cosmology

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一話

とある休日の午後

私、藤咲 彩華(ふじさき さいか)は友人の松野 千夏(まつの ちなつ)と午前授業の後、学校の近くのカラオケに行ってきた帰りだ。

他愛のない話をしていたのだが、そこで最近多くなってきている謎の生物…"妖魔"についての話題になった。



「妖魔が出たの?」


「そうそう、昨日妖魔がこの辺に出たらしいよ。お父さんが言ってた」

「そっか、ちなっちゃんのお父さん陸軍の人だったっけ」

彼女の父親は陸軍軍人。妖魔関連のことは警察ではなく、すべて軍…特に陸軍が受け持っているため、ちなっちゃんのお父さんはそういうことに詳しい。



私も身内に陸軍の人がいるが…全くと言っていいほど話さないので、そのような情報はちなっちゃんを通して知る。

「誰か襲われたりしたの?」

「ううん、軍察の援護のおかげで大丈夫だったって」

「へえー」



軍察…私が生まれた頃に設置された、陸海軍とは少し違う軍 らしい。

警察と似たようなものらしいが…



「けど怖いね。最近軍の人もこの辺うろうろしてるし…」

「本当だよ。しかも、また妖魔が出たから見回りの人増やすとかなんとか」

「うわあ、やだね」



見回りしている軍人でよく見かけるのは、軍察の人だ。黒くかっこいい軍服がよく目立つ。

軍察の仕事は人を守ること、ということは知っている。だからこそ、見回りを多くするんだろう。

ちなっちゃんから聞いた話によると、妖魔を倒すのは、陸を守る義務がある陸軍の人なんだそう。たとえ妖魔を見つけても、軍察が倒すのはいけないらしい



別に、軍察の人が妖魔を倒してもいいんじゃないかと私は思う。



「なんか、軍の人がいるとドキドキするよね」

「ああ、イケメン多いもんね」

「そういう意味じゃない!ちなっちゃんはそうかもだけど

なんか、緊張するっていうか」



「大丈夫だよ、軍人がいれば安心だし

それにあたし達能力者なんだから、もし何かあっても大丈夫だって!」

「ちょ、声大きいよ

無能力者の人がいたら…」



能力者と無能力者

そのまんま、特殊な能力を持つ者とそれを持たない者という意味だ。



一昔前、ここ地界には無能力者が圧倒的に多かった。

そのため、無能力者が能力者を差別していたらしい。一部では、能力者狩りという名の能力者殺しが流行ったとか…

その時代に生まれなくてよかったとつくづく思う。



「えー、最近は無能力者の方が少ないでしょ?」

 「けど、昔能力者狩りとか流行ったらしいし。目つけられたら…」



「君達!」

「はい!!」



突然男性の声が前方から聞こえ、思わず返事をしてしまったが…他に人はいないし、私達を呼び止めたのに違いないだろう

その声の主を見ると黒い軍服を着た 、紺色の髪と中分けが特徴的な男性だった。

…軍察の人だ



見た目は至って普通だが、ちなっちゃんの好みだろうなぁと勝手に想像。

その人はこちらまで走ってくると、優しく微笑んだ。なぜ呼び止めたのだろう

「突然ごめんね、軍察の者なんだけど、

えっと…君達は能力者だよね。桜原の生徒?」

「は、はい。」

私達の制服を見てから、軍察の人はそう言った。

そこまで珍しいデザインでもないセーラー服なのだが…学校をピタリと言い当てられ、思わず私とちなっちゃんはお互い目を合わせた



「そっか。それじゃ通っていいよ

ごめんね、無能力者の学生には家まで軍察一人つけてるんだ」

「なるほど」

さすが軍察、そこまで徹底しているのか…

やはり能力者と無能力者では扱いに大きな差がある、そう改めて思った。

「もし妖魔が出たら、すぐに能力を使うんだよ?

そうしたら軍察と陸軍がすぐ駆けつけるから」

「はい」



「あのー…よく桜原生ってわかりましたね」

ちなっちゃんがそう言った。

私も気になっていたため、聞いてくれたことに心の中で感謝する。



「桜原は生徒が能力者だけだからね。…結構軍で有名だよ」

「へえー!」



確かに、桜原は能力者しか入ることができない学園だ

…どちらとも入れる学校や、無能力者のみの学校は多くあるのだが、能力者のみの学校は珍しいんだそうだ。まあ、私立では多いらしいが



「それじゃ、気をつけてね」

「はい」



「ありがとうございます!



…なにあのイケメン!!惚れる!見た目も中身も完璧!」

「そう言うと思った」

やはり予想通り、あの軍人さんは彼女の好みだったようだ。

だが、確かに中身はいいなと思った。軍人でもあんなに優しい人いるんだなあ…



「うーん、けど聖也さんもいいんだよね。やはり黒髪イケメンに限る」

「はは…」



東雲 聖也(しののめ せいや)さん。

若いのに海軍長で、強くてかっこいいと一部の女の子の間で今話題。最近はよくテレビでも見かける

…外面はいいが、実際中身はかなりドス黒い





「ありがと彩華、今日は楽しかったよ!

またねー!」



「またね〜!

…」



ちなっちゃんはバス通いなため、バスに乗るちなっちゃんとはここで別れる。

それにしてもこの辺り、人通りが少ないな…軍の人もいないし。こういうところにいるべきだろうが



(家帰る前に、コンビニでも寄ろうかなあ…)



「…?」



少し先に、何か黒い人影のようなものが見える

人間…じゃない。あんなに全身真っ黒な人間がいるはずがない



これは、

もしかして:

「グルルル…」



「…よ、



妖魔……?」




登場人物   1

藤咲 彩華(ふじさき さいか)
(藤咲という苗字は叔父の物。学校に通うにあたって苗字がないと不便なので借りさせてもらってるだけ。)

性別:女        
年齢:18歳(高校三年生)

身長:150cm      

イメージカラー:臙脂色

容姿:黒髪(というか焦げ茶)に赤目。前髪は右分けで、腰下までのロングヘア。パッツン。

能力:念動力(俗に言うサイコキネシス。触れることなく物を操ることができる)

無銘(まだよくわからない。刃物でなんでも切れる…?)



松野 千夏(まつの ちなつ)

性別:女

年齢:18歳(高校三年生)

身長:158cm

イメージカラー:蜜柑色

容姿:緩いウェーブのかかった薄茶色の瞳に、蜜柑色の瞳。

能力:考えてない

二話

「これはやばい」



いや、妖魔だからといって人を襲うやつとは限らない。けどあそこどいてくれないと困るんだけど



どうしよう、引き戻すか?

そうだ、さっきの軍人さんを呼べば…



シュンッ

「グァァアア!!!」



ズシャッ

「ぎゃあああ!?!?」

ダダダダダッ (全力疾走)



な、なななに今の!?!?

突然後ろに妖魔が瞬間移動して、腕切られた!?



瞬間移動(テレポート)の能力持ち!?



妖魔でもそんな能力使えるやつがいるなんて、反則だろ…



シュンッ

「グォアア!」

「ッ」



さっきの軍人さんも言ってたし…能力を使うしかないか



どうしよう、上手くいくかな



「…あれ?」

「ギュァア」ぎりりり



妖魔の動きが止まった?

私、まだ能力は使ってないはず…



ひゅっ←石ころ

「!?」



ボッッ



「きゃっ」

い、石が爆発した!?



「よう、お嬢ちゃん



怪我はねぇか」 



「…え」



石の飛んできた方を見ると、金髪で…赤い軍服の男性がこちらへと歩いてきていた。

赤い軍服なんて、初めて見た。とてつもなく目立つ



…というか

自分でアレ投げといて言う台詞か!?



「リーダー!

女の子がいるのに爆弾投げるとかどうかしてます!」



やっぱり、あれは爆弾?

けど、見た目はただの石だったはず…



「うっせえな紺時、俺の能力にケチつけんのか」



能力…あれがこの人の能力ってことか

じゃあ、最初に妖魔の動きを止めたのも…



「そ、そういうわけでは

…あ、さっきの!」


「!」

赤い軍服の人の後ろから走ってきた人を見ると、さっきの軍人さんだった。

この人が赤い人を呼んでくれたのかな

…さっき、かなり大きい悲鳴出しちゃったし



「すまねえなお嬢ちゃん、ここいらの見回りの奴らがサボりやがってよ…。後でボコしとくからな



紺時、お前も無能力者探しだけじゃなくて見回りもしとけクズ」



この赤い人…能力も見た目も中身も怖すぎる。

そういえば、軍人さん 紺時(こんじ)っていうんだ。珍しいな、苗字なのかな



「んな同時になんて無理ですよー、しかもここまで結構距離あるし」



そうだ、助けてくれたお礼を言わないと



「あの、

ありがとうございました!」



「いいってことよ

あと

そいつまだ死んでねえから気をつけろ」


「!!」さささ



黒焦げ…というか元々真っ黒いからどれほどなのかわからないが、焦げて臭くなった妖魔を赤い人が指差し、まだ死んでないと言った

あれでもまだ生きてるのか



「ここなら誰もこねえよな

よし紺時、そのお嬢ちゃん連れて逃げろ

…この軍察長様直々に こいつをぶっ殺す。一般人に怪我を負わせた罪は重いぜ?」

やっぱり怖い!



「き、君!早く来て!」

「え、あっ」

紺時さんにぐいっと腕を引っ張られ、私はよろめきつつも赤い人から離れた

直後



ボッ



ドガァァアン



妖魔へ向かって小石達の雨あられ、からの

大 爆 発

(ひゃーーっっ!?)

さっきとは威力も範囲も桁違い。あんなのくらったらひとたまりもない



「リーダー、ほんと派手にやるなぁ」

紺時さんは相変わらず冷静。私が爆発に巻き込まれそうになった時はかなり焦ってたのに…

あ、こういうのを優男っていうのかな?いや違うか



「それより…よく保ったね。よかった」

「?」

紺時さんが、なんだか申し訳なさそうな表情をする。

私に対してかな

「能力者だからって、あんな妖魔相手にそれだけの傷で済むなんて」

「あんなって、他は違うんですか?」

「うん。能力持ちの妖魔自体稀だよ。

本当にごめんね、怖かったでしょ…僕が付いていればよかった」

「い、いえ!」



やはり、能力持ちの妖魔はレアなのか。それに加えて瞬間移動だ。

そんなのに出くわすなんて、ラッキーというかなんというか…



カツカツ

「紺時、終わった。報告頼む」

も、もう終わったのか…!



「あ、リーダー

わかりました」

「お嬢ちゃん、本当にすまなかった

ともかく、無事で良かった」



赤い人がこちらを向いた。よくよく見ると、瞳も赤い。…私と同じだ

そういえば、リーダーと呼ばれてるし偉い人なのかな?



「あの、…リーダーとかって 呼ばれてましたよね」



「ああ

そのまんまだ。俺は軍察長、ロート・シャルラッハ。知らねえか?」



「…!?」

(軍察長、初めて見た…!)

「そ、そんなすごいお方が、なぜこんな場所に」



「ある奴に話があってな。そん時近くで妖魔が出たっていう報告があったもんだから、俺が来た」

「は、はあ

あ、そうだ。私 藤咲彩華と言います」

「おう、知ってるぜ。」

「?

…あ、もしかして。桐真さんから?」

「おう。陸軍長からちょくちょく話聞いてる」

「やっぱり…」

あれ?そういえば

軍察の人は、妖魔を倒しちゃいけないんんじゃいけなかったか?

なのにこの人、ド派手にやっちゃったよな…。そもそも、陸軍も来ていない



いやけど、この事はちなっちゃんから聞いたことだから一般人は知らないし、この人に聞いたら何故知ってるのか問いただされそう。

それは嫌だ



「お前、能力者なんだよな」

「は、

はい、一応」



「へえ、なるほどな」

…視線が痛い



「…よし

お前、これから軍本部に来い」

「はい



……はい?」



え?

「俺はさっき言った通りある奴に話があるからな、紺時に案内頼むわ。」

「!?」

「紺時ー!こいつ本部まで連れてけ!!」

「!?!?」

勝手に話が進められてる!



「えーっ!?俺仕事残ってるんですけど!」

よかった、これで大丈夫か…



「あ、今から壱堂呼びますよ!あいつ今さっき休憩入ったばかりなんで!」



「おー、壱堂か。

…よし、頼んだ!」



「…?」



「あー

壱堂は見た感じお前と年近いし、気ぃ使わなくていいぜ」

いやそれを聞きたいんじゃないのだけども

私と年が近い、ってことは 20くらいってこと?

「そんなに若いのに軍人…?」

「んまあ、ちょっと変わったやつでな。18だが軍察やってんだ



んじゃ、俺は行くぜ。壱堂来るまで待っててくれ」



18って、同い年…!



「は、はい

ありがとうございましたっ」



ああ、

結局断れなかった



登場人物  2



ロート・シャルラッハ

性別:男     

年齢:不明。容姿は20代半ばくらい

身長:182cm

イメージカラー:緋色

容姿:金髪赤目。前髪の左側にあるハネ毛の先のみ黄緑色。両耳にゴールドのピアスをいくつか。

軍服の色は赤。本来の軍察の軍服の色とは違うためとても目立つ。

私服も赤系のものばかり。訳ありで白の服は滅多に着ない。(ワイシャツ白だけど)

能力:重力操作(ものにかかる重力を自由に操作できる)

爆弾化(触れたものを爆弾に変化させることができる)

武器:銃、軍刀(サーベル)

備考:軍察長。長といっても一番偉いわけではない。あくまで全班の中で一番偉く強い人という立ち位置。他の軍察の者からはリーダーと呼ばれ慕われている。

口が悪いが、とても仲間思いで芯の強い人物。みんなからの信頼もあつい。



紺時(こんじ)

性別:男    

年齢:22歳

身長:176cm

イメージカラー:紺

容姿:紺色の髪と瞳。中分けと三白眼、左目下の泣き黒子が特徴的。

能力:クレヤボヤンス(透視、千里眼等。サポート向き)

備考:容姿は良くて中の上くらいなくせに性格がいいからモテる。

幼い頃軍人に拾われ、それからずっと軍人として育てられてきた。本名は長谷川 紺時。

三話

「…」

携帯を見てみると、待ってろと言われてから5分が経っていた

軍の本部に行くのが嫌だからかな…時間が経つのが遅く感じる



「彩華殿でありますか?」

「…!」

若い男性の声がした。

そちらを向くと、童顔気味な男の子がいた。彼は黒い軍服…ではなく、黒い学ランを着ている。

近場の学校で制服は学ランなところは確かないはずだし、もしかしたらそういうデザインなのかな。背中と腰に、太刀をさげている。



その瞳は真っ黒で、何を考えているのか全くわからない。



「あ、えと。壱堂くん?」

「はい、自分が壱堂であります。

えーと、それでは早速 本部に案内するであります」

確かに年が近い…ように感じるが、同い年とは思えないな。



そしてこの特徴的な喋り方。これは、陸軍の人に多いんじゃなかったか?

見た目と喋り方のギャップがすごい



同い年…らしいし、私はこの子にわからないことを聞こうと思った。

「あ、あのさ。」

「?」



「軍察長さんに突然本部に行けとか言われて、訳がわからないんだけど…壱堂くんはなんでかわかる?」



「そりゃ、軍察にご招待ってことでありましょうよ」 

「え?」



ご招待って

「簡単に言えば軍察になれ」



そういうことか…



「なんでよ私が?JKだよ!?」

「自分もまだDKであります」



「…すごいね、よくやろうって思ったね」

学生て軍人だなんて、考えられない。

この子は高校に通ってるのに、なぜ軍人をやろうと思ったのか



「そりゃ、リーダーからのお誘いだったし

つまり、強いから軍察になれってことだし

この上ない喜びであります」

「…私、別に強くないんだけどな」



「…それで、他に質問は?」



「えっと、これはちょっとどうでもいいかもなんだけど

…普通、妖魔っていうのは 陸軍の人が倒すんじゃないの?」

「ええ、その通りであります

ですが、軍察でも妖魔を倒せる…というかむしろ、倒すのが役目の者達もいましてね」

「そんな人もいるんだ…」



「リーダーはもちろん、自分や 自分を読んだ紺時先輩もそうでありますね。

そういう班ってのが存在するんであります」

「へえ」



紺時さんも壱堂くんも、ってことは あの軍察長さんと同じように強いのかな?

いや、そんな…感じは、しないけど



「で、彩華殿もリーダーにご招待されたということは

そのような班に入れられる可能性大であります」

「それって…妖魔と戦うってこと?」

「ええ」

「そんな!」

「まあ とりあえず、本部で話を聞いて、それから決めるであります」



「…うん」



ー本部ー



軍本部は街のど真ん中にあるし、中学生の頃校外学習でこの周り見たからよく知ってるけど、入るのは初めて…

やっぱり広いなぁ。迷っちゃいそう



「これから会議室で三班の班長が訓練生向けの講習会を開くから、それを聞いて軍について学んでこいであります」



「講習会?」



そういうのも軍本部で行ってるんだ…訓練生には訓練生の学校があると思ったけど



「ええ。

訓練生といっても、もう軍察になることが決まっている者達であります。その方達向けの話になるでありますが、そこは飲み込んでください」

やっぱり、私みたいな軍について全然知らない子向けの講習会なんて、ここでやらないよね…



「彩華殿が来ることはもう三班の班長に知らせてあるから。

それじゃ、自分はこれで失礼するであります」



「壱堂くん」



「?」



「…案内してくれてありがとね」



「いえ



話を聞いて、無理だと思ったら俺に言って。リーダーに断ってあげるから」



「うん、わかった」



「…」



とりあえず、その講習会する人が怖い人じゃなければいいな





ー会議室ー



コンコン



ガチャ



「し、失礼しまーす…」



入ってすぐ目に入ったのは、巨大なモニター

なにより、とてつもなく広い。しかし、肝心な訓練生の姿はまだなかった。



入ってすぐのところに、水色の髪をした男性が立っていた。待っていてくれたのだろうか



「あ、

君が彩華ちゃんかな?」



「は、はい!」



「僕はエリオット。さ、そこに座って」

「ありがとうございます」



一番後ろの席を差され、そこに座る



めっっちゃ優しそうな人だ!

紺時さん並みに優しそうだよ、よかった…!



「…リーダーが指名したらしいけど、ずいぶん若いね。いくつ?」



「18歳です」



「18!?

…あ、壱堂と同じかあ。そりゃすごい」



やっぱり驚くよなぁ。

そういえば、壱堂くんはどうやって軍察になったんだろう…お誘いだからって、普通未成年でなれるものなのか?



「あの…壱堂くんはどうやって軍察に?

軍察長さんに言われたからって、そうすぐになれるものなんですか?」



「うん、なれちゃうなれちゃう。リーダーが選ぶのは本当優秀な人材だけだしね



にしたって、あんなクソ生意気なのが俺より上の一班なんてね!…あ、彩華ちゃんは班について知らないのか」



やっぱり、あの軍察長ってのはすごいんだなあ。にしてもなんで私が選ばれたんだ?能力を見たならまだしも



ていうか、クソ生意気呼ばわりされてるよ。壱堂くん…



「はい、少ししか

一班…て、一番上なんですか?」



「ああ。そうだよ

ちなみに俺は三班、つまり三番目だ」



そんな、見た感じ断然エリオットさんの方が強そうなのに!



「なんであの子が一班なんですか…!?」



「簡単さ

それだけ強いってことだよ」



「!」



「おっと、そろそろ時間だ

一番後ろでごめんね、見えるかな?」



「大丈夫ですよ」



「よかった。

訓練生…は、軍察に入ることが既に決まっている子ってのは聞いたかな?」



「はい」



「12人しかいないんだ

だからもう少し前に来てもいいんだけど、他の子に君みたいな特別枠がいるって知られちゃうとちょっと面倒でね…実際、壱堂の時にそういうことがあったんだ。

ちなみに、訓練生の子は前の方の扉から入ってくるよ」



「!

わ、…わかりました、気づかれないよう頑張ります」



そりゃそうだよな…過酷な訓練を受けてきた人達が、壱堂くんや私みたいな軍察長に指名されたって理由だけで軍察になるやつがいるなんて知ったら…



私はまだ決まってないけども!



「ありがとう

じゃ、行ってくるね」




登場人物 3



壱堂(いちどう)

性別:男     

年齢:18歳

身長:172cm

イメージカラー:紅赤

容姿:茶髪黒目。おめめ死んでるけどくりくり。

軍服ではなく、面倒だからと通っている高校の学ランをそのまま着用している。

能力:複製(触れたものをほとんど同じ構造でいくつでも生成することができる。壱堂は自分自身でさえいくらでも複製することができてしまう)

武器:大太刀(とてつもなく重いのだが、彼は軽々と振るうことができる。怪力の能力は持ってないため生まれつきの怪力なのかもしれない)

備考:めっちゃ童顔。軍では~であります口調。

色々と謎な人物。軍では苗字しか名乗ろうとせず、名前は未だ不明。少し遠いところにある高校に通っていると本人は言っているが、真相はわからない。

仕事をする際には狐面をつける。これは他の知り合いに自分が軍人だとばれたくないから らしい。ならなぜ軍服に着替えないのか。

年上の女性がタイプ。

四話

エリオットさんは、巨大なモニターの前に立った。



うちの学校にもあのような透けているタイプのモニターはあるが、体育館以外にはないし なによりあんなでかいの初めて見た。



「今日講師を務める第三班班長のエリオット・クラックだ。



じゃあ、早速講習を始めるよ。少し長くなるから、疲れない姿勢でいいからね」



やっぱり、こういうのは長くなるよなぁ…



最前列にいる12人の訓練生達を見る。

離れているからあまり見えないが…やはり男性の方が多い



「まず基本的なとこから話すね。

種族は僕ら人間、そして天族、魔族、妖族、巨人族、神族がいる。

界はここ地界、天界、魔界、妖界…は本当にあるのかまだハッキリしてないね。



あと、この世のどこかに存在するという神界。これは知らない子もいるんじゃない?ないって説の方が多いし、そもそも学校でも教わんないだろうしね」



神界(しんかい)

初めて聞いた。神界というくらいなのだから、神族がいるということか?

だが、神族は他の界に1人づついると聞いたことがあるが…



「そしてどの種族、界の者たちも

大まかに"能力者"と"無能力者"で分けられる。



能力者とは、能力を持って生まれた者のことだ。その能力とは様々で、戦闘に向いているものもあれば、向いていないものもある。



無能力者とはその反対、能力を持たずに生まれた者のこと。



ここにいる軍察訓練生の皆は、能力者だね?

訓練生は知ってると思うけど…軍察と海軍は能力者しかなれない。陸軍は、できるだけ多くの人が欲しいとかで無能力者でもなれるよ。もちろん能力者でも無能力者でも、それなりに強くないとなれないけどね。」



訓練生が知ってるであろうことを話しているのが、私のためのように思えてならない。

嬉しいけど、わざわざ申し訳ない…



「えーと、うーん…

これは能力者しかいない君達の前で話す必要はないかもだけど、まあ聞いてくれ



まず、能力の糧になるのは魔力だ。この魔力っていうのは、能力者でも無能力者でも皆持っている。しかし量と色が、それぞれ違う。無能力者でも、能力者より魔力が多いなんてこともよくよくあることだ

…だが、その魔力を能力として扱えなきゃ意味がない。

それができるのが、能力者だ。いくら魔力が多くたって、うまく扱って特殊な能力として魔力を変換することができなければ、能力者にはなれない。



で、能力者によって能力は違うし様々だね?

複数能力を持つものだっている。

それは、魔力の種類が違うからってことがわかっているよ。つまり、魔力によってどのような能力になるか決まるんだ。

複数能力を持つものは、違う色、種類の魔力を持っているってことだね



あ、同じ能力だけど、魔力の色が違うなんてこともよくあるよ。だから、魔力で能力を特定するのは無理だね」



魔力についての話は、学校でも習ったが…ここまで詳しく聞いたのは初めてだ



けど、私は能力を2つ持っているのに、魔力の色は赤の1つだけ。

どっちの能力の魔力も同じ色ってことかな?これは、結構珍しそうだぞ…



「…で、また話は変わるが

昔から妖魔という、謎の生物が地界にはいるんだ。人に従順な個体もいれば、凶暴な個体もいる。

皆は愛玩用のとかなら見たことあるんじゃない?飼ってる人もいると思う。そういうのは普通に動物と同じように扱われるね。



…で、人を襲うような妖魔は海にも陸にもいるから、それを駆除する為にも地界には戦争があった時代から変わらずずっと軍が存在するんだ。



ちなみに名前の由来は、妖族とも魔族ともとれない容姿をしてるから妖魔。僕は魔族寄りだと思うけどね。」



そう、妖魔というのは 人に懐くものも少なからずいる。これは私もよく知っている

だが、そういうものは"妖魔"というより"動物"や"ペット"と呼ばれることの方が多い。

実際、動物園や水族館にも妖魔と同じようなものがいる。

俗に言う動物とはかけ離れた容姿だが、やはり動物や動物。可愛らしいのはかっこいいの、様々だ



さっき会った人型のものは、初めて見たが…



「ここからが最も重要だよ



昔は能力者の方が圧倒的に少なくて、能力者は異常だと差別されてた。その時代から、無能力者が能力者を殺す、能力者狩りっていうのは多かったみたいだね。



年々能力者の数が増えてきて、逆に無能力者の存在価値が薄れてきていた。過去の復讐とでもいうかのように能力者が無能力者を殺す事件が多発。もちろん、その頃も無能力者による能力者を殺す事件…能力者狩りも多かった。これは一時期大問題になったね。

そんな時に、軍に設置されたのが軍察。



陸を守る陸軍、海を守る海軍、人を守る軍察。

君らの役目は人を守る事だ。」



その事件をきっかけに、軍察が設置されたと 初めて知った。

だから、人を守る軍察か。能力者も、無能力者も関係なく守る…



「…あ、一部の子は知らないと思うけど、ちょっと前まで空軍もあったんだよ。

けど今空軍は天界で、天族に空中での戦闘方法を教えてもらってる。長期訓練中ってことだね。天界は地界より進む時間が遅いとかどうとかで、向こうでは何日間しか経ってなくてもここでは何ヶ月も経ってるとか

空軍になりたい子はあと1年くらい待たなきゃかも」



全然知らなかった!

空軍、というのは 飛行機?を飛ばして 爆弾?を落とすとかそういうのじゃないのか、

自分が飛んで戦うのか…



けど、それは私にもできるかも



ーーー



「じゃ、講習はこれでおしまい。」



「「ありがとうございました!」」



…やばい、途中寝てた



訓練生の人達がどんどん会議室から出て行く

皆が出て行ったところで、エリオットさんが登ってこちらへ来た



「お疲れ様」



「お疲れ様です…」

「彩華ちゃん、最後ら辺寝てたよね」



「すみません、意識飛びました…」



「大丈夫だよ、ほとんど僕の雑談だったし

それで…重要な所は聞いてくれたし

軍察に入るかどうか、決められたかな。質問とかあったらどんどん聞いてね」



「…あ

あの、関係なくなっちゃうんですが

空軍は、どういう戦い方するんですか?」



「空軍?

あれはね、特殊な靴と腕輪をしてて、そこに魔力を送ると魔力の羽的なのが出て飛べちゃうんだよね。それで空中で戦うの」



「え、

それって…魔力が切れたら」



「もちろん落ちる。高いところだったら即死だね。

現に天界でも、落下して死人が出てるって噂。だから、空軍が一番死亡率高いんだ」



「……」



「…そういえば、彩華ちゃんの能力聞いてないね

どういう能力なの」



「あ、えっと…

念動力、俗に言うサイコキネシスですね。

あと、…よくわからないやつが1つ」







「よくわからないやつ?」



「はい。自分でもよくわからないんですよね」



「…彩華ちゃん、桜原の生徒か」



「?

え、ええ」



また言い当てられた

どんだけ桜原は有名なんだ



「じゃあ、何度か能力を使っての授業もするよね?

その…よくわからない能力は使わないの?」



「はい、使わないです

かなり危険なので」



「危険?」



「…昔、家庭科の自習で 包丁で人参を切ったんですよ。とにかく切ろうと思って

そしたら、まな板どころかテーブルまで包丁がスワッ…と」



「!?」



「切った感覚が全くなかったんです、空を切ったような感覚でした。」



「…つまり、刃物で切ると貫通するってことかな…」



「たぶん。

それ以来、刃物自体極力使ってないです」



「そりゃ強いはずだ」



「?」



「君、短刀隠し持ってるだろ?」



「え!?

…はい。訳ありで、使ったことはないんですが」



「なるほどね…

それ、普通の一般人はもちろんだめだ。銃刀法違反。」



「はい…」



「軍人になれば何持ってても平気なんだよね」



「…うーーん」



「まだ決まらない?」



「だって、妖魔と戦うなんて」



「あ、まあ

それもあるけど。パトロールの方が圧倒的に多いね」



「それでもですよ、怖いし…」



「うーん…けど、僕的に君みたい子、欲しいしなぁ」



「…」



「あ。

じゃあさ、リーダーに頼んで 試しに誰かと演習するのとかどう?」



「演習?」



登場人物  4

エリオット・クラック

性別:男

年齢:30歳

身長:183cm

イメージカラー:サフランイエロー

容姿:水色髪に黄色の瞳。ガタイはいいが、優しい顔立ち。

能力:地面操作(地面を自由に操るよ!)

武器:大剣

備考:第三班 班長




メイン舞台の地界はここ地球となんら変わりない

というか、宇宙とかその他もろもろをまとめて地界という

私達にとっての世界…無限の空間が

この創作世界では地界ということになる

地界は一つの界に過ぎず

他の界はまた他の無限の空間として存在している

cosmology

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特殊な能力を持った能力者と、それを持たない無能力者 そして、六つの種族と五つの界が存在する世界の オリジナル軍人メインのお話。 小説を描いてから全て漫画にする予定でしたが、時間がかかりそうなので小説の時点で投稿。 たまに、同じ世界観だけど全く関係のないキャラ達の短編も載せるかも。 ファンタジー、厨二要素満載。グロとかも入れてく予定。 タイトルとはあんまり関係ないです。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-04-10

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著作権法内での利用のみを許可します。

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