世界が一つになるとき

 その驚天動地の出来事が起こったのはなんの変哲もない昼下がりであった。
 月並みの日であったため、子供は校庭ではしゃぎまわり、働く気のない若者は自室のベッドで寝転がりながら、楽に稼げる方法を考えていた。
まっとうな社会人は働き、老人は公園で何も考えずに日が過ぎるのを待っていた。
 しかし、誰もが次の瞬間に空を見上げるのだった。部屋に居るものは窓から顔を覗かせた。
皆がそうしたのは、突然流れ出した音声のためである。音声は、どうやら自分たちの頭上から流れているらしかった。
 果たして、世界中の視線が集まった空には何か巨大な円柱のような物が浮かんでいた。東京タワーの近くに、通天閣の近くに、エッフェル塔の近くに、自由の女神の近くに、とにかくあらゆる空に同じ物が浮かんでいた。
世界中の人々の耳朶を打った音声は明らかにその円柱たちから流れているようだ。
「ウドンコ ゴマミソ グルグル マンジュウ」
 日本語ではないようだったが、音だけを当てはめると、こう聞こえた。
これを聞いた人々は、自分がしていた作業を中断し、このことについて頭を捻った。
そして、こういったことについて頭を捻ることを専門とする集団、つまり研究者たちはこう断定した。
 まず、この円柱は宇宙人のものである。
しかし、これが流す音声については何も分からないでいた。
 それから、三日後。世界中の研究者たちが集まり、ああでもないこうでもないと言い合った結果、どうやらこの音声は「あなた方は私たちに対して友好的ですか?」という意味らしいということになった。
このことはニュースとして世界中に流れ、世界中の人々が宇宙人との交流を求め、彼らの言葉で友好を意味する「ウドンコ」と叫んだ。
 子供たちも「ウドンコ」と叫んだし、若者も「ウドンコ」と叫んだし、大人も老人も「ウドンコ」と叫んだ。
今、地球は一つだった。宇宙人に遭いたい、私たちがこの宇宙で孤独な知的生命体でないということを証明してほしい。その一心で纏まっていた。

 これは、地球から何億光年も離れた銀河の中の一つの星での会話。
「あの知的生命体が確認された惑星からの返事がきましたよ」
「おお、どうだった?」
「どうやら私たちの建設計画に賛成してくれているようです」
「そうか、これでようやく宇宙高速道路の設立を進められるな」
「ええ、ちょうどあの惑星が邪魔でしたからね。
住民の許可を取ったなら、遠慮なく壊せます」
「うむ、これでもっと私たちの生活が便利になるな」

世界が一つになるとき

世界が一つになるとき

ショートショートの練習

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-04-11

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