僕とアイドルは釣り合うのか

初めての作品なのでお手柔らかにお願い致します。

一章 4/15更新

 そこら中を真っ赤な光が覆い、ギター、ドラム、キーボードなどの楽器の音が響く。そんな様を、僕や何千人と居る同類たちは静かに、耐えるように見ていた。そう、まだだ。僕らが見たいのはこれじゃない。まだ力を溜めておかなければ。
 遠くのスタンド席から歓声が上がった。来たか!鞄からペンライトを取りだし、振りながら大きな声で叫んだ!
「ヒカリちゃーーーーん!!!」
「はあーい!皆お待ちかね、ヒカリちゃんの登場だよーーー!!」
 いつも特徴的な登場をするヒカリちゃんだが、今日はいつにも増して派手な登場だった。なんと、さっきまでギターを掻き鳴らしていた男が上着と帽子、サングラスを外すとヒカリちゃんに変身したのだ!
 そのカッコよさに、同類たちは堪えきれず叫んだ。気持ちはよく分かる。ヒカリちゃんは多芸すぎるのだ。
「待たせたお詫びに、最初の曲は皆の大好きなあたしのファーストシングル!聞いてください、『ヒカリを越えて』!」
 ヒカリちゃんがプロ並みの腕でギターを鳴らす。釣られて、プロであるアーティストたちはそれに合わせて演奏し始めた。
 この空気が好きだ。一緒にヒカリちゃんを応援する同類たちが好きだ。そして何より、こんな空間を作り出すヒカリちゃんが好きだ。
 僕こと折田(おりた) (りく)は、純粋にアイドルとしてヒカリちゃんが大好きなのであった。

 容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、話せば面白い。それが(自分で言うのも恥ずかしいが)僕に貼られたレッテルだった。
 高校入学は成績トップ。真面目に提出物をこなし、先生を尊敬していたため内申点もバッチリ。
 中学時代は特定の部活には入ってないものの体力テストでは軒並み高得点を叩きだしており、友人も多くどのグループに入っても輝いて見えるほど綺麗な顔。
 そのあまりのステータスに、一年生にして生徒会長に選ばれた。
 そんなあなたを好きにならないはずがありません。
 ーーー以上、高校に入って貰ったラブレターの九割の概要。
 要するに彼女たちは僕を好きになったんでなく、『折田陸を落とした』というステータスを欲しがってるんだな、という結論に達した。だっておかしいじゃないか。ほとんど僕の事を知らないような娘が「あなたの事が好きです」なんて言ってきても信じられない。
 周りに居るのがそんな娘ばかりだから、僕はアイドルにハマった。
 言っちゃ悪いが、今まで自分より凄い人間というのを見たことが無かった僕は初めてテレビで観たヒカリちゃんに感動した。
 彼女一人を見るために数万の人が集まってくる。なんと凄い話だ。僕なんて彼女と比べたら凡夫どころか猿だ、猿。
 もちろん、彼女より凄い人も居るのだろう。一人で東京ドーム10杯のファンを産み出す者も絶対に居る。
 しかし、僕は彼女に牽かれた。他の誰より一生懸命に見え、そして他の誰よりも本物の笑顔を浮かべていた。
 今まで一度も味わったことの無かった人を好きになる気持ち。きっと、彼女は僕のことを見上げないだろう。対等でなくていい。見下してくれても、僕は構わない。そんなある種歪んだ好意を向けているが、結局、僕の頭の全てはひとつの感情で出来ている。
 『ヒカリちゃんが好き』。いつしか僕は、ヒカリちゃんに憧れるようになっていた。
 ヒカリちゃんのようになりたい。そう思っていた僕は、彼女がライブの前に食べるという『あずきサンデー』を求めて喫茶店にお邪魔する。
「申し訳ありませんが、只今お席が空いておりません。どなたかと相席になってしまいますが、よろしいですか?」
「はい、もちろんです」
 この頃にはもうヒカリちゃんのライブには相当数行っており、彼女がどんな変装をしても見抜けるようになっていた。
 そんな僕だから見抜けたのかもしれない。
「こちらの方が了承してくださいましたので、彼女の向かいの席にお座りください」
「……ヒカリちゃん?」
 ビクッ!と相席した彼女が反応する。この反応、まず間違い無いな。
「アイドルの……ヒカリちゃん、ですか?」
「……当たり」
 僕の対面に座る彼女は、見慣れた笑顔で被っていた帽子をずらした。
「あーあ。バレると思ってなかったんだけどなー。もしかして、あたしのファン?」
「……ええ、まあ」
 やばい。現実が直視できないほど幸せだ。今までこんなの体験したことないんだけど。
 ヒカリちゃんは僕の回答が嬉しかったのか、前のめりになって瞳を輝かせている。
「本当!?じゃあテストしよっか。問題!あたしの身長、体重を答えなさい!」
「154cm、40kg」
 口が勝手に動いた。もしかすると既に僕の脳はヒカリちゃんに絶対服従するようにプログラミングされてるのかもしれない。
「おおー。早いね。この分なら年齢もすぐ分かるのかな?」
「15歳。一個下ですよね」
「え?じゃあ君あたしの一個上?見えないなあ。君、大人っぽいね?カオもいいし。じゃあ~……」
 ヒカリちゃんはそこで一度もったいぶって、質問をした。
「ーーーあたしの、どこが好き?」
 にやにやと意地の悪い笑みを浮かべるヒカリちゃん。これはもしかして試されているのだろうか?
 ならば、受けない訳にはいかないなあ。
「誰よりも努力している所と、誰よりも仕事を楽しんでいる所です」
 こんなもん、正直に言うしかない。答えの無い質問の、唯一の最適解。
 答えは、果たして。
「おお!それわかってくれるんだね。へー、よく見てるなあ……。ちょっと、恥ずかしいかも?」
 いやん、とおどけるヒカリちゃん。よかった、正解のようだ。
「いいね。君、気に入ったよ。ちょっと待って」
 ヒカリちゃんはテーブルから紙ナプキンを一枚取り、サラサラと数字とアルファベットを書いていく。二行書いたところで手を止め、僕に差し出した。
「これ、電話番号とメルアド。好きなときに電話していいけど、あんまり取れないから注意してね」
「あ、あの、ちょっと……」
 いいのだろうか、人気アイドルの、しかも僕の推してるアイドルの連絡先なんか貰って。
「最後に一つ。あたしの変装を見破った秘訣は?」
「こ、骨格で分かります」
「わーお。それは流石に予想外だなあ……。じゃーね。また今度」
 こうして、僕の大好きなヒカリちゃんは嵐のように去っていったのだった。
「……夜、電話してみようかな」
 色々考えたら八時くらいがベストかな。

 へたれた。
 夜、せっかくだから電話してみようと思った僕だったが、結局したのは電話ではなくメールで、内容も自己紹介のみ。面白味の欠片も無いものを送ることになった。
「流石にこれはなあ…」
 普段は堂々としている僕だが、本当に大切な時はへたれる事が多い。後悔しているものの、今さら電話を掛けられる訳もない。少なくとも今日の所はここで終わりだな。
 諦めてクリア直前のゲームを開くと、僕の携帯が鳴った。
「誰だよ、こんな時間に…友久か」
 友久とは、僕の友人である。小学校からの腐れ縁だ。
「もしもし?」
「おお、もしもし陸!今暇か?」
「暇じゃないよ。……はっ!今は世界を救う旅に出ているんだ」
「そうか。魔王まで辿り着いたか?」
「もちろん。今はその魔王と戦ってるんだよ」
 このゲームは一昨日友久に借りたものだ。あいつとはゲームの趣味がよく合う。僕も友久もフルジャンルでやるけど。
「ンなことより駅に行ったらどうだ?最愛のヒカリちゃんが来てるらしいぞ」
「ありがとう友久。五分で行く」
「カッコいい台詞だが、お前の家から五分で駅は無理だろ」
「知ってるかい?友久。光は一秒で地球を4周するんだよ。僕は光に…ヒカリちゃんに追い付かなければならない!」
「誰が上手いこと言えって言ったよ。さっさと行け」
 友久はそれで話を切り上げて電話を切った。愛用のバイクに跨がり、全速で発進……したかったが、警察が煩いので50km/hで発進。このペースなら5分は無理だがまあ10分くらいで着くだろう。
 待ってて下さい、ヒカリちゃん!
 僕のテンションは光を越える速度で上がっていく。
 ほどなくして駅が見えた。季節的にももう冬は冷えるからか、壁にもたれて星を見ているヒカリちゃんは暖かそうな格好に身を包んでいた。なんだか、まさに手持ち無沙汰という感じだ。誰かを待っているような……。
「んー、まだかな……って、あー!陸くん!」
 ヒカリちゃんが僕を指差して名前を呼ぶ。視線が一斉にこちらに集まった。呼ばれた僕はというと、名前で呼ばれたことと周りの視線が集まったこととで固まっている。
 周りを気にすることもなく(もしかすると自分のファンだと気付いていないのかもしれない)こちらに歩いてくるヒカリちゃん。僕の反応が無いことが分かると、ぺちぺちと軽く頬を叩いてきた。
「陸くーん、陸くぅーん。……あれ?寒さで凍っちゃってる?おっかしいなー」
「…………はっ!い、いや、凍ってないですよ!」
 周りの「何やってんだ」という視線に気づき、正気に返る僕。危ない危ない。いや、現在進行形で危ない。ここはファンが多いのだ。
「どうしたんですか?こんな所で」
「どうもなにも……。あれ?陸くんは違うの?」
「違うって何がですか?」
 てっきり人を待ってるんだと思ったけど、この反応を見る限り違うらしい。
 僕がヒカリちゃんがここに居る理由について考えを巡らせていると、「始まるよ!」という声をヒカリちゃんが出した。思わず空を見上げる。
「わあ……」
 星が流れては消え、また流れては消える。流星群なんて見たのは何年ぶりだろうか。
 これを見るためにここへ来たのか、と納得して隣を見ると、ヒカリちゃんが手を合わせてお願いをしていた。
「次のシングル売れますように、ライブの時会場いっぱいに人が入りますように、あたしのライブに来た人が楽しい気持ちで帰ってくれますように、ダンスと歌が上手くなりますように……」
 ものすごい勢いで願い事を並べるヒカリちゃん。こんな速さで言っては神様も聞き取れないんじゃないだろうか。
「な……何やってるんですか?」
「ちょっと待って!演出をもっと思い付きますように、ダフ屋に引っ掛かって不幸な人がいませんように……」
 ラップの曲で鍛えたのであろう早口で願い事を言うヒカリちゃんはいつも以上に可愛く見えて、僕は何も言うことができなかった。
 流星群が終わったので、もう一度さっきの問いを口に出す。
「……何やってたんですか?」
「え?神頼みだよ」
 それは分かるんだ。
「そうじゃなくて、なんで神頼みなんか……」
「だって、もし叶ったら儲けものじゃん。自分じゃどうにもならないことを願うのも努力だと思うよ」
 なるほど、ヒカリちゃんは独自の努力観(こんな言葉あるのだろうか)をお持ちのようだ。ピコン!僕からヒカリちゃんへの好感度が上がった。
「さらに言うなら、君へも願い事!」
 つん、と鼻の先をつつかれる。その可愛さに悶えそうになるが、なんとか平常を保って返答できた。
「なんですか?ヒカリちゃんの頼みなら、何だって聞きますよ」
「それ!敬語やめようよ!」
 怒られた。
「あたし一個下だからね!敬語使われたらどっちが上かわかんないし、なんか戸惑うの!友達でしょ!?対等に居よう!」
 なんと。彼女は僕を友達だと思ってくれていたのか。
 ……しかし、この願いは、親近感が沸くな。
「分かった!?」
「……分かった。ごめんね」
 素直に敬語をやめる。この悩みは、僕にとってはなんだか懐かしかった。友達を友達と思えなくて、信じることができなくなる感覚。
 昔のことを思い出して苦笑するが、悪い感覚ではなかった。
「他にも悩みがあったら言ってね。友達でしょ?」
「う……。なんか、こう言われると照れるね」
「さっき自分が言ったことだよね」
 まあ、なんだかんだ言って、一日に二度ヒカリちゃんに会えて、いい日だった。

 次の日。
 平日なので普通に学校に行く。途中で友久を見かけたので、昨日の礼を言うために話しかけてみた。
「やあ友久、昨日はありがとう。おかげでヒカリちゃんに会えたよ」
「いや、礼には及ばねえよ!……てか、どうした?すげえ疲れた顔してっけどよ」
「今に分かるさ」
 頭の上にハテナマークを浮かべる友久。そのままいつものように雑談しながら歩いていると、時を待たずに学校に着いた。
「………」
 しばし、教室の扉を開けるべきか迷う。どちらにせよ開けなければならないので、いつ開けるかの話になるのだが。
 心の準備をするべく、まず大きく深呼吸……
「何やってんだ、ほら開けるぞ」
 友久にサクッと開けられた。
「ちょ、友久……」
 教室中の視線が僕に集まる。あ、なんかデジャヴ。
「お、おはよう、皆……」
「折田が来たぞ!皆の者、囲めーーー!!!」
「んなぁっ!?」
 なんとなくこうなることは分かっていたよ。だって、昨日の駅にはクラスメイトも居たのだから。ちなみに、最後の驚いた声は友久のものだ。
「貴様っ!目撃証言があったぞ!昨日、駅でヒカリちゃんと密会していたらしいじゃないか!」
「ご、誤解だよ!僕はあくまでアイドルとして好きな訳で……」
「やかましい!目撃証言では前から知り合いで、しかも親しそうだったと聞いている!」
「彼女とは昨日喫茶店で相席になって……」
「カ・ノ・ジョォォォォォ!!!?もう許さん!学園のマドンナを片っ端から落としていくだけでは飽きたらず、カノジョはヒカリちゃんと来たかあああああ!!!?」
「ああもう話を聞いてくれええええ!!!」
 説得すること15分。
「……じゃあ、本当にただの友達だっつーんだな?」
「そうだよ!君が勘繰るようなことは何一つ無いんだ!」
「そ、そうか……。そうだな、いくらお前でもアイドルの恋人は無いよな……」
 ふう、なんとか説得できた。誤解を解くというのはなんでこんなに難しいのか……。
「ん、放送だ」
「こんな朝早くに?何かあったのかな?」
 ザザザ、とノイズの後発せられる一言。
『折田 陸さん。至急会議室に来てください。アイドルのヒカリさんが昨日の夜のことについて話があるそうです』
「「「貴様、ヒカリちゃんに何をしたあああああ!!!」」」
「ああもう、誤解だって!」
 逃げるように教室から出て、会議室に走る。途中生徒とすれ違うたびに視線を向けられるが、知ったことじゃない。あらゆる誤解を解くためにもまずはヒカリちゃんに会う事が大事なのだ。
「ヒカリちゃんっ!なんの話!?」
「ふぇっ!?むぐっ」
 ヒカリちゃんがせんべいを喉に詰まらせた。
「あ、だ、大丈夫!?ほら、水!」
「ん、むぐ、ごく、ごく、ごく……」
 必死で水を飲むヒカリちゃん。せんべいってそんなに喉に詰まるものだったっけ?
「ぷはーっ!いやー、ありがとうね陸くん!死ぬかと思ったよ!」
「いや、この水にしても持参物だよね……?」
 今のは僕が居なくてもどうにかなった。絶対に。
「って、そんなことより昨日の夜のことってなに!?なんかあった!?」
「ほらほら、あんまり焦らないで、今話すから。……こほん、本日の用事というのは他でもない!」
 なんか腹立つな、このノリ。
「陸くん!あたしとデートしてください!」 
 赤面して僕にそんなお願い事を口にするヒカリちゃんは可愛かったのだが、どこか演技臭かった。

「はいはい、そんなことだろうと思ったよ……」
「てへへ、ごめんね陸くん」
 デートというのは、要するに買い物だった。それも食料品の買い出し。色気の欠片も無い。
 彼女は週に一度大きな買い物をするらしく、その時は荷物持ちが必要だそうだ。普段はマネージャーさんがやってくれるらしいが、今日は仕事が溜まっているらしく都合が合わなかったとのこと。
 僕も学校があるのだが、校長先生直々に「出席日数は誤魔化しといてやる」と言ってくれた。学校からアイドルの知り合いが出るというのは栄誉なことらしい。
 それにしても。
「えっとー……あ、お米が安い!それに冷凍食品コーナーのセールやってる!買いだ!」
 食品売り場をうろつく大人気アイドルはなかなかシュールだった。もちろん安いものを選んでいるようだが……。
「……これ、本当に食べきれるの?」
 気づけばカート二つ、カゴにして四つが食品だけで埋まっていた。一週間にしたら普通……なのか?
「いいのいいの!一人で食べるんじゃないんだから!そもそもあたしはお弁当とか貰えるしね」
 いいらしかった。しかしまあ、一人で食べるんじゃないならそれも頷ける。多分ご家族だろう。
「……ところでこれ、帰りの足は?」
「え?歩きだけど?」
「どれくらい?」
「30分くらい?」
 結構掛かりそうだ。僕の体力は持つのだろうか。
 しかしヒカリちゃんは凄い。彼女は僕が持っているさらに1.5倍は持っている。だというのに帰りの足取りも軽いのだ。
 極めつけは少し息が乱れた僕に向かっての一言。
「大丈夫?やっぱりもうちょっと持とうか?」
 屈 辱 !
 そもそも、男というのは好きな娘には格好付けたいものなのだ。なのに男の分野である力仕事で負け、さらに情けまでかけられる。
 我慢ならん!
「へ、平気だよこれくらい」
「そう?さっすが男の子、強いね!」
 僕も意地を張ってしまった。
 これがもし、ヒカリちゃんの服や装飾品なんかで埋まっていたら僕は全てをヒカリちゃんに押し付けていただろう。それはヒカリちゃんの趣味であって僕が巻き込まれる事じゃないからだ。
 しかし、これは食料品。生きるために必要なもので、さらに自分のためじゃなく家族のためと来た。なら、男として手伝わない訳にはいかないだろう。
「マネージャーさんはいつも車で済ませるんだよ。文明の利器ってすごいよねぇ……。あ、別に陸くんに文句があるとかじゃないからね!?勘違いしないでね!?」
「いいよ、車の方が楽なのは確かだし」
「それはそうだけど、目に見えて頑張ってくれると嬉しいものなんだよ!」
 必死に弁明をするヒカリちゃんが可愛いので、疲れなど吹き飛んでいく。今日はいくらでも動けそうだ。
「三十分ってことは、そろそろ?」
「そうだね。ここの角曲がったら着くよ」
 言われた通り角を曲がると、古風な、しかし豪邸と余裕で表現できる大きさの家が目に飛び込んできた。
「ま、まさかこれ……?」
「そうだよ。って言っても、死んだおじいちゃんの持ち家なんだけどね」
 ガチャガチャと慣れた手つきで鍵を開けていくヒカリちゃ……多っ!ヒカリちゃんが開けた鍵は6つ、ダミーを合わせると15個あった。
 アイドルの家にはこれくらい必要なのかもしれないな、と勝手に納得。一度荷物を置き、これはどうすればいいのか訪ねようとすると……。
「あーーーっ!愛姉が男連れて帰ってきたーーー!!!」
 うん、大きな声で子どもらしい。なんて思う暇もなく、バタバタと音を立てて予想した通りの女の子がやってきた。
「ねえ、お兄さんって愛姉のカレシ?もうチューした?」
「あっ、ちょ、何言って……!」
 慌てふためくヒカリちゃん。僕はその間ぽかーんとして、へえ、本名なんとか愛って言うんだとか考えていた。
「コラ。何聞いてんだ珠理(じゅり)
 奥から今度は中学生くらいの男の子が出てくる。
「また買い出し行ってたのか、愛姉。それくらい俺たちで行くって言ってんのに」
「大丈夫だよ、家の事あんまりできないんだから」
「愛姉は俺たちのために金稼いでくれてっからそれでいいんだよ……つーか、その台詞すげえおばさんっぽいぞ」
「ひどいっ!」
 ふぅ、と溜め息をついて男の子は僕に向き直る。
「あー……あんた、俺の事覚えてるかな?」
「……?いや、わからないけど」
「そっかー……まああれくらいで覚えてる方がおかしいかなー……」
 ガリガリと後ろ頭を掻いて、仕切り直すように男の子は咳払いをした。
「じゃあはじめまして、がいいのかな?俺は啓太(けいた)。愛姉の弟だ。こっちが珠理。愛姉と俺の妹だな。どっちも呼び捨てでいいぜ」
「よろしくー!」
 二人が丁寧にお辞儀をする。そういうことならこっちも。
「折田 陸です。まあ、好きなように呼んでくれていいよ」
「じゃあ馬糞な」
「君の事を腐れ外道って呼んでいいならいいけど」
「じゃあよろしく、馬糞」
「腐れ外道でいいんだ!」
 いかん、突っ込ませるはずが突っ込まされてしまった。こやつ……できる!
「いや、そういうのはいいから。せっかくだから陸くん晩御飯食べていきなよ。今日の分は生鮮食品買ってあるから」
「あ、ありがとう。貰っていくよ。……ん?今日の分は?」
 よく分からない言葉に首を傾げると、腐れ外道こと啓太が注釈を付けてくれた。
「俺が料理ダメダメだからな。基本冷食なんだよ」
「……ああ、なるほど」
 親はどうしたのか、とかは聞いていいのだろうか。……いや、駄目だろうな。
 僕の表情に気付いたのか、啓太が近づいてきて耳打ちした。
「事情は後で教えてやるよ。愛姉に許可貰ったらだけど」
 啓太は年の割に大人びているな。僕には無い特徴だから、少し羨ましい。
「じゃあ、ともかく頂いていくよ。ありがとうヒカリちゃん」
「……ヒカリちゃん?さては、愛姉本名伝え忘れてるな?」
「あ」
 ヒカリちゃんが凄く「やっちゃった」って顔をしていた。
 申し訳なさそうに自己紹介をしてくる。
「今さらだけど、稲光 愛です。よろしくね」
 こんなにどう反応していいかわからない自己紹介も初めてだった。

「馬糞。ちょっと部屋に来いよ」
 啓太に呼ばれて部屋に入る。どうでもいいけど馬糞から改名することは無いようだ。
「許可が出たから、我が家の事情を教えちゃおうと思います!」
 ぱんぱかぱーん、と口で言いつつ両腕を大きく広げる啓太。これから深刻な話をするとは思えないお気楽さだ。
「つっても、単純といえば単純なんだけどなー……。まず、お袋から言うと、親父と離婚して出ていっちゃった。原因は親父の度重なる浮気」
 あっけらかんと言う啓太は、あまり気にしてはいない風だった。しかし、瞳の奥には寂しげな感情も見てとれる。
「あー、そんな顔すんなよ……。で、親父はほとんど帰ってこない。月に一回帰ってくるか帰ってこないかってとこだな。……でも、去年愛姉に合鍵取られて家から追い出されてたからもう帰って来ねえんじゃねえかな」
「合鍵取った……?」
「そうだよ。親父が完全に悪いんだけどな」
「いったい何をやらかしたらあのヒカリちゃん……じゃなかった、稲光さん?をそんなに怒らせることが出来るんだ……」
「普通に愛ちゃんでいいと思うぜ。……しかし、何をやらかしたかって、それを俺の口から言わせるのかい?兄ちゃんよぉ」
 馬糞からまた呼び名が変わった。
「まあ簡単に言うと、俺たちが兄弟で外に出てた時に親父がやってたんだよ」
「何を?」
「ナニを」
 中指と親指で輪を作り、人差し指を抜き差しする仕草。いくらそういうのに疎い僕でもお父さんが何をやっていたのかは分かった。
「うわぁ……。言っていいのか分からないけど、最低だね、それ」
「だろー?うちは珠理もまだ小さいしさ、俺は珠理を外に連れ出す係、愛姉は親父とその相手を追い出す係だったんだけど……。当時中学生だぜ、愛姉。いくら俺が小学生だったって言っても、嫌な役押し付けちまったなあ……」
 後悔するような沈んだ目。しかし啓太はすぐに普段の飄々とした態度に戻った。
「まあ、うちの事情はこんなもんだ。最初の方に言ったけど、親父はもう戻ってこねえと思うから安心しろよ」
「それならいいんだけど……」
「それでさ。聞きたいんだけど、あんたどうやって愛姉と仲良くなったんだ?」
「は?」
 さっきまでの寂しさを含んだ表情から一転、啓太は凄く楽しそうな表情になった。
「いや、聞いただろ?さっきのくだり。あんなことがあったから、愛姉男性不信的なところがあるんだよ。マネージャーも綺麗な女の人だし、男連れてくるなんて初めてだからさ。その口説きテクニックを是非伝授してほしいと思って」
「だから僕と愛ちゃんはそんな関係じゃないってば……。えっと、最初は喫茶店で相席になって……」
「そこは話すんだな」
 それから数十分、僕らは古くからの友人のように話し続けた。互いの境遇や楽しかったことなんかを話し、聞くたびに意気投合していき、同情し、絆は深まっていった。
 そんな中、がちゃりと鍵の開く音が聞こえた。啓太の顔が一気にシリアスになる。
「兄ちゃん、珠理と一緒にどっかに隠れててくれ」
 言うが早いか、啓太はドアに向かって駆けだしていた。僕も何が起こったのか察し、珠理を連れて台所に行く。ついでに包丁を隠す。お父さんの気が動転しても、これで刃物は使えないはずだ。
 しばらくそうしていると、お父さんの声が聞こえた。僕は珠理をぎゅっと抱き締めて動けなくし、ついでに何も聞こえないようにする。
「おいお前らぁ!お父様が帰ったぞぉ!」
 酔った男性の声。吐き気をもよおすほどの下卑た笑い。間違いない、こいつはクズだ。
「あなたなんか父親じゃない!去年家で何してたのか忘れたの!?」
「そうだ、てめえなんか父親じゃねえ!うちには女が二人も居るんだぞ!お前なんか家に入れたら、どっちも妊娠しちまうぜ!」
 必死で言葉を紡ぐ二人。しかし、声はどちらも震えている。無理もないが、そんな言葉では逆効果だろう。
「あぁ?なんだ、お父様を敬えねぇってか?じゃあしょうがねえ、躾が必要だなあ!」
 ぱん、ぱん。
 乾いた音が二度も響く。二人に平手打ちをしたのだろう。
 僕の理性は辛うじて切れていなかった。人の家のことだ。口を出しちゃいけない。他人の僕が口を出すことじゃない……。

「へっ、育ってきやがったな愛!そーいやアイドルなんだっけか!なんだなんだ、じゃあ本当に妊娠させるのもアリじゃねえか!」

 そんな、クズのクズらしい言葉を聞いた瞬間、僕の中で何かが切れた。
「……ごめん、珠理。自分で耳を塞いで、目も閉じて」
「え?なんでー?」
「早く!」
「う、うん……」
 珠理がちゃんと言った通りにしているのを確認して、僕は玄関に向かった。
 愛ちゃんが床に押し倒されている。ボロボロの啓太が父親をどかそうとしている。よし、証拠は十分だ。
 カシャリと、スマホで写真を撮った。
「あぁ!?誰だよ!」
 思った通り、彼の矛先は僕に向く。愛ちゃんは泣いていた。啓太は泣いてこそいないが、色んな所から血が出て、腫れている。
「クッソ、今いいところなのによ……おい、誰だてめぇ!」
「誰でもいいだろ」
 僕は冷たく答える。
「今、あんたがやっていることの証拠写真を撮った。これを警察に提出されたくなきゃ、さっさと帰れ」
「誰だって聞いてんだろうが!」
 ギャーギャー五月蝿いな。そんなに酔ってんのかよ。
 思いきり蹴って愛ちゃんの上からどかし、バケツに貯めた水を男にぶちまけた。
「大丈夫?愛ちゃん。ごめんね、すぐに助けに来れなくて。行っていいものか迷ってたよ。とりあえずこれ着て、どっか隠れてて」
 愛ちゃんに着ていたブレザーを渡す。愛ちゃんはそれを受けとって立ち上がろうとしたが、腰が抜けていて立てないらしい。
「啓太、愛ちゃんを連れて行ってあげて。それと、啓太は後で戻ってきてくれるかな?辛いかもしれないけど、よろしく」
 水をかけられて困惑している男に向き直る。既に顔を見るのも嫌だが、しょうがない。
「酔った頭は覚めたか?覚めたなら、自分の足で帰れよ」
 男は未だに状況が掴めていない様子。というかパニクってるんだろうな。強いやつなんて居ないと思ってたらこのザマだ。無理もない。自業自得だけど。
「帰れっつってんだよ」
 ぱあん!と音をたてて頬を叩く。それでも帰らないようなので、鼻を折り、目を殴り、足を踏み潰す。
「苦しいか?これは、全てお前が啓太にやったことだ。きっとまだやってるんだろうが……。まあ、今帰るなら許してやらんでもない」
 最終通告。これで帰らなければボコボコにするという意味を込めて。
 しかし、男にはまだ言い返す気力があったようだ。
「い、いい加減にしろ!ここは俺の家だ!お前なんかに追い出される謂れは無い!」
 おっと、そう来たか。それを言われるとどうしようもない。これはあくまで人の家の問題なのだ。もっとも、それを言うなら向こうは虐待なのだが。
「ここはそこの兄ちゃんの家だよ」
 いいタイミングで否定の言葉が入った。もしかして狙ってたんじゃないだろうか。
「兄ちゃんは、愛姉ともう結婚してる。この家は彼の所有物だ。あんたにこそうちについて何か言われる謂れは無いんだが」
「ば……馬鹿なっ!愛はまだ16になってもいないだろう!それに、親の承諾は……!」
「だから、事実上の婚約だな。親の承諾は、あんた以外にも親が居るの、忘れたのか?」
 確かに。意外と口が上手いな、啓太。まあ本当にそんなことになってたらご都合展開にも程があるが。
「さあ、帰れよ。これは僕たちの家だ。あんたの家じゃない」
 僕のとどめの一言に男は帰るしかなくなったらしく、すごすごと帰っていった。

「本……っ当にごめんなさい!」
「「何に対して!?」」
 男が帰った後正気に戻った僕は、非常識な事をしてしまったと反省し、土下座していた。
「だって、あんまり人の家の事情に入り込むべきじゃないでしょ?いくらあの人に腹が立ったからって……」
「流石に助けてもらっといてそんな文句言えるほど俺たち面の皮厚くねえよ」
「それに……あれは啓太がやったとはいえ……こ、婚約……」
「別に気にしないよ?あんな人にどう思われようと関係ないし、それに……」
 愛ちゃんはそこで一度話をやめ、もう一度口を開くときには少し心配した顔をしていた。
「そ、そういえば珠理は?一緒に居たと思うんだけど」
「そうだった!台所に居るはずだけど……」
 愛ちゃんがダッシュで迎えに行く。その顔はこころなしか赤い気がした。
「なんだ、愛姉もちょっとはかわいいとこあんじゃねえか」
「どういうこと?」
「わかんねえならいいよ」
 啓太は意味深な台詞が結構多い。教えたいのか教えたくないのか分からないので追求もできず、モヤモヤする。
 しばらくすると愛ちゃんが帰ってきた。手には寝た愛ちゃんを抱いている。
「寝ちゃってたみたい」
 はにかんで言う愛ちゃん。心配してたのが少し恥ずかしくなったのかもしれない。
 珠理をベッドに下ろし、全員の気が抜けたところで僕が立ち上がった。
「どうしたの?」
「皆疲れてるでしょ?ご飯作ってくるよ」
 今からしようとしている事を話すと、二人は一瞬キョトンとして、それからかみ殺すように笑い始めた。
「何?どうしたの?」
「陸くん、気使いすぎ!」
「今はこっちが招いてんだから、兄ちゃんは何もしなくていいんだよ」
 と、まだ噛み殺したように笑う。
「招いて貰ったから料理くらいするべきなんじゃないの?」
 周りの声が爆笑に変わる。なんかイラっとするな。
「まあ、そういう配慮も必要だと思うんだけど」
 愛ちゃんは人差し指で涙をぬぐった。
「あんまり畏まらないでよ。所詮友達の家だよ?」
「……そうだったね」
 友達だ、という意識を完全に忘れていた。目上の人だとばかり思っていた。
「じゃ、ちょっと真面目な話するね」
 ふっ、と愛ちゃんから笑いが消え、シリアスな顔になる。
「とりあえず、助けてくれてありがとう。結構な危機でした」
「あれを『結構な危機』で済ませられるのは凄いと思うけどね」
 実の父親に襲われかけるなんて体験、トラウマになりそうだ。
「それで申し訳無いんだけど、あたしが仕事で居ない時とか、啓太と珠理を守っててくれないかな~……と」
「そりゃ、僕が居たら助けるけど、いつも居る訳じゃないよ?」
「そ、そりゃあ……う~ん」
「兄ちゃん。愛姉はこう言いたいんだよ」
 ひとつ咳払い。
「うちに住まないか?」
「そうそう、そういうこと!」
「…………え?」
 現実逃避スタート。
 折田陸、アイドルとその弟から『一緒に住もう』と言われるの巻。
 次回予告!アイドルと一つ屋根の下で暮らすことになった陸!果たして、彼の理性は耐えきれるのか!次回、『天使と悪魔』お楽しみに!
 現実逃避終わり。迫り来る現実。
「……ど、どういうこと?」
「肩書きは何でもいいんだ。家政夫、居候、自宅警備員、愛姉の婚約者」
「最後二つはおかしくない?」
「ともかくうちに住んで、奴から守ってくれればいい。俺たちのことも、愛姉のことも」
「住み込み三食付きのバイトみたいな感じかな?」
 彼女たちは簡単に言うが、意味分かってるのか?男女が同じ家に住むんだぞ?
「……もし、僕が愛ちゃんを襲ったら?」
「信じてるけど……でも、あんな奴に初めて奪われるより全然いい」
 どうやら、僕が獣になる覚悟もきちんとしているらしい。
 なら問題は二つ。
 一つは、親に許可を貰えるか。
 もう一つは。
「給料は?」
 そう、給料。これはアイドルであるヒカリちゃんの頼みではなく、友人である稲光愛ちゃんからのお願いなのだ。
 なら、正当な対価は要求する。タダ働きはごめんだ。
「んー……家政婦の仕事は日給2000円でどう?で、あの男を追い払ったら追加で5000円」
「乗った」
 いいバイトの給料だ。て言うか、給料アップとか意外と考えてるな。
 ……まあ、給料は安めだけど、仕方ない。
 なんだかんだで、アイドルとの生活を僕も楽しみにしてるのだ。
「よし!そうと決まればご飯ご飯!ごめんね、待たせたね!」
「いや、別にゆっくりでいいよ」
「お客様なんだから、おもてなしはするよ!じゃあ待っててね!」
 愛ちゃんは元気よく部屋を出ていった。
 ……あ、親に承諾貰わなきゃいけないこと言ってない。

 緊張する。
 今までこんなに緊張したのは、ヒカリちゃんとの初対面くらいかもしれない。まして、自宅の廊下でこんな思いをすることになるとは思わなかった。
 現在僕は、リビングの前の部屋に居る。理由は、母に家政婦の件について相談…というか、承諾を貰わなければならないからだ。
 どこまで言ったものか、と思う。そもそも僕はヒカリちゃんのファンであることは親に隠している。バイト先が男なのか女なのか、アイドルと言うか、否か。
 取捨選択は昔から苦手だ。より安全な道に行きたくなってしまう。
 ともかく、まずはストレートに用件を言うことが大事なんだ!
 深呼吸、吸ってーーー、吐いてーーー。
「さっきから何やってるの?」
「うわあっ!」
 リビングから急に母さんが出てきた。
「驚かせないでよ」
「こっちの台詞よ。で?なんだっけ、アイドルの友達の家に家政婦として行くんだっけ?」
 口に出てたらしい。
「あー、そのー……」 
「いいわよ、行ってきなさい」
「そこをなんとか……え?」
「行ってきなさいって言ってんのよ」
 母は、軽かった。
 てっきり反対されるものと思っていたのだが、イラっとするほどあっさり許可を貰えた。
「……なんか釈然としないなあ。なんか他の家に住まわせる不安感とかさ」
「何言ってんのよ!あんた昔から同年代で一番強いじゃない!それに、昔から悪さなんて一個もしてこなかったからね。そっちの心配もしてないわよ」
「でも全く反対されないっていうのも……」
「何よ、反対されたいの?それならしてあげないこともないけど……息子の恋路にあんまり口出したくないわね」
「え?恋路?」
「は?彼女なんじゃないの?」
 お互いに首をかしげる。
「……違うけど」
「はあ!?あんた付き合ってもない女の子と突き合ってるの!?」
「ご、誤解だよ!別にそんないかがわしいことなんか……」
 かくかくしかじか(便利な言葉だ)。
 母に全力でヒカリちゃんの家の説明をする。
「あー……。なんていうか、凄い家だねえ」
「人の家だから口出しするのもどうかと思うんだけどね……」
「いいわよ、正式に許可するわ」
 あの話はやはり少なからず同情を誘うものだったらしく、母も色好い返事をくれた。元々だという突っ込みは遠慮しておこう。
「その愛ちゃんをきっちり守って好感度上げるのよ!」
「そんなんじゃないってば!」
 もしかすると母親というのは息子をからかわなければ生きていけない生き物なのかもしれない。

僕とアイドルは釣り合うのか

まだまだ続きますぜ。
基本的に大体十万文字くらいまでは一章続けるので、一章は長くなります。

僕とアイドルは釣り合うのか

全てにおいて完璧な高校生・折田 陸(おりた りく)は今、かつて無いほど一人のアイドル・ヒカリに入れ込んでいた。そんな彼はある日偶然ヒカリと会い、話してしまう。彼の自分への執着を知ったヒカリはーーー

  • 小説
  • 短編
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-28

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