(仮)プラズマン企画書

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      電光仮面プラズマン企画書
 

☆今、ウルトラマンに代わるヒーローを

 まずは『ウルトラマン』が50周年を迎えたことに心からのお祝いを申し上げたい。

 TVを、レンタルビデオ店を、そしてインターネットを埋め尽くし、毎年数多が作られ続けるドラマの中で、10年、20年、いや、50年先にまで語り継ぐ価値のある作品がいくつあるだろう。
 恐らく1パーセントあるかどうか。
 今、ドラマはTVという軛を離れ、あらゆる階層に対応し始めた。だが同時に、使い捨ての時代は終わっていない。半年前話題の中心になろうとも、半年後には大半が過去の遺物だ。『◯◯ロス』などと誉めそやされても、結局は消えていく。
 それらを観る度に思う。今を創るドラマ製作者たちは、今の糊口を凌げればそれで満足なのであろうか。
 韓国のドラマに負けっぱなしで満足なのか、と。
 かつて映画は死滅しかけた。原因は製作者たちの怠慢だった。TVは映画に取って代わり、日本人最大の娯楽となった。次世代に残すべき、あるいは残すことのできる映像遺産を創れる資格を得た。しかし、現在のような量産、垂れ流し状態の中、果たしてTV製作者たちは本当に、次の世代に残せる遺産を創り得ることができるのであろうか。
 もっと一本一本を丁寧に創らねばならない。
 大切に創らねばならない。
 さもなければ今でこそ王道を走っているTVも、日本映画の辿った衰退と同じ轍を踏むことになる。今こそ全ての製作者はもう一度、己に問いかけるべきだ。
 その矜持、その誇りの在処を。

 そんな中で、空想特撮ドラマ、謂わば「特撮」は希有な道を辿ってきた。
『ウルトラQ』放映以来50年、ウルトラマン、そして仮面ライダーは、未だに現在を生きるキャラクターである。今でも子供たちは特撮ヒーローと聞くと夢中になれる。子供たちだけではない。今現在、書店の一角を賑わすウルトラマンや仮面ライダーの関連書、評論・研究書の類いを見れば一目瞭然である。あれを読んで楽しむのは子供たちではない。20代、30代40代の立派な(?)大人たちにも、ヒーローたちは未だにアピールし得る。かつてブラウン管を夢中になって見つめていた、現在の大人たちは、DVDを借り、買い、観て、かつての夢に浸るだけではない。自分の子供たちに自慢げに解説もできるのである。ウルトラマンと仮面ライダーは今や、力道山、長嶋茂雄に次ぐ立派な固有名詞、世代を越えたヒーロー、家族共通の話題となった。ハヤタと本郷猛が当時のままのキャスティングで変身しても、誰1人として異論を述べたりなどしない。
 100年後に語り継ぐことのできる作品がTV界にあるとすれば、『ウルトラマン』『仮面ライダー』は必ずその中に入ることだろう。
 当時の製作者たちが、現在にまで続く異様なまでのブームを予想していたわけではなかろう。ブームの要因には様々なものが考えられるし、一言でそれを述べることは不可能だが、彼らがこの作品群を単なる子供だましの番組とは考えていなかったことだけは確かだ。どんな場所に公開しても恥ずかしくない作品を誇りを持って創ろうとしたのだ。これをただの結果論と考える向きは、『ウルトラセブン』の中に、何の熱意をも感じ取れない木偶である。『ウルトラセブン』がなぜ伝説となったか、理解できない唐変木である。
 もちろんそれ相応の、いや、相当な予算が必要である。設備も人員も要ろう。だが何よりも必要なのは熱意である。どんな視聴者にも胸を張って公開できる作品を創ろうという熱意だ。その熱意を持って創り上げられた作品は、必ずやそれを放映した製作局、提供したスポンサーの財産ともなり得る筈だ。我々は製作局やスポンサーをも語り継ごうとしているのである。21世紀を代表する番組を創り上げた製作局、スポンサーとして。
 今から21世紀末に残るだけの作品を、一から創り出そうとすれば、それこそ膨大な労力を要するだろう。だが、我々は一度、『ウルトラマン』といういろんな世代に通用するパスポートを手にしたではないか。
 現在に通用する言葉で、決してただの子供だましに終わらず、ウルトラマンに匹敵する新しいヒーローを創り上げたその時、それは必ず22世紀に残し得る作品となることだろう。
 そして同時に我々は、現在様々な制約に縛られてしまったウルトラマンには決して出来ない冒険をしていかなくてはならない。『ミラーマン』『ファイヤーマン』『ジャンボーグA』が成し得なかった、ウルトラマンを超えるという作業だ。


☆番組の目指すもの(主人公)

 別冊宝島『怪獣学入門』の中で、「ウルトラマンにおける甘えの構造」と名づけられた一章があった。そこで述べられている意見は、新しいヒーローを創ろうとする我々に恐らく一つの重大な示唆を与えてくれるであろう。
 なぜウルトラマンは地球を守るのか。
 果たして今、もし本当に地球が謎の侵略者の攻撃を受けたりした場合、誰が我々を守ってくれるのであろう。あるいはもし、他の知的生命体を抱く星が何らかの侵略戦争に巻き込まれた場合、我々は善意の助け人になれるであろうか。(これをより具体的に考えるには、多少危険な考え方ではあろうが、「地球」を「日本」、「謎の侵略者」「他の知的生命体」を「諸外国」に置き換えてみればよい)
 前者に関してはこれは全く絶望的期待でしかないと思われる。恐らく銀河の片隅に存在するだけの辺境の星を、無償で守ろうなどと考える人間がどこにいるというのか。皆無であるとの断言はできない。が、それを真剣に期待するのはあまりに虫のよすぎる話ではある。そんな善意の宇宙人を創造しても、それは説得力ある設定とはなり得ない。幼児はともかく、ある程度の年齢に達した子供たちは決して騙されはしまい。我々の番組の主人公たる、凄まじい力を持った宇宙人が地球を守るには、それ相応の理由がなくてはならない。新しいヒーローは決してただの、善意の宇宙人であってはならないのだ。
 ヒーローが地球を守る理由をどのようなものにすればよいのか。
 三つのパターンを考えてみた。

(1)主人公がヒーローと地球人との青年の合体したものであり、地球を守ろうというのはその青年の意志である。
(2)主人公はある事情により地球に逃亡してきた者であり、地球を第二の故郷にする以外になかった。
(3)主人公は星としての地球ではなく、その中に住む誰かを守りたいという使命感に駆られた。

 その中で(1)は説得性に欠けるように思われる。現在地球に、少なくとも日本の中に、本気で命を懸け、地球を守りたいと考えている青年が何人いるというのだろう。
 使ってみたいのは(2)(3)の設定である。何かの理由があって、主人公は地球に逃げ込んできた。決して平和な星ではないが(この辺りは現実をきちんと描写すべきである。例え子供番組の中であっても、いや、子供番組だからこそ、正しい現実というものを刺激的過ぎない範疇で子供たちに知らしめるべきである。我々が子供たちに自慢できるような社会を作っていないのは事実なのだから)、中には善意に満ちた人々もいた。逃げるだけの生活に疲れを覚えていた主人公は、彼らの温かい気持ちに触れ、微かな希望を見出し――ここでなら生きてゆけるかも知れない…――、この星で暮らすことを決意する…。(ここで幾人かの方は眉を顰められたかも知れない。これまで単に逃げてきただけの主人公という設定に反対を唱える方もおられるやも知れない。しかし、主人公の逃げ出したものが戦争そのものからだったとしたらどうだろう。主人公の逃亡の理由については細かな設定の段階で詳しく述べてゆきたい)
 だが、激化する惑星間戦争(銀河大戦)の戦火は地球にも飛び火し、地球人は自らの星の中だけで安穏に生活しているわけにはいかなくなる。
 そんな中、一人の地球人女性(少女)と出会った主人公は、彼女の優しさ、ひたむきさに惹かれ、惑星間戦争の飛び火から彼女を守るために再び戦いに赴く。それは図らずも、地球を守る戦いにもなっていった…。
 そう、ヒーローが一人の女性を愛し、彼女を守ろうと戦うことが、地球を守ることにつながっていくのである(もちろんこの定義は主人公の口から言わせなければならない)。下手な大義名分を並べ立てるより、遥かに説得力のある理由だと思うのだが。少なくとも私は、ただ単に地球を守れと命じられても決して動きはしない。もし命懸けで戦うのなら、愛するもののために戦いたい。
 子供番組において、恋愛を前面に押し出すことに反対の向きもあろうかと思われるが、恋愛こそ全世代における普遍的なテーマだ。幼稚園に通う子供ですら、誰かを好きになることを知っている。かつて『ウルトラセブン』に夢中になっていた子供たちが、モロボシダンとアンヌのほのかな愛に心ときめかしていたことを忘れてはならない。『宇宙戦艦ヤマト』において、古代進と森雪の恋が描かれていなければ、あれ程のヒットがあっただろうかと考えて頂きたい。恋愛は人間を非論理的に衝き動かす最大の要因である。どんな立派な大義名分も、一人の人間を立ち上がらせ、戦わせる力において、恋愛に敵いなどしないのである。
 我々が創ろうとしている新しい物語、それは星と星を越えた純愛物語でもある。
 そのためにはヒロインは男女を問わず万人に愛される存在でなければならない。『ウルトラマンネクサス』の失敗は、ヒロイン造形の失敗に起因するものが大きいと私は思っている。氷室冴子の描きそうなヒロインは、特撮ヒーローの、少なくとも円谷のヒロインには向かないということだ。

☆その他の設定について

1)敵…地球を狙う侵略者への疑問点
 ウルトラマンシリーズにつき纏うもう一つの疑問は、なぜ宇宙からの侵略者がわざわざ地球などという辺鄙な星を狙わなければならないのか、である。子供たちも多少意地の悪いのになってくると、それをネタにして散々馬鹿にしたものである。地球が狙うべき価値のある星だからなどと言う理由は、現在では全く通用しまい。子供たちに、馬鹿にするなと怒られ、笑われるのがオチである。
 では、侵略者が地球を狙う理由を作ってしまえばどうだろう。
 連中は地球を狙うのではない。地球の中にある、あるいは地球のどこかに落ちたあるものを狙って攻め込んでくるのである。それは一体何か?
 これも細かな設定の段階で詳しくしていきたい。
 銀河大戦の渦中にある惑星、ないしは星系がメインの敵になるであろう。よって敵の設定、創造には宇宙的な広がり、スケールの大きさが必要となろう。後述の構成部で明らかにするが、宇宙を舞台にしての戦いにも話を広げるからには、安っぽい造りにはしてはならない。
 もちろん、他の宇宙人、侵略者の登場も大歓迎である。但し、どんな宇宙人のどんな作戦も、決して安っぽいものにならないようにしたい。間違ってもたった一人の子供の心を奪いにくるだの、一人の子供を使って侵略の手を伸ばすような間抜けな連中であってはならない。
 もう一つ、地球の中にも敵を創りたい。かつて東宝が『ゴジラ』を生み出した原動力ともなったものの、我々が闇を恐れる心、今や失われてしまった地球の神秘性に対する畏怖をもう一度彷彿とさせるような巨大怪獣を、現代にも通用する形で登場させたい。
 また一つ、怪獣には敵方の、あるいは地球人が必要と思っての命名以外に名前をつける必要はない。後、怪獣の破壊した街がすぐに修復されていないシーンも設けなければならない。前回破壊された街が、皆の手で修復されているシーンから始まるエピソードも設けなければならない。

2)脇役…地球を守る特殊集団を創作するに当たっての提言
 かつて私は勤めていた学習塾での休み時間、長期間にわたって100人以上の子供たちに、歴代ウルトラマンシリーズに出てきた特殊チームの中でどれが一番魅力的だったかを尋ねたことがあった。答はウルトラ警備隊、次いでGATS。XIGは少々メンバーが多過ぎるという理由で次点。間違ってもZATを上げるものはいなかった。UGMに至っては知っている子供の方が少なかった。(これには『ウルトラマン80』が再放送されていなかったという事情もあるだろうが)
 なぜか。答えは簡単である。服装が格好いいからか。武器が多いからか。秘密兵器の発進シーンが格好いいからか? それもあろう。
 だが何よりも、ウルトラ警備隊、そしてGATSの存在自体が格好いいからである。
 子供たちが“憧れる”ことのできるカッコいいオトナたちだからである。
 彼らには人間としての生活以前に、プロとしての生活がある。決して余計な脱線はしない。苦悩することはあっても、それを決して仕事の中に持ち込まない。彼らの失敗がもたらすものは、民間人の死体の山である、それを彼らは熟知している。身に滲みて承知している。だから民間人は彼らを警察や自衛隊と同様、同等のプロ組織として眺めるのである。子供たちは彼らに憧れるのである。平成シリーズの防衛チームはどれもこのセオリーをきちんと踏襲しているように思われる。
 新しいヒーロードラマにおける、新しい特殊チームが参考とすべきはウルトラ警備隊。いや、彼ら以上のプロ集団を創り出さねばならない。
 間違っても私怨のためにしてはならない攻撃をしてしまい、地球に危機を招くような隊員や、パトロールの最中、制服を脱ぎ捨てて水泳をしたり、一般人にランニングで抜かれたり、子供に化けた怪獣と相撲を取り、負けるような隊員たちに子供たちは憧れなどしないのである。そういったものが人間としての彼らの魅力だなどと思っている方々は、子供たちを嘗めている。ドラマの中に登場する名もない民間人――つまり我々――の命を、紙吹雪以上に軽視している。そんな人々が考え出したような特殊チームなど、小学4年生に「あいつらダサいよね」と言われるものでしかないのである(これは事実である)。同じ理由から、特殊チームの中に子供を入れるのも反対である。ホシノ少年なる子供が活躍できたのは、当時、他に比較できる格好いい特殊チームが存在しなかったから、視聴者が騙されたに過ぎない。アニメや東映の戦隊シリーズなど、比較対照となり得る格好いい連中が数多く存在する現在、子供の御機嫌を取るためにそんな真似をしようものなら、そんな特殊チームだけでなく、番組の製作姿勢自体が嘗められる結果となるだろう。
 これは特殊チームの隊員たちに、一切苦悩するなというわけではない。苦悩するのもよし、恋に悩むのもよし、コンプレックスを抱えるのもよしである。要はそれらを仕事の中に持ち込むなと言っているのである。
 彼らは徹底したプロでなくてはならない。葛藤が失敗を生むこともあろうが、その失敗はプロのやる失敗でなければならない。彼らは時には非情とさえ見られるくらいに冷静でなくてはならない。場合に応じてはマキャベリストでなければならない。煙草や酒を嗜むプレイボーイであっても構わない代わりに、いざ仕事にかかれば、個人的な苦悩を一切忘れることのできるプロでなければならない。世の中が必要とする存在でなければならない。組織の設定、基地セットのリアルさ、所持品の格好よさ、もちろんそういったものも必要である。が、想像上の特殊チームに本物の説得性を加えるためには、製作者側が彼らをいかに本物に近く創り上げられるかという命題に真剣に取り組まねばならない。
 先にも述べたが、必要なのは子供番組が子供を嘗めるなという姿勢なのである。
 そしてもう一つ、彼らはウルトラマンがいなくても、多少時間は掛かるやも知れぬが、いずれは怪獣を倒せる存在でなければならない。あくまでウルトラマンと対等の存在でなければならない。
 彼らの詳しい設定案は後出のコーナーにて紹介する。

3)セット、技術に関する注文

『ウルトラマングレート』のセットは素晴らしかった。特に感心したのは、2話でのビルの破壊シーンである。毎回とは言えまいが、ヒーローが巨大化して戦う回には、あれくらいの大掛かりなセットが必要ではあるまいか。チマチマしたものを造って壊しても、現在の子供たちは喜んでなどくれない。技術も同じである。昔の特撮のよいところは残すべきだが、そればかりにこだわるべきでもない。最新のSFX、CG、使えるものは何でも使うべきである。子供たちの目は肥えてきた。大人たちのノスタルジーだけでは子供は決して満足してはくれない。子供たちの描いたいかにも子供っぽい絵を見て喜ぶのは大人たちだが、子供たちは決してそんな絵を描きたかったのではないし、稚拙な絵の中に魅力も感じなければ見たいとも思ってなどいない。彼らにとっては完成度の高い絵画の方が描きたい対象であり、余っ程魅力的でもあるのである。
 かと言って、『ウルトラマンダイナ』の第1話みたいなこれ見よがしのCG多用は勘弁願いたい。却って画面が安っぽくなる。その点では『ウルトラマンX』第1話には物凄い野心を感じた。あれにモブシーンが加わっていたら、あの1話は近年の『ゴジラ』を凌駕していたのではないかと思われる。
 オーストラリアと気候が全く違う日本で、恒久的なフルオープンセットというわけにもいくまいが、それに近いセットは欲しい。それに、以前何かのTV番組にて、竹中直人氏とマット=ジョージ氏が、日本とアメリカの映像製作の違いみたいなものを述べている際に、アメリカの特殊技術班は恐ろしく手間暇掛けたシーンほど、さりげない見せ方をすると言っていた。大賛成である。金を掛けないで済むシーンは極端に切り詰めよう。しかし掛けるべきシーンには最高級の手間暇を掛けよう。但しそれをひけらかすような真似をしてはならない。
 さりげなく、あくまでさりげなく。それこそ最高の格好よさというものだ。もちろんそのためにかかる費用は莫大なものにもなろうが。

4)シリーズとしてのTV番組

 シリーズ構成を担当する人間が、常に脚本をチェックする体勢を取る必要がある。前後の回において登場人物の台詞、趣味趣向や必殺技の出し方に差異や矛盾があってはならない。それにこの新しいヒーローは一つのビルドゥングス=ロマンとしての側面を持っていなければならない。よって登場人物の感情の動きが一つの流れを持っていなければならない。
 かつてのウルトラマンのシリーズは無視しても構うまい。もし設定上必要になることがあっても参考程度に止めたい。もちろんウルトラ兄弟は一切登場させない。ドラマとしての完成度の高さがあれば、彼らの応援を頼む必要もない筈だ。大人から子供までが夢中になれるくらいの緊密なドラマ作りさえ行われていれば、余計なものに煩わされることもない筈だ。
 過去のウルトラマンシリーズを軽視しているのではない。逆である。ウルトラマンを生み、育て、蘇らせた過去の業績には心よりの敬意を払いたい。だが、かつてのウルトラマンシリーズの仲間たちには決して助けを求めたくはない。この意見は彼らに助けを求めねばならないようなドラマを決して作ってはならないという、自らに課した戒めなのである。その点で、『ウルトラマンティガ』の不退転の決意は胸に響いた。
 もう一つ。
 我々はこれまでにないヒーローを創らなければならない。これまでの繰り返しに終わってはならない。
 では、これまでにないヒーローを創るにはどうすればいいのか。
 方法は一つ。かつての『ウルトラマン』シリーズがやらなかったことをやればいいのだ。それは人類の宇宙への進出である。宇宙の中の後進国である地球という星が、初めて宇宙に飛び出し、異星の文化や人類と遭遇し、戸惑いながらも彼らの仲間の一員になってゆくという物語を創ればいいのだ。
 新しいヒーロー物語、それは地球人類が宇宙の一員として認められるまでを描く一つのオデッセイでもあるのだ。

 以上が新しいヒーローを創り出すに際しての、我々制作者が守らねばならない基本路線である。
 我々の目指すものは、「ゼロからの出発、ゼロへの帰結」である。続編のことなど一切考えまい。一年間。この一年間に全てを賭け、全てを注ぎ込もうではないか。

(仮)プラズマン企画書2

    電光仮面プラズマン設定案


(1)序章
 地球が199X年を迎える頃、宇宙では恒星間戦争、名付けて第三次銀河大戦がそのピークを迎えようとしていた。
 多くの惑星が戦火に明け暮れる中、地球からおよそ二万光年離れた、銀河の中心星域に位置する暗黒星雲ブラックバードも、圧倒的軍事力をバックに、近隣星系の覇権を狙っていた。銀河有数の軍事大国である連中の派遣する巨大船艦隊は、周辺星系の防衛艦隊を次々に撃破、たちどころにブラックバード星系帝国とでも言うべき支配圏を広げていった。
 彼らは自分たちの星系に資源が少ないことを知っていた。際限のない軍事開発が自分たちの星を限りなく汚染してしまったことをも知っていた。彼らは新天地を欲していた。そして何より、ブラックバード帝国の王の座に収まった軍部の司令長官バッファロスは、自分がその権力を一手に納めることを夢見てもいた。元来、好戦的なブラックバード星系が近隣諸国を圧倒、席巻するのは容易かった。銀河連邦最大の敵、ガストン=バロア帝国が連邦から独立した時の状況を真似たのである。
 もちろん彼らの目的は銀河の一角に自分たちの巨大帝国を建設すること。だが、取り敢えずブラックバードのその場での最終目標とされたのが、アルフェリア星系であった。空前の科学力と文明とを誇る彼らの星は、同時に資源の宝庫でもあった。ブラックバードはここを手に入れ、自分たちの拠点とすべく、軍を進めた。アルフェリアの防衛軍もよく敵の攻撃をしのぎはしたが、奇襲戦法と踏んだ場数の差は如何ともし難く、激戦の末、首都メイフェルを落とされてしまう。
 星の住民の大多数を奴隷とされたものの、何とか難を逃れ、地下に潜んだアルフェリア軍や市民の生き残りたちはともに手を取り合い、連中を撃退する方策を模索していた。出た結論は一つ。暗黒星雲出身であるブラックバード星人は光に弱い。だから彼らはアルフェリアを攻めた時、最初に恒星からの光を、アルフェリア上空に雲を張ることで遮断した。
 メイフェルの中央に立つ〈プロメテの塔〉。これはアルフェリアの科学力の全てを注ぎ込んで作り上げられた人工太陽でもあった。自分たちの太陽が行く末短い老恒星であることを懸念したアルフェリアの人々が、もしものことを考えて作っておいた科学の遺産でもある。ブラックバード星人が光に弱いのなら、《プロメテの塔》の秘密に気づくや否や、それを最初に破壊した理由も頷ける。
 人工太陽を修復するのは簡単だ。問題はその駆動エネルギーをどうするかである。かつての銀河連邦の友好国に救いを求めたとしても、あちこちで動乱の続く中、連邦とバロア帝国が衝突している現在、彼らも自分たちの身を守るのに手いっぱいという状態、とてもアルフェリアに助けをよこしてくれる余裕などある筈がなかった。仕方なく彼らは決死隊を組織して、駆動エネルギーに必要な〈メガリュームT=401〉鉱石を求めて旅に出た。乗るはアルフェリア最大の球形宇宙船〈アルファ〉。目指すはケンタウルス星系第六惑星。現在においては動乱の渦中にない数少ない星系の一つで、迷惑の罹りそうな知的生命体もいない。
 アルフェリアの人々の期待を背に受け、アルファは出発した。
 だが、アルファの動きはブラックバードに読まれていた。幾度も激戦を繰り返し、何とかケンタウルスまで到着し、危険なメガリューム採掘に成功し、後は戻るだけ…。その時になってアルファは、待ち受けていた、これまでにないブラックバード星系の大艦隊に包囲され、遂に力尽き、メドゥーサ星系第三惑星に墜落してしまう…。
 アルフェリアに拠点を設けたブラックバード帝国は巨大基地の建設を開始した。そこから第二、第三の侵略の手を銀河各地に延ばす積もりであった。何とか近隣の友好諸国が自分たちの体勢を立て直し、銀河連邦警備隊(その中に銀河連邦警備隊ウルフ=マクシミリアン隊長の妹、マリア=マクシミリアンの姿も見えた)とともにアルフェリア支援のための艦隊を送り込む頃には、ブラックバード帝国はその周辺に鉄壁の守りを敷き終えていた。要塞が完成したのである。しかも、下手に攻撃しようものならまず最初に死ぬのはアルフェリア星人という仕組みになっていた。
 そのブラックバード帝国総督バッファロスの下に、またしてもアルフェリアの生き残りたちが動き始めたとの情報がもたらされる。アルファの墜ちた先であるメドゥーサ第三惑星に、かなり遅れてはいるものの、立派な知的生命体が住んでいるらしいこと。アルフェリアの生き残りたちは彼らに連絡を(テレパシー、通信、揚げ句の果てには人間まで送り込み)取り、メガリュームを取り戻そうとしているらしいこと…。
 バッファロスの命令一下、アルフェリア軍部の生き残り一掃作戦が展開された。そして同時にバッファロスは、彼らの一縷の希望をも打ち砕くために、そのメドゥーサ第三惑星、地球に向け、攻撃部隊を送ることを決定する。目的はアルファと、そこに積まれたメガリューム鉱石を完全に破壊すること…。


(2)地球・199X年
 その、謎の物体がNASAの遠距離天体レーダーに捉えられたのは、199X年の初秋だった。
 とにかく物凄い大きさ、そして速さだった。最初、冥王星軌道で発見された物体は、翌日には土星と木星の中間にまで接近してきていた。それが一体何であるのかがさっぱりわからない。とにかくわかっていることと言えば、それが巨大な球体であること、そしてどうやら、物体がこのままの軌道をとり続ける以上、その最終的な到達地点は地球であることくらいだった。
 巨大隕石、地球に衝突か。NASAからのその知らせは最初、アメリカ合衆国と各国首脳の密約により伏されていたが、アマチュア観測家の知らせによってたちまち暴露され、マスコミに公表されざま大混乱を巻き起こした。各国政府は対応に追われた。アメリカ合衆国が対宇宙迎撃ミサイル発射という大統領命令を発動することで何とかその場の騒ぎを収めたものの、次の報告はその合衆国大統領をも愕然とさせる内容だった。
 木星と火星の中間に達した巨大球体は何者かの攻撃を受けており、球体の方でも必死に反撃を試みている…。
 何者か…、火星の周辺にて自由自在に動き回る宇宙船を持ち、しかも地球からの通信を一切受け付けない連中、それは地球外生命体ということではないか。それも、もし片方が片方を攻撃しているだけならば、まだ話は簡単、救いもある。地球外生命体が地球に接近しつつある隕石を止めようとしていると考えればいいからだ。だが、攻撃されているもう一方が反撃しているということは、明らかに二つの陣営が戦争をしているということではないか。地球外生命体が起こした戦争に、地球が巻き込まれつつあるということではないか…。この事実はこれまで宇宙生命体の存在を公式に認めようとしていなかった各国政府の見解を覆すどころか、彼らをさえパニックに陥らせることになったのである。
 射ち出した迎撃ミサイルは、案の定、どちらかの放った攻撃兵器によりあっさりと撃破された。アメリカ合衆国は各国と対応を協議、宇宙設備を持つ各国は急遽、各自のスペースシャトルにレーザー攻撃兵器を搭載、宇宙に送り出した。
 だが、二つの陣営の宇宙船は地球の技術を遥かに凌駕しており、各国の打ち上げたスペースシャトルは一機たりとて帰還してこなかった。
 迫る巨大球体宇宙船。墜落はどこだ。NASAのコンピューターはフル稼働でその軌道を割り出した。太平洋。
 が、安心するには早すぎた。大気圏内にまで侵入してきた攻撃側戦闘機隊は執拗に攻撃を続け、球体を日本上空にまで追いやってしまった。こともあろうに球体は東京上空にて大破、成田到着を控えた民間航空機一機を巻き込んだ。降り注いだ破片は東京各地に甚大なる被害をもたらした。死者だけで四千人、負傷者はその十倍に及んだ。
 大部分の破片を撒き散らせながら、球体宇宙船は中国の奥地、タクラマカン砂漠にまで飛び続け、そこでやっと墜落した…。
 各国は外宇宙に自分たち以外の文明が存在すること、そして自分たちの知らないところで大規模な戦争が起きていることを認めざるを得なくなった。対応を迫られた各国政府は代表者会議を開き、対宇宙防衛組織を設立することを決議。だが、なかなか打開策は出てこなかった。
 ところがそれから13年後、地球は再度、謎の地球外生命体の侵略にさらされた。やってきたのは全長60メートルにも及ぶ戦闘機械。戦闘機械は各国を暴れまわったが、最後の標的となったのはまたしても東京。各国の軍、その設備を借りての大激戦の末、何とか敵を追い払ったものの、被った損害は前回を上回った。こうなるともはや、各国が独自で防衛兵器開発をするより共同で取り組もう、という意見が出るのは当然で、1年後、アメリカ、日本が中心となった十カ国により、地球防衛軍が発足した。部隊は各国の軍や警察からの精鋭により成り立ち、兵器開発も共同、しかも最優先課題とされた。
 三度目の来襲、二度目の侵攻を受けた時点で(その侵攻はアメリカから始まった)、地球防衛軍はその組織固めを終え、出動できる態勢を整えていた。そして、凄まじい戦闘の末、防衛軍は初めての勝利を手にしたのである。
 地球防衛軍は〈EGS〉(Earth=Gardian=System)と名付けられた。その中でも特に優秀な人材を集めたのがEGS選抜部隊である。常に最前線にて活躍する、常に死と背中合わせの七人、彼らの名を〈EG=7〉と言った…。

 以来5年間、地球防衛軍の戦いは十三回に及ぶ。その度に防衛軍は多くの犠牲を払いながらも、何とか敵を撃退してきた。地球人は自分たちが遂に恒星間戦争に巻き込まれたと思っていた。この時点で彼らは、ブラックバード星系の存在や、彼らの目的がアルファの残骸であることなど全く知らなかったのだから。
 一方、そのブラックバード帝国も、アルファの残骸、つまりはメガリューム鉱石捜しに意外なくらい苦慮していた。彼らのどんな探査装置にも、アルファ残骸は反応しないのである。これはアルファが特殊コーティングを施されていたためでもあったが、同時に機体がばらばらになり過ぎたためでもあった。ブラックバードの潜入部隊は、最初の攻撃部隊が記録していたアルファ墜落のデータに頼り、攻撃兵器を送り込まざるを得なかった。攻撃兵器の来襲が東京に集中したのはそのためである。
 しかも、メガリューム鉱石を積んだ本体は中国に墜ちたというのに、誰もそれに気づいていなかった。ブラックバードの攻撃部隊もアルファが日本に墜落したところで引き返してしまっている。
 東京近郊に墜ちたアルファ残骸の一つから、謎の発信が出され始めた。テレパシーを使った、アルフェリア星系からの救いを求める通信であった。が、悲しいかな、地球にはまだテレパシー通信を傍受できる機械はなかった。
 だが、ブラックバードはその通信を傍受した。
 アルフェリアの生き残りたち抵抗組織への弾圧が激化、同時にブラックバードは、地球に向けて新たな、そして大規模な攻撃兵器を送り込むことを決定した。傘下に加えた星々にも、攻撃部隊を送ることを強要したりもした。場合によっては地球に住む人間など巻き添えにしても構わない。抵抗が頑強なようなら、最終的には地球ごと破壊することも辞さない…。
 地球は最大の危機を迎えようとしていた。そんなことを知らない地球では、一人の少女がEGS予備学校を首席で卒業、予備隊課程を経ずしてEG=7メンバーに大抜擢されようとしていた…。


(3)主人公2人のキャラクター設定案

◎天童 玲
 二十歳。158センチ、41キロ。この物語の主人公である。
 世界的な宇宙工学及び物理学の権威、そして平和主義者として知られていた天童隆一博士の一人娘。だが、物語の開始時点で、彼女に両親はいなかった。博士と妻(彼女にとっては母)美奈はアメリカの学会からの帰途、飛来してきた謎の物体(アルファ)に飛行機ごと撃墜されてしまっていたのである。
 当時二歳だった彼女に、両親の記憶らしい記憶はない。ただ、両親、特に父隆一博士の信念だった平和主義は、幼くして預けられた叔父風間雄二夫妻により、徹底して教え込まれた(叔父である風間雄二は、地球防衛軍EGSの要職にありながら、無益な戦いを何よりも嫌うリベラリストとして知られていた)。もっとも、叔父夫妻はその他の部分では、彼らに子供がいなかったこともその理由ではあったが、玲を実の娘以上に愛情深く育てた。
 玲は小さいころより叔父の仕事を目の当たりにしてきた。父の話も聞かされてきた。父母の死の原因である謎の物体のことも、包み隠さず教えられてきた。お前のように両親を失う子供を出してはならない。そのためには二度と惨劇を起こしてはならない。犠牲を出してはならない。叔父が地球防衛軍にて主張する信念(「決して民間人を巻き込む戦いをしてはならない」)は、父の唱えた平和主義が戦いの中でも生かされることを示してきた。地球を守る仕事は彼女にとっての憧れとなった。叔父の教えは彼女にやがては叔父と同じ仕事に就くことを夢見させてきた。彼女はわき目も振らず、EGS予備学校に入学、必死の勉強の末、予備学校始まって以来の優秀な成績を修め、首席で卒業。予備隊への入隊試験の結果、予備隊課程をすっ飛ばしてEG=7補充要員として地球防衛軍に迎えられることになる。
 もちろん、夢は困難を伴って実現した。入った当初は感激していただけの玲だったが、EG=7のあまりの秩序のなさに呆れることになる。ところが、最初はただのぐうたら集団にしか見えなかったEG=7メンバーの、いざ危機を迎えたときの豹変ぶり。あまりに苦しい訓練を平気な顔でこなすEG=7のメンバー、玲はその訓練についていくことが精一杯だった。
 そして、何よりも、平和を愛すと言いながら、玲はそれをこれまで肌で実感できずにきた。頭の中で反芻してきただけであった。しかも彼女は、父母を異星人の謎の物体に殺されながら、異星人に対してどうしても憎しみを抱けないできた。両親を失いながらも、彼女は決して不幸ではなかったからだ。理想がなくては生きていくための目標がない。憎しみだけが戦う動機ではない。だが、彼女の場合、それが平和を守るためであっても、“戦う”という動機を根本から欠如させており、そのエネルギーも不足していた。理想だけで生きて行こうとするものは、必ず現実に復讐される。
 忙殺されるだけの日々は、彼女から、優しさ、濃やかさ、そして自分は何のために戦っているのかという意義を見失わせる。疲労のあまり夜勤におけるレーダー監視中に眠ってしまった玲は、地球防衛軍の一員たる自分の犯したミス一つが、何人の人間を犠牲にするかを思い知らされ、愕然とする。
 絶望し、自信を喪失し、一度は憧れてきた筈のこの仕事を辞める決心までした彼女が立ち直るためには、長い時間と、きっかけと、守るべきものの存在、そして、側にいて共に歩いてくれる一人の男の存在が必要であった…。
 物語の第一部では、一度自信を失った彼女が、再び立ち直るための過程を描いていきたい。仕事というものが中途半端な覚悟ではできないものであるということを、彼女を通じて描いていきたい。自信さえ取り戻せば、普段は明るく、溌剌とした娘である。第二部からは本来の彼女が戻ってきて、物語に彩りを添えることになる。
 趣味は体を動かすこと。勉強ばかりしてきた彼女には、他に誇れる趣味がない。化粧の仕方も知らない。それが一つのコンプレックスにもなっている(よって玲を演じる俳優は、すっぴんで顔の出せる女性でなくてはならない)。
 意識して発動はさせられないが、時折とんでもない動体視力が顕現する。瞬の正体を見抜かせしめたのは、彼女のこの動体視力である。

◎伏見 瞬
 177センチ、70キロ。地球人の年齢では三十四、五歳。
 そう、彼は地球人ではない。M=87星雲出身の異星人である彼が、この物語のもう一人の主人公である。
 本名ガイサンダー=シドー。銀河一千二百の星々によって構成される宇宙の警察、銀河連邦警備隊の一員であった。瞬時に戦闘体型へ変身、巨大化し、M=87星雲人が生まれながらに持つ超兵器で敵を屠る彼を、あらゆる敵味方が畏れ、尊敬した。同僚たちは彼のことを〈プラズマン〉と呼んだ。いざとなったらプラズマンを呼べ。一時はそれが連邦警備隊での合言葉にさえなった。
 連邦警備隊隊長ウルフ=マクシミリアンの妹、マリアは、そんな彼に憧れ、恋していた。ウルフも彼に口癖のように言っていた。妹を頼む、と。彼、ガイサンダーは、マリアのことを別に意識していたわけではない。だが、マリアの積極的なアプローチが、いつしか二人を恋人同士として周囲に認識させた。
 どちらでもよかった。ガイサンダーは仕事に没頭していた。彼は正義という理想を愛していた。自分の仕事がその正義を貫くための手段だと信じていた。仕事以外のことは考えられなかった。銀河の犯罪者を追い詰め、紛争星域で争いをやめさせ、パトロールに宇宙を光速以上の速度にて飛び回るだけの生活…。それだけで充分だった。
 充分の筈だった。
 ベスター星のある街に立て籠もった宇宙テロリストどもをどのように排除するかで、連邦警備隊内での意見が割れた。囚われた住民たちを救うか救わないか…。テロリストどもはベスターを丸ごと破壊する高性能反陽子爆弾を所持していた。それをベスター星に立ち寄った連邦の要人を暗殺するために持ち込んだのだ。ガイサンダーは住民たちを救うことを主張した。だが、決定は、少数の犠牲を払うことで大きな犠牲を避けることに落ち着いた。
 一度出された決定には従わねばならない。ガイサンダーも出撃した。だが、彼は出撃の前に、ベスター星人の少年に約束していたのだ。人質たちを救うために全力を尽くす、と。 連邦警備隊の駆使した超兵器は、テロリストの籠もった街を瞬時にして破壊した。
 ベスターに降り立ったガイサンダーを迎えたのは、街から脱出した住民たちの怒りの抗議だった。人々は彼を人殺しと呼んだ。どうして人質たちを救い出してくれなかったのかと。約束した少年の視線を、ガイサンダーは正視することができなかった。
 自分の信じてきた正義とは、結局大の虫を生かすために小の虫を見殺しにするものでしかなかったのか、弱者を救うためのものではなかったのか。悩むガイサンダーを完全に打ちのめしたのは、友人ウルフ=マクシミリアンの一言であった。
「…そんなもんだよ、現実なんて」
 そんなものなのか? 自分の信じてきた正義とは、そんなもので片付けられるものでしかなかったのか? 自分はこれから、そんな正義のために戦ってゆくのか?
 ガイサンダーは戦えなくなった。一切の命令に従えなくなった。連邦警備隊を辞めたいと申し出た。だが、ガイサンダーの戦闘能力を高く評価する指揮官たちがそれを許すわけがなかった。連邦警備隊長官までが彼を引き留めにきた。
 ガイサンダーに残された道は、脱走しかなかった。
 彼は逃げた。同僚から、ウルフ=マクシミリアンたち友人から、最後まで側に寄り添おうとしてくれていたマリアから、そして、自分の信じてきた正義から。大の虫を生かすために小の虫を見殺しにすることが正義なら、二度と戦うものか。正義のために戦ったりするものか…。
 彼は逃げた。果てしない銀河を当てもなく、逃げ続けた。彼が銀河の片隅に輝く地球という星にたどり着いたのは、ほんの偶然に過ぎなかったのである。
 幸い、地球人は外見的にも体の構造も、彼と大して変わらなかった。地球人の進化形態がガイサンダー、つまりはM=87星雲人の属していたリンガ星系人種と似ていたからであろう。
 ところが、よくよく運が悪いのか、それとも彼がそういったものを引き寄せてしまうのか、ガイサンダーは到着の日に、ブラックバード星系再来襲(二度目の侵攻)と出くわしてしまう。何と、侵入してきたブラックバードの戦闘機械に衝突してしまったのだ。もちろん彼に戦う気はない。傍観者でいる積もりだった。だが、一人の青年医師が彼の意志を覆してしまった。東京郊外を蹂躙する機械兵器に勤める病院を破壊され(病院の破壊はガイサンダーのせいと言えなくもなかった。彼が激突したために戦闘機械の進路がずれたのだから)、何の援助もないのに一人で患者を運び出そうとする彼を、ガイサンダーは変身して助けてしまう。戦闘機械の方はEGSが何とか撃退したので、ガイサンダーは戦わないままに済んだが…。
 数日間、青年医師宗形明の下にかくまわれたガイサンダーは、その惨事で救えなかった身寄りのない患者、伏見瞬の名を名乗ることを勧められる。宗形は何も訊かなかった。人間の好きな彼には、地球人と異星人の違いなどどうでもよかった。ガイサンダーがどんな理由で逃亡してきたのかなどどうでもよかった。ガイサンダーはそんな宗形の好意に、地球で生きてゆくことを決意する。ここでなら生きていけるかも知れない…。
 以来5年、ガイサンダーは地球人伏見瞬として生活してきた(1年は宗形のところで、地球、特に日本の言葉、風俗、習慣を学ぶことに専念した。言葉は重要だった。何しろガイサンダーはテレパシーでしか会話できなかったのだから)。地球人になりきろうとしてきた。だが、地球に来て二年後、彼はEGSに入隊する。それは心のどこかで、誰かを守りたいという無意識が働いたためかも知れなかった。それでも彼はあくまで傍観者であろうと決めた。決して二度と、自分の能力を、超兵器を、使うまいとした。それが誰かに利用される恐れのある限り…。
 しかし、EGSに入ってきた天童玲との出会いが、彼の決意を突き崩していく。
 玲の入隊初日、東京はまたしてもブラックバード星系の侵攻にさらされる。強力な戦闘機械は西東京から都心に向かい、付近の病院が危機にさらされる。敵を倒すためには攻撃を集中させる以外にない。避難の終わった筈の病院に歩けない少女(早瀬彩子)が一人取り残されたと聞いて単独で救いに走る玲。妙な出会い(後述)以来、彼女の存在が気になっていたガイサンダー、瞬は、彼女を追って病院に走る。自分の危険を顧みずに少女を救おうとする玲を見て、宗形を思い出す瞬。迫る戦闘機械を前に、瓦礫の下敷きになりかけた玲を助け出すため、遂に瞬は変身してしまう…。
 性格は温和。普段はのんびり屋を装っている。常に冷静であろうとするあまり、消極的にも見られがち。EGSに入ってはいるし、どんな隊員たちよりも秀でた力を持ちながら、目立つことを恐れるために準隊員にしかなろうとしなかった(そう、彼はEG=7の隊員ではないのである。薦められても断ってきたのである。あくまで傍観者であるために)。
 もう一つ、普段はノロマを装っている。EGSの女性準隊員たちからは“瞬”ならぬ、「ドンちゃん」などと呼ばれてもいる。
 子供番組の主人公にしては、彼は齢を食い過ぎている。だが、彼の存在こそ、ある程度齢を食った年齢層の視聴者に見て貰いたい、この番組のもう一つの骨子である。溌剌、爽やかさ、青春の悩みというテーマについては玲が受け持ってくれる。私たちは瞬を通じ、理想と希望とを失いかけた一人の男が、一人の娘と歩くことで復活を遂げる物語を描いていきたい。一人の娘を愛することで、ただ傍観者であり続けようとした消極的な生き方から、生きてゆく希望を取り戻す過程を描いていきたい。それは夢を見失いがちになる大人(特に男)たちに必ずや共感を抱いて貰えると思う。
 普段は人間と全く同じ背格好をしている。戦闘時にのみ、戦闘体型(プラズマン)に変身する。最大身長は60メートル。最小身長はコンマ1ミリ。プラズマンとしての肌の上に、形状記憶特殊合金製の薄い鎧を装着している。脱着自在、体の巨大化縮小化にも対応し、サイズを変化できる。大抵の戦闘時にはこの格好で戦う(その代わり、バリアーを持たない)。必殺技は両腕を合わせるお馴染みの光線(スパイラル光線、但しポーズはウルトラマンとは若干の差あり。別紙参照)。鎧の両脇に装着された二つのブーメランが合体、敵を両断するプラズマンカッター(同じく別紙参照)。鎧の額から発射するプラズマンビーム等がある。
 しかし、ガイサンダー瞬は、数々の技を持ちながら、潜在的な力を使い切っているとは言い難い。それを第二部にてある老人(何者かは後で述べる)より指摘され、新たな必殺技を生み出そうとする。自分のエネルギーではなく、地球に存在するありとあらゆる〈気〉とも言うべきエネルギーを凝縮し、自らのエネルギーとして発射する。その名もアースアタック・プラズマンショット。この武器の完成までが第二部前半を盛り上げてくれるだろう(ミラーマンのシルバークロスのように)。
 彼はあくまで謎の宇宙人として地球人の前に現れる。プラズマンの名が出てくるのは第五話くらいでいいだろう。瞬、または玲の口から言わせたい。

◎玲と瞬
 最初の出会いは、玲の入隊初日であった。準隊員でありながら、普段装っているのろまぶりのお陰で、瞬はEGS技術部平間喜法主任や宇宙生物学研究所所長赤嶺修造博士の助手くらいしかさせられる仕事がない(実は赤嶺博士は瞬の正体を知っているのである)。
 書籍運びの際にはノロノロ、ヨタヨタと歩くだけの瞬、玲は最初その姿を見て、どうしてあんな人がEGSに入れたんですかなどと訝ったりもしたものだった。だが、移動要注意のペルシダー爆薬(ローリングサンダー用炸裂徹甲弾)を手で運ばなければならなくなった時、注意深く歩く瞬は、出動の指令を受けて走る玲たちと衝突しそうになる。
 ペルシダー爆薬は衝撃に弱い。瞬は爆発を避けるため、本来の力を発揮、目に留まらぬ速度で玲との衝突を躱してしまう。
 いくら初出動にて頭に血が上っているとは言え、動体視力の発動した玲がそれに気づかぬわけがない。そして、出動した最初の日から危機に瀕した彼女を救った銀色の超人が頭の中で瞬と結び付くのに、大した時間は掛からなかった。それは根拠のない勘であった(なぜなら玲は瞬が変身した時には救出作業に忙殺されていたのだから)。しかし、確信に満ちた勘でもあった。
 玲はそれを確かめるために、第二話にて自ら危機の中に飛び込み、瞬が変身せざるを得ない状況を作ってしまう。
 案の定、玲の目前にて変身してしまう瞬。
 戦いたくないと言う瞬に、玲は懇願する。あなたが地球人として生きていく意志があるなら、地球のために戦ってくれ、と。それでも渋る瞬を、玲はとうとう脅迫にかかる。瞬のEGSにおける唯一の友人にして、病的な宇宙人嫌いの相馬圭介に、あなたが異星人であることをばらすぞ、と。
 仕方なしに戦い始める瞬。だが、本当は脅されて戦ったのではなく、玲の言葉(あなたが地球人として生きていく意志があるなら…)に真実を見たため、そして、自分がかつて持っていた正義への理想を抱く玲に心惹かれたためであった。
 そんな瞬の気持ちは、いつしか愛情へと変わっていった。彼女の思いを大切にしてやりたい。彼女を大切にしてやりたい…。
「…僕が戦う気になったのは、君に脅されたからじゃない。確かに最初はそうだったけど、でも今は違う。君のためだ。僕は君を守りたいんだ」
 そして、玲も、自信を失いそうになった自分の側にいつもいて、励ましてくれた瞬を、早瀬彩子の死の際、泣き続ける自分を怪我を押して抱いていてくれた瞬を、自身にとってどれだけ大切な人か、大切になり得る人か、なくてはならぬ人であるかを知るのである。
 時には反発し合い、時には励まし、慰め合いながら、二人は互いの思いを育んでゆく。それは星と星とを越えた愛情の始まりでもあった…。
 瞬と玲は、言わば鳥の両翼である。どちらかだけでは生きてゆけない。いつも二人でなければならない。

(仮)プラズマン企画書3

    プラズマン設定案その2

(4)地球防衛軍EGS
 Earth=Guardian=Serviceの略。199X年の謎の物体飛来以来、地球を頻繁に脅かし始めた宇宙からの侵攻に対抗するために組織された。中心となっているのはアメリカ合衆国、日本の二カ国。他にイギリス、フランス、中国等が人員、設備、技術を提供している。
 ある種、圧倒的な物量と科学力を誇る敵(ブラックバード星系宇宙軍や関連星域、あるいは他の侵略者)に、現在地球の持ち得る科学力の先端を駆使して、毎回どんな危険や犠牲をも厭わず、戦い続ける組織である(戦いの度に必ず犠牲を出すことにもなってしまうが)。
 本部は二カ所、カリフォルニアと日本(日本アルプス中腹)に設けられている。機能を分散することで敵からの集中攻撃に対処しようという考えによる。実質的な戦闘設備は日本に集中しているが、これは宇宙からの攻撃がなぜか日本に集中している事実による。
(この問題に関しては、エピソードの各所にて様々な形で触れていきたい。なぜ、被害を受けない国々がわざわざ日本を守らねばならないのか。莫大な予算を投入しなければならないのか。EGSは何度もこの件において、周囲からの攻撃を受け、軋轢に悩むことになる。)
 ここで描きたいのは、いや、私たちが描くべきなのは単なるナショナリズムとエゴイズムの狭間に立たされるEGSではない。例え宇宙からの攻撃が日本にしか集中しなくても、それでも敵と戦おうとする人々がいるということである。日本であろうがどこであろうが、守ろうという人々(日本人でなくても)がいるという点である。一方で徹底した軍隊組織でなくてはならないEGSだが、彼らの心意気だけは描きたい。
 それが物語第三シリーズにて、見知らぬ星を救うために、初めて地球外に赴こうとする地球人たちの心意気につながってくる。(ウルトラマンは見知らぬ星である筈の地球を、命を賭けて守ろうとした。それと同様に、我々も…)
◎長官ハワード=ケーシー(58)
 元国連安全保障理事会局地安全保障研究所所長。現EGS最高責任者。国籍アメリカ合衆国。アメリカ人だが、アメリカだろうが日本だろうがどこであっても平和を守りたいと願う、純粋な国際主義者。はぐれ者の集団EG=7を扱いかねているような節も見られるが、彼らが大きな問題を起こした時には体を張って彼らを守ろうともする熱血ヤンキー。
◎副長官田辺 進(55)
 元自衛隊幕僚長。EG=7初代隊長でもある。EGSの軍用システム、戦闘設備を統率している日本本部における最高責任者。元自衛隊の幹部だけあって、求める理想はEGSが一糸狂わぬ純粋な軍隊であること。だが、はぐれ者のEG=7はえてして彼の理想を大きく狂わす存在である。よってEG=7隊長陸奥孝一郎とは始終対立している。
 もっとも地球を愛する気持ちは誰にも負けない。そのためには自分であろうが家族であろうがいつでも犠牲にできる覚悟で任務に臨んでいる。
◎参謀ポール=ドワイエ(46)
 国籍フランス。対宇宙防衛システムの総責任者。
◎参謀アシュフォード=キングスレイ(46)
 国籍イギリス。対異星人攻略兵器開発技術部の最高責任者。徹底した鷹派。
◎参謀風間 雄二(47)
 元科学技術庁宇宙科学研究所班長。徹底したリベラリスト。故にキングスレイとは度々衝突する。EG=7の最も重要な理解者でもある。彼らを擁護するために、ケーシー長官や田辺副長官に食ってかかるエキセントリックな一面も。妻と二人暮らし。玲の叔父。

(5)EG=7
 EGS選抜メンバー。言わばEGS最強のメンバーである。この物語の完全なるレギュラーメンバーでもある。地球を守る尖兵として戦う彼らには、命の危険が常に付きまとっている。よってその活動は超法規的措置によって護られている(つまり、市民の安全を守るためなら大抵のことは許される)。しかし、構成メンバーは軍隊関係者にしては常軌を逸した面子も多く、時たまとんでもない行動に走ったりもする(もちろんそれは、彼らが市民を守るために最善の策と考えての行動ではあるが)ため、ケーシー長官や田辺副長官などにとってはえてして頭痛の種になり得る存在でもある。平和を守るためという言葉だけの理想を信じていない連中でもあるが、攻撃を掛けてくる異星人に対しては絶対の防衛力を誇り、そのため多くの市民から絶大なる信頼を得ている。警察関係者や自衛隊関係者の知己も多く、彼らから情報などを得たり、相談を持ちかけられたりすることも数多い。但し、個人的な事情や感情で動くことはない。彼らが出動するのはEGSに設置された電話通報管制センターやレーダー監視システムセンターからの指令によってのみである。常に犠牲、被害を最小限に止めようという意識で活動しており、場合によっては大の虫を生かすために小の虫を見殺しにもする(そこに玲は反発するわけでもあるが、彼らとて好き好んでそんな真似をするわけではない)。
 ある種エリートでありながら、エリートであることを嫌う(選抜メンバーでありながら、平均した秀才を集めてもいない。成績的には並でも、選抜基準には並外れて得意なものの有無が選抜を左右している)。よって、締め付け一方の軍隊形式を嫌い、ぴしっとした制服姿を徹底して避けている。ユニフォームもあるにはあるが、その着方もばらばら、色もばらばらである(後述)。緊急出動態勢以外の時は平気で私服で出歩いたりもする。武器も各人の好みに任されている。そういった点では不正規外人部隊に近い存在である。
 こんなメンバーの中に玲が入ってしまったのは、隊長陸奥孝一郎と風間参謀の、彼女の潜在的能力への期待が大きい。だが実は、EGS本部の方でも宣伝的価値を求めていた節があり、メンバーの幾人かは当初、玲に不信の念を抱く者もいる。
◎隊長陸奥 孝一郎(37)
 177センチ。70キロ。EG=7二代目隊長。
 IQ160、知的効率、生産率はEGSの中でも群を抜いてナンバー1。常に冷静沈着、頭の中ではいつも次の局面次の局面を組み立てているが、決してそれを外の表情に表さない。昼行灯を装っているが、それを上層部には見抜かれているらしく、EG=7の隊長の任も、彼の切れ者ぶりに畏れをなした連中が押し付けたという説まである。彼がEG=7メンバーに選抜されたのはもちろん頭の回転によるが、彼自身は最初仕事に特別な感情は抱いていなかった。“所詮、仕事は仕事だ。”
 今は言葉にこそ出さないが、EG=7の仕事とメンバーを心から愛し、誇っている。この部分は話数を掛けて語らなければならない。
 野放図な部下たちを言わば放任している責任を年中問い詰められているが、実はいつも目に見えぬところで手綱をとっているのも彼である。もちろん部下たちを徹底して信頼しており、大抵の行動には口を挟まない。
 普段はのほほんとしているが、実は空手の達人。素手では恐らくEG=7内で一番強い。紅茶好きでブランデー党。味にもうるさい。趣味は油絵。音楽はジャズ。好物はチーズケーキ。嫌いなもの、虫。離婚暦あり(エピソードの一つとして紹介したい)。EG=7宿舎以外に隠れ家を持っている。
◎副隊長相馬 圭介(34)
 168センチ、74キロ。通称(ボス)
 EG=7の斬り込み隊長。EGSきっての射撃の名手だが、普段はいつも作戦室でごろ寝を決め込む。これは陸奥隊長を敬愛する彼なりの、隊長の真似であるのだが、もちろん知的効率まで真似できるわけもない。どちらかと言えば直情的で単純。EG=7内でも制服を最も嫌っているため、いつもユニフォームを着崩している。愛煙家でもあり、年中女性隊員たちから嫌煙の抗議を受けてもいる。
 EGSではかなり下の成績だったが、彼をトップメンバーにまで押し上げたのは一重に異星人への憎悪である。十八年前の、謎の物体飛来の折、その落下した破片で両親と姉を失った。特に姉は、崩れ落ちた瓦礫の下敷きになりながら、弟である彼を救うために耐え抜き、彼の目の前で死んでいった。以来、彼は異星人を姉の仇として憎み続け(いつも目の前に姉の最期の姿が浮かんでくる)、その憎悪が彼の射撃の腕を天才の域にまで近づけた。ところがその事故で長時間閉じ込められた彼は、閉所恐怖症になってしまい、EGSのガーディアンシップを初めとする高速航空機や宇宙船には一切乗れないというハンデも持つ(成績の悪さはパイロット訓練を受けられなかったためでもある)。よって彼の活躍場所は専ら地上。地上からの援護射撃が多い。
 趣味は武器いじり。技術部の武器開発担当者川添明や新田浩とはツーカーの仲であり、何かしらいつも相談を受けている。暇つぶしは剣道とウエイトトレーニング。コーヒー党で酒は一切駄目。読書、音楽も趣味ではあるが、好んで集めているのはナイフ類。ビクトリノックスのナイフは肌身離さない。独身。
 EGS内で最も親しいのが瞬。瞬も彼に暖かい友情を感じており、異星人を憎悪する彼に自分の正体を知られることを恐れている(玲はそこを突いたわけだ)。彼と瞬との関係が、この物語のもう一本の伏線となってくれるだろう。
◎マイケル=ピーターソン(29)
 184センチ、77キロ。国籍アメリカ。但し母親はフランス人。
 EGSきってのパイロット。彼の腕前に勝るパイロットは世界中の軍隊にも少ないという。もちろんそんなことを自慢するような男ではないが、それが彼の誇りになっているのは確かである。自分の腕前を決して安売りしない。そんな彼がEGSに入ったのは、地球のためなどでは毛頭なく、高額なサラリーに惹かれてである。その辺りに関しては徹底してドライである。
 黒人嫌いの父に育てられたため、あるいは環境のため、黒人に馴染むことができず(その辺りの描写にはある程度のオブラートをかける必要もあるだろう)、同じEG=7の隊員であるベン=バトラーとはいつも反目し合っている。但し、私的な事情でベンと争うことはたまさかあるにはあるが、そのイデオロギーが戦いの本番中に顔を出すことは全くない。その辺りは完璧なプロである(実は彼自身、ベンを嫌っているわけではない。むしろ、口には決して出さないし、本人の前では悪態ばかりつく彼だが、誰よりもベンの力を認めてもいる)。潔癖症の気もあり、自分のミスを絶対に許さない。誰よりも自分に厳しい点では随一だが、EGS随一のプレイボーイでもある。
 趣味は車。持つのはポルシェ=カレラ。誇りの高すぎる彼に、心を開ける友人はEGS内にはいない。孤独を愛する彼の、プレイボーイの評判も実はカモフラージュかも知れない。休みの時は部屋で一人、酒を飲む。愛用はバーボン。故郷に父母、妹が二人いる。
◎ウィリアム(ベン)=バトラー(29)
 190センチ、81キロ。国籍アメリカ。
 元大学フットボールの花形選手。その巨体の出す力に勝てる者は、ブルドーザー以外にEGS内には存在しない。運動神経も抜群で、どんな格闘でも平気でこなしてしまう。得意はボクシング。彼がファイティングポーズをとると、天敵マイケルも直ちに逃げ出す。ところがその性格は温和で、争いを好まない。自分が黒人であるということが一つのコンプレックスとなっており、それをネタにいつも自分をいたぶるマイケルとはまさに犬猿の仲である。もっとも彼の実力をマイケルが陰で評価しているのと同様、彼もパイロットとしてのマイケルを信頼している。
 任務ではその巨体と怪力を見込まれ、相馬とともに地上を走り回る。特にEGS最重量支援火器である《ローリングサンダー》ミサイルマシンガンを持って走り回れるのは彼だけだ。
 趣味は読書。詩集が大好きで、それを知る相馬などからはいつも気味悪がられている。酒は飲めないが、たまに付き合いで飲まされ泥酔する。
◎王 愛鈴(26)
 168センチ、48キロ。愛称アイリーン。これは彼女の英名、アイリーン=ウォンから来ている。国籍中国(但しここで二つの中国を描くべきか否か)。
 背が高く、美人。EGSのマドンナ的存在。冷静沈着な点では陸奥隊長に次ぐと言われ(その辺り相馬などは見習うべきだと年中皮肉られる)、彼の実質的な秘書の役割を受け持ってもいる。様々な国の言葉にも精通し、一つの博士号(医学)と三つの修士号(薬学、物理学、工学)とを持っている万能レディ。EG=7に入隊した玲の姉貴的存在となるが、厳しい彼女は玲が苦悩していても自分で解決すべきだという理念から、決して手を差し伸べたりはしない。第二シリーズ以降、立ち直った玲に対しては、公私ともに姉貴として面倒を見始める。仕事、振る舞い、女としての魅力、どれを取っても玲の模範である。
 もっとも彼女は中国の旧家の出身であり、家に残してきた父や兄(母は彼女が十歳の時に死んだ)からいつも帰ってくることを要求されている。彼女の留学、その後のEGS入隊は、閉鎖的な自分の境遇を嫌い、そこから逃げ出すためだったとも言える。
 EGS内ではマイケルと恋仲を噂されているが、実は彼女自身が憎からず思っているのはベンの方である。趣味は料理(達人)。甘党で、ケーキには目がない。紅茶党でもある。幼い頃から習ってきた中国拳法は格闘技の天才ベンをして、「あの人には敵わない」と言わしめる。EGS内部に化粧に凝る女は不要だが、彼女は例外。第一化粧に凝る必要すらない。
◎志水 建策(25)
 176センチ、62キロ。通称(ケン)
 実業家の家庭で何不自由なく育てられた彼がEGSに入隊したのは、格好いいからという誠に単純明快な理由に尽きる。高校時代の成績は優秀の一語。但し、実業家の父の跡を継ぐのは兄であるという気楽さから大学進学をあっさり諦め、EGS予備学校の門を叩く。そこでは高校時代の秀才など何の役にも立たないという事実に直面。だが、持ち前の明るさからすぐに立ち直り、やがてその運動神経、反射神経のよさから、パイロットとして頭角を現すに至る。EG=7の選抜理由はパイロットとしての期待からであった。アウトドアに関しても並ならぬ知識の持ち主で、屋外での探索活動では常に主役になれる。
 生来のお調子者で、相馬、マイケル両方に忠誠を誓い、相馬のことを親分(もっとも相馬の通称は元々(ボス)だが)、マイケルのことを兄貴と呼んでいる。可愛い女の子には滅法弱く、入隊してきた玲にぞっこん参ってしまう。第一、第二シリーズでは度々玲にアプローチする彼の姿を描きたい。いつも玲の側にいる瞬のことを意識してもいるが、男らしく正々堂々と張り合う積もりである。
 そんな彼も任務になるとがぜんプロらしくなる。支援戦闘機の操縦では絶大なる信頼を陸奥隊長とマイケルから得ている。趣味はオートバイと高校時代からやっていたバスケットボール。休日には必ず愛用のオートバイ(大型、できれば500以上)を駆ってツーリングに出る。EG=7内で休日返上を嫌がる唯一の男。

(6)準レギュラー
 EGS内には、EG=7の他に多くの専門家たちが活躍している。その大部分はEG=7の支援部隊。通信員。技術部員などである。
◎赤嶺 修造(60)
 EGS宇宙生物学研究所所長。生物学の世界的権威。様々な大学で教鞭を執り、研究所で研究者として活躍してきたが、生来の不精者ゆえ役所、会社勤めが性に合わないでいた。EGSに勤務したのは専門知識が生かせることと、毎日忙しく立ち働かせられることがないためである。専門は生物学、それを生物としての異星人研究、あるいは敵(ブラックバード星系軍)の、生物とメカニックの混淆である戦闘機械研究に応用している。
 コーヒー党。年中相馬にコーヒーを淹れることをせがんでいる(相馬が美味いコーヒーをいつも部屋に置いていることを知っているからである)。EGSに入った瞬が体の調子を崩したことが原因で、瞬の正体に気づいたものの(彼には医学の知識もある)、それを周囲に話す積もりはない。
 年中いろんな相談にくる瞬と、たむろしにくる相馬との友情を養ったのは彼と彼の部屋である。独身。EGS内で寝泊まりしている。いつも何を食べて、いつ眠っているのかが全くわからないために、周囲から“仙人”と言われている。
◎平間 喜法(51)
 EGS技術部主任。EGS戦闘メカニックほとんどの製作、整備の指揮を執る。生まれながらの技術屋で、寝食を惜しんでのメカニック整備には陸奥、相馬、マイケル、ベンなどからも最大級の信頼を得ている。妻子あり。川添明(29)新田浩(26)野田順平(24)などの部下をこき使っている。彼らからは“鬼平”と恐れられている。
◎ローランド=デルスキー(58)
 EGS技術部開発局顧問。工学博士。趣味は武器造り。広範囲な破壊兵器から手持ちの小火器まで、様々な武器を造ってみせる。特に相馬のライトニングキャノン、ベンのローリングサンダーなどは彼の傑作中の傑作である。
 武器を造るのが趣味なのに、反面徹底したリベラリストで博愛主義者。物語の第三シリーズにて、異星人の娘をあっさりと養女にしてしまう。その養女の存在が、物語の後半の要の一つになってくれるだろう。彼女(アルスターシア=ルドウィン)についてはシリーズ構成の項にて詳述する。
◎三条亜希子(32)
 EGS医療班主任。医学博士。EGS内に七人いる医師のリーダーである。アイリーンの相談役でもある。男勝りの面ではアイリーン以上。陸奥などは年中やり込められているが、彼女が陸奥のことを内心想っていることには全然気づいていない。
 人間の生命に根源的な畏怖を抱いており、医学は個人の生命力を結局のところ、凌駕できないと思っている。

◎準隊員たち
 言わばEG=7のアシスタントたち。多くの若者や、元若者たちが働いている。時と場合、部署によっては命の危険さえ有り得る。但し男女同格。女だから贔屓、容赦されることなどあり得ない。メンバーもいろいろ、EGSに入った理由もいろいろである。純粋に地球を守りたいという願望を持った者、マイケル同様サラリーに惹かれた者、何よりも出世に憧れ、EG=7のメンバーを追い抜こうとしている者(出し抜こう、ではなく追い抜こう、である。個人の虚栄に走る者はEGS不適格者となる。もっともこの件に関しては1エピソード設ける価値はあるだろう)。
☆攻撃補佐部隊………EG=7の純粋な遊撃隊である。実際の攻撃に加わることも多く、命の危険度も高い。命知らずの連中が多く、時には上官であるEG=7の面々に負けないくらいの活躍をする者もいる。池谷啓司(29)ルイ=ルフラス(27)弓潤子(22)間関布由子(20、玲の同期生)など常時二十名弱が、いつもはEGS本部内にて、出動に備えて待機、訓練している。
☆通信、管制要員………EGS本部内のメンバー。顔こそ映ることは少ないが、常に本部にいなければならない面々である。彼らの数をけちってはならない(EGSが安っぽく見えてしまう)。管制要員エミリオ=サントス(33)以下9名、警備要員長岡秀明(30)以下15名、通信要員チーフ兼管制要員佐藤亜沙美(24)以下4名、などがいる。


(7)EGSとEG=7の限界
 地球防衛軍と銘打たれたEGSだが、あらゆる人々が彼らの存在を是認しているわけではない。特にEGSへの出資国アメリカでは、直接の被害も少ない自分たちの国がなぜ他所事に金や技術を提供せねばならないのかという不満を持っている連中もいる。特にアメリカ合衆国軍の内部にその動きが顕著で、アメリカ国防省特務機関NDS(NationalDefenseteamforSpace)は露骨にEGSやEG=7への活動妨害を仕掛けてくる。日本や支援国(アメリカも含め)の中では自由に活動できるEGSだが、その他の国ではNDSに先を越されたり、彼らの根回しによって活動を妨害されたりもする(証拠品や証人を引き渡して貰えない、などの)。EGSとEG=7が宇宙へ飛び出すことに最も反対を唱えるのもNDSの面々である。特に局長レスリー=マクファラン(55)と局長補佐行長武広(43)は何かある度にEGS本部に怒鳴り込んできて、EG=7のメンバーと取っ組み合い寸前にまで睨み合う。彼らとて地球を愛し、守ろうとはしているのだが、その地球防衛を日本中心に行われることに不満を抱いているのである(その描写に関してはいくらか抑えた表現を用いねばならないだろうが。直接アメリカ国防省が介入してきたなどというエピソードは入れられない)。彼らの妨害は第二シリーズの後半まで続く。
 地球防衛に全力を尽くすEGSとEG=7だが、全ての市民を守れるわけではない。前にも述べたが、大の虫を生かすために小の虫を見殺しにすることもあり得る。多くの場合感謝されるEG=7だが、時には救えなかった市民の家族から非難され、誹謗されることもある。EG=7メンバーにはそれが一番辛い。いつまでたっても慣れることのできない辛さなのである。これは全四シリーズを通して描かねばならないテーマである。


(8)超兵器の数々
 EGSには、外宇宙から攻め込んでくる異星人と戦うための超兵器が揃っている。圧倒的な敵戦力に対抗するため、全世界の科学の粋を集めて造り上げられた武器である。もちろん当初は“敵に勝てる”兵器ではなかった。一つの勝利を得るために、多くの犠牲が払われ、その度に何度も改造、改良が加えられていく。それでようやく、どうにか敵と戦える兵器にまで成長してきたのだ。
Ⅰ)搭乗機
◎ガーディアン=シップ
 全長180メートル。EGS最大機にして出動時や緊急時には移動本部の役割も果たす。搭乗要員三十六名。大口径連装レーザー砲8基、プラズマメーザー砲2基。ミサイルポッド10基。亜光速ミサイル6基。ガーディアン=ウィングとランドドラグーン、ドリル=ユニコーンを載せられる。速度は最高マッハ2、地球の衛星軌道を巡航できる。まさに空飛ぶ要塞である。シリーズ第三部にて超兵器ハイペリオン砲を搭載。
◎ガーディアン=ウィング
 攻撃機。全長37メートル。EGS最速機。最高速度マッハ7。連装ミサイルポッド4基と大口径メーザー砲搭載。搭乗者はマイケル。
◎サンダーフォックス
 攻撃機。全長58メートル。速さではガーディアン=ウィングに負けるが、装甲では勝る。連装ミサイルポッド6基。プラズマ砲1基。大口径メーザー砲1基。二人乗り。搭乗者は志水と玲。
◎ジャイロペガサス
 偵察・遊撃機。全長44メートル。最高速度はマッハ2・5。但し人の歩く速さにまで速度を落とすこともできる。垂直離着陸可能。ミサイルポッド4基。レーザー砲2基。搭乗者は主にアイリーン、場合によっては玲。
◎トレーサー
 全長7メートル。追跡装甲車。レーザー砲2門。ミサイルポッド2門搭載。メンバー全員の足である。
◎ランドドラグーン
 全長35メートル。地上装甲車。キャタピラ走行だが、高速移動の際にはキャタピラとタイヤを車体に収納し、クラフト機能で動く。時速280キロを叩き出せる。ミサイルポッド、レーザー砲、メーザー砲、何でも搭載可能だが、武器はその場その場で載せ変える。搭乗者は相馬とベン。
◎ドリル=ユニコーン
 地底装甲車。全長58メートル。硬度10の硬質ドリルが一角獣を思わせる。大口径メーザー砲搭載。搭乗者は4名。
◎ネプチューン
 潜水艦。全長105メートル。搭乗者9名。音波魚雷六門。地対空ミサイル12基搭載。ドルフィン搭載可能。
◎ドルフィン
 潜水艇。全長35メートル。搭乗者3名。音波魚雷二門。水中熱線砲1基。
◎コスモスパロー
 偵察・攻撃用宇宙船。全長108メートル。ガーディアン=シップとともに宇宙へ出るが、宇宙での航続距離は比較にならない。燃料さえ心配なければ冥王星までの距離を往復できる。搭乗者4名。大口径メーザー砲3基。亜光速ミサイル12基搭載。

 その他、準隊員たちによる支援部隊の戦闘機、戦車部隊がある。

Ⅱ)小火器・所持武器
◆制式銃、ガーディアン=ブラスター
 EG=7全員所持。破壊光線銃。26センチ。カートリッジ式。その交換によりレーザー銃にもなる。カートリッジ1個につき200発発射可能。
◆ハーリントン=アンド=リチャードソン(H&R)スナイパーレーザーライフル
 レーザー狙撃銃。1・2メートル。特殊スコープをつけた総重量は18キロにもなる。射程距離は5キロ。扱うは相馬。
◆ローリングサンダー
 ミサイルマシンガン。総重量32キロ。口径1・2センチのミニミサイルを1分間に120発発射可能。反動は一般人の背骨を折りかねない。こんなものを軽々と扱うのはベンしかいない。
◆スピットファイヤー
 ミサイルランチャー。弾倉式。一弾倉20発。扱うはベンか相馬。
◆ライトニングキャノン
 拳銃。口径1・2センチ。マッハで飛ぶ炸裂火薬弾頭使用。地上のいかなる拳銃よりも破壊力がある。ガンマニアでどうしてもブラスターに慣れられなかった相馬がデルスキー博士に特注。

Ⅲ)ユニフォーム及び装備
◇ユニフォーム
 防弾繊維。各個人で色違い。陸奥はスカイブルー、相馬は黒、マイケルは紺、ベンはオレンジ、アイリーンは白、志水は薄茶、そして玲は赤である。
 デザインは同じ。右襟に3個の閃光弾、左襟にはヘルメットを失くした際のための通信機。左胸には四つのポケット、1つには発煙筒(連絡用)、1つに栄養剤入りアンプル、1つにフラッシュライト、最後の1つにはヘルメットの装着する酸素ボンベ(45分用)。 ブーツにはポケット、好きなものを入れられる。底は足を痛めないように形状記憶ソール。裾はブーツに入れても入れなくても可。
◇ブレスレット
 表面は時計。蓋つき。開くと液晶TV。レーダー、探知機、ガイガーカウンター。敵通信の周波数を探すことも可能。
◇ベルト
 バックルにはアウトドアライフ必需品。強心剤、止血剤入りの小型注射器。抗生物質ピル。幅1センチの止血バンド。針と糸(縫合用)。折り畳んだ薄手のメス。
 ベルトには2種類のワイヤーロープ。各人が好みのナイフを入れるケースあり。
◇ヘルメット
 通話フォーンつき。ゴーグルの裏側、右目の前に映像通信が出る。ゴーグルは眼前の映像を解析、図式化、シミュレーションを作れる。ゴーグルを降ろし、ユニフォームの襟を立てると密封される。口元に酸素ボンベを差し込み、手袋で袖を塞げばガス地帯でもOK。
 その他、各個人で何を持っても可。その辺りは自由裁量に任せたい。技術部の開発した新兵器(名作、珍品何でも)を装備したりもする。

(仮)プラズマン企画書4

 プラズマン ストーリー原案。

《第一部》
〈男は理想を見失っていた。彼は昔、英雄と呼ばれた。だが、理想を汚され、夢を失った彼は、二度と英雄になろうなどとは思わなかった。彼はひっそりと生きたかった。英雄などではなく、一人の人間として生きたかった。しかし、結局彼は英雄の力を持って生まれた。その力を捨て去ることはできなかった。
 彼はその力を利用し、もう一度理想のために戦ってみようと決意した。それを彼に決意させたのは大義でも正義でもなかった。
 一人の娘だった…〉

 西暦199X年。地球は謎の物体の墜落とともに外宇宙からの侵略の手にさらされた。以来十三年、外宇宙からの侵略軍は度々地球を襲い、地球側も地球防衛軍EGSを結成し、これに対抗した(設定原案参照。ちなみに第一部では上記の説明を番組冒頭に、第1話から第3話までは3分、以下12話までは30秒置く必要がある)。
 謎の物体墜落より十八年。地球防衛軍EGSの入隊試験が今日も行われていた。その中で抜きん出た成績を修めた一人の娘がいた。彼女は予備隊過程をすっ飛ばし、選抜集団EG=7のメンバーに異例の抜擢を受ける。その名も天童玲。彼女は二十年前の事件により、両親を失っていた(キャラクター設定原案参照)。
 EGSの基地内を先輩アイリーンに案内される玲だったが、そこで目にしたのはあまりにぐうたらなEG=7メンバーの姿であった。一度は失望しかける玲だが、いざ非常事態が発生すると瞬時にしてプロの顔に戻る彼らに舌を巻かせられる。メンバーの一人志水建策辺りは、早くも玲の可愛さに目を奪われたりもする。
 だが、玲の目を引いたのは準隊員の一人、研究所の助手をやっている伏見瞬であった。出動を命じられた彼女が危険物を運ぶ瞬にぶつかりかけた時、彼の見せた信じられないような動き…。
 そして、それと時を同じくするかのように出現、EGSを手伝って侵略軍のロボット怪獣と戦う銀色の巨人。巨人は病院の入院患者を救うおうとする玲を守るかのように怪獣と戦った(設定原案参照)。
 そして玲は見てしまった。瞬がその巨人に変身する姿を。(第1話)
 EGS首脳とEG=7が連日の会議にて、あの銀色の巨人について様々な憶測を出す。巨人の出現は実は二度目だった。そんな中、瞬は相変わらずドジぶりを発揮、皆の笑いを買っている。その瞬と最も仲のよいのは、EGSで最も異星人を忌み嫌う副隊長相馬圭介だった。玲は瞬の正体を探ろうと様々な手段を講じるものの、敵もさる者、なかなかぼろを出しそうにない。
 だが、前回一部だけ逃した敵ロボット怪獣が再度攻めてきた時、彼の正体は明かされることになる。
 敵の進攻方向は前回と全く同じ、しかも前回必死に守り抜いた病院も敵のコースに入っている。他のメンバーが敵迎撃態勢に動く中、その準備が済んだと同時に、前回の騒ぎで知り合い、仲良くなった入院患者早瀬彩子を救うために病院に向かう玲。それが気になって玲を追った瞬は、前回と全く同じ、玲の危機を目にして、彼女を救うためにその目前で再び変身してしまう。(第2話)
 過去数年の敵の行動をデータ化したEGSは、連中の取るコースが似ていることに気づく。なぜ敵が同じコースを取ったか? 怪獣の残骸を処理班が片付け、その謎をEGS首脳が憶測する中、玲は瞬を訪れる。
 銀色の巨人は瞬だった。いろいろ問いただしているうちに、玲は、瞬が(宗形明の助言により)地球人としての戸籍は亡くなった人のものを使っていたこと、EGS内部にも一名、彼の正体を知るものがおり(赤嶺博士)、その手助けにより正体がばれずに済んでいることなどを知る。
 そして、何よりも瞬が、戦いを望んでいないことも。
 彼は二度と戦いたくないがために、自分の故郷と組織とを捨てたのである。
 そんな折、敵の合成獣が現れる。一度ならず二度までも変身したではないか、私のためだけじゃなく、地球のために戦ってくれ。あなたは地球人なんでしょう? 地球を守りたいとは思わないの…? 懇願する玲だったが瞬の返事は煮え切らない。遂に玲は(不本意ながら)瞬を脅す。もし戦わないんだったら、あなたの正体を相馬にばらす。異星人嫌いの相馬は仲のいいあなたが裏切ったと思うでしょうね。私は本気なのよ!
 それでも煮え切らない瞬に腹を立てた玲は出動の際、無茶な攻撃に走る。瞬は仕方なしに変身して戦う。
 EGSと巨人の共同勝利の後、変身を解除した瞬は、怪我人を甲斐甲斐しく世話する玲を見つめる…。(第3話)
 EGSは会見を通じ、銀色の巨人が自分たちと敵対する勢力ではないらしいこと、どうやら自分たちに味方してくれるらしいこと、暫定的に彼の名を異星人Xとすることなどを公表した。
 瞬の気は重かった。その瞬を半分脅し、半分励ます玲。
 またしても敵の攻撃。目的地は同じらしいが、今度はコースを変えた。敵の進度の速さに対応が遅れるEG=7。住民を避難させている時間は少ない。しかも近くに政府の要人がいるのだ。優先順位などつけようもなかったが、命令は要人救出を優先することだった。
 飛び出したのは瞬だった。変身した瞬は敵怪獣を身を呈して食い止め、住民の避難する時間を稼いだ。戦闘後、なぜ血相を変えたのかを問う玲に、瞬は自分がなぜ戦いを避ける気になったのかを語り始める…。(第4話)
 瞬の過去、それは理想に生きようとし、理想を見失ってしまった一人の英雄の物語だった(キャラクター設定原案参照)。
 瞬がそれを自分に語ってくれたことに妙な嬉しさを感じる玲は言う。あなたが見失った理想をもう一度この星で取り戻すのよ。その玲を、眩しげに見つめる瞬。その時、EGSのレーダーが敵侵入を捉えた。出動してゆく玲。そして瞬も立ち上がるのだった。変身するために、そして、失った理想をもう一度取り戻すために…。(第5話)
(以上、5話の間に、早瀬彩子と玲との出会いと交流、昼行灯の陸奥隊長の切れ者ぶり、相馬の異星人嫌いと閉所恐怖症、マイクとベンのいさかい、玲に一目惚れした志水の彼女へのアプローチの姿などを適度に挿入してゆく)
 東京上空に現れた謎のガス体(雲そっくり)は、人だろうと物だろうと全てのエネルギーを吸い尽くしてしまう。EG=7の度々の出撃も、雲の消滅の速さに、全部空振りに終わる。中に潜むのは何者か? 議論に暮れるEGS内で、相馬だけが地団駄を踏んでいた。既に多くの犠牲者を出している。自分が閉所恐怖症でさえなければ、自らサンダーフォックスなりガーディアン=ウィングなりを飛ばして、奴に弾丸を叩き込んでやれるのに…。その脳裏に甦る、姉の死(瞬間的なイメージのみ)。その姿を見た玲は、相馬が異星人を憎悪し、閉所恐怖症になったあの日のことを瞬に聞かされる。
 だが、遂に決戦の時は来た。三度出現したその雲を追ってガーディアン=シップから飛び立ったウィングとサンダーフォックスが空を翔る。そこには無理をしてサンダーフォックスに乗せて貰った相馬がいた。サンダーフォックスが雲に潜む怪獣に襲われ、操縦の志水が怪我をする。志水をかばい操縦を代わる相馬だったが、操縦桿操作もままならぬ相馬に危機が迫る。玲の呼びかけに変身し、飛び立つ瞬。(第6話)
 宇宙から飛来した隕石は奥多摩に墜落した。住民の通報にてEG=7が出動するが、隕石の墜落した痕跡すら残っていない。燃え尽きでもしたのだろうと結論づけるEG=7の前にて頑強に自分の目撃を主張する少年。玲だけが彼の主張に耳を傾ける。
 休憩時間を使って病院を訪れ、早瀬彩子を見舞うのが最近の玲の習慣だった。少年の言葉を気にする玲に、彩子は言う。お姉ちゃんはその子を信用して上げてるんでしょ? じゃあ、行くべきよ。後日、瞬とともに調査に赴く玲(その前に志水に誘われたがにべもなく断る玲。大いにやっかむ志水)の前にて、隕石から現れた怪物。怪物は奥多摩原子力発電所を狙う。ここが破壊されれば東京は死の都市と化してしまう。出動するEG=7だが、怪獣の阻止には間に合わない。変身する瞬。(第7話)
 マイクはEGS女性隊員の憧れの的だった。だが、彼の本当の孤独を誰も知らない。アイリーンとの仲を噂されるマイクだが、アイリーンは実は他に好きな人がいるらしい(アイリーンと玲との会話より)。普段から仲の悪いマイクとベンだが、遂に大喧嘩をやらかしてしまう。仲裁に入ろうとした相馬も巻き込んでの大騒動に、陸奥隊長の一喝が飛ぶ。謹慎するマイクの脳裏に甦る少年の日々。彼を見舞う玲に、話し始めるマイク。彼は黒人を嫌う環境に育ったのだ(キャラクター設定原案参照)。
 怪獣出現の報に出動するEG=7。謹慎を食らったマイクの代わりにガーディアン=ウィングに乗る玲。だが、まだ初心者である玲にはガーディアン=ウィングの操縦はきつかった。思い余って命令無視、サンダーフォックスにて出動するマイク。今回の敵は動きが素早く、プラズマンでさえ攻撃を外してしまう。支援攻撃に入ったマイクはベンに地上からの援護を要請する。彼は黒人を嫌いだなどと言いながら、EGS隊員としてのベンを限りなく信頼していたのだった。
 怪獣を退治した後、またしても諍うマイクとベン。それを笑いながら見守る玲と瞬。瞬はその後、射撃場にて自分の攻撃技を試す(瞬は変身していなくても武器を使えるのだ)。彼は長いブランクにて自分の技の切れが落ちていることを悟ったのだ。(第8話)
 太平洋上に墜ちた謎の物体を調査に赴いた玲と志水は、1機の戦闘機に調査を妨害される。それはEGSの存在を快く思っていないNDSの面々だった。玲はそこで初めて、日本だけを襲う異星人と戦うために世界的組織が結成されたことを快く思わない面々があちこちにいることを知らされるのだった。(第9話、この回にてNDSの紹介と併せ、EGS創設の経緯を詳しく。設定原案参照)
 今日も訓練は続く。玲は疲れ始めていた。訓練が終わればパトロールが待っている。パトロールが終われば基地での内勤だ。自分の時間さえ持てない。おまけに緊急事態が起きれば眠りさえ邪魔される。髪の毛ボサボサで目を血走らせ出てくるしかない玲には、きちっとした格好で薄く化粧すらしてくるアイリーンが超人にさえ見える。おまけに彼らは暇を見つけては肉体のトレーニングに励んでいる。昼行灯陸奥隊長や居眠り屋相馬でさえ、筋力トレーニングは欠かさない。最近では瞬までも、相馬に付き従ってトレーニングルームに出入りしている。
 なぜこんな真似ができるのか…。疑問に思う玲に瞬は言う。彼らはプロなのだと。そして何らかの形で自分の仕事に意味を見出だしている。玲はその時初めて、肉親を殺されたに等しいという同じ境遇でありながら、異星人を心から憎めない自分と、徹底して異星人を憎む相馬との違いを考えさせられる(キャラクター設定原案参照)。
 重なるハードスケジュールに玲の体力は限界に来ていた。ある夜、レーダー監視の任に就いた玲は他の監視要員が機関チェックに出ている間に居眠りをしてしまう。そのわずか二〇分の間に侵入してくる敵。玲が気づいた時には既に、敵は住宅街に降り立とうとしていた。
 敵はプラズマンとEG=7の活躍とで倒せはしたが、犠牲者も多かった。玲の責任が問われる。私だって一生懸命やってます、そう言う玲に相馬は怪我人や死者の列を見せ、言う。お前の一生懸命がこれだけの人たちを傷つけたんだ。
 その瞬間、玲は自分の憧れが形だけのものにしか過ぎなかったことを知った。相馬と自分との間に決定的な差のあることを知った。そして、自分のEG=7隊員としての適性に、疑問を持ち始めるのであった。(第10話)
 謎の敵がいよいよヴェールを脱ぎ始めた。姿なき命令者からプラズマン暗殺を命じられる異星人たちが地球に向けて出発する。
 国連の関係会議の席上にて、NDSの面々がEGSの失態を責める。その責めは長官や参謀から陸奥隊長や玲の叔父風間参謀に向けられるが、2人は何の言い訳もしない。
 玲は謹慎処分を受けていた。処分に反対したのは志水だけであった。風間参謀の家に戻った彼女に訪れる久々の休息。自信を失くしたと言う玲に、叔父は何も言わなかった。結論は自分で出せと言うのだ。その玲を訪れたのは瞬だった。東京に度々起きる謎のジャミング現象(実はプラズマンを誘い出すための暗殺集団の仕業)を調べるために他の隊員たちは忙しいのだ。辞めたいと弱音を漏らす玲を励ます瞬。そこで玲は初めて、EG=7のメンバーが最初ぐうたらに見えた理由を知る。彼らはとにかく暇を見つけては体を休めていたのだ。瞬は言う。君はずるいぞ、僕を戦わせるためにあれだけ言っておいて、自分だけが逃げ出す積もりか? 一緒にやって行こう。瞬の心遣いは嬉しかったが、玲は言う。私は何のために戦うの? 瞬は優しく言う。自分で見つけなくちゃ。僕もやっと見つけたんだ。それは何、と訊いた玲だが、瞬は笑って答えをはぐらかす。
 早瀬彩子を病院に見舞った玲は彼女の衰弱に驚く。彼女の両親より手術同意の説得を頼まれる玲。彩子の前でつい弱音を漏らしてしまう玲。その玲に彩子は訊く。恋をしたことがあるか、それはどんなものか…? 答えをごまかす玲の脳裏に瞬の顔が浮かんでいた。慌ててそれを振り払う玲。
 その帰途、玲を送る瞬。車で通りかかったと言う瞬だが、実は玲を心配してのことだった。それに気づき、胸を締め付けられる思いを味わう玲。そんな折り、ちょうど彼らの目前にてジャミング現象が発生。現場に向かった2人の車の前に現れる暗殺集団。変身する瞬だが、囲まれての攻撃に玲を守るため四苦八苦。遂に瞬は鎧であるボディスーツを玲に着せ、戦いに臨む(この回は等身大での戦闘)。それでも玲を狙う暗殺集団から彼女を守ろうとして、背中から刺される瞬。戦いは終わったが瞬の怪我は軽くはなかった。自分を守るために敢えて危険を冒した瞬を、玲は初めて抱き締める。(第11話)
 玲の決意はまだ固まらなかった。瞬の励ましに感謝しつつ、自信を持ち切れずにいた。そんな中、早瀬彩子の手術の時が迫った。この前の回答として、玲は言う。私も恋してる、と思う。とっても素敵なものよ、あなたも恋するために頑張らなくちゃね。彩子を励ますための言葉だったが、その時も瞼に浮かぶのは自分のために傷ついた瞬の姿だった。彩子は訊く。お姉ちゃんの好きな人、EGSの人? だったらなぜEGSを辞めちゃうの? 動揺する玲。
 そんな時、またしても怪獣が現れる。そして、急変する彩子の容態。苦しむ彩子の側についていながら、ニュースが気になって仕方ない玲。その玲に、彩子は言う。頑張ってきてね、私も頑張って手術を受けるから。
 約束だからね、駆け出す玲。
 被害は広がったがプラズマンは現れない。当然である。瞬の怪我はまだ治らないのだ。必死で戦うEG=7のメンバーだが、敵は強かった。マイクのガーディアン=ウィングは撃墜される。駆けつける玲に陸奥隊長は命じる。ジャイロペガサスで援護しろ。輝く玲の表情。
 飛び立つジャイロペガサス。志水のサンダーフォックスを援護しながら飛び回る。玲も必死だ。血が逆流しそうな旋回にも耐える。瞬は怪我人だし、病院では彩子が頑張っているのだ。私が負けてはいられない。
 EGS内の病室で寝ていた瞬は、玲がジャイロペガサスで戦っていることを知り、立ち上がる。赤嶺博士の制止も振り切り、変身する瞬。
 サンダーフォックスも墜とされ、ジャイロペガサスに怪獣の手が迫る。出現するプラズマン。驚き、瞬のことを案じながらも、玲は共同作戦にて怪獣を倒す。隊長や相馬たちのねぎらいの言葉も聞かず、玲は病院に急行する。だが、彩子は手術に耐え切れなかった。
 頑張るって言ったじゃない。私は一生懸命頑張ったのよ。約束を守ったのよ。どうして頑張ってくれなかったの…? 駆けつけた瞬の胸にすがって慟哭する玲。
 世も更け、泣き疲れて眠った玲を抱いたまま、瞬は呟く。僕はもう逃げない。守るべきものができたからね。君にEGSを辞めてほしくないって言ったのは君が僕を戦わせたからだけじゃない。
 僕は君に側にいてほしかったんだ…。
 夜明け前、目覚めた玲は、瞬が怪我を押して、一晩中自分を抱いていてくれたことを知る。彩子ちゃん…、玲は呟く。この人が私の好きな人なの。私はボスみたいに異星人を憎むことはできそうにない。でも、そんな私にも戦うだけの理由があるの。理由ができたの。
 この人と一緒に、私、これからもEGSで頑張っていくわ。
 その2人に声をかける相馬。いつまでいちゃいちゃしてやがんだ、天童、基地に帰って休め。起きたらパトロールだ!
 その日の午後、アイリーンとともにパトロールに出る玲を見送る瞬の姿があった。(第12話)
(以上で第一部は終了。志水の玲へのアプローチは有形無形にて常に登場させる要有り。また、陸奥隊長がバツイチであること、三条登喜子医師の隊長への思いなども挿入していく)

(仮)プラズマン企画書5

《第二部》

〈地球は宇宙の一つの星だ。孤立しては生きてゆけないし、見捨てられても生きてゆけない。地球が宇宙の戦いに巻き込まれた時、それを他人事だと笑って済ませられるだろうか。逃げ込んできた者たちを、追い払うことができるだろうか…。
 地球は今、望むと望まざるとに関わらず、自分たちが宇宙の一員であることを試されていたのである〉

 EGS内部にて繰り広げられる会議の議題は、過去十三年、途切れがちだった異星人の攻撃が、なぜここにきてペースを早め始めたか、であった。その話を風間参謀よりされる玲にも答えがわかる筈もない。一方、瞬は連日同じ夢に悩まされていた。誰かが彼を呼ぶのである。
 そんな折り、EGSに入ったのは、工事現場で妙なものを発見したという警察からの連絡であった。
 EG=7によりEGS基地に運び込まれたそれを見て、瞬の疑問は氷解する。テレパシー増幅装置だ。恐らく十三年前に墜落した謎の物体の破片に違いない。そしてそれはまだ生きていた。作動する増幅装置を見つめるEG=7の面々に、瞬は言う。もしかして敵はこいつを狙ってきていたのではあるまいか。反論も出る。しかしこいつの本体は中国に墜落したんだぞ。だが、十三年前、こいつを追ってきた敵は中国に墜落した本体の行方を見届けぬまま引き上げた。本体が作動していないならば、敵がこいつを狙ったという理由も頷ける。敵はこいつの発信を傍受して、こいつのある場所に本体があると思ったのだ。早速増幅装置解明に乗り出すEGS科学班。瞬は陸奥隊長に中国に行かせてくれるように頼む。増幅装置は囁き続けていた。テレパシー感応能力を持つ瞬にだけその声は届いた。
『本体を探せ』
 陸奥に調査の必要性を説き、中国政府と軍に知己の多いアイリーンを通じ、入国許可を得た瞬は出発する。
 中国奥地、タクラマカン砂漠の手前に墜落した本体を探す瞬だったが、落石事故に遭って怪我をする。その彼を助け、手当したのは山奥に住むという謎の老人であった。老人は薬草に通暁しているだけではなく、古武道の達人でもあった。瞬を試した揚げ句、落石に閉じ込められた小動物を助けるために、背丈程もある岩を、全身に集めた“気”だけで木っ端微塵に砕いたりもして見せる。
 夜、老人は地球を取り巻く様々なエネルギーのことを教える。このエネルギーを集めさえすれば、自分の力を使わないで巨石を砕くこともできるのだ。老人は瞬の持つ力に気づいていた。力任せの戦いにも限界がある、もう少し地球の力を利用した戦いを学べ、と。
 老人と別れた瞬は墜落した本体を捜し当てる。出現する怪獣。変身する瞬。だが、どうしても力任せの戦いになってしまい…。(第13話)
 何とか敵を倒した瞬は本体の前に立つ。中に何かがある。瞬の報告を受け、EGSから玲、相馬、アイリーン、技術班と科学班が応援に駆けつける。何とか中に入ろうとする彼らだったが、防御装置が働いているらしく、技術班の2人がそれに巻き込まれて倒れる(瞬の警告により失神だけで済む)。
 科学班を巧みに誘導し、防御装置を解除する瞬。中に入る。光り輝く謎の物体が侵入者の目を射る。失明する2人がいる。EGS本部より完全防備の気密服を送って貰い、何とか物体を運び出すことには成功。もちろんこれが何なのかはわからない。《メガリュームT=401》であることだけはわかった瞬も、これが何に使われるものなのかを、この時はまだ知らない。
 輸送の段になって、またしても怪獣出現。戦うEG=7。変身する瞬。
 怪獣を倒した後、またしても力任せの戦いしかできなかった瞬は、老人と話した夜のことを思い出していた。話には続きがあり、老人は地球の将来を瞬に語った。墜落した物体のこともあった。それが何なのかを確かめた後、それをどうする積もりか、なども。
 老人は語った。もし、今地球が誰かの助けを借りているのであれば、今度はその借りを返さなくてはならない日も来るんじゃないかね? 陸奥隊長への通信連絡の後、瞬は自分の怪我のこと、それを謎の老人に治して貰ったことを相馬に打ち明ける。興味を持った相馬は、墜落した本体を敵が何回見にきていたかも知りたいからと、瞬を伴って老人に会いにゆく。途中で山から2人とも転落しそうになり、自分のザイルを切ろうとした(変身すれば助かるのだ)瞬を引き上げた相馬が殴ったりもする。相馬にとって瞬は友達なのだ。心苦しい瞬…。
 だが、行き着いた先には老人の家はなかった。幻のように消え失せていた。相馬は瞬の手当の跡を見ているから信じた。もちろん玲も。だが、他の面々は幻を見たんだと笑う。あの老人は、一体…?(第14話)
 墜落した本体の輸送はアイリーンに任された。アイリーンは言う。敵が本体を追って中国に現れたからには、我々がこれを運ぼうとしている動きも察知しているに違いない。進路は3つ、2つはもちろん偽装、カモフラージュである。これらはできるだけ目につく派手な動きで本体の輸送に当たって貰いたい。アイリーン自身は海底からネプチューンにて本物の本体を輸送する。
 そんな時、アイリーンに面会を求める彼女の父。それを物も言わず追い返したアイリーンを咎めた玲に、アイリーンは言う。用件はわかっていた。彼女にEGSを辞めろと言うのである。アイリーンは古い名家の出身であった(キャラクター設定原案参照)。アイリーンはその家から逃げ出すためにEGSに入った。父はアイリーンを失うことが怖いのではない。彼女が名家の体面を汚すのが怖いに過ぎないのだ、と玲に打ち明けるアイリーン。玲は言った。それは違うと思う。お父様はお父様なりに先輩のことを心配してるんじゃないかしら。第一、先輩はそれについてお父様と徹底的に話し合ったことあるんですか?
 答えないアイリーン。
 派手派手しい積み込みを終えた2隻の輸送船が出発した後、ネプチューンは玲と瞬の乗るドルフィンとともに出航する。事もなく日本領海に入る2隻。だが、敵もさる者、陽動作戦をちゃんと読んでいた。襲ってくる海底怪獣。危機を迎える2隻。瞬はドルフィンを抜け出し、変身する。慣れない海底の戦いに苦労するウルトラマンだが、ドルフィンとネプチューンの援護もあり、何とか海底怪獣を倒す。
 帰港した玲と瞬は、実は本体が相馬指揮する2隻目の囮に積み込まれていたことを知り、唖然とする。アイリーンの発案だった。無事に運び込まれた本体の調査が始まった。ねぎらいを受けるアイリーンの下に、父がやってきているという知らせが届く。アイリーンは玲に微笑みかけ、言う。今回の戦いもそうだったけど、私の戦いって相手をごまかすものばかりだったみたいな気がするの。でも、それじゃいけない時だってあるわよね。今度こそ父と正面切って対決してくるわ。(第15話)
 本体がEGS本部に運び込まれ、敵の攻撃が東京に集中し始めた。今日も出現した怪獣を迎え撃つEG=7の面々。だが、動きの素早い敵に苦戦する。瞬も変身して立ち向かうが、敵もウルトラマンを十分に研究していた。苦戦する瞬。怪獣を追い返しはしたが、瞬はスパイラル光線が必殺技にならなくなっていることを知る。
 あの老人の言葉が蘇る。力任せの戦いはやめ、地球の力を利用することを考えるべきだ。瞬は老人が見せてくれた“気”を集める技を自分なりの方法で訓練し始める。もちろんすぐには完成などしない。再度現れる怪獣に、中断させられる訓練。またしても苦戦するプラズマンだったが、老人の言葉とそれに従った訓練は確実に瞬の中に生きていた。目を閉じた状況で敵の動きを空気の動きで察知した瞬は、ほとんど無意識のうちにプラズマンカッターを放っていた。
 今日も玲の見守る中、瞬の訓練は続く。そして遂に瞬は、集め切った“気”にて巨大な氷柱を砕くことに成功するのである。(第16話)
 EGS本部に鳴り響く警戒警報。月軌道を回る衛星LG3から、火星軌道から侵入者があったとの連絡が入った。何者かが別の、恐らくは御馴染みの敵の追跡を受けている。出動するEG=7。ガーディアン=シップの活躍で敵を撃退する。
 爆発寸前の船を何とか誘導し、胴体着陸させたのは玲だった。中にいた2人は無事に保護することができた。
 赤嶺博士が(実は瞬が)造った翻訳装置にて接触が始まった。2人の男女は姉弟で、姉はアルスターシア、弟はロマーノ。バンゲルス星出身の2人は、故郷が《ブラックバード星系》に滅ぼされた時に捕まり、敵の持つ収容所に閉じ込められたが、望みを捨てずにチャンスを窺い、そこから脱出してきたのだと言う。EGS、いや、地球人は初めて敵の名称を知った。《ブラックバード星系》。
 EGS上層部は2人から敵に関する情報を得ることを決定する。ロマーノは軍人だが、アルスターシアは年若い女性ながら科学者であった。彼女の力を借りて敵に対する兵器でも造れれば…、EGSは盛り上がる。だが、相馬だけは面白くない。彼は十三年前の事件により、両親と姉とを失っていた。少年だったあの日、恋人と別れた姉を何とか慰めようとした彼に、笑いかけてくれた姉、瞬間2人を吹き飛ばす爆発。…姉は瓦礫の下敷きになりながら、相馬を守ったまま死んでいった。それが相馬の頭から離れない。そんな相馬に親しげに話しかけるアルスターシアに怒鳴る相馬。俺に近づくな。
 相馬はまだ訓練を続ける瞬に、不快感と2人を信用できないという思いを打ち明ける。瞬としてみれば同じ異星人である彼らをどうしても弁護したくなる。それが相馬にはまたしても不満。複雑な瞬。
 都内のEGS関連設備にて警護を受ける2人を、早速暗殺者が狙い始める。志水とベンとが準隊員たちを指揮してその任に当たるが、敵の攻撃も執拗だった。三重の警護網はたちどころに突破される。暗殺者の凶刃にさらされた2人を救ったのは変身した瞬だった。相馬との会話にわだかまりを残した瞬は、自らの目で2人の潔白を確かめようとしたのである。(玲との会話にて)
 2人を何とか助けた瞬。安堵と喜びに沸くEGS内だったが、相馬だけは顔を出さない。ところが実は瞬も疑惑を覚えていた。あれだけ素早く警護網を突破した暗殺者が、どうして2人を前にした段階で躊躇したのだろう…。
 2人は安全のため、EGS本部にその身柄を移された。(第17話)
 ジャック=サンダースはマイクの学生時代のライバルだった。今はNDSに近しいアメリカ軍関係の役所に勤務している。
 デルスキー博士の友人グリーン教授が、博士の送った怪獣の各種細胞を研究した。その細胞組織の規則性から、怪獣の種類こそ多かったが、それを送り込む敵はどうやら1つであるらしいという結論を出す。これはアルスターシアの証言と一致する。その研究成果を元にすれば、新しい攻撃兵器も開発できるかも知れない。そのデータを引き取りに、マイクが派遣された。ところがNDSはNDSで、EGSに代わって地球防衛を取り仕切りたい。そのためにはグリーン教授の研究データを何がなんでもEGSより先に手にする必要があった。送り込まれるサンダース。
 2人の駆け引きが始まる。が、どこからどうやって探り出してきたのか、データを狙う異星人の一団。2人は図らずも一緒になってデータを守らなければならなくなってしまう。それでもマイクを出し抜こうと考えるジャック。しかし2人揃って追い詰められた場所にて、マイクはジャックを逃がすために囮になろうとする。驚くジャックにマイクは言う。EGSだろうがNDSだろうが、地球を守る気持ちは同じなのだ。
 間一髪のところでマイクは駆けつけたベンと玲、そして変身した瞬に救われる。そのマイクにジャックは、データのディスクを手渡すのだった。(第18話)
 今日は志水の休暇の日だった。久々に実家に帰るついでにツーリングに出たい志水は、玲にも休暇を取ってついて来ないかと誘ってはみるのだが、現在仕事に目覚めてしまった玲にものの見事に振られてしまう。但し、気をつけてね、とお守りを渡される。
 志水の実家は裕福な実業家一家だった。彼が母親に反対されながらEGSに入ったのは、格好いいからという理由一つに尽きた(キャラクター設定原案参照)。家に帰る時もEGSの車を使う志水、すれ違う子供たちの歓声にもいい気になってしまう。久々の家庭料理に満足する志水は、誰かいい女性は見つかったかという父母の問いに、玲のことを自分の恋人として話してしまう。
 ツーリングに出る志水。緊急通信機は切ってある。急な呼び出しを嫌ってのことだ。それが災いした。志水を襲う謎の円盤。拉致された志水はその内部にて洗脳されかける。それを救ったのは瞬と玲だった。志水が休暇の際いつも緊急通信機を切ってしまうことをアイリーンから聞かされていた玲が、お守りの中に発信機を仕込んでいたのである。志水は救出され、円盤から出現した怪獣は変身した瞬が倒す。救出された志水は玲への思いを打ち明けようとするのだが、その横には瞬がいた。2人を紹介された志水の父親は、肩を並べる玲と瞬を見て息子の嘘に気づいたが、何も咎めず、玲に、これからも息子のよい友達でいて下さいと頼むのだった。(第19話)
 逃げ込んできた2人の姉弟は《ブラックバード星系》についての知識こそあったが(徐々に明らかにされてゆく敵の正体)、彼らと謎の物体との関わりについてはほとんど知らなかった。だが、アルスターシアを中心に、今日もEGS内では新兵器開発が進む。地球語の覚えも早い彼女はEGSの隊員たち(相馬を除く全員、玲も)とも打ち解け、デルスキー博士などは心優しい彼女を死んだ娘代わりに思ってしまう。赤嶺博士までもがあれはいい子だなどと言うものだから、相馬はすっかりいじけてしまって、陸奥隊長の2人の警護の命令も無視してしまう。そんな相馬にアルスターシアは言う。あなたが私たちを避けているのは知っている。あなたが異星人を嫌っていることもわかる。でも、ひどい目に遭ったのはあなただけじゃない。帰る場所もない私たちはあなたたちに頼るしかない。お願いですから私たちを信じて下さい。涙ながらの訴えだったが、それを遮るかのように相馬は基地を飛び出してしまう。瞼に浮かぶのは死んでいった姉の姿…。
 その相馬に接近するNDSの行長参謀。彼は相馬の経歴を知っており、恐らくはEGSに失望しているだろう彼をNDSに呼び入れる代わりに、2人の姉弟を引き渡せと誘ってくる。もちろん断る相馬。
 2人の存在が市民に知れた。地球を守る筈のEGS内部に異星人がいる。抗議を受けるEGS上層部(相馬への接触が失敗に終わったNDSの差し金だった)。EG=7の隊員たちは皆怒る。異星人には生きる資格がないって言うのか。特に異星人を愛する玲の怒りは激烈だった。そんな中、出現する怪獣。出撃するEG=7。相馬ももちろん合流する。プラズマンとEG=7の共同作戦に追い詰められ、人の逃げ遅れたビルを盾にする怪獣。だが、瞬は少しも慌てない。地球の“気”とでも言うべきエネルギーを集めた新兵器プラズマンショットが、ビルを迂回するように怪獣を倒す。プラズマンの新必殺技だ。大いに沸くEG=7の面々。
 ところがその戦いの最中、EGS基地の一部が原因不明の爆発事故を起こす。それは例の物体(メガリューム)を探していたロマーノが準隊員たちに見つかり、彼らを殺すために起こした偽装事故であった…。
 新必殺技に夢中になり、その原理を問いただす玲に、瞬は疑惑を話す。マイクが狙われた一件と言い、志水が狙われた一件と言い、内部の情報が漏れ過ぎている、と。顔色を変える玲。この中にスパイが? 頷く瞬。(第20話)
 田辺副長官と相馬が対立する。隊長命令を無視して飛び出したことが問題になったのだ。命令違反が重大な罰則を課すものだと知りながら、相馬はどうしてもアルスターシア、ロマーノ姉弟を警護したくないのだ。陸奥隊長の弁護も空しく、田辺副長官に一時的に謹慎を命じられた相馬は、道場で無心に剣を振るう。苛立ちは消えず。
 今度その相馬に接近してきたのは、視察と称し基地を訪れていた政府関係者だった。異星人が地球防衛軍に入り込んでいることに我慢ならない市民の抗議がEGSにも届いていた。そういった面々が政府内にもいるのだと彼は語った。一旦田辺副長官や陸奥隊長にその抗議を届けはしたものの、相手にされず、異星人嫌いの相馬を頼ったのだ。
 瞬はアルスターシアと話す機会を持つ。アルスターシアへの疑惑を消した瞬は、今度はロマーノを見張る。ロマーノは例の物体への接近が難しいことを通信機にて報告しようとしたところを瞬とアルスターシアに見つかってしまう(瞬は陸奥隊長や他の面々にも知らせていた)。スパイは彼だった。なぜ、と問うアルスターシアにロマーノは言う。俺は出世が約束されているんだ。
 だが、存在を知られたスパイが見逃される筈もなく、ロマーノを消すために刺客が派遣される。基地近くに現れる怪獣。資材の下敷きになるロマーノ。変身した瞬の怒りのスパイラル光線が刺客を粉砕する。
 一度は政府関係者の甘言に乗せられかけた相馬だが、戦闘を終えた彼の前に、瓦礫の山からロマーノを助けようと必死になるアルスターシアがいた。それはかつて、少年時代の相馬を助けようとした姉の姿そのものだった。思わずアルスターシアを手伝ってしまう相馬。内部にスパイを潜り込ませたEGSの失態を激しく責め、アルスターシアの引き渡しを要求する政府関係者が、風間参謀の証言により、実はNDSの手先であることが知れ、陸奥隊長の鉄拳が彼を黙らせる。
 ロマーノは助からなかった。姉に詫びながら死んでいった。悲しみに暮れるアルスターシアだったが、相馬に礼を言うだけの余裕はあった。しかし相馬には、彼女に優しい言葉をかけてやる余裕はなかった。
 彼女がEGS内にとどまるといろいろ厄介だ。アルスターシアはデルスキー博士の養女として、秘密裏に彼の家に向かった。それはEG=7と瞬にしか知らされなかった。だが、相馬だけはそれを知ること自体を拒んだ。(第21話)
 北極海から発せられる謎の信号音、それをキャッチした各国の船が次々と消息を絶った。捜索に出たEGSの探査船もが消息を絶つ。EG=7の出番が来た。
 出発するネプチューン。メンバーは陸奥隊長、アイリーン、ベン、志水、玲、そして閉所恐怖症の相馬に代わって瞬(マイクは上空より援護、相馬が瞬を認めているのは友人としてだが、この辺りより隊長やEGS内部でも瞬への評価が高まりつつあることを描く)。北極を地球最後の楽園だなどと言う志水に対し、ベンが北極圏空洞説を持ち出してくる。クック、ピアリーの北極点到達が疑わしいこと、北極点周辺には氷がないというピアリーの航海日誌、北極圏空洞説を唱え、死んでいったアメリカ軍少将…。彼の受け売り知識を笑って聞いていた面々だが、北極圏海中にたどり着いたネプチューンが原因不明の海流に引きずり込まれ始めた瞬間、それが冗談ではなかったことを知る。
 たどり着いた先には志水の言うような楽園はなかった。そこは過去数十年の間に引きずり込まれた船が彷徨うだけの墓場であった。地磁気のせいか、計器という計器が全て作動しなくなり、立ち往生するネプチューン。徐々に深度が下がってゆき、船体が水圧に歪み始める。意識が昏泥し始める隊員たちの前に出現する深海獣。こいつが信号音を発し、船を引きずり込んでいた奴の正体だ。
 ネプチューンの武器は使えない。変身する瞬。だが、水圧と低温のため、自由に身動きが取れない。しかもプラズマンは太陽エネルギーが届かない場所では弱いのだ。苦戦する瞬を救うのはやはり玲。意識が混濁する中、必死でネプチューンの機器を修理、調整し、水中ミサイルを撃ち込んだのだ。スパイラル光線が海水を蒸発させながら深海獣を倒す。
 必死で深海を脱出するネプチューン。上空よりマイクがそれを助ける。深海の墓場を離れながら、EG=7の隊員たちは思っていた。怪獣は敵の回し者だとしても、彷徨う船はそれ以前から引きずり込まれていた筈だ。なぜ。どうやって…? 地球にはまだまだ謎が多い。(第22話)
 陸奥隊長は疲れていた。昼行灯呼ばわりされる彼だが、実は彼がどんな指揮官よりも有能であることはEG=7の全員が知っている。ここ1年半の休暇を全て返上して、職務に励んできた彼だが、流石に体力の限界がきていた。相馬たちに休養を勧められる陸奥。その陸奥の休暇がいつなのかをさりげなく知りたがる三条登喜子医師(第一部末尾でも述べたが、第二部22話までの各所にも彼女の陸奥への思いを挿入していく要有り)。だが、陸奥は返事を濁すばかり。彼女の思いを知っているアイリーンや玲にはそれが歯痒くて仕方がない。朴念仁揃いの男たち(瞬も含め)には任せられない。アイリーンの一計で、陸奥と三条医師とは同じ日に休暇を取ることになってしまう。
 ぶらつく陸奥を追いかけ、市街パトロールと称したアイリーンと玲が三条医師を車で送り、合流させる。戸惑いながらも彼女を連れて歩く陸奥。話の間に妻との出会いから離婚までをかい摘まんで話す。彼とて三条医師の思いに気づいていなかったわけではなかったのだが、再び良き家庭人になれる自信がなかったのだ。だが、三条医師の方に、自分は彼のよき理解者になれるという自信と自負のあることを、陸奥は知らない。
 ところが、その2人を正体不明の地球人の一団が追いかけ始める。しかも、命を狙ってのことらしい。チンピラ、不良少年、サラリーマン、主婦、果ては警官までもが銃を手に、2人を追い回す。なぜか街々が見知らぬ迷路に変わり、2人は完全に追い詰められそうになる。ロマーノの送ったEGS内部情報が陸奥と三条医師のことをも伝えており、2人を狙った暗殺作戦が発動していたのである。必死に追いかけながらも、彼らを追う連中に邪魔され、遂に2人を見失ったアイリーンと玲。玲は瞬に助けを求める。駆けつけるプラズマンが、市民を洗脳し時空を歪ませた敵をプラズマンカッターにて八つ裂きにする。
 休暇どころじゃなかったな…、ぼやきながら基地に戻った陸奥に、相馬は仕事をさせない。つぶれた休暇の代わりをちゃんと取れ、と言う。しかし、出掛けてひどい目に遭うのは御免だという陸奥を、隊員たちの用意したバースデイケーキが出迎える。そして、三条医師とのデートの続き(但し、基地内にての)。相馬とマイク、それに瞬が田辺副長官や風間参謀に許可を貰っての措置であった。アイリーンや玲は騙されたと怒ったが(もちろん笑いながら)、彼らとて三条医師のことくらいちゃんと察していたのである。(第23話)
 科学班の調査により、謎の物体本体に収められていた鉱石が冥王星にて採掘される《メガリューム》だと判明した(その解明には瞬の隠れた誘導は必要なかった)。だが、それを何のために使用するのか。あるいはなぜ敵がこれを恐れるのかがまだわからない。瞬にもわからない。そんな時、あのテレパシー増幅装置が今度は違うメッセージを伝え始める。だが、内容はわからない。出力が落ちているため、通話が途中で途切れるのだ。ただ、“急いでくれ”という声は聞こえた。玲と赤嶺博士以外にそれを知らせるわけにはいかない瞬。ジレンマに悩みつつも、玲、赤嶺博士を交えての推理を働かせる瞬。
 そいつは突然現れた。EGSの対空警戒レーダーがその姿を捉え、シップやウィングが発進する時には既に基地の近くに降りていた。バリアーを事もなげに突破し、カタパルトを破壊、あっさりと基地内に侵入を果たす。次々に倒されてゆく準隊員たち。ベン、志水も負傷する(ベンにはアイリーンが駆け寄るが、志水に玲は駆け寄ってくれない)。
 そいつの名はベム=ソドム。《ブラックバード星系》軍のナンバー2だ。配下どもがいつまでたってもプラズマンやEG=7を撃破できず、本体を破壊できないのにしびれを切らし、自らが乗り込んできたという次第であった。マイク、相馬の防衛も突破したベムは、遂に格納庫の一つにて瞬と対峙する。
 生身での対決(瞬は生身でもスパイラル光線などを使うことができるのだ)。そして、変身。さしものベムも、変身した瞬=プラズマンには勝てず、やむなく引き退がる。その戦いの中、瞬はベムから、敵が《メガリューム》を恐れる理由を聞く。何かを作動させるエネルギーなのだ。
 逃げるベムとその船団をシップが追う。だが、今のシップには敵は強すぎた。
 敵は撃退したが被害は甚大だった。EGSは基地の修復を急ぎながら、バリアーや対空砲火、シップの武装など、もっと強力な防衛網の設営の必要性に迫られた。練られる対策。そんな中、隊員や準隊員たちに妙な夢が蔓延していることが判明。誰かが急いでくれと頼んでいる。弱いながらもテレパシー感応能力のある者には瞬同様、あの声が聞こえるのだ。赤嶺博士は例の本体にエネルギー弁を差し込み、増幅装置が壊れる寸前に、絶え間無く流れ出すメッセージを記録することに成功する。(第24話)

(仮)プラズマン企画書6

《第三部》

〈ぎりぎりの極限においてさえも、他人を思いやれる心、それが本物の優しさではあるまいか。それを問われた際、幾人の人間が頷けるだろう。口で言うのは易しい。だが、それを実行に移すのは難しい。今、地球がそれを問われていた。地球は初めて、ただ守られ、助けられるだけの側から、助ける側にまわろうとしていた…〉

 EGS基地の修復と防衛網設置が進む中、帰国していたデルスキー博士より絶対防衛網と対ブラックバード星系の究極兵器を造るために、娘を派遣する、との通達が入る。ちょうどその時、射撃訓練をしていた相馬も、Aというイニシャル付きの化粧箱入り大型銃を受け取っていた。その名もデルスキーマグナム。相馬所持のライトニングキャノンを遥かに凌ぐ威力を持つ。
 デルスキー博士の娘がその相馬にガードして貰いたいと言ってきた。慣れない正装をして空港に出迎えに行った相馬は現れたアルスターシアを見て激怒。彼はアルスターシアがデルスキー家の養女となっていた事実を知らなかったのだ。陸奥隊長にねじ込みに行くのだが、知ろうとしなかったのはお前の怠慢であると逆にやり込められ、アルスターシア護衛を引き受けなければ謹慎処分だと脅される始末。これは異星人嫌いを何とか緩和してやろうとする隊長や玲のアイディアだったが、瞬などは逆効果ではないかという畏れを抱く。
 最初は瞬の畏れの方が当たっていた。ホテルの中での警護中(EGS本部の研究室を使えばという提案を、アルスターシア本人が遠慮する。これはもちろん、以前の悲劇がこだわりになってもいたし、彼女自身の相馬への配慮もあったことによる)、とにかく相馬はアルスターシアに近づこうとしなかった。食事時、お茶、ちょっとした休息…。彼女からの全ての誘いを断った。煙草の煙さえも口論の種となり、遂には相馬が辞めるとまで口走り、アルスターシアを半泣きにさせたりもする。
 そんな彼女を、ブラックバードの暗殺者が狙い始める。相馬は仕事は仕事だと、それらを機械的に片付けてゆく。だが、寝食を忘れ、仕事の没頭する彼の姿をアルスターシアが見ていない筈がない。また相馬の方も、危機に遭遇しても仕事を投げ出さず、必死になって防衛網の完成を目指す彼女の姿を見るうちに、少しずつ考え始める。その彼女になぜこんなに一生懸命になるのかと尋ねた相馬は、一生懸命になるしかありません、今となってはこの地球が私の故郷なのですから、という答えを返され、ショックを受ける。
 遂に暗殺者は怪獣を送り込んできた。巨大化するアメーバがホテルを襲う。立ち向かう相馬だが、ライトニングキャノンの威力が頼りない。とうとう彼はベンに命じてデルスキーマグナムを持ってこさせる。アメーバ怪獣を操る暗殺者は、変身した瞬に倒される。
 騒ぎの治まったホテルの前で煙草を吸う相馬。それをアルスターシアが見つめている。相馬はそんなアルスターシアに、あくまで市民が巻き添えになるからと前置きしながらも、EGS本部に来ることを薦めるのだった。(第25話)
 アルスターシアを交えての防衛網設営が急ピッチで進む中、赤嶺博士のテレパシー増幅装置からの信号読み取りが完了する。集められたEGS首脳、EG=7隊員たちの前で明かされる真実の数々。ブラックバード星系の正体、蹂躙された星々、アルフェリア星での抵抗活動、メガリュームの使い道(設定原案参照)。
 助けてほしい、メッセージは結んでいた。訪れる沈黙。助けてくれと言われても、一体どうすればいいのか。地球には光速を越えられる宇宙船などないし、外宇宙はあまりに未知の危険に満ちていた。アルスターシアに遠慮してはっきり口に出す者こそいなかったが、メガリューム鉱石など捨ててくればいいんだと囁き合う声すらあった。
 宇宙より飛来する数個の流星。ブラックバード星系からの贈り物だ。一つがEGS本部近くに落下する。出現する怪獣。だが、未完成とは言え、アルスターシアの考案した複合バリアーが怪獣の攻撃をことごとくはね返す。逃げ場を求めて都市に向かおうとする怪獣を、EG=7とウルトラマンとが退治する。
 意見を求められる各隊員たち。皆が口ごもる中、玲だけが明言する。助けにゆくべきだと。X=プラズマンだって異星人だ。けれど彼は必死に地球のために戦っている。私たちはその事実を、単に彼の好意だと片付けていいのか。私は嫌だ。私はあの人の心に報いたい。もし誰かが助けを求めているのであれば、何を置いても手を差し伸べたい…。玲は瞬の前で、瞬さえも言えないことを堂々と言ってのけたのである。決議は保留されたが、玲の言葉はEGS首脳や全隊員たちに大変な感銘をもたらしたのであった。(第26話)
(以下第27話から31話まで、冒頭に30秒の概略説明コーナーを設ける要有り。ブラックバード星系、謎の物体の正体、地球が助けを求められていること…、等など)
 瞬が何か悩んでいる。玲が尋ねる。だが瞬は答えない。玲が怒っても答えない。ふて腐れる玲。瞬のことなら何でも知っていなければ気が済まなくなっている自分に気づき…。
 EGS本部に警察と自衛隊からの救援要請が来る。突発的な地震が道路を寸断、患者16名を入れた山奥の病院が孤立してしまったのだ。急を要する患者もいると言う。忙しい中での要請に乗り気でないEG=7(まさか地震=怪獣とは思っていない)。院長の名を聞いた瞬だけが飛び出していく。宗形明。地球に来た瞬が初めて出会った地球人であり、瞬を地球人として教育、亡くなった人間の戸籍を名乗らせた人物であった(キャラクター設定原案参照)。
 陸奥の命令もないまま瞬を追いかけた(結局命令は出るのだが)玲は、初めて宗形と対面する。彼は信念に生きる医者であった。再会の喜びもつかの間、患者を運ぶ3人。急を要する患者とは妊婦であった。そんな中、出現する怪獣。攻撃を食らい、故障するジャイロペガサス。瞬は変身して怪獣に立ち向かうが、流星の落下による地滑りで足場の悪い場所にて、ジャイロペガサスを守りながらの戦闘に苦戦。プラズマンが戦う中、宗形は容態の急変した妊婦を、ジャイロペガサス内で手術する。助手を務める玲に、宗形は言う。どんな人間でも生まれてくるからには助けなくちゃいけないんだ。それが地球人であっても異星人であっても…。だから彼は瞬を迎え入れたのだ。名状し難い感動を覚える玲。
 怪獣は倒され、入院患者たちは駆けつけたEG=7に救助される。妊婦も無事出産していた。やっと再会の喜びに浸る瞬と宗形。1人の医者として迎え入れて以来、その異星人は地球を守る男となったことを宗形は知っていた。2人の間に言葉はいらなかった。固い握手があればよかった。患者たちを診るために麓の病院に向かう宗形を見送り、瞬と玲はジャイロペガサスに乗り込む。
 玲は瞬に言う。やっぱり助けに行くべきよね。宗形との出会いは、玲の心にますます大きな義務感を育てていた。だが、瞬の方はまだ迷っていた。増幅装置からのメッセージに銀河連邦の介入とあったのを気にしていたのだ。一度飛び出した自分を、彼らが迎え入れてくれるか、瞬には自信がなかった…。(第27話)
 アルスターシアからの依頼で、EG=7は火星にテクタイト鉱石を採集に行くことになる。メンバーは陸奥隊長と志水、EGSの準隊員2人、そして瞬。6人を乗せたシップがEGS基地を飛び立つ。
 今日も相馬に気味悪がられながら、ベンが詩集を読んでいる。心の底では強い信頼感に結ばれていながら、マイクは相変わらずベンを毒づいている。ところがベンはベンで悩みがあった。相馬やマイクと違い、戦闘的でない自分の性格が、EG=7の隊員として不適格ではあるまいかという不安である。そんな彼の悩みに、アイリーンは気づいており、自分に相談してほしいのだが、ベンが彼女の気持ちに気づく筈もない。
 そんな折り、ベンの両親と弟とが彼を訪ねてくることになった。ベンは自分の自信のなさを打ち明け、EGSを辞めるかどうかを相談しようと思っていた。ところがブラックバード星系からの流星の一つが空港の近くに現れ、怪獣と化す。怪獣は空港の滑走路を占拠し、各航空機の着陸を阻む。
 巨体の怪獣は頑丈で、EG=7の攻撃はなかなか通用しない。刻々と経過する時間。このままでは空中に待機している航空機の燃料が尽き、全機墜落してしまう。焦るベンを落ち着かせようとするアイリーン。マイクがウィングで各航空機に燃料を補給してまわろうとするが、相手は民間航空機、巧くいかない上に、一回の補給に時間がかかり過ぎる。待機する航空機は16機もあるのだ。いずれ補給の追いつかない機も出てくるだろう。
 ますます焦るベン。実は玲も焦っていた。瞬がいないのだ。刻々と迫る時間の中、遂にベンは特攻覚悟の攻撃を決意、単身怪獣に突っ込んでゆこうとする。止める相馬。アルスターシアが技術部開発中の宇宙航行用ロケットエンジンのサンプルを怪獣に撃ち込んだらどうだろうと提案する(宇宙に飛び出す日に備えて平間技術長が製作したもの、但し技術長はその出来に不満で破棄処分を検討していた矢先)。その推進力を使って怪獣を滑走路から追い立てようというのだ。すぐさまロケットがサンダーフォックスに積み込まれる。空中からマイクが援護する中、怪獣の目を逸らすための陽動作戦が発動する。突っ込んでいくベン。怪獣の反撃を受けながらも、家族や乗客のために鬼気迫る表情で攻撃を続けるベン。そこには戦闘的でない平和主義者のベンはいなかった。そして怪獣の背中に撃ち込まれるロケット。怪獣は遂に滑走路から追い払われた。着陸を開始する航空機。
 玲の思いを火星にて受け取った瞬が戻ってきた。一回使うだけで膨大なエネルギーを消費する星間テレポートで。しかし今の瞬には自己のエネルギーを一切使わなくとも敵を倒せるプラズマンショットがある。その一撃は、ベンと相馬を襲おうとしていた怪獣をたちまち粉砕する。
 家族との再会を果たしたベンだったが、平和主義者の自分が形相を変えて敵に突っ込んでいった姿に自己嫌悪を覚えたりもする。そんなベンにアイリーンは言う。あなたは守るべきものを守るために戦ったのよ。あなたの家族に会えてよかった。
 その頃、火星からふらふらになって戻ってきた瞬を、玲が抱きとめていた。(第28話)
 アルスターシアが要求したテクタイト鉱石は、新しい防衛用武器を造るための材料だった。太陽光線を集積しメガリュームエネルギーと合成、特殊レンズにて相手に焦点を合わせ、発射する武器は《ハイペリオン砲》と名付けられる。
 問題は特殊レンズの製作工法。口や書面で説明しても、経験のない地球人の技術では製作は難しい。それを技術班の協力を得ながらも、結局は一人でこなすしかないアルスターシア。一心不乱の彼女の姿を見つめる相馬の脳裏に、以前彼女の言った言葉が蘇る。今は地球が私の故郷ですから…。
 アルスターシアの連日連夜の作業が続く中、宇宙ステーションが冥王星軌道より彼方に妙な影を発見する。直径3キロの巨大隕石だ。地球に接近しているのだ。もちろんブラックバード星系の送り込んだものに違いなかった。敵は遂に地球をメガリューム鉱石ごと破壊しにきたのである。
 巨大隕石を破壊できるのはハイペリオン砲しかない。アルスターシアは疲れた体に鞭打ってレンズの製作に当たる。そして、レンズの完成と同時に疲労のあまり倒れてしまう。
 迫る巨大隕石。次第に狂い始める気象の中、ハイペリオン砲の組み立てが始まる。アルスターシアはベッドの上からそれを指示する。だが、実は巨大隕石の接近は囮だった。地球に落ちた流星群の1つから、またしても現れる3名の人型怪人。恐らくアルスターシアが何らかの兵器を造るであろうと踏んでいたブラックバードが、彼女の抹殺を目論んで送り込んだ暗殺者だ。暗殺に成功すればそれでよし、成功しなくとも巨大隕石がメガリューム鉱石ごと地球を粉々にするという二段構えの作戦だ。
 巨大隕石は火星の軌道を越え、地球に接近していた。荒れ狂う気象。そんな中、遂に二基のハイペリオン砲が完成する。その一基をガーディアン=シップに搭載したEG=7は巨大隕石迎撃に向けて出発する。
 ガーディアン=シップ出撃を見計らい、開いた複合バリアーの隙間からEGS本部内に侵入を果たす暗殺者。だが、アルスターシアを狙った3名は、変身した瞬の敵ではなかった。
 そして、ガーディアン=シップの放ったハイペリオン砲は、巨大隕石をものの見事に木っ端微塵に粉砕していた。
 苦労をねぎらわれるアルスターシアだったが、一言申し添える。ハイペリオン砲の威力はご覧の通りである。地球の皆さんに誓って頂きたい。この兵器をあくまで防衛兵器と限定することを。さもないと地球はブラックバードと同類に堕ちてしまうだろう、と。厳粛な面持ちで聞いていた田辺副長官や参謀、EG=7の面々は深く頷くのだった。彼女の言葉は通信を通してケーシー長官にも伝わっていた。ケーシー長官は言う。今度の国連会議にて、EGSのアルフェリア星への派遣を提案してみる積もりだ、と。沸き返る面々。気の抜けたように倒れ込むアルスターシアを支えたのは相馬だった。(第29話)
 国連会議の席上、ケーシー長官と田辺副長官はEGSのアルフェリア星派遣を提案した。この仕事はメガリューム鉱石を運ぶだけではない。地球という星が宇宙の一員であることを、宇宙の皆に知って貰うためのものなのだ。我々はこれまでプラズマンに助けられ、今度はアルスターシアに助けられた。今こそ地球が初めて宇宙のために何かをしてやる時ではないか。
 2人の声明は一部を除いて大きな反響と称賛を呼ぶ。反対したのは他所の星のことなど放っておけと言う一部の地球人と、NDSであった。今こそ地球防衛をEGSから自分たちの手に奪回したいNDSは、EGSが英雄扱いされるのが面白くない。そこで出発に反対する市民団体を煽り、EGSは地球の防衛をなおざりにして、他所の星を助けようとしているといった抗議運動を起こさせる。ニュースや新聞にも悪意のある記事(アルスターシアはEGSを唆す魔女だ、等)が載せられ、腹を立てる志水やマイク。
 出発が決まったのはいいが、問題はロケットだ。光速を越えるロケットエンジンをどうするかという問題に、またしても瞬が助言を出す。アルスターシアが乗ってきた宇宙船やメガリュームを積んでいた本体のエンジンを調べ、その一部を使ったらどうか、と。駆動やシステムに関してはアルスターシアが知っていた。技術部がまたしても大回転を始める。本部から技術部までのシークレットルートを彼女を乗せて走っているトレーサーに、どこから忍び込んだのか市民団体が石を投げ付け、揉み合いになった揚げ句、志水が市民の1人を突き飛ばしてしまう。そんな時出現した怪獣に、逃げ惑う市民団体。怪獣を倒すのはお前らの仕事だろう、我々を守れ、などと言って。怪獣はプラズマンとEG=7に退治されるが、志水の起こした問題が問題を大きくする。
 またしても連日連夜頑張るアルスターシア。そんな中、市民団体に圧力をかけられたマスコミがEGSとアルスターシアを攻撃する。マイクや志水に言わせれば、自分たちで何もできない連中に限って問題を起こしたがるというわけなのだが、それではアルスターシアの方が収まらない。田辺副長官に頼んだ彼女はTVに出演、自分が異星人であることを明かした上で、今自分が地球人として生きていきたいと望み、アルフェリア星を救うことがブラックバード星系から地球を救うことになるのだと述べ、人々の理解を求める。彼女の勇気はNDSの妨害をも潰えさせる。その頃新聞社を訪れていた相馬は、アルスターシアを魔女だと書き立てた記者を引っ立て、TV放送を終えたばかりの彼女の前に突き出し、謝罪させる。アルスターシアはそれを相馬がやってくれたというのが嬉しい。
 だが、相馬は相馬で苦悩を抱えていた。閉所恐怖症を克服できないことに対し…。(第30話)
《フリーダム》と名付けられたロケットの組み立てが進む。ベースとなったのは惑星探査ロケット、47人乗り、ハイペリオン砲を初めとする防衛兵器と6機の着陸艇、艦載機を搭載。その他、アルスターシアが造ったバリアー歪曲力線照射装置などもある。
 問題は搭乗メンバーだ。
 相馬は自分が行くものだとばかり思っている。先日のTV放送でも、アルスターシアの横に立った田辺副長官が、もし地球に何かあった時のためにEG=7のメンバーの幾人かを防衛要員として残すと発表している。残るのが陸奥だとすれば行くのは自分だ。だが、シップの中でさえも恐慌を来す彼の閉所恐怖症を克服するのは並大抵のことではない。連日、気密室を使っての秘密の特訓をやって、何とか2、3時間までなら耐え切れるようにはなったが、到底追いつかない。悔し涙に暮れる相馬。寄り添うアルスターシアに弱音を漏らす。アルスターシアは優しかった。彼女は相馬の訓練する姿、悩む姿を陰から見ていたのだ。初めて握り合う2人の手。
 一方、玲にも不安があった。
 メンバー発表。相馬はアイリーンとともに人選から漏れた。陸奥の配慮であった。お前は地球を頼む。そう言われると相馬には返す言葉がない。代わりにメンバーに入れられる瞬。彼なら相馬の代役が立派に務められる筈だ。玲の不安は瞬時に解消される。だが、瞬は迷っている。自分は銀河連邦の裏切り者なのだ…。そんな瞬に、玲は言う。あなたは地球人伏見瞬として、アルフェリア星の人々に会いにゆくのだ、と。そして小声で、あなたが来てくれなかったら、私が辛かった、とも。
 宇宙へ旅立つための訓練が始まる。志水、ベン、マイクはそれぞれの仲間、友人、家族に連絡を取る。時によっては心の中で別れを告げ、時によっては新たな闘志を燃やしたりもする彼ら。特に志水は、この旅の中で必ず玲に思いを告げるのだと意気込んでいる。ベンはアイリーンに、陸奥は三条医師に誘われ、最後かも知れないデートに。女性隊員から引く手数多のマイクは、ジャック=サンダース(第18話)の内密の訪問を受ける。宇宙研究はNASAとも関連の深いNDSの方が上だ、と資料を渡され、固く握手しあう2人。
 自分は肝心な時に役に立たないのかな、などと呟いた相馬を叱るアルスターシア。あなたには地球を守る役目があるじゃないの。
 そして言うのだった。あなたともっと知り合えるのが嬉しい。あなたが行っていたら、もしかして、ずっと知り合えないままだったもの。
《フリーダム》発射の時は迫る。相馬は瞬に、ライトニングキャノンを渡す。俺にはデルスキーマグナムがある。必ず戻ってこい。そんな時、流星群の最後の(?)2つが目覚める。怪獣出現。2匹の怪獣は《フリーダム》発射基地に迫る。変身して戦う瞬だが、2匹相手に苦戦する。船内と基地では既に秒読みが始まっている。祈る玲の前に現れたのはシップ。操縦は何とか3時間だけ閉所恐怖症を克服、にわかパイロットになれた相馬とアイリーン、そして準隊員に交じるアルスターシアだ。1匹を倒した瞬が何とか船内に駆け込み、《フリーダム》は発進する。そしてもう1匹を、相馬指揮するシップが片付ける。
 大気圏を飛び出した《フリーダム》は、襲いかかってきた敵攻撃部隊を一蹴、ジャック=サンダースの資料をコンピューターに組み入れ(外宇宙に関しては、瞬が示唆することで)、地球人として初めてのワープ航法で、宇宙に飛び立つのであった。(第31話)
(以下32話から34話まで、冒頭にて《フリーダム》が宇宙に飛び出すまでの経緯を説明する)
 ネルーダ星はブラックバード星系に占領された星の一つだ。街の中心に軍事基地を造られ、多くの市民が強制労働に駆り出されている。もちろん抵抗組織もある。だが、敵秘密警察の暗躍により、彼らの命運も尽き果てようとしていた。急襲される抵抗組織アジト。だが、最後の1人が拉致される寸前に外宇宙に送った救援要請通信が、付近を航行中の《フリーダム》に届いていた。
 出発以来、やっと宇宙に慣れ、宇宙酔いも一段落、くつろいでいた乗組員たちの間に緊張が走る。ネルーダ星に急行する《フリーダム》。奴隷と化した市民の目前で公開処刑されようとしていた抵抗組織の面々を、発進した戦闘艦載機スターガーディアンが救い出す。マイク、志水の乗るスターガーディアンは敵戦闘部隊を沈黙させ、飛び立った迎撃戦闘機隊を《フリーダム》からの一撃が撃墜する。
 逃走に移った《フリーダム》。何とか逃げ果せたと思いきや、謎の船団に接近される。敵の一部か、戦闘態勢を整えようとした船に、通信が届く。彼らはブラックバード星系の侵略に立ち上がった抵抗組織の連合であった。ネルーダ星の抵抗組織を救出に向かう途中だったのである。救出された抵抗組織のリーダー、ボランが仲介に立ち、地球人と各星の抵抗組織リーダーたちは無事接触を果たす。
 ブラックバードに狙われながら、アルフェリア星を救援することを決意した地球の決定は、彼らに大変な感銘をもたらした。同時に彼らの目に《フリーダム》は実に奇異に映ったらしい。先端の兵器と旧式の設備。これでどうやってブラックバードの攻撃兵器と互角に戦えるのかが不思議だったらしい。《フリーダム》には任務がある。各星の抵抗組織を支援して回るのは時間的にも難しい。それでも見捨てて通過もできない。では、各星の抵抗組織を援助するために何ができるか。
 リーダーの1人が言う。敵の補給基地を叩くしかない。ブラックバード星系は侵略した星々のほぼ中心に巨大な補給基地を建造しており、そこから各星系に物資や部隊を送り込むのだそうだ。そこを叩けば各星系の抵抗組織の活動はずっとやり易いものになるだろう。 そのデータを並べてみたEG=7の面々は、その補給基地こそ、アルスターシアが弟ロマーノとともに幽閉されていた暗黒刑務所であることを知る。捕らえられている人間も多いという。陸奥が決断を下す。敵補給基地を叩く。
 そんな中、ブラックバード星系の追跡部隊が船団を襲う。
 宇宙船が変形して怪獣と化す。エンジン始動の遅れた《フリーダム》を守ろうとした抵抗組織の船団はたちまち蹴散らされる。出撃するスターガーディアン。だが、ネルーダ星大気圏内とは勝手が違い、未だ慣れない宇宙での戦いに苦戦。スターガーディアンが暴走したり、ベンの援護射撃が味方に当たりそうになったり。《フリーダム》も必死で応戦するが、怪獣の動きは素早く、あちこちの装甲を破られる。各部所の修理に赴いていた瞬は、破られた装甲近くにいた玲を救おうとして宇宙に放り出される。
 変身する瞬。
 久々の宇宙での戦い。プラズマンも最初は苦戦する。が、彼には地球で得た仲間と、そこで身につけたチームワークとがあった。スターガーディアンとの共同作戦にて怪獣を葬る瞬。
 そして、各星の抵抗組織と地球人との合同船団は、初の共同作戦を勝利にて終え、敵ブラックバード星系の侵略の要である暗黒刑務所に向かったのであった。(第32話)
 無数の艦船に守られた暗黒刑務所に、小惑星帯に紛れ、抵抗組織と《フリーダム》連合艦隊が接近する。概算でも敵艦船は味方の十倍近く、しかも暗黒刑務所の巨大さは圧倒的だった。正面からの突入は不可能だ。一時はハイペリオン砲でなければ破壊不能ではないかという論議も出る。だが、陸奥が、そして瞬が反対する。アルスターシアは言ったではないか、ハイペリオン砲は防衛兵器として利用してくれ、と。だが、監視している中、巨大な小惑星を土台に造られた人工惑星に頻繁に出入りする輸送船があるのを発見。あれに紛れて暗黒刑務所に侵入できるかも知れないということになる。
 囮作戦に抵抗組織の面々が名乗りを上げる。無事では済まないだろうことを心配する陸奥だったが、彼らは言う。暗黒刑務所を破壊しない限り、自分たちの平和はあり得ない。それに、地球から来た勇気ある友人たちの計画を何としてでも成功させてもやりたいのだ、と。感激するEG=7の隊員たち。陸奥は言う。あなたたちのその言葉を聞いただけで、私たちがやってきた甲斐があったというものです。
 数隻の抵抗組織艦船が、囮として暗黒刑務所に接近する。たちまち捕捉され、追い立てられる囮艦隊。その隙を縫って、マイク、ベン、抵抗組織の面々、そして瞬の計10人が輸送用艦船を急襲し、潜入を果たす。
 入り組んだ通廊をくぐり抜けた時点で、10人は二手に分かれた。一方は刑務所に閉じ込められた囚人を救い出しに、一方、マイク、ベン、瞬を含む5人は暗黒刑務所内部の破壊に赴く。監視や警備兵を乗り越えながら進む5人。遂に中央管制室にたどり着く。
 だが、爆弾を仕掛けようとした瞬間に潜入が露見する。始まる銃撃戦。2人の抵抗組織の仲間は銃弾に倒れる。マイクも負傷し、ベンと瞬とを行かせるために囮になろうとするのだが、逆にベンに助けられてしまう。馬鹿野郎、俺を助けてる間があったらとっとと逃げろ! などとベンを毒づきながら、マイクの目に涙が光る。
 だが、マイクを助けるために要した時間が敵に囲まれる結果を招く。囮になると言ってライトニングキャノン片手に飛び出す瞬。追いかけようとするベンだったが、爆風が行く手を阻む。
 その頃、もう一方の5人も犠牲者を出しながらも、刑務所の囚人を解放するのに成功していた。警備兵を倒し武器を奪い、輸送船を奪う面々。脱出が始まる。だが、マイクとベンは瞬が戻らないので脱出できない。陽動作戦に駆り出されていた艦船も、やっとそれが囮であったことを知り、引き返してくる。
 瞬は敵に囲まれ、動けなくなっていた。警備ロボットの群れにライトニングキャノンの弾丸も尽き、変身する瞬。スパイラル光線が敵を一掃する。
 もう時間がない。断腸の思いでマイクとベンに脱出を命じる陸奥。祈るように暗黒刑務所を見つめる玲。
 だが、暗黒刑務所の大爆発と同時に、もう一隻の宇宙艇が脱出を果たす。玲の顔が輝く。瞬だ。大歓声の中、《フリーダム》へ帰還する瞬。
 救出された囚人を連れた抵抗組織の面々との別れ。EGSの隊員たちは、自分たちが宇宙の片隅に友人を作り得た思いを噛み締めていた。囚人の中にはアルフェリア星のブラックバードへの抵抗組織の面子もいた。彼らを連れ、出発する《フリーダム》。
 展望室にて、去ってゆく抵抗組織の船団を見送る瞬。その側に玲が寄り添う(それを目撃してしまう志水、マイクに慰められるが…)。戻ってきてくれてよかった…。呟く玲に、瞬は言う。僕は自信を持ったよ。今の今まで宇宙に出たことが正しかったかどうか自信がなかったんだ。でも、宇宙に乗り出して間もない地球人にも、宇宙の友人は作れたし、暗黒刑務所を破壊することもできた。僕は自分のことを銀河連邦を逃げた裏切り者だとしか思えずに今までいた。僕は自分にも自信を持てなかったんだな。でも、今の僕は地球人だ。地球人としての誇りを持って、アルフェリア星に行きたいと思う。(第33話)
(以下34話から36話までは、冒頭に前回の概略をスポットとして流す)
《フリーダム》内部に警報が響き渡る。各自の部署で任務に当たっていた者、部屋でくつろいでいた者、全員が戦闘態勢に就く。目指すアルフェリア星は近い。敵の攻撃の頻度も増しつつあった。
 スターガーディアンが発進し、《フリーダム》は複合バリアーを張り終えた。敵は30機の大型戦闘艇部隊。激烈な戦闘が開始される。今や宇宙の戦闘にも慣れ、スターガーディアンを縦横無尽に駆るマイクと志水。《フリーダム》からのベンの援護射撃も誤射がほとんどなくなった。
 だが、戦闘艇部隊を殲滅はしたものの、背後に控える戦闘艦3隻は強敵だった。1隻2隻なら何とかできたかも知れないが、入れかわり立ちかわり攻撃してくる敵に苦戦する《フリーダム》。艦載機用カタパルトに侵入した瞬は変身、外に飛び出しざまテレポート。敵の背後を衝く。プラズマンの登場に《フリーダム》も活気づき、3隻の敵を共同作戦にて屠る。
 その戦いを遠くから眺めている連中がいた。
 連中は《フリーダム》が地球から来たことを知らなかった。ただ、彼らの目的地がアルフェリア星であることだけは推察していた。問題は彼らを助けた巨人の正体である。暗がりから発言を求める1人の女。ガイサンダーです。宇宙船がどこの物であるかはわかりませんが、あれがガイサンダーであることだけは間違いありません。
 彼らに直接尋ねてみる以外なさそうだな…。連中はそう結論づける。
 最後のワープが終了し、《フリーダム》はアルフェリア星を肉眼にて捉える距離にまでたどり着いた。遂にやって来たのだ。充実感とともに、新たなる緊張が皆の胸に走る。陸奥が言う。ここまでに30人の乗組員のうち6人が命を落とした。ここでの戦いはこれまで以上に厳しいものになるだろう。だが、ここまで来たからには最後の瞬間まで戦い、アルフェリア星で待つ人々の助けになろう。
 アルフェリア星の周囲には、少なくとも数百隻の警備艦隊と、先の暗黒刑務所にも匹敵する巨大要塞が外部からの侵入者を見張っていた。運よく月の周囲を取り巻く小惑星帯を見つけ、一旦(フリーダム)はそこに姿を潜めた。暗黒刑務所から救出した2人の抵抗組織メンバーを連れたマイク、志水、玲、瞬など計15名が、定期的にアルフェリアに落下する隕石群(抵抗組織メンバーがこれを教える)に紛れ、上陸を果たす。星の大地は荒れ果てていた。彼方に巨大な地上要塞が建設されていた。大部分のアルフェリア人はそこで強制労働に就かせられ、同時に銀河連邦による外部からの攻撃の盾にもされているのだという。
 メンバーの案内で抵抗組織のアジトの一つ近くに降りたマイクたちだったが、それを敵の進攻だと勘違いした抵抗組織と一時は睨み合いになる。救出されたメンバーを確認できる人間がいたため(抵抗組織サブリーダー、マクリー=ギル)、何とか事なきを得る。歓迎される瞬たち。ところが、場所を変えよう、この辺りも最近危ないんだと言うギルの台詞の終わらないうちに、今度は本物の敵の急襲だ。襲ってくる戦闘部隊と怪獣。抵抗組織もマイクたちも必死に反撃するが、多勢に無勢。アジトの陰に走り込んだ瞬は変身し、怪獣に立ち向かう。
 他のメンバーは戦闘部隊(戦闘艇と歩兵)相手に善戦するが、ミサイルの爆発に巻き込まれそうになった子供を救おうとした玲が、逆に爆発に煽られ気を失う。それを助けようとした志水も、別の爆発に巻き込まれ…。
 その頃、小惑星帯に隠れていた《フリーダム》は、いつの間に接近を許したのか、謎の宇宙船団の包囲を受けていた。(第34話)
 プラズマンは何とか怪獣を倒し、抵抗組織の皆も逃げ終えた。だが、気を失い倒れていた玲と志水は、敵の歩兵団に捕らえられてしまう。
 脱出に成功した面々は、迎えにきていた抵抗組織の主要メンバーと合流する。そこでマイクたちはギルに、抵抗組織のリーダーであるログ=スターンと、もう1人のサブリーダーである女性エイミナ=バロンを紹介される(エイミナがスターンの恋人であることはすぐにわかる)。彼らに追いついた瞬は、そこの玲の姿がないことに気づき、愕然とする。珍しく(当たり前のことだが)落ち着きを失った瞬をなだめるマイク。そこに襲いかかる敵の戦車部隊。迎えにきていただけの抵抗組織にはろくな装備もなかった。瞬は変身しようともするが、隠れる場所もない。
 そんな時現れるスターガーディアンと見慣れぬ機種の戦闘機混成部隊。激戦の末、敵戦車部隊を一掃する。スターガーディアンから降りてきたのはベン。そして、見慣れぬ戦闘機からは《フリーダム》を囲んだ宇宙人の一団が降りてくる。彼らは銀河連邦警備隊のメンバーであった。
 その頃、玲と志水はブラックバードの巨大要塞の牢に閉じ込められていた。考えてみれば、EGSに入隊以来、玲が瞬と離れ離れになるのは初めてのことだ。不安がる玲を必死に慰める志水。彼は高校時代の話を玲に聞かせる。あの頃にも好きな女の子がいた。その子も多分自分のことを憎からず想ってくれていたんだと思う。でも、恥ずかしくてね、告白できたのは卒業式の後だった。離れ離れになることがわかっていたのに…。いつもそうなんだ。好きな子にはいつも告白するんだけど、告白するタイミングが悪いって言うか。
 初めて志水の想いを知る玲。そこに現れたのはあのベム=ソドム。彼は玲のことを知っていた。お前はプラズマンの恋人だな。彼が誰のことを言っているのかわからない志水。玲はベム=ソドムに連行されてゆく。
 抵抗組織と銀河連邦警備隊の混成チームが、破壊されたアジトを見回ってきてくれたが、当然のことながら玲も志水も連れ去られた後だった。それらを含めた報告のために、上空の《フリーダム》と交信するマイク。陸奥の言葉から、《フリーダム》はアルフェリア星系に近づいた時から警備隊に見つかっていたことがわかる。そして、翻訳機などの力もあり、何とか自分たちの目的を知らせ、共同で行動することになったことも。
 抵抗組織、警備隊、そしてEGSの共同作戦が練られ始めた。マイクや瞬たちは地球にテレパシーを送り込んでいた面々や、抵抗組織の長老たちとも対面する。敵を根本的に倒すには、首都メイフェルに建造された巨大要塞の中に運び込まれたアルフェリア第二の太陽(プロメテの塔)を作動させるしかない。巨大要塞への道は、仲間の尊い犠牲により、何とか見つけだしている。それも三通り。後は突入だけだ。だが、その場合、人質にされている市民や玲たちはどうなるか。犠牲になって貰うしかないというのが意見の大勢だったが…。
 中座して、玲の救出を検討する瞬を呼び止めたのは、彼をガイサンダーと呼んだあの女だった。マリア=マクシミリアンだった。2人の頭を駆け巡る思い出の数々(キャラクター設定原案参照)。戦いを忌避して逃げたあなたが、なぜ今再び戦いに赴いたの? 尋ねるマリアに、瞬は答えられない。
 続々と上空より送り込まれる戦闘部隊。だが、敵の動きは早かった。集結する混成チームの前に送り込まれる怪獣戦車グラン=ゲルザント。その主砲の一撃は、都市一つを殲滅できる破壊力を持つ。たちまち壊滅状態に追い込まれる混成チーム。上空では混成艦隊に襲いかかる敵の攻撃部隊。瞬も変身して戦うが、グラン=ゲルザントの装甲には、スパイラル光線、プラズマンカッター、果てはプラズマンショットさえも通用しなかった。直撃だけは逃れたものの、プラズマンも主砲にやられかけ、その場は仕方なく退却する。
 長老たちから諦めの声が漏れる中、アルフェリア星の上空に、敵総裁バッファロスの勝利宣言が響く。そこでバッファロスは、市民たちと捕らえた地球人たちを処刑すると発表したのだった。(第35話)
 長老たちの諦めの声にはどうしても賛同できないスターンは、残った人間と武器だけででも突入することを決意。もちろん瞬も付き合うと言ってのけ、マイクやベンもそれに同調する。なぜそこまで…、不思議がるスターンに、マイクは言う。俺たちは物事を途中で投げ出すのが大嫌いなんだ。それに、と瞬を指し、彼は恋人を捕まえられてる。逃げ出すわけには行かないんだよ。
 恋人、その言葉に過剰に反応するマリア。
 一方、上空でも退却を検討していた連邦警備隊の指揮官に、陸奥が食ってかかっていた。望みを捨てないで戦おうとしている者たちを、あなたたちは平気で見捨てられるのか。我々は御免だ。例え1隻ででも、彼らを援護して見せる。
 出撃寸前、再びマリアが瞬を呼び止める。一緒に戻ろうという彼女の懇願を拒絶する瞬。マリアは訊く。あなたが再び戦う気になったのは、その玲って地球人のためなのね。私のために戦ってくれなかったあなたが、その子のために戦うのね? 頷く瞬。マリアは敗北を悟る。
《フリーダム》がアルフェリア星上空に派手に出現。陽動作戦を取った。その間に3つの侵入口から、アルスターシア考案のバリアー歪曲力線照射装置を使い要塞に入り込むマイク、ベン、瞬たち。マイクとベン率いるチームが陽動を、スターン率いるチームが市民を救いに、瞬とギル率いるチームがメガリュームを持って《プロメテの塔》を作動させに。
 市民たちの救出は比較的すんなりと果たしたものの、陽動作戦を取ったチームは敵に囲まれ、死闘を繰り広げることになった。先頭に立つマイクが撃たれる。宇宙でも《フリーダム》が苦戦を強いられる。
 そして、メガリュームを運んでいた瞬たちも待ち伏せを食らっていた。敵の多さにギルの前で変身してしまう瞬。目を丸くするギルに、黙っていてくれよと頼み、《プロメテの塔》の安置場所に飛び込んだ部屋に、ベム=ソドムが待っていた。そして縛られ、口を塞がれた志水、立つだけの玲。
 玲を人質にしたベム=ソドムは瞬に変身を解除することを命令。逆らえない瞬は、後を頼むとギルに言い残し、志水の目前で人間の姿に戻ってしまう。その瞬に銃を向ける玲。彼女はベム=ソドムに操られていたのだ。銃弾に肩、脇腹をえぐられながら、必死で玲の頭の中に呼びかける瞬。玲は応える。身体が言うことを聞いてくれない。私、もう駄目…。瞬は優しく呼びかける。諦めるな。僕を射殺すれば連中も油断する、その隙に逃げるんだ。あなたを撃つなんてできない、死んでもできない…、操られながら必死に堪えようとする玲に、瞬は言う。君に撃たれるなら仕方ないよ。
 2人を見つめる志水には、2人の心の通い合いがわかる。
 涙があふれ、銃口が震える。撃てない玲。狼狽するベム=ソドム。遂に怒った彼の銃口が玲に向けられる。だが、兵士を振りほどいた志水がその前に立ちはだかる。撃たれる志水。瞬間、ギルたちがメガリュームを運び込み、生身の瞬がそれをプロメテの塔のエネルギー炉に詰め込んだ。目をつぶれ! 凄まじい光が部屋を覆う。その作動は瞬の体をすっ飛ばし、その目を一時的に失明させる恐るべき光量を発した。その光は暗黒星人ブラックバードの面々を戦闘不能にしてしまう。逃げ出すベム=ソドム。
 プロメテの塔の復活は、アルフェリアを覆う暗雲を一掃し、市民を追い立てていた戦車部隊を立ち往生させてしまう。スターンたちの反撃開始。また上空でも、連邦警備隊が《フリーダム》を支援。態勢を立て直した《フリーダム》はハイペリオン砲を発射。敵の艦隊を全滅させる。
 要塞でも最後の戦いが始まっていた。連邦警備隊の攻撃隊がメイフェルの要塞を攻撃。ベンたちを逃がすために傷ついた体で敵の盾になるマイク。今度ばかりはベンもかばえない。彼の最後の言葉はベンに向けられた。俺は黒人が嫌いだったが、お前といて考えが変わった。お前は俺の最高の相棒だったぜ。
 また、志水も玲の腕の中で息絶えようとしていた。知っていたんだな、玲ちゃんは、伏見さんがプラズマンだってこと。だからいつも一緒だったんだ…。志水は言う。俺は玲ちゃんが好きだったんだ。でも、今日わかったよ、俺は伏見さんには敵わない。何せ相手は地球を守ってきたヒーローだものな。そして、まだ目の見えない瞬に言う。玲ちゃんを泣かせるなよ。ずっと一緒にいてくれ。永遠に2人でいてくれ…。
 またしても動き出す怪獣戦車グラン=ゲルザント。その恐るべき主砲を撃ちながら、スターンたちに迫る。悲しみを振り払い、変身する瞬。玲も飛び出し、スターガーディアンに搭乗、危険を承知でグラン=ゲルザントを攻撃しながら、まだ目の見えない瞬を誘導する。連邦警備隊の攻撃隊も駆けつけ、2人を援護する。
 それを見つめるマリア。
 そして瞬は玲の誘導にて、グラン=ゲルザントの位置を確認。プラズマンカッターを体の前に据え、そこにプラズマンショットを撃ち込んだ。プラズマンショットの凄まじいエネルギーがプラズマンカッターの破壊力を数十倍に増幅、さしものグラン=ゲルザントの装甲もこの一撃の前に屈した。大爆発する怪獣戦車。そして、敵要塞も破壊された。
 スターンの勝利宣言がアルフェリア星中に流れる中、連邦警備隊指揮官と握手する陸奥。地球が宇宙の一員として認められた瞬間であった。そして、手を取り合って戻ってきた瞬と玲を出迎えるマリア。玲は初めてマリアと出会う。自分の悲しみを抑え、マリアは自分の負けを認め、2人を祝福したのだった。
 別れの日が来た。スターンやエイミナ、ギルと握手する陸奥たち。ギルなどはもし地球が危ない時は必ず行くとまで言った。アルフェリア星と連邦警備隊の歓声を受けながら、《フリーダム》は出発する。涙を堪え、見送るマリア。
 犠牲も大きかった。マイクと志水も帰らぬ人となった。しばしの悲しみの中、陸奥は言う。それでも我々は、この前人未踏の任務を完了させたのだ。胸を張って地球に帰ろう。
 志水の遺体の前に額ずく瞬と玲。戻りたくないの? 尋ねる玲に、瞬は言う。志水に言われただろう。ずっと一緒にいろって。僕はその積もりだよ。君さえよければ…。瞬を抱き締めながら玲も言う。あなたに銃を向け、あなたの声が聞こえた時、思ったの。もしこの指が引き金を引いていたら、次は自分を撃とうって。
 だって、私たちは死ぬ時も一緒だから。
 2人を乗せた《フリーダム》は、地球に向かってワープを開始する。(第36話)

(仮)プラズマン企画書7

   第四部

〈宇宙での戦いは終わった。地球は無事に、宇宙社会への仲間入りを果たした。今後の地球は宇宙の星々から仲間として認められ、その恩恵を受ける一方、その一員としての役割と責任とを負わねばならない時代に入ってくるだろう。
 時代や時間とともに、人も変わるべきところは変わらなければならないのだ〉

 EGS本部に入ってくる通信。《フリーダム》からのものだ。還ってきた。生きて還ってきたのだ。相馬は狂喜し、アルスターシアと手を取り合い小躍りした揚げ句、遂に感極まって彼女にすがって泣き出してしまう。彼とアルスターシアとの仲は準隊員たちの野次にも動じないくらいにまで進展していた。
《フリーダム》は還ってきた。全EGS隊員たちが見守り、歓声を上げる中、降りてくる機体。降り立つ陸奥に三条医師が、ベンにアイリーンが飛びつく。瞬と玲の手を握り締める相馬。よく還ってきてくれた。
 だが、悲しみも待っていた。マイク、志水たちの合同葬儀は全EGS隊員参加の下、しめやかに行われた。泣き崩れる準隊員たちの遺族。そんな中、マイクと志水の両親の態度は立派だった。志水の父親は訊く。息子は立派に死にましたか? 陸奥は涙を流し、応える。もっと私を責めて下さい。私は建策君を英雄として死なせるのではなく、どんなに無様であっても生きて連れ帰る必要があったのです。確かに地球は宇宙の星々と交友を築けました。しかし、建策君は戻ってきませんし、私の責任も消えることはありません。玲の言葉も遮り、喋る陸奥に、初めて握手を求める志水の父親。陸奥がどんなに息子のことを大事にしていたかを、彼も初めて知ったのだった。
 お祭り騒ぎは終わらなかった。TVは連日、地球の宇宙への進出と帰還してきた英雄たちとの特集を組む。もちろん陸奥はTVなどの取材を認めない。田辺副長官のとりなしも無駄だった。航海日誌を見ながら、相馬が漏らす。ウルトラマンがずっとついていてくれたのか…。言い訳に苦労する玲と瞬。
《フリーダム》を整備している技術班の1人荒木隊員は、船体に付着した妙なものを拾い上げる。それは何かの殻のようなものだった。いきなり蠢き始める殻。殻から伸びた触手に刺される荒木。悲鳴を上げる間もなく、荒木はそいつに乗り移られてしまう。
 歩き回る荒木の体を乗っ取った怪物。食欲だけはあるそいつは、荒木の体を媒体に成長を開始、たちまち荒木の皮を被った怪物になってしまう。しかもたちどころに言葉も覚え、数人の隊員を襲う怪物。駆けつけた相馬が荒木の皮を被った怪物を射殺する。いくら怪物とは言え、人間の姿をしたそいつを撃ち殺した相馬の震えは止まらない。
 赤嶺博士の分析により、怪物の正体が宇宙に住む一種の蛭であることが判明。しかも《フリーダム》の外壁に付着していたこともわかった。除去される殻。しかし、付着跡から2匹が既に基地に侵入していることもわかった。始まる捜査。だが、立て続けに起こる二件の殺人。EGS本部内に疑心暗鬼が走り回る。隣の隊員が犯人かも知れない。
 基地内での外出禁止令が出る。お祭り騒ぎから一転、静まり返る基地。しかし、同僚を疑うことに我慢ならない玲が、瞬の制止を振り切って捜査に飛び出してしまう。廊下を歩く謎の影。何とアルスターシアだった。いけないとは思いつつ、各隊員の部屋を窺って歩くアルスターシアを疑う玲。その肩を叩く技術班の新田隊員。同僚の死を悼む彼の言葉を信用した玲は、彼を背中に従え、アルスターシアを追う。だが、怪物は新田を乗っ取っていたのだ。襲われた玲をかばったのは、自ら怪物の正体を解明しようとしていたアルスターシアだった。銃を持つとは言え、二体の合体した怪物は女2人の手に余る相手だ。玲の悲鳴を聞き、駆けつける瞬。変身した瞬に、怪物はたちまち片付けられる。戻った瞬を両手を広げて迎える玲。その背後に、相馬に抱き抱えられたアルスターシアの幸せそうな顔がある。ほっとしながらそれをからかう瞬を張り倒す真似をする相馬だったが、アルスターシアの体は離さない。(第37話)
 赤嶺博士の友人寺沢博士は、世界でも一流の生物学者であった。だが、彼が学会から異端視されてきたのは、彼が『反対進化』説(デボリューション。毒のある世界地球にて、高等単細胞生物が退化し、果てにヒトという一番下等でグロテスクな生き物に成り下がった…)の支持者だったからである。それでも同じ変わり者で、少なくとも地球人類を高等生命体とは考えていない赤嶺博士とは妙に馬が合い、未だに交流が続いている(以上、相馬、アイリーン、ベン、アルスターシアの会話より)。
 その寺沢博士がEGS本部に赤嶺博士を訪れる。赤嶺博士の部屋でだべっていた瞬は、初めて寺沢博士と対面する。ある設計図を手にしている。ちょっとした部品を分けてほしいというのだが、それが何の研究なのかは決して明かそうとはしない寺沢博士。彼の帰宅後、残していったリストにガンマ線照射に必要な部品があったことから、細胞の巨大化を目的とした研究の何からしいとわかる。
 寺沢博士は宅配でいいと言ったが、久々に彼の研究所を訪れてみる気になった赤嶺博士は御殿場に出掛けることにする。ちょうど静岡県警に用のあった瞬は、玲とベンとともに赤嶺博士を送ることにする。静岡県下にて起きている謎の連続殺人の原因がわからないという県警の捜査に協力するためであった。まずは静岡県警に赴いた瞬たちは、事件の概要を聞く。既に5件の無差別殺人が起きている。犯人は未だ逃亡中。問題は手口であった。あまりに残虐すぎるのだ。手をもぎ、足を千切るなど朝飯前、玲などは写真を見て卒倒しそうになる(もちろん画面では見せられない)。しかも、血を吸った痕まであると言う…。人間の手口だとは思えないというのだ。
 玲とベンが捜査協力に残り、瞬は赤嶺博士を寺沢博士の家に送る。広い邸宅には寺沢博士以外誰もいない。助手はどうしたと訊かれ、全員馘にしたと答える寺沢博士。部品を手渡した赤嶺博士は、研究成果を見せてくれと頼むが、まだその時期ではないとも言われる。お茶の後、各々の研究の話を始める赤嶺、寺沢両博士。瞬も話に加わるが、人間が如何に下劣で下等な生物であるかを力を込めて説く寺沢博士の熱意に、違和感を覚える。
 夜、明かりを消した瞬間に襲ってきた者がいた。抵抗する寺沢博士。瞬がそれに気づき、襲来者に飛びかかるが、そいつは異様な力で瞬を絞め殺しにかかる。思わず(変身せずに)スパイラル光線を発射する瞬。赤嶺博士とともに焼けた襲来者を見る瞬。異様に細胞変化してはいるが、確かに人間だ。顔を強ばらせる赤嶺博士。気が付くと寺沢博士がいない。寺沢博士を探す瞬の頭上に振り下ろされる猟銃のストック。
 目を覚ますと瞬は赤嶺博士とともに、地下の実験室に縛られていた。狂喜する寺沢博士。彼は瞬がプラズマンであることに気づいた。気を失った瞬の皮膚サンプルを取り、細胞増殖装置に入れる寺沢博士。これで研究の完成だ。究極の生命体を創造する日がやってきたのだ。前の奴は代謝機能の不良品だった。人間の血を吸わねば生きてゆけなかった。今度こそ本物だ。動物と植物と、超人の細胞を備えた、人間を越えた新人類の完成だ。ブラインドを開ける寺沢博士の向こうに、もう一体異様な怪物が現れる。赤嶺博士が呻く。君は、助手を犠牲にして、この化け物を造ったんだな。真の創造に犠牲は付き物だ。この研究が認められた暁には、誰もが俺を天才と呼ぶだろう…、うそぶいた寺沢博士は細胞組み替えをコンピューターにて済ませ、増殖光線を照射する。巨大化を始める怪物。
 ところが怪物は寺沢博士に襲いかかる。知能を残していたのだ。
 寺沢博士の打った薬のせいで全身麻痺に陥る瞬は戒めから逃れることができない。だが、瞬の危機を察知した玲が駆けつけ、瞬と赤嶺博士とを救出する。変身、巨大化する瞬。痺れた体が怪物の動きについてゆかず苦戦するが、何とかスパイラル光線で倒す。
 警察の捜索を受ける寺沢邸。それを見守る瞬たち。赤嶺博士は呟く。罪は罪だ。だが、あの男はあの男なりに、人間の未来を憂慮していたんだ…。(第38話)
 大量の魚の死体が太平洋沿岸に打ち上げられる。それは最初、民間のニュースネタにしかならなかった。もちろんEGSにそれを気にするものなどいなかった。瞬さえも。
 そんな中、国連防衛会議出席のため合衆国を訪れていた田辺副長官と風間参謀は、会議後、ケーシー長官から呼び出しを受ける。膝を詰めての会合はEG=7宇宙出発決定の時以来だ。またどこかへ行けと言うんじゃないでしょうね、などと冗談めかして入ったEGS合衆国本部の長官室に同席する1人の男。長官は彼を国際海洋開発研究所所長ダン=シモンズだと紹介する。どこの国の誰も本気にしてくれないので、古い知己のケーシー長官を頼ったのだと前置きしたシモンズは言った。
 下手をすると1年後に地球は滅亡します、と。
 EGS本部に連絡が入る。風間参謀と話し合う陸奥。電送されてきた数枚の衛星写真を見た陸奥も、事態の深刻さに唸る。
 衛星写真の2枚には太平洋に広がる赤い模様が写っていた。わずか2週間で数倍に膨れ上がっていた。渦鞭毛虫の大量発生による赤潮だ、と風間は述べた。原因はもちろん壊滅的な海水汚染。それくらいなら瀬戸内で未だに起きていますよと言う相馬に、風間は説明する。こいつは変異種だ。その窒息性の毒素は日本で発生する赤潮の数千倍にも及ぶ。放置しておけば全海水の生物は致命的な被害を受けるだろう(その時初めて、隊員たちはTVの流していた魚大量死のニュースを思い出す)。そして何よりも被害を受けているのは珪藻だ。森林破壊ばかりが叫ばれているが、地上の新鮮な酸素の七割は、海中の珪藻に供給されているのだ。その全滅は地上から酸素の70パーセントを奪うということだ。まず死に始めるのは、肺が小さく抵抗力のない子供たちであろう…。流石にEGS隊員たちも顔色を変えた。
 風間は言った。宇宙からの脅威だけではない。地上に発生した異変からも地球を守るのがEGSの使命だ。この赤潮発生の汚染源を突き止め、中和して貰いたい。EGSは調査に乗り出した。
 その最中、南太平洋にて操業中の遠洋漁船が、とてつもなく巨大な生物の死骸を網に引っかけた。海蛇かと思いきや、靫の一種だった。とにかくでかい。全長200メートルは優に越えている。それをジャイロペガサスで調べにゆく相馬と瞬(閉所恐怖症を3時間だけ克服できた相馬は、飛ぶ乗り物に乗るのが嬉しくて仕方ないのだ)。ついでに赤潮の現状も見て回り、一旦ジャイロペガサスを小笠原の小島に降ろす。
 巨大靫の印象を語り合ううち、2人は宇宙より海の方が人間にとって神秘であることに気づく。何の以上もないように見える亜熱帯の小笠原でも、汚染原因で発生した緑藻類のために珊瑚礁が死滅しているのだ…、瞬が知識を披露する。人間もそうだ。数多くの薬の使用が、人間自身を死に近づけているのだ(副腎皮質ホルモンの濫用によるアトピーなどの例を挙げて)。と、無人島と思われていたその島に現れる1人の少女(最初相馬は少年と勘違いする)。
 少女は言う。アーシアンが怒っているよ。
 その頃、科学廃棄物を公海に捨てにきていた日本の工業船が、立て続けに3隻、謎の失踪を遂げていた。実はこのような失踪はここ数カ月で20件を越えていた。すぐに調査に向かうEGS。瞬たちも少女に心を残しつつ、現場に向かう。
 工業船の1隻が発信した最後の通信は、海中からの怪獣の出現を教えていた。だが、わずか二日で3隻、しかも距離にして1500キロ。怪獣は一匹かという疑問も出される。アーシアン、少女の言ったその名が耳に残る相馬と瞬は、もう一度少女に会いにゆこうとする。と、東京湾に出現する怪獣。出港直前の大企業の廃棄物運搬船を叩き壊す。
 EGS出動。ところが怪獣は強かった。EGSのいかなる兵器も通用しなかった。瞬も変身して立ち向かうが、スパイラル光線、プラズマンカッター、どんな武器で傷ついても、怪獣は即座に体を再生、変化させて、プラズマンの武器を遮断する体と化してしまう。おまけに頼みの綱、プラズマンショットが“全く効かない”のだ。これには瞬の力をどこまでも信じる玲も、顔色を変える。
 ウルトラマンをも蹴散らし、どこへともなく消える怪獣。EGS内に戦慄が走る…。(第39話)
 瓦礫の中から瞬を引っ張り出す玲。瞬は言う。プラズマンショットが効かない。エネルギーが全部奴の体内に吸収されてしまうのだ。驚く玲。プラズマンショットが効かなければ一体どうやって戦えと言うのだ…。
 その頃、汚染海域を調べていた赤嶺博士とアイリーンは一つの結論を得ていた。汚染の原因は不法投棄された廃棄物。X線カメラで投棄物を包む箱の名を読み取り、それが藤波重工のものであることまで判明する。
 早速、風間参謀が政府を通じ、藤波重工に連絡をつける。取締役の岩見沢に会った風間は、彼らのやっている投棄が違法であること、1993年以来、世界は核を含む産業廃棄物の海洋投棄を中止しており、しかも藤波重工の投棄した箱には欠陥があることなどを申し入れる。しかし岩見沢はそれを事実無根であると撥ね付け、風間を追い出す。もちろんやましさのある岩見沢は部下に、EGSの報告した赤潮の発生が事実かどうかの確認に赴かせる。
 相馬と瞬はもう一度あの島へ向かい、少女とその祖父らしい老人に会っていた。少女は言う。海が苦しんでいる。だからアーシアンが怒ったんだ。だってアーシアンは地球のエネルギーから生まれたんだもの。愕然とする2人、相馬は訊く。君には怪獣の声が聞こえるのか? 瞬の方はプラズマンショットが効かない理由がわかった。つまり怪獣は地球そのものなのだ。地球のエネルギーを集めて撃つプラズマンショットが効かないのは当たり前だ。
 少女は警告する。アーシアンは本気で怒っているよ。もし人間が海を汚し続けるようなら、今度こそ人間を滅ぼしに来るよ…。相馬は陸奥に連絡を取り、少女に怪獣の居場所を探知してくれるように頼むことにする。瞬は老人と話していた。地球が人間だけのものであると思い上がっている限り、人間は決して地球から救われることはないだろうな。どうかね、お前さんにはあの子のように地球の声が聞こえんかね? 聞こえないと言う瞬に、老人は首を振る。力を集めるだけでは能がない。その言葉が気になった瞬は老人に問い返そうとするが、相馬の大声に呼ばれ、話はそこで途切れる。
 相馬から逃げ出した少女が崖から落ちそうになっていたのだ。必死で彼女を助け上げようとする相馬。瞬も手伝い、やっとのことで少女を助け上げる。人間のためではない、頑なに相馬の申し出を拒んでいた少女は言う。人間がこれ以上海を汚さないと約束するなら、アーシアンを説得してみる。基地に戻る3人。
 EGSの情報は確かだった。だが、それでも藤波重工は廃棄物の投棄をやめようとはしない。まだ数十トンの廃棄物がたまっているのだ。岩見沢はわめく。廃棄物処理施設の建設にどれだけの金がかかるかわかっているのか、構わん、やれ、もしもの場合には政府がEGSの連中から我々を守ってくれる。こんな時のために政治家に金をばら蒔いているんだ。山のような産業廃棄物を積んだ運搬船が出港する。
 相馬の言葉を聞いた陸奥は、風間参謀を通じて頼んでおいた調査から、沈められた船が全て何らかの汚染物質を積んでいたことを突き止める。現状のひどさに唖然とする面々。
 一方、EGS本部内でアルスターシアの世話を受けていた少女は、アルスターシアが異星人であることを知り、驚く。アルスターシアは笑って言う。私の故郷はもうないの、今は地球が私の故郷。こんな汚れた星のどこがいいの? 尋ねる少女にアルスターシアは言う。好きな人がいるの、その人と一緒なら、私どんな場所ででも生きてゆける。それに、今からでもその人と2人で、地球をよくしていく積もり。お姉ちゃんの好きな人って、あの、太った人? 頷くアルスターシア。突然苦しみ始める少女。アーシアンが怒った。公海に出現する怪獣。藤波重工の船を撃沈した怪獣は、今度はそのまま東京に向かって進み始める。
 藤波重工の本社に向かう風間、相馬、瞬、そして少女。怪獣は刻々と東京に迫っていた。 問い詰められてもあくまで白を切り通す岩見沢。だが、怪獣は上陸しざま、藤波重工を目指し始める。逃げようとする岩見沢だったが、謎の空電現象の発生でエレベーターも何も皆故障し、重役室に閉じ込められる。EGSは怪獣から民間人を守るのが仕事だろうと泣きつく岩見沢に、風間は言う。自業自得だ。
 出撃する陸奥、アイリーン、ベン、玲。攻撃が開始される。だが、EGSのどんな武器も怪獣には通じない。しかもまたしても変態を開始した怪獣はより強力になり、前進を続ける。大騒ぎとなるEGS本部。核攻撃か、あるいは細菌兵器…。馬鹿言え、東京が死の大地に変わるぞ。じゃあ、ハイペリオン砲か? 馬鹿言え、地球が壊れる。何の打開策も打ち出せない中、怪獣は東京を廃墟に変え始める。そして藤波重工のビルに迫る。陸奥たちが中の人間を救出しようとするが、怪獣のせいで近寄れない。
 怪獣を説得しようとする少女。それでも迫る怪獣。少女は言う。私はもうアーシアンを説得できない。と、少女が怪獣と通じ合えると知った岩見沢が彼女を盾にして逃げようとする。しかし、怪獣の攻撃は少女もろとも岩見沢を巻き込む。少女は相馬が救ったが、岩見沢は死ぬ。
 倒壊を始めるビル。瞬は変身し、瓦礫に頭を打った風間を救うが、相馬には手が届かない。絶叫する瞬。だが、相馬を救ったのは少女。瞬は彼女の体が光りに包まれたのだけは目にした。
 必死に怪獣に挑む瞬。相変わらずスパイラル光線もプラズマンショットも通じない。だが、怪獣を前進させるわけにはいかない瞬は、必死で盾になる。なぜなら崩れかけたビルの下に、相馬をかばう少女がいるのだ。怪獣が前進すれば、2人まとめてビルの下敷きだ。傷つき、倒れても必死で相馬と少女を守ろうとする瞬。玲も必死に援護するが、怪獣は倒せない。もう駄目か…。
 その時、プラズマンを組み敷こうとしていた怪獣が、相馬と少女を見る。その2人を必死でかばおうとしている瞬を見る。消えてゆく怪獣。瞬も玲も、あるいは全員、なぜ怪獣が消えたのかはわからない。
 変身を解いた瞬と玲が駆けつけてみると、相馬は無事だった。だが、少女の姿はどこにも見えなかった。その後数週間、瓦礫の中を捜索したが、少女は発見されなかった。瞬はその間、風間にどうやって自分を助けたかを訊かれ、冷や汗をかく。
 赤嶺博士とアルスターシアが汚染物質の中和剤を完成させた。ひとまずは安心だ。赤潮の発生もくい止められ、ケーシー長官のねぎらいの言葉にEGS本部内も和む。
 だが、どうにも納得のいかない相馬と瞬は、三度あの島へ向かっていた。言わば俺たちは地球を敵に戦ったんだよな、呟く相馬。もう俺たちは地球に見捨てられちまったんじゃないだろうか…。何も言えない瞬。
 島には老人はいなかった。老人の住んでいた小屋も消えていた。まるで最初からそんなものなど存在しなかったかのように。同じような経験をしている瞬は愕然とする。中国で出会ったあの老人と同じだ。それを聞いた相馬も呻く。が、2人で後にした島の岬にて、老人と少女が2人を見送る姿を、瞬も相馬も目にした。少女は無事だった。驚く相馬。瞬の驚きはそれ以上だった。少女の祖父である筈の老人が、瞬の目前で、中国で出会ったあの老人に姿を変えたのである…。
 相馬と瞬は話し合う。あの2人はもしかして、地球の使いなのではなかったか。あるいはあの2人こそ、地球そのものではなかったのか…。
 もちろん2人にはわからなかった…。(第40話)
〈「大気圏外には数千数万に及ぶ様々な物質が漂っている。それらはたまに地球の重力に引かれ、地上を目指したりもする。その大部分は空気の層に阻まれ、地上に落ちる前に燃え尽きてしまうわけだが、中には無事に地上にたどり着くものもある。…時には地球以外の星からやってきた連中の船などもそこには紛れ込んでおり、隕石とともに地上に落下してくることもある。それが歓迎されるものかされないものかは、落ちてこないとわからないわけだが…」(冒頭ナレーション)
 以下第41話から45話までを、『紛れ込んできた者』シリーズと名付け、地球が様々な連中から狙われるとともに、アルフェリア星を助けたことで宇宙の一員として国際化してゆく状況を描いていく〉
 羽田貴志は小学6年生。いじめられっ子だ。特にいじめられる環境や、社会的不備を持つ家庭ではない。現代のいじめに家庭環境は関係ない。貴志が内向的で暗い性格であるため(これは何にせよ口を出したがる母親が悪いのだが)、みんなから仲間に入れて貰えないだけの話だ。
 今日も同級生からの無視や悪戯などにさらされながら、気も弱い貴志には抵抗もできない。悔し涙はこぼれるが、他にどうしようもなく、帰途につくしかない。帰宅の途中、中学生の不良がシンナー遊びをしているのを見た貴志は、自分もぐれてやろうと思い、シンナーを買い、団地の近所の公園池に浮かぶ小島(貴志の隠れ場所)に向かう。
 さあ、シンナーを吸うぞと身構える貴志の前に現れる異星人。それはつい2日前、宇宙船の故障で地球に落ちてきたマテウス星人だった。腰を抜かした貴志にテレパシーで語りかけるマテウス星人。シンナーが危険なものであり、それを吸おうとしている貴志の意志をキャッチ、止めるためであった。
 外見こそ醜いが、マテウス星人は高度の知能を持つおとなしい異星人であり、貴志は友達が欲しかった。2人の交友が始まった。毎日のようにマテウス星人と遊ぶ貴志。
 その頃EGSは、マテウス星人が宇宙に向けて送る遭難救援信号をキャッチしていた。早速調査に向かう相馬とベン。一旦は公園池近くまで足を向けるのだが、貴志に騙される2人。
 その貴志が熱を出した。その日、公園池にいじめっ子たちのグループが遊びに行く。すっかり貴志に気を許したマテウス星人は、接近者へのテレパシー探知を忘れていた。いじめっ子グループの前に姿を現してしまうマテウス星人。もちろん大騒ぎになる。警官隊も出動し、公園池周囲は警察の狙撃部隊に囲まれる。
 騒ぎに気づいた貴志はベッドを抜け出し、公園池に向かう。警官隊の前に飛び出し、必死で訴える。あれは侵略者じゃないんだ、僕の友達なんだ…。だが、頑迷な団地の住民たちは早く撃てと警官隊を急す。そこに駆けつける相馬と瞬。狙撃部隊と異星人の間に貴志の姿を認めた相馬は、狙撃にストップをかける。だが、それより一瞬早く、狙撃部隊の1人が引き金を引く。
 何はともあれ異星人を救おうと思い、瞬は相馬の背後で変身する。光速のスピードで飛んだ瞬はライフルの弾丸を受け止め、何食わぬ顔で相馬の背後に戻る。誰もウルトラマンの出現になど気づかない。
 EGSからアルスターシア、玲も到着する。本部にて事情を聴いた陸奥は、マテウス星人にEGSの通信波増幅システムを使うことを提案、相馬も諒解する。ボスも変わったねえと瞬にからかわれた相馬は、ふとアルスターシアに目をやり、俺も甘くなったなあ、とボヤく。玲は平間技術長にマテウス星人の宇宙船修理を頼み終えていた。
 別れの日、だだをこねる貴志。マテウス星人は貴志の唯一の友達なのだ。その彼がいなくなれば、貴志はまた1人ぼっちになってしまう。だが、そんな貴志に玲は厳しい。あなたが彼の本当の友達なら、彼の帰郷をどうして喜ばないの? あなたは単に友達の1人も作れない自分の弱さを隠すために彼を利用しているだけよ。瞬は言う。厳しいんだね。玲は答える。私の言葉をどう受け取るか、これからもただのいじめられっ子で終わるのかどうかはあの子次第だわ。
 翌日貴志は学校で皆に取り囲まれる。異星人ってどんな奴だった? お前凄いな、あんな友達作るなんて…。
 別れの日、玲たちの見守る中、いつまでも宇宙船に手を振り続ける貴志の姿があった。瞬は変身し、宇宙船を太陽系外れまで送っていた。(第41話)
 アイリーンとベンがジャイロペガサスにて関東、中部上空のパトロールに出る。平和な一日である。会話は自然と2人の将来についてのこととなってしまう。アイリーンはこだわっていないようだが、ベンはどうしても人種の違いにこだわってしまう。
 その時、地上を映すレーダーに反応が出る。機体に衝撃。凄まじい光芒が2人を包む。
 はっと気が付くと、2人は相変わらずジャイロペガサス機内にいた。レーダーの反応は消えている。何だったんだろう、今のは…。納得がいかないながらも、2人はとにかく帰還する。基地に帰ると陸奥に怒られた。1時間近く連絡を怠るとはどういうわけだ。もちろん2人には何のことかわからない。1時間も連絡しなかった?
 自室に玲とアルスターシアを招いて、料理の手ほどきをするアイリーン。玲は瞬という公認の恋人がいるが、アルスターシアの想いは恐らく相馬には伝わっていない。あの朴念仁…。笑い合う3人娘。突然、アイリーンが頭痛に襲われる。玲とアルスターシアの看護の中、ベッドに横たわったアイリーンは奇妙な夢を見る。
 彼女が10歳の時に死んだ母親が出てくる夢だった。母は夢の中では10歳当時のアイリーンに向かって言う。いい子ね、お母さんの言うことをちゃんと聞くんですよ…。
 気が付くとアイリーンは、パジャマ姿のまま中央コンピューター制御室の前に立っている。何がなんだかわからないアイリーン。
 異変は翌日から起こった。パトロールに出た相馬と玲の乗るサンダーフォックスの各種計器が狂い、危うく墜落するところだった。レーダーシステムが2時間にわたり、記録を停止していた。基地の防衛システムが勝手に動き出し、戻ってくる隊員たちの車やマシンを狙ったり…。
 急遽原因を調査したところ、中央コンピューターからの各種マシンへの指令が全部狂っていたことが判明。しかも何者かが、中央コンピューターを操作していたことまでがわかった。今はともかく、ブラックバード星系からの侵攻があった頃なら大パニックに陥っていたところだ。陸奥は相馬と瞬を呼んで話し合う。犯人は恐らく内部にいる…。
 今日も夢を見るアイリーン。母が囁いている。アイリーンはいい子ね、お母さんの言うことを聞くのよ。その声に導かれるように歩き出すアイリーン。行き先はハイペリオン砲の開発を行っていた格納庫。
 だが、そこには既に彼女の動きを察知した陸奥たちが待ち伏せしていた。アイリーンを捕らえようとする陸奥たち。だが、ベンをも凌ぐ拳法の達人アイリーンを捕まえるのは容易なことえはなかった。捕らえられた後も狂ったように暴れるアイリーン。三条医師の診察の結果、精神を何者かに乗っ取られているのではないかとの結論が出る。いつ、誰の手で…。たどり着く結論は、ベンと出たパトロールにおける1時間の空白だった。
 記憶のないベンを、三条医師が催眠にかける。記憶を呼び戻すベン。やはりあの空白の1時間の間に、2人は謎の物体の中に閉じ込められ、アイリーンは洗脳、ベンは記憶を抹消されていたのだ。出動する陸奥、相馬、玲と準隊員たち。
 医療室にて縛られ、苦しむアイリーン。頭の中に母、いや怪物が現れ、彼女の意志をコントロールしようとしている。必死にこらえるアイリーンだが、このままでは精神と肉体とがバランスを壊し、廃人と化す可能性も出てくる。その掌を握り締めるベン。アイリーンは夢の中でその温もりを感じ取るのだった。
 謎の物体を発見した面々は内部に突入、攻撃を開始するが、逆に精神波攻撃を食らい苦しむ。瞬は変身、蠢く脳髄に似た怪物をスパイラル光線で片付ける。ウルトラマンが去った後、陸奥たちは怪物の記憶データの中にEGS基地を破壊せよと言う指令が組み込まれているのを発見する。何とそれはブラックバード星系が送り込んだ隕石怪獣の生き残りだった。何とか怪物は倒した。これでアイリーンも大丈夫だろう。
 その頃医療室にて、ベンの掌を握り締めたまま眠るアイリーンは、夢の中で本物の母親に、ベンのことを紹介していた…。(第42話)
 ピクニックに来ていた2人の女子大生が行方不明になった。行方をくらます寸前、道に迷った彼女たちが一軒の家に助けを求めたことを誰も知らない。
 彼女たちが行方不明になった頃、EGS本部の管制室が、奇妙な発信電波を捉えていた。玲の見守る中、電波はすぐに消えた。ここ数カ月、時折捉える電波であると管制室の女性隊員は言った。首を傾げる玲だが、異常も起こっていない今、騒ぎ立てるわけにもいかない。
 だが、その数日後、またしても失踪事件が起きる。今度は新婚のアヴェック、次いでその行方を追った警官2人も忽然と消え失せた。“怪物が…”との通信を残し。同時にまたしても電波を受信するEGS管制室。ニュースでその事件を知った玲は、失踪事件と電波の発信源が同じであることを陸奥に進言。ちょうどその時、静岡県警がEGSに調査を依頼してくる。
 相馬と瞬が調査に向かうことになった。出掛けようと言う相馬に頷く瞬、立ち上がろうとして大きくよろめく。目眩を感じたのだ。疲れてるんだよと笑う相馬に笑顔を返す瞬だが、その顔は目眩が初めてではないことを物語っている。玲がそれを見ていなかったのが幸いであったが…。
 静岡県警の刑事や警官たちに話を聞いた2人トレーサーで出発した。現場を見て回る2人。ところが天候が急変し、しかもトレーサーのエンジンが止まってしまい、2人は弱り果てた。と、彼方に見える家の明かり。2人は一先ず本部に連絡し、そこに厄介になることにした。
 不気味な洋館であった。陰気な老女と年老いた執事の2人が相馬と瞬を迎え、手厚くもてなしてくれた。出された食事に相馬は喜んだが、瞬はこの洋館の持つ不気味さが気になって仕方がない。食事の後部屋に通される2人。事件のことを話し合い、その後互いのプライバシーのことになった。話が玲とアルスターシアのことに及び、2人揃って大いに照れる。冷えた体に風呂は有り難い。旗色悪くなった話を逸らすのにも好都合、早速入る相馬。だが、その背に迫る壁から伸びた手。瞬は瞬で、口を開けた床に呑み込まれそうになっていた。部屋から飛び出す2人。流石に異常に気づいた相馬は本部への連絡を試みるのだが、今度は通信機も働かなくなっている。
 階下に老女と執事を見つける2人。愕然とする2人。老女たちは既に死んでいるのだ。そして2人は、捉えられ、生命エネルギーを吸い取られて干からびた犠牲者たちの姿も目にするのだった。この洋館が人々を襲い、“食べて”いたのだ。
 脱出しようとする2人だったが、迷路と化した洋館の廊下は2人の脱出を許さない。壁から伸びた触手が2人を搦め捕り、エネルギーを吸い始める。意識を失う相馬。瞬は変身する。
 遂に本性を現した怪物に挑む瞬。だが、またしても目眩が襲い、苦戦する。それでも何とか怪物は倒す。消えた洋館の場所に、相馬が倒れていた。
 意識を取り戻した相馬の連絡で駆けつけるEGSと静岡県警。ブラックバードの隕石かな、いや、宇宙から紛れ込んできた生命体だろう…。様々な憶測が飛ぶ中、瞬の顔色はすぐれない。あの目眩の原因は…。(第43話)
 宇宙ステーションが外宇宙からの通信を受け取る。翻訳機に通してもわからず、本部に転送してくる。アルスターシア中心になって翻訳が始まるが、彼女も聞き覚えない言葉だと言う。恐らくは銀河西部星域の言語だろうと言うのだが…。
 悪戦苦闘するアルスターシアに、パトロールから帰った相馬がコーヒーを出す。震えている。東京が随分寒いのだそうである。窓を開けると雪が降り始めている。
 アルスターシアは雪を見たのが初めてであった。相馬は笑う。地球は寒いんだ。
 その頃東京を猛吹雪が襲っていた。寒いどころの話ではない。気温は零下十数度を記録した。凍死者が百人近くも出た。未曾有の人数である。翌日EGSに調査を依頼する警視庁からの通信が入る。調査に向かう陸奥、相馬、アイリーン、ベン。
 会社や学校帰りだったその凍死者たちが、凍死する直前、猛吹雪の彼方に巨大な水晶の塔を見つけ、雪に足を取られ、引きずられていったことを、陸奥たちは知らない。
 東京は昼になっても吹雪の止む気配を見せなかった。報告される凍死者の数の増加。交通機関は全て麻痺し、EGSのトレーサーでしか移動がきかなくなる。移動の際、あちこちに見える氷柱。近寄ったアイリーンが悲鳴を上げる。氷柱の中に閉じ込められた凍死者たち。陸奥は急遽、EGSの科学班と医療班を呼ぶ。
 吹雪は視界を覆い、遂には通信さえ上手くつながらなくなる。その寸前に駆けつける三条医師、玲、科学班医療班のメンバーたち(寒さに弱い瞬はほとんど動けず、それを心配した玲に諌められ、残るしかない)。解凍した死体の解剖の結果、死体からは血液がほとんど見つからなかった。誰かが血を吸っているのだ。
 突然入る通信。科学班のメンバーだ。雪が我々を襲う…。
 彼らを救出しようと飛び出す相馬たちに襲いかかる雪。東京を覆い尽くした雪が動き出し、人間を襲い始めたのだ。科学班が報告する。これはただの雪ではない。結晶の一粒一粒が独立した生き物だ。こいつらが人間の血液を凍らせ、それをかみ砕いていたのだ。
 同じ頃、EGS本部でアルスターシアが通信の解読に成功していた。メラスター星からのその通信は、冷凍吸血獣が地球に向かったことを警告していたのだ。度々妨害される陸奥たちからの通信は、雪が人間を襲う生物であることを知らせていたが、これで連中の正体がわかる。しかも、怪獣のもたらす最大零下マイナス130度は、地球に似た温暖な惑星ではいかなる防御も不可能。メラスター星でも数百万人もの人間が、寒さと血を吸われたのとで命を落としていた。それだけの犠牲を払い、やっと追放した奴だとのこと。慌てる瞬。マイナス130度だと。間違いなく東京全都民は凍死する。陸奥や玲たちも例外ではない。その後怪獣は存分に、犠牲者たちの血を吸い尽くすだろう。
 通信はこう結んでいた。怪獣には雪の一粒一粒を統率する巨大な本体がある。その本体を倒す以外、怪獣を完全に片付ける方法はない。飛び出そうとする瞬。そこでまたしてもあの目眩に襲われる。ひどくなっている。それを赤嶺博士に見つかってしまう。何とか黙っていてくれ、特に玲には…。頷いた赤嶺博士は、もしものことがあったらEGS本部に位置を知らせろと言う。飛び出す瞬。変身。
 都内はパニックに陥っていた。どんなに窓やドアを締め切っても、雪はたちまち入り込んでくるのだ。続出する凍死者。警視庁でも刑事たちとEGSの面々が必死に外からの雪の侵入に対処していたが、寒さは暖房を完全に故障させ、眠り込むように死んでしまう面々を急増させていた。それでも必死に立ち向かう陸奥や相馬、玲たち。
 玲の頭の中には、寒さに弱い瞬を引っ張り出してはならないという義務感がある。
 瞬はもちろん、それを頭の中で感じ取っていた。都の上空を飛ぶウルトラマン。上空にまで襲ってくる雪を光線で溶かしながら、やがて瞬は、雪がある一定の方向で渦を巻いているのを発見。その中心に怪獣の本体を見つける。巨大な水晶にも似た氷の塔だった。
 恐るべき寒さと度重なる目眩に、大苦戦する瞬。だが、今回は陸奥や相馬たちの助力は当てにできないのだ。何とか敵の心臓部まで発見しながら、それでも限界がくる。倒れそうになりながら、赤嶺博士の言葉を思い出し、雲に覆われた上空に光線を撃つ。
 怪獣の本体にミサイルが炸裂する。赤嶺博士がEGS本部から目印目がけて射ち出したのだ。被害は微々たるものだったが、アンテナ部分を破壊された怪獣の気象コントロール能力が失われる。わずかに顔を出す太陽が、瞬に力を与えた。
 スパイラル光線が本体を砕き、露出した心臓部をプラズマンカッターが貫いた。
 本体を失った雪はたちまち死に絶え、東京の氷漬けは避けられた。互いに労い合う陸奥たち。アルスターシアの提案で、メラスター星へのお礼も通信で送られる。これも地球が宇宙の一員として認められたことの恩恵だろうか。
 医療室では瞬が休んでいる。仕方ないとは言え、冷たくなったあなたを見つけた時は心臓が止まるかと思ったわ…、優しく言う玲に笑い返しながらも、一抹の不安は隠し切れない瞬。
 赤嶺博士に指摘されたる以前から、自分の目眩がただ事ではないことに気づいてはいたのだ。(第44話)
 オーストラリアのある街外れに墜ちた隕石は、最初は何の関心も人々に呼び起こさなかった。が、3日、5日と経つうちに、次第に街の人々を、原因不明の病気に苛み始める。人々の体が石化してしまうのだ。皮膚が石化すると、当然皮膚呼吸ができなくなり、患者は死ぬ。その現象はオーストラリア全土に恐るべきスピードで広がろうとしていた。考えられる原因はただ1つ。あの隕石だ。
 それに気づいたオーストラリア駐屯のEGS隊員が、全土に警告を出す。シドニーやメルボルンなどの大都市は即座に郊外を閉鎖、現象の侵入を阻止しようとする。だが、どうやら空気を伝わってくるらしい現象を食い止める手段はなく、遂に都市部にまで被害者を出してしまう。
 各国への救難要請は断られた。彼らも被害を蒙るのが怖いのだ。EGS隊員は気づいた。これは恐らく何らかの病原菌だ。しかも空気感染する…。各国は自分たちは大丈夫だと高を括っているらしいが、個の病原菌が風に乗って世界を席巻しないと断言できるのか。今すぐ何とかしてワクチンを開発しないと、地球中が死の大陸と化すだろう。
 隊員は己の体を犠牲にして、病原菌に感染、日本のEGS本部に連絡を取り、戦闘機に乗って急行する。
 厳戒態勢の中、隊員はEGS本部に到着した。直ちに密封された部屋に隔離され、機密服に身を包んだ赤嶺博士率いる医師団に診断された。やはり彼の思った通り、原因は病原菌だった。しかも、宇宙から運ばれてきたものらしい。感染者への治療方法と非感染者へのワクチン開発が急がれる中、一体何がこんなものを運んできたのかの調査も開始される。時間が少ない。1秒の遅れが1人の死を招くのである。
 隊員が決死の覚悟で運んできたデータバンクから、発病地帯の限定が行われ、数日前にそこの隕石が落下していることが判明。原因は隕石だ。取り敢えず赤嶺博士やアルスターシアたちに治療方法とワクチン開発を任せ、相馬、ベン、アイリーン、玲が隕石の除去に向かうことになる。オーストラリア政府に連絡後、4人は出発する。
 その頃、赤嶺博士を手伝っていた瞬は、顕微鏡を操作しようとしていた博士に眼鏡を渡そうとし、それを取り落としていた。手が震えたのだ。ごまかそうとする瞬だが、あの目眩を知っている赤嶺博士は騙せない。そんなに悪いのか…。問う博士に瞬は言う。平和な地球にウルトラマンは不要になります。ゆっくりと休めるようになれば、これも治りますよ。
 出発した4人はオーストラリアに到着、墜ちた隕石を探す。発見、それをウィンチにて吊り上げようとするが、突然暴れ出す隕石。何とそいつは怪獣だった。
 病原菌を撒き散らしながら暴れる怪獣。攻撃も効果なく、かえって怪獣の進む速度を速めるばかり。遂にシドニーに足を向ける怪獣。墜落したウィングには病原菌が侵入、玲が感染する。
 まずい。瞬は変身して飛び出す。玲を救おうとする彼を止められない赤嶺博士は、アルスターシアとともにワクチン開発を急ぐ。
 怪獣と対決するウルトラマン。体中が隕石のかけらで守られた怪獣に苦戦するが、それでもカッターとスパイラル光線にて倒す。皆への感染を恐れ、戻ろうとしない玲に、瞬だけが近づく(彼はどんな病原菌でも体外で殺傷してしまえるのだ)。抱き合ってワクチン完成を待つ2人。
 とうとう赤嶺博士がワクチンを完成させ、アルスターシアが治療方法を見つけだした。全EGS隊員が出動、オーストラリアに向かう。到着したワクチンが玲に打たれ、取り敢えず瞬を安心させる。
 だが、オーストラリア全土に広がる感染者に、彼らの存命中ワクチンを打って回るのは不可能に近い。と思っていると、戦闘機編隊が大量に到着、ワクチン運搬を手伝わせてくれと言う。何と彼らは、これまで散々EGSの邪魔をしてきたNDSの面々だった。
 風間参謀より入る連絡。NDSを信用しろ。これまで我々の邪魔ばかりするしか考えなかった行長副局長ら旧メンバーは全て更迭され、彼らは生まれ変わった。全面的に我々に協力するそうだ。その筈だ。何と新NDSの副局長に就任していたのは、マイクのライバルであり親友ともなったジャック=サンダースだった。ジャック=サンダースは言う。僕たちをマイクの代わりと思って下さい。
 EGSとNDSの初の全面協力の結果、オーストラリアは救われた。陸奥とジャックが握手する中、赤嶺博士が提案する。前回のメルスター星の例もあることだし、今後同じような被害を受ける星々のために、このワクチンの処方を星間通信にて送れるようにしておこう。それが宇宙の一員としての地球の役目だ。大いにわく面々。
 その3日後、ケーシー長官が重大発表を行った。今や地球の防衛は地球全体で行うべき時期に来た。少なくともブラックバードという特定侵略集団の脅威のなき今、EGSという組織は必要なくなった。EGSをNDSに合併し、新たな時代の防衛組織設立に当たりたい…。(第45話)

ウルトラマン企画書8

   最終回3部作


 EGS解散、NDSへの吸収合併の決定は、大半のEGS隊員に抵抗をもって受け取られた。だが、一度国連会議にて決議した内容を覆すわけにはいかず、しかもNDSに研修に行った面々の大部分は生まれ変わったNDSの彼らへの対応に満足した。ジャック=サンダース率いる新NDSとなら、多分皆上手くやって行けるだろう。
 主要なメンバーの行く末も決まろうとしていた。長官や幹部、陸奥は国連事務局への転属が決まった。ベンやアイリーン、多くの準隊員たちはNDSへの配属が決まっている。三条医師は陸奥を追って国連へ、平間技術長たちはNDSや国連の技術工作部門へ。赤嶺博士は自分の研究所を持つことになった。
 玲はまだ行く末を決めていなかった。叔父風間参謀は国連に来いと言ってくれるし、NDSからの誘いもあるのだが、瞬が決定を出していないのだ。志水の墓参りを行った帰途、それを問いただす玲だったが、まだ決めていないと言う瞬は突然の立ちくらみに襲われる。驚く玲にただの疲労だとごまかすものの、疑いの晴れた様子はない。実は瞬は、2時間に1回は割れるような頭痛と目眩に教われ、倒れる程に容体を悪化させていたのだ。言い知れぬ不安に襲われる玲。
 結婚話に夢中になる玲、アイリーン、アルスターシアの3人娘。ベンから指輪を貰ったアイリーンにそれを見せられ、羨ましい溜め息をつく2人。玲にとっての瞬はとにかく(アルフェリア星から飛び立つ時、ずっと一緒だ、と約束してくれた瞬…)、アルスターシアにとっての相馬はつかみ所がなかった。相馬もまた、行く末を決めていない1人だったからだ。誘いはあるのだが、NDSにも国連にも行く気が起こらない。EGSに入る時、ここを死に場所にしようと心に決めていた彼に、他所での仕事など出来よう筈がなかった。アルスターシアは赤嶺博士の手伝いをしながら、地球で科学知識を生かした環境生物学に取り組むことが決まっていただけに、余計相馬のことが気になるのだが、相馬の方はそんな彼女の想いに全く気づいた風もない。平間技術長から形状記憶合金製の新武器を受け取り、今更遅いや、EGSは解散するんだぞなどと笑う相馬。その寂しそうな横顔を敏感に察知しているアルスターシア。
 一方、赤嶺博士に精密検査を頼んだ瞬は、重大な結果を知らされる。眼底から視床下部にかけて内出血が起きている。原因は瞬自身わかっていた。ここしばらく毎晩聞こえる夢の中からの女の声(懐かしい声)がそれを教えてくれたのだ(瞬自身はその声に『マザー』と応えていた)。生身で受けた《プロメテの塔》からの光は、一時的とは言え、不死身のウルトラマン瞬を盲目と化した。その光が眼底を貫き、視床下部を傷つけ、脳に出血をもたらしたのだ。玲には黙っていてくれと博士に頼んだ瞬は、自室にて荷物をまとまる相馬に、どこかへ旅立つ決意を告げられる。アルスターシアはどうする気だと問われ、答えに窮する相馬だったが…。
 NDSへの引き継ぎを行っていた最中の宇宙ステーションから緊急連絡が入る。謎の宇宙船団が太陽系に侵入した。その先鋒部隊に教われ、三基の宇宙ステーションは全滅する。
 慌てるEGS。何しろNDSへの引き継ぎの最中だ。ろくな戦闘人員もいなければ、装備も働く状態にない。それでも容赦なく襲い来る敵。最初に狙われ破壊されたのはEGS基地に眠る《フリーダム》であった。
 EGS基地も大半が破壊され、残った面々は各々脱出、陸奥を初めとするメンバーはシップに乗って逃げ果せた。
 本隊が到着するや否や、敵は世界を攻撃して回り始めた。ニューヨーク、ロンドン、パリ…、凄まじい攻撃はたちまち世界の大都市を廃墟と化してゆく。EGSからの引き継ぎ待機中のNDSもろくに反撃出来ない。敵が何者なのかも特定できない。
 東京の西半分を廃墟と化した敵が、巨大な要塞を着地させた時点にて、やっと正体がわかる。何と、アルフェリア星から逃げたバッファロス率いるブラックバード星系の生き残りだった。各国大都市を破壊して回っていたのは、ベム=ソドム自らが操縦する怪獣型万能戦車グラン=ゲルザントⅡ。
 やっと迎撃に出るNDSや各国軍隊。だが、要塞からの反撃は圧倒的で、到底太刀打ちできない。唯一通用する武器はハイペリオン砲しかないだろう。東京に向かうシップだったが、近郊までたどり着きながら数多い敵に撃墜されてしまう。
 地上にて戦う陸奥たち。だが、グラン=ゲルザントⅡは迫る。言うことを聞かない体に鞭打ち(そしてこの時、瞬は玲に体の不調がただ事ではないことを見抜かれてしまう。必死に止める玲を振り切り…)、変身する瞬。グラン=ゲルザントとの2度目の戦い。手足が痺れる瞬にろくな戦いはできない。プラズマンカッターははたき落とされ、スパイラル光線も通用せず、目眩を押して放った最後の頼みの綱プラズマンショットも効かない。世界の各都市を廃墟にしたグラン=ゲルザントⅡのハイパーメガロ砲(グラン=ゲルザントⅠのものより遥かに強力な)が、ウルトラマン瞬の体に炸裂し…。(第46話)
 ハイパーメガロ砲の一撃にて瞬が死んだと思い込んだ玲の絶叫が廃墟の東京に木霊する。 だが、ウルトラマンは光芒が彼を直撃する寸前、体をひねって逃げていた。相馬たちのいた場所からはそれが見えた。幸い直撃は避け得たものの、ハイパーメガロ砲に吹っ飛ばされた瞬は、エネルギーが尽きたことも手伝って、地上に落ちざま体が縮小、おまけにウルトラマンの姿から人間に戻ってしまう。ウルトラマンが落ちた場所に急いだ相馬、アイリーン、アルスターシアは、ウルトラマンが瞬の姿に戻る瞬間を目撃してしまう。愕然とする3人。
 だが、何をするまでもなく、背後にはブラックバードの兵士たちがウルトラマンの死体の確認に迫っていた。ほとんど虫の息の瞬をアイリーンとアルスターシアに任せ、相馬は囮となって飛び出す。残った2人は何とか瞬をかつぎ出す。同時に東京近郊を覆い尽くすバリアー。着陸した要塞を守るため、敵は東京を外部と遮断したのだ。瞬をかついだ2人も東京から締め出されてしまう。
 逃げ回る相馬が遂に捕まった。ウルトラマンは俺だ。嘯いた相馬はその場でベム=ソドムの前に引き出される。もちろん一度ならず瞬と対決しているベム=ソドムに相馬の嘘が通用するわけもなかったが。都民たちが捕らえられた場所に放り込まれる相馬。陸奥、ベン、玲たちと再会する。
 陸奥がベム=ソドムに食ってかかる。なぜ侵略を繰り返す。ベム=ソドムは答える。我々の星は汚染された、新天地を求める必要性があった。陸奥は言う。それならばなぜ自分たちの星を復元する努力をしない。その努力を怠るお前たちに、他人の星を踏みにじる権利があるのか。ベム=ソドムは冷笑する。無駄な努力を積み重ねる前に、我々には力があった。力こそが正義だ。お前たちは所詮弱者に過ぎなかっただけの話だ。その弱者が我々をアルフェリア星から追い出した。報いは受けるべきだろう。
 捕らえられた都民たちの幾人かが陸奥たちに詰め寄る。お前たちが余計な真似をしてくれたお陰でこんな目に遭わせられたんだ。怒る相馬。他所の星の危機を黙って見過ごせと言うのか。揉み合いになりかけた双方を止めたのは、瞬が死んだと思い込む玲の言葉だった。
 瞬は、ウルトラマンは異星人だった。でもこの星を故郷だと思って、必死で戦った。守ろうとした。体がおかしくなっても、それでも地球のために戦った。それが余計な真似だった? 私たちは瞬と同じことをしただけよ。それが余計な真似だった? そんなことを言う人たちを、そんな人たちしか住まない星を、瞬は命懸けで守ったの? その程度の星を守ろうとして、瞬は死んだの…?
 泣き出す玲の前に黙り込む都民たち。
 翌日から要塞周囲の整備に駆り出される都民たち。そして二週間が経過する。その間、戦力の半分を宇宙に置き、バッファロスは新帝国建設を宣言。抵抗は許さないと言う。やっと機能を回復したNDSや各国政府は続々と軍隊を送り込むが、彼らにブラックバードの相手が勤まる筈もなかった。瓦礫に埋まった国連会議場では、核兵器使用も検討され始める。必死に反対するケーシー、田辺、風間、ジャックたち。東京には未だ多くの生存者がいる筈なのだ。だが、何の手も打てない状況が続くようなら、犠牲を払ってでも敵を一掃すべきだとの意見が大勢を占める。
 陸奥たちは外に出すと危険と判断され、閉じ込められる。唯一の窓から見える墜落したシップの機体。陸奥は相馬に言う。不時着はしたが、シップは壊れていない。要塞を破壊できるのはハイペリオン砲だけだ。連中もそれがわかっているから《フリーダム》を真っ先に破壊したんだ。しかし連中は、シップにハイペリオン砲が搭載されているのを知らない。連中、電力を要塞内に引いたらしい。要塞を動かすエネルギーの一部だけでもシップに回せれば…。眼を輝かせる相馬。芝居が始まった。閉所恐怖症を口実に、窓のガラスだけを開けさせる相馬。煙草まで取り戻し、玲のためにと称し、ユニフォームも取り返す。
 バリアーを歪曲装置で消し、アイリーンとアルスターシアが通信してきた。瞬は無事、意識はまだ取り戻さないが生きている。それを聞いて泣き出す玲。その玲に相馬は言う。俺はあいつを許さないぜ。あいつは俺を騙し続けていたんだから。二度と異星人であることを隠すなよ、俺は地球を守ったんだって胸を張れと伝えてくれ。
 通信を通じてその言葉を聞いたアルスターシアは不安に駆られる。
 その通信が察知された。アイリーンたちに迫るブラックバード兵士。瞬は夢を見ていた。その中でまたしても彼を説得しようとする『マザー』。帰ってくるのです、今ならまだ間に合います。瞬は応える。帰れません、僕にはまだやるべきことが残っている。その耳に響くもう一つの声。あの老人の声。
 お前はまだ地球の力を利用し切っていないぞ。さあ、立て。立ってわしの力を存分に使うのだ。お前はわしの息子の一人だ、必ずやれる。
 瞬は理解した。あの老人こそ、この星の…。
 気が付いた瞬の前に、アジトを発見したブラックバード兵士と戦おうとするアイリーン、アルスターシアがいた。生身のままスパイラル光線にて兵士を一掃する瞬。2人の制止を撥ね付け、立ち上がる。行かなくちゃ。僕を運んでくれ…。
 陸奥たちも行動を起こしていた。平間技術長から貰った形状記憶合金の弓矢を煙草の箱から抜き、それで見張り兵士を倒す相馬。牢を出た彼らは二手に分かれ、陸奥と玲とがシップに電力を引きに、相馬とベンとが都民たちを救出しに走った。解放される都民たち。一時は相馬と揉み合った連中も、一緒に戦わせてくれと申し出るが、相馬は拒む。戦うのは俺たちの仕事、あんたらはその後に大変な仕事が待ってる。
 この街を作り直す仕事が。
 相馬は都民たちが脱出したのを見計らい(彼らをバリアーの外に誘導するのはベンとアイリーンとアルスターシアの役目だ)、彼らの盾になりながら銃を撃ちまくる。その間に陸奥たちが電気のソケットをシップに運ぶ。もしハイペリオン砲が効かなかった場合、陸奥がシップを駆って要塞に突っ込む。その際玲は降ろす。絶句する玲に陸奥は言う。相馬だけを見殺しにできるか。実は相馬は、自分がやると言う陸奥に銃の扱いは俺の方が上ですと言って、囮の役目も引き受けていたのだ。アルスターシアの不安は当たっていた。
 私も…、言いかけた玲を一喝する陸奥。君が死んだら、瞬君はどうなるんだ。
 激怒したバッファロスはベム=ソドムに掃討を命じる。出撃するグラン=ゲルザントⅡ。宇宙に待機していた部隊にも招集がかかる。ところがその背後から艦隊を襲う謎の船団。
 シップに集まるエネルギー。ハイペリオン砲稼働まで後少し。そんな時相馬が撃たれる。それを予感のように感じ取ったアルスターシアは、アイリーンの制止を振り切って走る。そして瞬も、玲の戦っている場所に赴こうとしていた。
 行け、我が息子よ。
 その声に支えられ、瞬は最後の変身を行った。挑むはグラン=ゲルザントⅡ。(第47話)
 老人の声に励まされ、最後の変身を遂げた瞬が飛び立つ。
 都民たちの脱出はほぼ成功しようとしていた。その彼らとは逆方向に向かって、アルスターシアが走る。
 その頃、相馬は自分のデルスキーマグナムを取り戻し、敵から奪った熱線銃も使って大乱戦を繰り広げていた。都民たちが無事逃げ果せ、シップがエネルギーを充填するまでは、何とか時間を稼がねばならないのだ。既に撃たれた箇所は十カ所に上ろうとしている。だが相馬はひるまない。遂には敵の電力供給管制室を破壊する。
 要塞を守っていたバリアーが消えた。NDSの部隊が一斉に突入する。たちまち迎撃が始まる。敵の中心はもちろんグラン=ゲルザントⅡ。蚊のように墜とされるNDSの戦闘機。グラン=ゲルザントはシップを目指す。
 もうすぐエネルギーが充填できる。ハイペリオン砲発射を準備する陸奥と玲。だが、迫るグラン=ゲルザントを発見し、これまでかと思う。その怪獣戦車を食い止めたのは瞬。玲は絶叫する。だが、動かぬ体を必死に動かして瞬は戦う。
 要塞の通路にて戦う相馬とベン。傷ついた相馬を庇おうとするベンを、お前はアイリーンと生きろと言って叩き出す相馬。入れ替わりに飛び込んできたのはアルスターシア。この星で生きるんなら、あなたと一緒じゃなくちゃいや。2人はともに銃を握る。
 宇宙での戦いは大方決着がつこうとしていた。ブラックバード星系の艦隊に襲いかかったのはアルフェリア星と抵抗組織だった面々。指揮するはアルフェリア星のマクリー=ギル。約束を果たすためにやってきたのだ。地球の田辺、風間たちとも連絡をつけ、共同作戦が開始される。かつて助けた面々が、今度はその借りを返しにきた。盛り上がる防衛対策本部。ギルたちは敵艦隊一掃後、地球の陸奥たちを助けに向かう。
 相馬とアルスターシアは戦う。だが、遂にアルスターシアが撃たれ、そして相馬も…。
 その頭上で戦い続ける瞬。形成は不利。グラン=ゲルザントに組みつく瞬を、敵戦闘機が攻撃しているのだ。だが、そこに駆けつけるギルたち。形成は逆転する。戦況の不利を悟ったバッファロスは要塞の脱出を命令。浮上を始める要塞に向け、シップからハイペリオン砲が発射される。
 避けて、瞬!
 玲の叫びは伝わり、間一髪、躱した瞬をかすめ、ハイペリオン砲の光条はグラン=ゲルザントの装甲を大破、浮かんでゆく要塞に突き刺さった。それでも浮上を続ける要塞だったが、大気圏を離れ、月軌道にまで上昇した時に大爆発を起こす。
 よろめくグラン=ゲルザントと瞬。怪獣戦車の武器は使えない。瞬もエネルギーを使い果たしている。だが、瞬にはまだプラズマンショットが撃てる。プラズマンカッターを体の前に固定、最後の、これこそ本当に最後の力を振り絞り、瞬はアースアタック=プラズマンショットを撃つ。地球のエネルギーに押し出されたプラズマンカッターは、ベム=ソドムの乗るグラン=ゲルザントに向かってまっしぐらに飛ぶ…。(第48話)



〈以上が『ウルトラマン0』のストーリー原案である。ご覧になっておわかりのとおり、第48話は中盤までのストーリーで終わっている。この先、地球はどうなるのか。また、相馬とアルスターシアは。そして何より、瞬と玲はどうなるのか。
 この物語の続きは現在、この企画書の執筆者の頭の中にしか収まっていない。この企画が日の目を見ない限り、続きは決して明かされることはないであろう。
 だが一つ、これだけは約束しよう。
 この続きはこれまでのウルトラマンが決して描かなかったものになる。一旦『0への帰結』を果たした地球は、そして相馬やアルスターシア、瞬や玲は『0からの出発』を遂げるのだ。その結末は視聴者たる人々に感銘と希望とを受け取って貰い、尚且つ21世紀における我々の生き方の示唆さえ与えるものになり得るだろう。
 その自信と自負とを高らかに宣言し、この企画書を読まれた関係者諸氏の決断を促しつつ、この企画書の幕を下ろすことにする〉

                        2016年 夏

(仮)プラズマン企画書

(仮)プラズマン企画書

  • 随筆・エッセイ
  • 長編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-04-06

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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