ。

 見せて。
 曝け出して。
 お前の総てを。

「ああっ!! ああっ!! あああ………!」

「…………ッ!」
 悲鳴を上げ、身を捩らせる愛おしいヒトが、自分自身をきつく締めつけてくる。
 精を放ってしまいたくなる衝動を、ハヤブサは歯をくいしばって耐えた。

 まだ
 まだだ

 俺はまだ、お前とつながっていたい。
 こんなものでは全然足りない。
 足りないのに―――――

「ハヤブサ……! ハヤブサ……ッ!」

 縋るように、名を呼ばれる。
 愛おしさが命じるままに、その唇をふさごうと顔を近づけたら、うわ言のような言葉が耳に飛び込んできた。

「もう……イク………! イク………!」

「シュバルツ……!」
「ああ……! 気持ちいい………! もう……耐えられない………ッ!」
「……………!」
「イク………! イク………! イク……か、らぁ………ッ!」
「シュバルツ……! ならば――――一緒に………ッ!」
 ハヤブサは、腰の動きを強引に加速させる。
 愛おしいヒトの身体を羽交い絞めにするように組み敷いて、無我夢中で楔を打ち込み続けた。
 布団に押し付けられたが故に、シュバルツの敏感な部分がそこに擦れ合ってしまって――――

「ああ……! もうダメ……ッ!」

 前と後ろから襲い来る快感に耐えられず、シュバルツの内側が甘く震えてしまった、その刹那。
「―――――ッ!!」
 忍者二人は身体を震わせながら、同時に達してしまった。ハヤブサの迸りは、シュバルツの内側を熱く汚し、シュバルツの物は布団に染みを作っていく。
「あ…………!」
 達した余韻の中で弛緩し、脱力していく愛おしいヒトの身体を、ハヤブサは追いかけるように抱きしめた。久しぶりに一つになれた愛おしいヒト。まだ――――離れがたかった。
「シュバルツ………」
 案ずるように名を呼びながら、その髪に触れる。久しぶりに味わう愛おしいヒトの身体は、処女性を取り戻していた。だから、もう少し気遣おうと思っていたはずだったのに。
 最後の方は強引に押さえつけて、その身体をこじ開けるように抱いてしまっていた。
 大丈夫だったのだろうか。
 このヒトにとって、先ほどの行為は、ただ苦痛に塗れるだけの物になってしまっていなかっただろうか。

「ハヤブサ………」

 呼びかけに応じて、愛おしいヒトが振り返る。
 そのヒトは、涙を流していた。
 身体を小さく震わせていた。

 だが―――――その面には、優しい笑顔が浮かんでいた。
 あまりにも綺麗に――――幸せそうに微笑まれる、から。
「……………」
 ハヤブサは吸い寄せられるように、その唇にキスをしていた。
(よかった………)
 優しく応じてくれるシュバルツの唇を味わいながら、ハヤブサは思った。

 自分も少しはこの大切なヒトに
『幸せ』を感じさせることができたのだろうか?
 もしもそうなら
 こんな幸せなことはないのに―――――

 ふわり、と、愛おしいヒトが優しく抱きしめてきてくれる。
 その感触を味わいながら、ハヤブサの意識は、いつしかまどろみの中に落ちて行っていた―――――



 ふと、前髪にかかる手の感触に気が付いて、ハヤブサは瞳を開けた。
 すると、目の前には、少し驚いたような顔をして、手を引っ込めようとしている愛おしいヒトの姿があった。
「あ………。起こしてしまったか………?」
 柔らかく笑いながら、でも少し申し訳なさそうに言うそのヒトの手を、ハヤブサは捕まえる。

 ああ、離れていかないでくれ。
 もっと――――触れていてくれていいのに。

「俺は、どれぐらい眠っていたんだ……?」
 その問いかけに、シュバルツは優しく笑う。
「そんなに時間は経っていない。四半刻ぐらいだ」
「そうか………」
 ハヤブサは捕まえている手を強く引っ張る。すると、何も纏っていない愛おしいヒトの身体が、腕の中に飛び込んできた。
「あ…………!」
 腕の中にその身体を抱き込むと、愛おしいヒトは瞬間身を固くする。だがそのあと、その背中優しく撫でてやると、シュバルツは、少し安心したかのように、身体の力を抜いていた。
「シュバルツ……」
 完全にこちらを信頼して、身を委ねてきてくれる様が愛おしくて、ハヤブサの面に笑みがこぼれる。それを見たシュバルツが、またそろそろとハヤブサの頬に手を伸ばしてきた。

「やはり……似ているな………」

「? 何が?」
 不思議に思ってハヤブサが問い返すと、シュバルツが少し困ったような笑顔を見せた。
「ああ……。実は、あの邪神に封じられた世界から脱出するときに、ある女の人に助けられたんだ。それが、お前によく似た女(ひと)だったから………」
「……そんなに似ていたか?」
 問うハヤブサに、シュバルツが頷く。
「髪の色とか、瞳の色とか――――」

 その女(ひと)は、ひどく綺麗な人だった。
 そして、優しく微笑んでいた。

 意識を失ったハヤブサと自分を結界の中で守ってくれて
 姿を消す直前、彼女はこう言った。

 ―――――息子をよろしくお願いします

「あれは………やはり、お前の『母親』だったのか……?」
「そうみたいだな……。俺も、実はあまりよくは覚えてはいないが………」
「覚えていない?」
 きょとん、と、問い返すシュバルツに、ハヤブサは笑顔を見せた。
「俺の母は、俺が幼少の頃に、亡くなっているから………」
「―――――!」
 それを聞いたシュバルツの瞳が、悲しみ故に曇る。
「す、すまない……! ずけずけと、立ち入ったことを聞いて――――」
「大丈夫だ、シュバルツ」
 ハヤブサはふわりと微笑みながら、シュバルツの頬を撫でる。
「母親がいないことで、俺が寂しさを感じたことはない。里の皆がとてもよくしてくれたし、『母親代わり』といえる人も、里の中に何人かいるしな」
「ハヤブサ……」
「それに……今は、お前がいる」
「――――!」
 驚くシュバルツの身体を抱き寄せ、自分の腹の下に引き込む。
「お前がこんな風に………俺のそばにいてくれるなら――――俺はもう、何もいらないな………」
「ハヤブサ……。あっ!!」
 腹の下のシュバルツが、唐突に悲鳴を上げる。彼の身体に、ハヤブサの『欲の証』が擦り付けられ始めたからだ。
「愛してる……! シュバルツ……。お前が、欲しい……!」
 ハヤブサが、欲望を隠しもしない眼差しで、シュバルツを見つめてくる。
「ば……馬鹿ッ! さっき、抱いたばかりだろう!? 何を言っているんだ!」
 シュバルツはそう言って、ハヤブサの腹の下から逃れようとする。しかし、この状況でシュバルツが自分から逃げようとすることを、ハヤブサが許すはずもない。強引に捕まえられた身体は、腹の下で強く抑え込まれてしまった。
「あっ!!」
 抵抗できない状態で組み敷かれたところに、欲を孕んだハヤブサの唇が降ってくる。ちゅ、ちゅ、と、音を立ててシュバルツの肌に吸い付く唇は、シュバルツの感じるところを確実に刺激してくる。
「あ………! あ………!」
 ビク! ビク! と、身体が跳ね、勝手にしどけない声が出てしまう。
「んう…………!」
 深く唇を奪われる頃には―――――シュバルツはもう抵抗する気力すら湧かないほど、ハヤブサの熱に酔わされていた。
「しかし……処女性を取り戻してしまうだなんて、お前はまるで、神話に出てくる『女神』みたいだな……」
 一度ハヤブサを受け入れたとはいえ、まだ侵入者を拒むかのように、固く閉じているシュバルツの入り口。そこを指で犯しながら、ハヤブサは言葉を紡ぐ。
「んっ! あ……! め、女神………?」
 愛撫に翻弄されながらも問うてくるシュバルツに、ハヤブサはふわりと微笑みかけた。
「知らないか? ギリシャ神話に出てくるゼウスの妻、ヘラのことを」

 ゼウスの妻ヘラといえば、嫉妬深いことで有名な女神だ。よくゼウスの浮気相手やその子供を迫害する首謀者として、たびたび神話の中に登場してくる。
 しかし、1年に一度――――彼女の身体が処女性を取り戻す時がある。その時ばかりは浮気性のゼウスも彼女のもとに舞い戻り、夫婦の愛を確かめ合うのだという。

(シュバルツが処女性を取り戻したのは、おそらくDG細胞の『自己再生能力』が働いた結果なのだろうけどな………。つまり1年シュバルツを抱かなければ、穢れを知らぬ状態になっているシュバルツを抱くことができるということになるのだろうが………)

「あ………! ああ………!」

 腹の下で自分の愛撫に、ビクン! ビクン! と、しどけなく反応しているこの美しいヒトを見る。

(無理だな)
 ハヤブサはそう結論付けざるを得なかった。
 こんなにも美しくて愛おしいヒトを、1年以上も抱かないだなど自分が耐えられない。
 それに、自分は絶対に、浮気などしたくない。自分の人生において、愛すべき人は、一人いてくれたら十分。自分の歩む道の隣にこのヒトがいてくれたなら―――――それでもう、自分は十分幸せだった。
 だから
 だから、シュバルツ―――――

「時間はたっぷりある……。たくさん抱いてやるからな……」
「え………? うあっ!!」
 ズブ、と、音を立てて、ハヤブサが強引にシュバルツの中に入り込んでくる。

「お前の『ここ』が、俺の形を覚えるまで―――――」

「そ、そんな……ッ! ああっ!!」
 ハヤブサの肉棒が、シュバルツの堅い秘肉を強引に割り開いてかき回す。逃げ惑うその腰を捕まえて、深い律動を開始した。
「ああっ!! ああっ!!」
 犯される衝動のままに、ただ、喘ぐしか出来なくなるシュバルツ。
 ハヤブサはそんな愛おしいヒトの様に、心行くまで溺れていった。

 こうして――――二人の愛し合う夜は、更けていくのだった。



 
 



 

夜のしじまに

は~い! 書き上げることができました~。
ただ忍者二人がいちゃこらしているだけの話ですみません。
でもこういうの、大好きなんですよ。やっぱり愛し合うのがいいですね~。
書いてて萌えれましたし、とても楽しかったです。いい感じのウォーミングアップになりました!
感想………を、聞くのは贅沢ですよね。やっぱりwww
少しずつ帰ってくる反応に縋りつくように糧にしております。ここに通ってきてくださっている皆様、本当にありがとうございます

それではまた次回作で、お会いできる人はお会いしましょう!

夜のしじまに

『ただひたすらに君を想う』『龍と剣とその拳と』の完結編も兼ねた番外編です。 ハヤブサさん×シュバルツさんのR-18的なかなりけしからん内容になると思いますので、楽しめる方だけ、どうかお楽しみください。

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日
2016-04-13

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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