人狼ゲーム FUNNY
人狼ゲーム
-Funny Game of the Next generation-
登場人物23人は皆何処かで繋がっていた。
敵同士で内通者が多数出現し、より複雑なゲームに。
新しい役職に、スナイパー、ボディーガード、盲信、猫又、警察を配置しました。
23人という大人数で行われる殺人ゲームです。
裏切りと嘘、感情を剥き出すかゲームに乗るか。恋人、兄弟、親友、貴方ならどうしますか?
役職紹介
〇村人サイド
村人3人
特集能力無し。
占い師1人
翌朝指定した人の正体を占えます。
霊媒師1人
死亡した人の正体が分かります。
医者1人
人狼から狙われた人を蘇生出来ます。二回医者に守られた人は毒殺されます。
猫又1人
投票で吊られた場合一人を道連れ、夜に襲われた場合人狼を道連れにします。
狩人1人
自分以外を人狼から守れます。
共有者2人
お互いが村人だと分かります。
警察3人
警察は共有チャンネルがあり、夜に誰かを調べられます。
ボディーガード1人
自分以外は人狼からもスナイパーからも守れます。
〇人狼サイド
人狼3人
夜に一人を殺害します。
スナイパー1人
医者に守られている人でも殺害出来ます。
狂人1人
ゲームを混乱させ人狼側を有利に導きます。人狼は誰だか分かりません。
盲信1人
人狼が誰だか知っていますが人狼とは会話が出来ません。
愉快犯1人
夜に誰でも道連れに出来ます。
〇狐サイド
狐1人
村人か人狼が勝利、同数になった場合、狐サイドの勝ちです。狐は狼に襲われません。
背徳者1人
狐が誰だか知っています。
登場人物
シロ 白髪の16歳の天才少年。見たものを瞬時に記憶でき、尚且つ推理小説マニアでもある。
ルナ クールな金髪の美女。母親の病気のために風俗店で働いていた暗い過去をもつ。アンジェラに拾われ今は店のNo.1。一匹狼でクロに憧れていた。
レオ ルナの弟。王子様ルックスでイケメンを自覚している、ルナと異母兄弟。産まれた時からチヤホヤされる事に慣れている。純粋な歳上女性には一途。
セラ ピンクのショートヘア。軍隊にいて訓練を受けていた。その割には可愛い。不器用。
ターキッシュ セラの親戚。髭を生やしている。陸軍の指揮官。
レディ・マリリン オネエ。変わり者のルナの親友でよき理解者。自称マリリン・モンロー。
アンジェラ クラブのママ。 イタリア系の美女。元マフィアだが落ち着いた34歳。
アレハンドロ アンジェラの弟。日焼けしたワイルドないい男。モテるキザな奴。ナンパが趣味。
雅 黒髪で切れ長の目をしている。ルナのストーカー。残念なイケメン。妹には全く興味がない。
茜 雅の妹。14歳のツインテール。兄には無視されてる。同級生へのイジメが趣味。レオが好き。
黒江 雅宅のメイド。無口。ゴスロリが趣味。
メイサ メキシコ出身。浅黒い肌の元殺人犯。出所後にアンジェラに拾われてアンジェラを慕っている。賭博の天才で嘘を見破るのが得意。
バニィ ボブヘアーの巨乳。 アンジェラのクラブではハニートラップ担当。ルナをライバル視しているクラブのNo.2。大家族出身の天然ボケ。
クロ ドイツ系の孤児院出身。 金髪碧目だが目付きが凶悪。天才と言われるシロが嫌い。ルナの理解者。
ユイ 父親に回された過去を持つ。過去を忘れるため二重人格になった。堂々としたクロに恋している。シロとルナとは幼馴染み。
モカ 赤毛で緑色の目をしたアイドル歌手。頭は軽いが素直、ルナとユイとシロとクロを知っている。ロイの恋人。派手好き。
ロイ モカの恋人でクロの親友。オタクだったがひょんなことからモカと付き合えた。イメチェンしてイケメンに。クロを尊敬している。
ミズキ 中性的な男の子。素直でいい子。捨て子だったところをリリィに拾われる。
リリィ 研究者。ミズキのことを大切に思っている。ターキッシュと婚約中。優しい性格。
光 やる気がない高校生。可愛い子を吊るのが趣味。ユイにフラれたが、セラと恋仲に。
ピエロ君 ユイに助けられた過去を持つ。基本無口だが熱い男。ユイを好いている。
リンダ オタク時代のロイと恋仲だったがあっさり捨てられた。モカとユイとルナの3人をウザく思っている。
フローラ 癌で余命宣告を受けた美女。お嬢様だが控え目で純粋無垢な心を持つ。レオにもうアタックされて王子様かな?と思った所でこのゲームへ。
初日
馬鹿馬鹿しいったらありゃしない。村人のカードってなんの役に立つの。あの説明とか意味不明だったし、回りの人間は敵ばかり。誰に話し掛けて良いのか分からないんだもん。笑っちゃうよね。
栗色の髪をしたリンダは思う。
私は先週ロイに捨てられた。ロイはクロとつるんでる。クロはユイが惚れてる奴。あの馬鹿っぽくロイにひっついてる女がモカ。ルナは何考えてるか分からないし。結局男って顔で選ぶのよね。ずっと支えてきた私をあっさり捨てるんだもん。
「てか、本当に死ぬの?」
ねぇお馴染みの台詞じゃない?
そんなこと言ってどうなるのよ。
シロ 「取り合えず状況を整理しませんか?」
クロ「そうだな、8時に投票だろ。まだ時間がある」
昼下がり
ビジネスホテルと思われる待合室で、全員が目を覚ますと説明が始まった。
-人狼ゲームの始まりです。村人は23人です。その中に狼が3人、狐が1人居ます-
-建物から出たり、他人に自分のカードを見せたり、ルールを破った人はこうなります-
大きなスクリーンに制服を着た女の子が映し出される。
茜「彩佳?!」
「知ってる人?」
この質問を遮るように彩佳と呼ばれたその人物は、スクリーンの中で首から血を吹いた。
-キャァァァァァ
スクリーンの中と一同の声がシンクロした。
茜「…同じクラスの」
それ以上は言わなかった。同じクラスのイジメ仲間だ。
シロ「場所は学校に見えます」
レオ「あれ、スマホ…圏外」
メイサ「何、これ」
首に違和感が有るが、麻酔で眠らされていた後遺症で今まで気が付かなかった。首には金属製の首輪が付いており、皮膚に食い込んでいる。
ターキッシュ「これはセンサーだ。俺は軍人だ。監視されてる。見てみろ、監視カメラに隙がない」
セラ「そうとう慣れてるわね、私達を監禁した人」
オネエのマリリンがルナに抱きつく。
マリリン「ネェ、どういうことなのよコレ!アタシまだ死にたくないわ」
ルナ「貴方、そういうキャラだっけ?いつもフラペチーノ飲みながらあの子ブスね、とか言ってるじゃない。落ち着きなさいよ」
アンジェラ「はぁ、息苦しいわ」
髪をかきあげるアンジェラ
メイサ「はっ、これ確信犯。ねぇ見てよコレ」
一同が一斉に貼り紙に群がるが、23人という大人数なのでよく見ることが出来ない。
クロ、シロ、光、雅、黒江は興味が無さそうにしている。
〇村人サイド
村人3人
特集能力無し。
占い師1人
翌朝指定した人の正体を占えます。
霊媒師1人
死亡した人の正体が分かります。
医者1人
人狼から狙われた人を蘇生出来ます。二回医者に守られた人は毒殺されます。
猫又1人
投票で吊られた場合一人を道連れ、夜に襲われた場合人狼を道連れにします。
狩人1人
自分以外を人狼から守れます。
共有者2人
お互いが村人だと分かります。
警察3人
警察は共有チャンネルがあり、夜に誰かを調べられます。
ボディーガード
自分以外は人狼からもスナイパーからも守れます。
〇人狼サイド
人狼3人
夜に一人を殺害します。
スナイパー1人
医者に守られている人でも殺害出来ます。
狂人1人
ゲームを混乱させ人狼側を有利に導きます。人狼は誰だか分かりません。
盲信1人
人狼が誰だか知っていますが人狼とは会話が出来ません。
愉快犯1人
夜に誰でも道連れに出来ます。
〇狐サイド
狐1人
村人か人狼が勝利、同数になった場合、狐サイドの勝ちです。狐は狼に襲われません。
背徳者1人
狐が誰だか知っています。
サイアクだと 茜は思う。
茜「これ、学校で流行ってた人狼ゲーム」
ユイ「私やったことあるかも」
ユイは言ったことを少し後悔した。後から疑われる可能性がある。
シロ「汝は狼なりや、ですか」
クロ「アメリカ発のパーティーゲームだろ」
メイサ「どっちにしろ、ゲーム好きなんだよね」
アンジェラ「はは、うちはメイサが居るから店儲かってるよ」
アンジェラの店の地下室ではメイサがディーラーで賭博が行われている。
メイサ「ワタシさ、嘘見破るのが得意なんだよね。」
ずっと黙っていたフローラが恐る恐る口を開く。
「こ、これ、カード…」
ポケット、ある者は胸元からカードを取り出して、場の空気が静まり返った。
昼
フローラの顔は明らかに困惑している。それをレオは見逃さなかった。何故なら真っ先に気になる女性、それが彼女だから。
メイサ「ははっ!なんだコレ!」
レオ「取り合えず自己紹介しようよ、な!」
何かを察したレオは場の空気を変えた。
バニィ「…イ、イケメーン」
バニィの顔も青ざめている。咄嗟にいつも通りの自分らしく発言をした。
クロ「まぁ、賛成だ。知らねぇ奴も居るし」
シロ「それもそうですね、投票までに推理しやすくなりますしね」
ターキッシュ「皆をよく知らないとな」
黒江「…」
ゴスロリの服を着た黒江には分かっていた。彼女のカードには『盲信』の文字が。そしてカードの端に狼が顔写真付で乗っている。なよなよしたシロ、ご主人様がほれてるルナ、そしてピンクのショートヘアのセラ。
シロ「私は探偵のシロです。クロ、ルナ、ユイ、ロイとは高校が一緒でした。」
クロ「あーうぜぇ。クロってアダ名」
ロイ「俺、クロのダチ」
ルナ「私はマリリンと友達、アンジェラの店で働いてる」
ユイ「私は…なんだろう…大学生」
光 「俺も大学生、ユイは後輩」
マリリン「アタシ、ルナの友達でー、レディ・マリリンって呼んでね」
アレハンドロ「えっ、コイツオカマかよ!騙されたぜ…俺はバーテン、そっちのは姉」
アンジェラ「よろしくねー」
メイサ「あー特にない。嘘は分かるから」
バニィ「セクシー担当のバニーガールでーす。おっぱいみてね」
アンジェラ「おい、ここ店じゃないから」
バニィ「あっごめんなさいママ!」
ターキッシュ「俺は軍人でセラの叔父だ」
セラ「うん。そうね」
茜「私は雅の妹でーす」
雅「俺はコイツ知らない。そこの黒江は俺の家に務めてるメイドだ」
黒江「…はい」
フローラ「私は大学院で、植物遺伝の研究をしてます。」
コフッ、とフローラが弱々しく咳をした。
レオ「フローラ、無理しないで。あ、ルナは姉貴。俺はバスケサークルに入ってる大学2年生」
リンダ「美大卒業して画家やってます」
モカ「私は知ってるよね!テレビでよく見るお姉さんです!よろしくね!」
リンダ「…」
ピエロ君「(障害があって、筆談。よろしく)」
ユイ「…ピエロ君って呼んでるの」
リリィ「ミズキ君の母です。よろしくお願いします…ってなんか嫌ですね、こんな所で自己紹介なんて」
ミズキ「うん、僕もなんか嫌だな。」
では投票までにまだ時間がありますので、とシロが切り出して一同は散り散りになった。
憎しみのリンダ
ねぇ、バカらしいでしょ。
昼間も一人ぼっちだった。
小さい頃は皆で遊んだ。仲間外れなんて無かった。いつも玩具で遊んでるシロには、外でサッカーやろうよって誘ったし。 クロはいじめっ子で、ロイは私が守ってたのよ。 なんかユイは何でも出来るくせに気取らない所がムカつくし、ルナはキレイってだけで黙っててもチヤホヤされる。それを鼻にかけない所がまた嫌な感じ。
誰にも勝てない。
大人になったら画家として成功して、暖かい家庭を築けると思ってた。一人で頑張って、ロイにたまに抱かれて、頑張って、頑張って。でもあっさりあの馬鹿っぽいアイドルちゃんにとられて。
遊ばれてるよ?
そう思ったし、そう思ってる。
ユイは何人と寝た?清楚そうな顔して、腹黒いのは知ってるのよ。あの女は私を影から出し抜いた。クロが犯罪に関与してることで、幼馴染みの私が警察から事情聴取された時に、正直に答えたの。 ユイはクロが追われた時に、私がチクったって真っ先にクロとロイにバラした。ユイは警察に潜ってたのね。それから白い目で見られた。
ルナも所詮グル。あの女は何を考えてるか分からないし、昔から近付きたくなかった。売春婦なのを隠さない所、なんか負けた気がするの。
私の村人カードは、本物の村人。
役職無しの、村八分。
笑っちゃうよね。
全員がホテルのロビーに集まる。投票一時間前。
リンダ「あの、私!」
雑談を切り裂くように発言する。
リンダ「私盲信引いたの。こんな馬鹿なゲームさっさと終わらせよう」
シロ、ルナ、セラ、黒江「…?!」
ルナ「ちょっと待ちなよ、何言ってるの?」
クロ「盲信って狼3人知ってるやつだろ。んで、誰なんだよ」
リンダ「モカ、ユイ、ルナこいつらが狼」
きた、村八分。さよなら。
ルナ「は?アンタ本当の盲信なら死にたいの?」
メイサ「なんだよコイツ」
リンダ「ええ、だってアンタ狼でしょ。ルナ?あとユイとモカ」
ロイ「おい、まてよリンダお前適当に言ってるだろ」
リンダ「モカを庇ってるの?最低」
モカ「…私、占い師なんだけど」
一同?!?
ユイ「私、村人だよ…」
リンダ「良いからもう!ユイ、あんた昔から黒いのよ。」
ユイは憎しみの声をを噛み殺す。
ユイ「なんで、なんで…」
リンダ「泣き真似はよしたら?」
モカ「アンタ確かロイが捨てた女だったよね?」
ルナ「つうか、何なの?」
ロイ「モカ言っちゃ悪いけど、モカはちょいおバカだから嘘ついてるように見えない」
シロ「何で今、占い師をカミングアウトしたんですか?」
モカ「だって、リンダ何言ってるか分からない!私よく分からないし!」
雅「んで、他に占い師って奴は?」
メイサ「あのさー、おバカ娘、このタイミングで占い師って言っても嘘って分かる。でもこの子、本当みたいだね。バカで助かったね」
アンジェラ「メイサはプロだからねー」
ターキッシュ「じゃあ一応、ルナとユイを見てくれないか」
無表情でメイサがルナとユイの前に立つ。賭博ディーラーの詰問が始まる。
ユイとピエロ君
ピエロ君 ユイが付けたアダ名だ。
俺が喋れないからって笑ってた。
ー病院ー
いつもうるせぇな。お母さんお母さんって。
「お母さん、大丈夫だよ、絶対治るよ」
此処は死間際の人が入れる特別病棟。俺は道路に飛び出したガキを庇って、車におもいっきり弾かれて全身麻痺。
「お母さん、お母さん、今日学校でね告白されちゃった!」
そんな声がカーテン越しから聞こえた。
「お母さん、明日は母の日だね!カーネーションより、カツ丼の方が嬉しいでしょ?」
なんだこの女は。
「お母さん、世界一大好きだよ」
ある日を境に、もうその声を聞かなくなった。
だがその日以来、俺は後遺症が残ったが奇跡的に手足が動くようになっていた。リハビリ開始ってやつだ。
「死亡診断書を受け取りに来ました。」
廊下を車椅子で通っていると冷たい声が聞こえた。
カーテン越しに聞いてたあの女の声、
俺はわざと近付いた。げっそりした顔、青白い肌、泣き腫らした目、荒れた肌。それに茶色がかったストレートヘアにくりくりした目。
ユイはちらりと俺を見た。 そして無表情で見下ろすように無視。
俺はなんかムカついて脚を小突いた。
「タナカ」
ユイがそう発した。
同じ部屋にいた、タナカ。俺の苗字だ。胸に名札が貼ってある。
ユイ「お母さん、亡くなった」
何となく察してたと伝えたかったが、俺は喋れない。
ユイ「口、ぱくぱくしてる。同じ部屋に居たよね」
俺はコイツと喋りたい。俺は今、車椅子で間抜けな姿なんだろうな。
ユイ「これ使う?」
ユイがシンプルな手帳とシャープペンを俺に渡した。
俺「(ひつだん)」
まだ手先が麻痺していて上手く文字を書くことが出来なかった。
ユイ「お母さんと同じ部屋に居たよね。深夜にカーテン開けたんだ。随分若い人だなって思った。」
ユイは無表情か、哀れみともとれる表情をしている。なんかムカついた。だけど話してみたかった。ずっとコイツの声を聞いていたし、変な奴だなって思ったから。
俺「(まひしてる、じこ)」
ユイは息を飲んだ。
ユイ「そのペンあげる。私のお気に入り!可愛いでしょ。手帳は必要だから、また使いやすいノート買ってくる。」
俺の前で初めて笑ったユイはビリビリと手帳の空欄を引き裂いて俺に渡した。
その後もユイは流れの約束通りに病院に来た。初めて顔を見た日から、血色が良くなっている。
ユイ「実はお母さんの代わりに死んでもいいかなって思った。医者なんて大嫌い。嘘ばかりつく。お母さん治らなかったじゃん、もういいけど」
俺「(おれも、いしゃ、きらい)」
ユイ「チャラいしね!」
俺「(そこか)」
ユイ「どうして、あの、タナカさんは…」
俺の体を見た。この理由だろう。飛び出したガキを助けたなんて恥ずかしくて言いたくなかった。
俺「(バイク、じこった)」
俺「(笑)」
ユイ「あっそう。ふぅん。そう…」
ユイは明らかに不機嫌な顔をして、唇を噛んだ。何かを言いたそうだった。
ユイ「もう行くね」
帰り道、ユイは泣いた。
ユイから貰ったペンが、冷たく感じた。
嘘付いた。 あーあ。何か勘に障ること言ったかな。それともバイク事故って言った俺が、軽かったわけ?それで生きてるのかみたいな。
ふざけんなよ。自分とユイ。どっちもムカつく。
時が来て俺は順調に回復していき、車椅子を卒業した。ユイから貰ったシャープペンは捨てようと思ったが捨てられなくて、取り合えず病室の引出しに突っ込んだ。あの子、もう来ないよな。と思ったら
ユイ「よう、ピエロ君」
来た。ピエロ君ってなんだ。
ユイ「立てるようになったんだ」
ユイは驚いて俺を見上げる。デカっ、ユイがそう漏らした。確かに俺は身長がやけに高い。
俺「(ピエロ君ってなんだ)」
ユイ「ムカつくから!私のシャープペン捨てたでしょ。本当にバイク事故?」
俺「(確かめに来たの?)」
ユイ「違う!お見舞いに来たの!」
俺「(何で?)」
ユイ「やっぱり生きてて良かったなって思ったから。バイク事故って聞いた時、正直お母さんの代わりに死んだらって思った。だけど、生きてて良かったよね。ごめんね、本当にごめんね」
立ち直ったんだなって思った。
俺「(俺も医者が嫌いだ)」
いかつい外見の俺を医者はぞんざいに扱うからな。ガキを助けたなんて信じてくれなかったし。機械的にこの部屋に回したんだろう。
ユイ「私もー!最悪、早くここ出よう。ピエロ君!」
それから俺はピエロ君になり、ユイはバカみたいに笑って、俺も笑っていた。リハビリが楽しくて、ユイに変な似顔絵を描かれてからかわれたり、俺、超気持ち悪い顔をしていたと思う。
ユイ「喋れないけど、笑わせてくれるからピエロ君だね。」
俺「?!」
ユイ「ここに来て良かった。」
ユイは最初、弱者を助けているような自分に酔っていたが、ピエロ君が自分を笑わせてくれたことが嬉しくなっていた。
小さい男の子を連れた家族が、ピエロ君の所に花束とお手紙を持ってきていた所と、頭を下げていた男の子の母親らしき人物を目撃した、という所は見なかったことにしておこう。とユイは病院を出てから再度微笑んだ。
ユイ「私、村人だよ…」
最悪。そう答えた私のカードは『医者』でした。
初日投票
無表情のメイサはすっと立ち上がって、ルナの二歩手前で立ち止まった。
メイサ「ようルナ。アンタ村人?」
ルナ「フッ。ここで言って何になる。メイサ」
プラチナブロンドの長い髪を後ろに束ねたルナは、上品なつり目と整った唇を歪めて、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。威勢のあるメイサの方が背が低い。二人を例えるなら姿勢よく佇む彫刻と、牙を剥いた捨て猫のようだ。
メイサ「ん、確かに。ハァ。この女は訓練されてんだ。まぁこの返しはグレー」
ルナ「ふぅん。役無しって少ないから言えない事もあるのよ」
プッと笑いを吹き出しそうになったルナ。腹の中では笑っている。この野獣を欺くのがこんなに愉しいなんて。
メイサはユイの元へ近付く。ユイは恐怖を隠そうとし、反射的に背筋を伸ばした。
メイサ「ユイ、アンタ村人か?」
ユイ「うん」
メイサ「役は?」
ユイ「無いです…」
メイサ「…フーン。そっか、分かった」
ユイの手から汗が滲む。メイサはユイの瞳孔の動きと困惑の瞬きを見逃さなかった。
メイサ「それで、どう思う?」
ユイ「えっ、何がですか?」
怖い、怖すぎる。とぼけることしか出来なかった。見抜かれたんだ。本当の事を言っても、医者は真っ先に人狼達に噛まれるだけ。出来ることなら隠しておきたい。
メイサはユイの質問に応えること無く数秒じっと見つめる。
メイサ「…コイツは村人側だ」
ユイも感じた。こんなにも鋭い目線で問う威圧感、メイサも村人側なんだ。絶対にそうだと確信した。
彼女も案外嘘が下手なのかもしれない。敵かそうじゃないか、それだけを見定める目をしていたのだから。
クロ「へぇ、お前すごいな」
アレハンドロ「あのさ、場の空気を乱すようでなんなんだが、共有者を引いたって騒いでた女の子がいたぞ」
レオは肩を落とした。最悪だ。俺はあの性悪と『共有者』である。よりによって昼間誰かの前で宣言していたとは。
茜「私のこと?そーよ!だから白ってことなの。今後私に投票先を決める権限は大いにあるわ!」
チッと大人の女性達が舌打ちをした。
アンジェラ「それで、アナタのお友達は誰なのかしら?」
レオの苛々は止まらない。クソッ…言うな、マジ最悪だ。やめろ。共有者ってどっちか確実に消されるだろう。人狼にとって村人を把握してる共有者は確実に消したい。さらに消しても当たり前の的なので序盤は"取り合えずコイツ"のノリで消される。一方を消したら役職を乗っ取る事も出来るだろうし、頭の良いヤツなら言葉巧みにグレーゾーンに誘導してくるだろう。
このクソ女!
茜「ふふっ!私と共有者の人は出てよ。分かるからさ」
レオ「最悪だな」
あぁ、絶望と共に声が。
だめだ、付け足さないと。頭がよく回らない。
レオ「コイツ嘘言ってるわ」
茜「は?!アンタでしょーよ」
アレハンドロ「あ、俺が言うのもなんだけど、この娘、喜んでたよ」
レオ「あーーーー…」
気だるい、死人のような声が喉の先から出た。うざい、とも言う気力を失った。フローラ助けて。
先程メイサに詰問されたレオの姉であるルナでさえ、無言で哀れみの目を向ける。
ルナの美しさに静かに執着する黒髪の雅。彼はまだ分別が付くし、端から見れば一途な変わり者とも取れるが、その妹の茜は頭が悪いと言うよりずる賢く中学校のイジメの主犯のような女だ。
茜「だから、私が確実ってこと」
フローラ「でもここ役無しの村人の方が少ないんですよね。間違って村人に投票してしまったら大変だと思います」
あぁ俺の天使、プリンセスの様なフローラ。
雅「俺も反対だ。皆、コイツは無視でいい」
バッサリと妹を切り捨てる雅。子供の時から雅は遠くの良い学校に通っていたし、自分が認めた人間以外は見下していた。妹のことなど無論そうである。一方茜は兄に甘えたくてしょうがなかったが、雅は趣味に没頭すると周りが見えなくなるタイプで家族との会話も無い。彼は自分の世界だけを求めて生きてきた。
アンジェラ「私もその案は反対かしらね」
マリリン「イヤーね、アナタ出直しなさいョ。こんなオツムが取れてない女じゃ相手が可哀想じゃない」
ルナの友達、オネエのマリリンも過去に「アナタの弟相当イケメンよね?!そっちの気はあるのかしら?」と問い詰めてルナをたじたじにした事があるが、その弟が可哀想に思えた。
ロイ「もう最悪な状況じゃねーか、クロ」
クロ「ああ。村人側は不利になっちまったな」
『スナイパー』のカードを引いたクロは今夜誰の頭をぶち抜いてやろうか吟味していたが、そんな価値もねぇなと思った。俺が狙うのは狼が噛みに行けないヤツだ。
アレハンドロ「今夜狼のディナーになるのはモカ、茜、ユイ、レオあたりだろーよ」
名前が上がった面々は息を飲む。
シロ「ではボディーガードと狩人、そして医者は彼等を優先して守ってください」
ルナ「ねぇ時間無いんだけど」
時計の針はもう投票確定まで15分前だ。
雅「じゃあ今夜の投票はリンダ?」
ルナ「私も珍しくアンタに賛成よ」
セラ「狂人ってやつなのかな?」
ピエロ君「(時間が無い)」
アンジェラ「はい、せーの」
一同の投票はリンダへ一致した。残念そうにリンダへ向ける者、フローラはレオに支えられていた。
リンダはモカ、ルナ、ユイの中で一人だけでも潰そうと、偽善者ぶって居るように見えたユイを指そうとしたが、やはりモカへ。最後の憎しみはコイツだ。
いざ投票してみて困惑している面々も居る。票が決まり、空気の重さが軽さになった事への混乱。正か偽かよりも時間を気にして、殺意の無い票を入れた者も居る。
リンダ「…よ」
モカ「は?」
リンダ「大嫌いなのよ!!」
メイサの快楽
メイサ「時間が無い、ワタシが殺る。一応アンタ村人ね?ふーん最悪。」
アンジェラ「痛くないわよ、彼女"元"プロだから」
逃げまどうその人にメイサのナイフが素早く確実に投げられた。ナイフは真っ直ぐ脇腹に命中、刃は根本まで突き刺さり、1滴の血液も流れてはいない。
濁点が付いた断末魔は、人間と獣の声を混ぜた様なもので、隙がない位に一瞬だった。
あぁ、また聴きたい。その声を。
脳内で再生してリピート。
ルナ「メイサ、つまらなそうな顔」
メイサ「あぁ。確かにつまらないね。此処はムショじゃないのに。」
アンジェラ「悪趣味よ」
メイサ「フフ。ちゃんと死んでるか確めてくる」
メイサはスイッチ入っちゃったなとアンジェラは思った。
メイサ「まだ息があるよ、ワタシポーカーばかりしてて、腕が鈍ったみたい」
クラッときた。嘘。あの位置なら放っておいても数分で死ぬし、てかもう充分死んでる。訳あって医学を勉強しているルナには分かった。
アンジェラ「皆、メイサが死体を部屋まで運んでくれるって。もう行きましょう。」
バニィ「そ、そうね。私の担当じゃないわ」
ルナも無言で立ち去る。
メイサが脇腹のナイフを引き抜いた途端に、ジュッと血液が漏れて服に大きく真っ赤な地図をつくる。まるで戦勝国の征服図が広がっていくみたいに。
これだよ、これ。
そのナイフを脳天に思いっきり突き刺す。ボギィという大きな音とジャリという砕けた骨と欠けた金属の音がした。
また、血が噴き出さなかった。
メイサの本能が再び目覚めた。野獣の様な目、貧乏な家庭に産まれてスラム街で育った。
未成年で人を殺し、強盗、スリは完全犯罪。ドラッグを密売した事もあるが、ドラッグと売春に参加しようとする事は無かった。弱い者は死んでいくだけ。
メイサは浅黒い肌に黒のカーリーヘア。露出の多い服に紋章の様なタトゥー。鋭い目は何度も嘘を見抜いて、どんな時もポーカーフェイス。エキゾチックで血に飢えた黒豹みたいな女だ。
今ではママと慕うアンジェラにも、昔は噛み付いたが、アンジェラの方が一歩も二歩も先だった。その事にもメイサは満足している。主が出来る人なのだから。
ワタシ、レズなのかしらね。男を殺すことに興味が無いんだもの。肉が美しくないって意味で。
ワタシのカードは『霊媒師』か。超皮肉。
-投票 1時間前 -
遡ること1時間。賭博ディーラー メイサによる詰問が開始されていた。
ロイとモカ
「大嫌いなのよ!」
そう叫んだリンダはこの場で一番正直者だったのかもしれない。
子供の時はソバカスが可愛いって
10代の頃はえくぼが可愛いって
20代になってからは、夢を応援してるよって
24歳の誕生日には、いつか結婚したいなって
言ってくれた。
嘘だったの?
ねぇロイ、嘘だったの?
思い出を巡ると、巡るだけ悔しい。
リンダ「ロイ嘘だったの?」
ロイ「…」
嘘じゃなかったんだけど、変わったんだ。だから彼女にかける慰めの言葉は、あまりにも軽率になってしまう。とロイは思った。
この男は肝心な所を問い詰められる程無口になるのだ。それをリンダはよく知っていたのに。
リンダ「ねぇロイ、私を愛していた?」
モカの目にはリンダはもう哀れにしか映らなかった。ロイからアタックされ続けて「平凡な所が好き」と答えた彼女は、リンダと逆位置にありながらも、双方どちらとも不動な幸せを求めていたのだ。それが信じて待ったリンダと、手に余る異性の中から偶々恋に落ちたモカ。
8時を切ってしまう。
メイサ「私が殺る」
腹を煮やしたメイサが行動に出た。
「一瞬だから大丈夫だよ」
誰かが言った。刃物を見た流石のリンダも逃げ惑う。メイサの目が獲物を狙う銃弾のように光った。
殺されるリンダ見ようともしない者は責任逃れか、現実逃避。見ている者は興味本意か、罪の意識か。
リンダ「ロイ!答えてよ」
俺は、とロイが言い掛けた時にリンダは呻き声を一瞬あげて、倒れた。死んだのだ。リンダは一生でロイしか男を知らなかった。
ロイは彼女から目を反らした。
モカは彼女から目を反らさなかった。
5年前
あー最悪。子供をおろした事が記事になってるし。正確には推測の様なゴシップ。どこでバレたんだか、 多分VIPルームのモデル達か、1週間程休みを取っていたからこんな記事が出たんだろう。
ツイてないなと、当時17歳のモカは思った。
DJ、俳優、モデルと付き合ったけど、最終的にはワルそうな男が大好き。刺激的で、目がバチバチする!お酒を飲んで朝まではしゃいで、仕事に行って、考える暇なんて無かった。
子供の件は父親が誰だか分からないし、最近付き合った歌手には捨てられたし、産む選択肢は無かった。遊び足りなかっただけの、軽率な失敗だった。
それから2年間私は仕事を休業して、世間から姿を消した。 心がゆっくりと痛んできた。
「もう大人なんだよ」
心の中でそう叫んでいた。世間のイメージに合わせて小さい頃から決められたヘアースタイルにファッション。売れない女優だった母親はレストランを経営する裕福な父親と結婚し、妹や兄は普通に育った。長女の私はというと、母親の夢を託されたように、物心つかない頃からレッスン、それでも幾度となくコンテストで優勝し、子役としても売れていた。
自慢の娘だと言われた。
しかしたまに学校に行くと、見世物のようになっていた。義務教育が終わりフリースクールに通うと、スクールカーストの女王蜂ハニービー、それの取り巻きワナビー達に目を付けられた。
「だっせえんだよ」
「本当はヤりまくってるんじゃねえの」
仕方ないじゃん。髪形も決められていてイメージ崩せないし、ヤりまくる暇どころか仕事ばかりで友達も居ない。16歳までセックスもしたことが無い!貴女達の彼氏は、トイレで貴女達の尻の穴に突っ込んでやったって言っていたのに!
そんな私に群がる男子たち。
私はもう学校に行かなくなった。
誰よりも人に囲まれているのに孤独で、それを知っているかのような同じ様な仲間とだけつるむようになっていたんだ。
ロイ、こんな私のこと全部知っててくれてありがとう。
バニィちゃんと狐女
私は気が弱い。今まで流されて生きてきた。まさかこんなカードを引く事になるなんて。まぁまだ理解してないけど。
バニィ「ねぇ、クスリとかもってる?」
アレハンドロ「どうしちまったんだよ、バニィちゃん」
私は無残な光景を目撃した後、素早くその人の部屋に入る。ユルい女だし、どうせ怪しまれない。友達だもん。私はゲームに乗るつもりも無いし。
バニィ「エクスタシーとか、赤玉もってなぁい?貴方ならありそうかなぁって」
アレハンドロ「それでどうするんだ?」
バニィ「はーぁ。私こんなゲームに乗るつもりも無いし…」
アレハンドロ「どういうこった。まぁ葉っぱならポケットにそのまま入ってたけど」
バニィ「あんまり考えると気がおかしくなるよぉ」
アレハンドロ「まぁそうだよな」
俺はあえてこの子のキャラがいつもと違う事を聞かない。ビッチちゃんはアホだけどわりといい子で、ヤクに手を出す様な子じゃなかった。
バニィ「あーん。まだよくわからないのぉ。ふぅー。ねぇ、ねぇ」
甘い声、この子お得意の誘い方。これは何時ものこの子。だがきっと悲しいんだろう。俺はその程よく肉ついた、はりがあって色っぽい、生きるフェロモンみたいな女の脚に手をかけながら、
「葉っぱ全部やるから部屋に持ち帰っていいぞ。どうせ寝れないだろ」
この子は悪い子じゃない。
女を見る目は自信がある。悲しい目に戸惑いを隠せていない。無理して笑顔を作るビッチほど、可哀想に思えるんだよな。俺もその部類だから。
彼女は黙っていたが、沈んだ声で口を開いた。
「私…」
「言わなくて良いよ、バニィちゃん。俺の前では普段のバニィちゃんでいてよ」
ルナちゃんはメイサとやりあってたし、姉さんはこいつらのボスだし、俺の所に来るのは仕方がない。
バニィ「ありがとうアレハンドロ」
アレハンドロ「自暴自棄になってるみたいだけど気を付けろよ」
バニィ「あはは、そうだよね、いつもの私に戻らないと」
アレハンドロ「ほら、誘ってみて」
バニィ「ふふっ」
この部屋で女と一晩居れない事が残念だ。俺も今のところバニィと同じ様な考えで、そこ乗り気でも無いし、進んで死ぬような真似はしたくない。生き残るためなら適当に欺いてやるよ。
俺は『狂人』のカードを引いた。特に何も出来ないが、村人を惑わせろということだろう。さらに狂人は警察や占い師に占われても『村人』と判断される。適当にあしらっておけばいい、俺らしい役職だ。
投票の時、狐の話題が特になかった。まずは警察から消していく考えか。まぁ正解だろう。間違って俺が噛まれなければいいが。
――――――
人狼サイド
――――――
ルナ「キーツネ、誰だ」
シロ「厄介ですね。狐は…」
セラ「役職を読む限りだと、狐が曖昧にされてるわ。あれだと一人勝ちね。投票で吊る方法しかないじゃない」
シロ「あの役職表には穴が有ります」
ルナ「どういうことなの?」
セラ「?!」
シロ「あの役職表はすごく雑に書かれていました。私は3回このゲームに参加していますから分かります」
セラ「それってどういうことなの」
シロ「質問攻めですね。全て一度に説明したら此方側の不利に成りかねないですし、混乱を招く可能性があります。」
ルナ「…」
セラ「確かに、余計な情報を知ると表情を変えかねない」
シロ「その通りです。まず整理します。私は今回が3回目、人狼として参加させられました」
ルナ「…それで、今まではどうしたの?」
シロ「一度目は村人として、二度目は『狐』として」
セラ「それでどういう関係があるの?」
シロ「一度目のゲームは凄く簡単でした。」
ルナ「余計なことは聞かないわ。それで?」
シロ「狐は村人と人狼側が同数になった場合や、どちらかが勝利して狐が生ていた場合、狐の一人勝ちです。つまり全員死亡します。狐は夜狼に襲われることもありません。」
セラ「どうやって勝ったの?」
シロ「当時は『警察官』等の役職は有りませんでした。狼は真っ先に占い師を真っ先に噛みに行き、彼らは終盤で狐を投票で吊ろうとしましたが、最後は既に死亡していた霊媒師の役を乗っとり、私は村人側に囲われて同数になったところで一人勝ちしました」
ルナは黙って聞いている。この男は昔から近寄りたくない位、嫌なやつだ。しかし頭がずば抜けて良い。
セラ「まって、分からない」
ルナ「つまり狐にとって占い師は邪魔ってこと」
シロ「正解です。狐は占い師に占われたら死亡します。更に後を追って『背徳者』も死にます。説明が雑、そして私が今回人狼になり貴女方に説明しています。つまりこのゲームの役職にはなんらかの関係が有るはずです」
セラ「経験者が紛れ込んでるとかかな?」
シロ「確実に私はそう見ています」
セラ「ならどうして監禁されていた犯人探しをしないの?」
ルナ「セラ、ここで疑心暗鬼になっても仕方無いでしょう。」
私はこのナヨナヨしたシロが嫌いだが、シロの言っていることは正しい。これ以上追求すると仲間の関係性が乱れる。
シロ「そのうち浮いてくるでしょう。一番邪魔なのは警察官。その次に続くのがボディーガード、狩人。霊媒師は放置しておいても誰かが名乗り出るでしょうね。今回占い師はとても感情的なので、まず先に怪しい人を占うようには見えません。率先して警察官を消していきましょう。そして厄介なのが医師。潜伏している筈です。スナイパーが有能なら、そこら辺を任せても良いかと思います。」
セラ「分かったような…分からないような…でも殺したくない、正直友達がいるしさ」
ルナ「私も弟が居るわ」
ニア「犯人はそれが狙いなんでしょう。私は体力に自信が無いので、殺害は貴女たちに任せます私は推理をしていきますので」
ルナ「チッ」
セラ「仕方無いのね、分かったわ。私も一瞬、メイサの様にナイフを使わなくても殺せるわ。武器は要らないってこと」
ルナ「それは手間が省けそうね」
シロ「隠蔽も必要です、医学に詳しいルナと私で殺害方法を見破られないように処理しておきます。」
セラ「ふふ、なんだか楽しみになってきた。」
――――――
私…怖いの
天使のフローラ。
雅「おい、お前しっかりしよろ。お前が死んだら俺も死ぬんだからな」
レオ「おい雅なにしてる!フローラ、大丈夫か?」
フローラ「私…私…」
雅「おい黙れ女」
レオ「雅、俺はフローラを大切に思っている。例え敵同士でも。それは雅も俺の姉貴にそう思ってるだろ」
雅「お前とは違う。お前は…」
畜生、この場でお前は王子様面したヤリチン野郎だろって言ったら、またこの女が泣いてしまうのかな。めんどくせえ。
レオ「フローラ、大丈夫か。心配するな俺がついてるから」
フローラ「今まで有り難う、私何も知らなかったけど、レオくんに出逢えて良かった。どうせ癌でもうすぐの命だし、別に人を欺こうなんて思わないの。」
レオ「癌じゃなくても、フローラはそんなことしないだろ」
優しく抱き締めるレオ。それを冷めた目で見る雅。上手くレオを取り込めたら、此方側の橋渡しになるかもしれない。
雅「俺はフローラとペアだ」
フローラ「…」
レオ「ペアって…?」
雅「この女は『狐』だ。」
レオは黙る。
雅「俺もどうせペアならルナとがよかった。この意味分かるよな」
レオ「最後までフローラを守るよ。雅に言われなくても、そのつもりだよ」
フローラ「本当にごめんなさい。私どうしたらいいのか分からなくて。迷惑かけたくないわ」
レオ「フローラのせいじゃないよ。」
雅「取り合えずこの女を浮かせないようにしてくれ」
狐のフローラが死んだら背徳の雅も死ぬ。この男の思惑に乗るつもりは無いが、やっと手に入れた純粋で美しい彼女を守りたい。どうしても。
どこからどう見ても二人は完璧な王子様とお姫様。
雅「あまり3人で話してると目立つから、今後話をするならどちらかの部屋で話せ。お前らは付き合ってるからそう怪しまれる事も無いだろう」
フローラは不安な気持ちを忘れようと努力した。 私の王子様。華奢な身体でふんわりとレオに抱き付いた。
レオ「心配しないで今日はゆっくり寝てね、
俺の心配はするな」
でも…と言いたいが、フローラはレオの胸のなかでこくりと頷く。
雅「後はふたりでやってくれ。じゃーな」
夜は更けていく。
夜
バニィ「貴女、目が死んでいるって言われたけど、私もそうよ」
ユイ「…このゲームに参加させられましたものね」
マリリン「ちょっとー?なにコソコソしてるの?アナタ達の会話気になるんですけどー!」
別にコソコソしてない。部屋に戻る前に急に巨乳のお姉さんに話し掛けられたの。このオネエ…。とユイは思う。
ルナ「背徳、愉快犯、猫又は道連れ。その意味かしら?」
マリリン「じゃあアナタ達そーゆーコトってこともあるのかしら?」
ルナ「マリリン、アナタ達の癖。年下の女の子いびり。やめなさい。皆好きで参加した訳じゃないから」
マリリン「アッラー!ヤダ!ごめんなさいねぇ。お嬢ちゃんたち。それよりルナ、まだ私がこの巨乳ちゃんより歳上か分からないじゃないの!」
ユイとバニィはルナにこんな友達が居ることを意外に思いながら、とぼとぼと部屋に戻った。
ルナ「…まっ、お休み。肌に悪いよ」
マリリン「ヤダ!私も早く寝るわ。ルナ、パックが必要だったら何時でも…」
ルナ「バカね」
ルナは苦笑する。 この子と敵同士じゃなかったらいいな。 希望は捨てるもの。 そうやって生きてきた。 でもマリリン、貴方と居ると楽しいよ。
夜12時
――――――
医師 ユイ
――――――
医師に与えられた時間はたったの3分。本当に現実的なヤブ医者ね。つまり昼の間や投票の間に誰を守るか決めておかなければ間に合わない。これからは手帳に記録しておかなければ。部屋から出て、その人のドアにあるスイッチを押す。1度押せば狼から守れて、2度目は毒殺。
モカはボディーガードか狩人に守られると思うし、いきなり私の好きな人だと馬鹿よね。フローラ…あの子はとても甲斐甲斐しい花のような女性。だがもし第3勢力である可能性も充分有り得る。狼が咬めなかったら、モカが占わなかったら。どちらにしても医者が守るのは自然に見える。私はフローラの部屋へ走った。
――――――
スナイパー クロ
――――――
フーン。医者の次か。分かりやすい。それで医師は…フローラの部屋のボタンが光っている。こういう仕組みか。まぁ今夜は共有者の茜でいくか、普通すぎるな…だがまだ誰が何の役職かはっきりしない。間違えて人狼サイドの人間を射ってしまったらいけない、だが警察官が明らかに邪魔だ。モカを庇っていたロイか、それともあの邪悪な眼をしたメイサか。あえて生かしておくのもいいな。その方が面白い。
クロは茜の部屋を空ける。
茜はぐっすり寝ている。馬鹿め。馬鹿は狩られて当然。
クロは枕を引き抜き茜の顔面に押し付けその上から鉛玉で脳天をぶち破る。ドスッという音が響き渡り、部屋には破れた羽毛が勢いよく散った。
雪みてぇだな。
クロはユイとの約束を破ったクリスマスの夜を思い出した。
――――――
人狼サイド
――――――
ホテルのロビーに集まる3人。
ルナは気だるそうに呟く。
ルナ「今夜、私が調べられるでしょうね」
シロ「その可能性は多いに有ります。村人サイドは手強そうですね。まぁ上手く役を乗っ取る事が出来れば良いのですが。」
セラ「私はあまりよく分からないけど、メイサは手強そう」
ルナ「ええ」
セラ「あとリリィも。彼女はとても頭が良いわ」
シロ「まだメイサを殺るには早いと思います。泳がせましょう」
ルナ「そうね。それで誰いく?あ、スナイパーは共有者の茜を殺ったみたい。ドアが開いていて、羽毛が飛び散っていた」
セラ「枕の上から射撃したのね」
シロ「悪くないでしょう。スナイパーは状況を読みたいのだと思います。医師はフローラの所へ行ったみたいです。彼女は囲われてもおかしくない、もしくはそれを確かめる為に行ったのか。どちらにせよ、医者も馬鹿では無いようです。」
ルナ「明日もし私が吊られそうになったら状況を見てギリギリで愉快犯とスナイパーに指示を出すわ」
セラ「本気なのね…」
シロ「…やむを得ない場合…」
ルナ「それでいいのよ。」
セラ「気が重い」
シロ「このゲームには関連性があります。そして、必ず私の他にも2度目か3度目の参加者が混ざっている筈です」
ルナ「考えるとキリがないわ。今夜は真っ白で守られて無さそうな人にしましょう」
セラ「ミズキ、その母親リリィ、婚約者のターキッシュは固まってるわね。」
ルナ「私は雅にウンザリするほど好かれている。残していても問題ない。弟を殺ることは…考えたくもない」
あぁ、と前髪をかけ上げながら溜め息をつくルナ。
シロ「茜が殺られたから今は考えなくても大丈夫です。」
今は…の言葉に目頭を押さえたルナ。辛い。自分より長く生きて欲しい。弟が私の前で殺られるなら…このなよなよした白い奴を血で染めてやる。
ルナ「大きな動きを見せなかった人は?」
シロ「黒江、ピエロ君、リリィですね」
ルナ「あまりにも静かだった黒江とピエロ君は盲信候補に入れてもいいかも。盲信は私達を把握している故に会話が出来ないというデメリットがあるわ。アレハンドロ、雅は不明ね」
シロ「良い読みだと思います。後は、クロが此方側の味方なら心強い。」
ルナ「そうね、そう願うわ。ただ…」
シロ「ユイですか」
ルナ「はぁ。あの2人には何かあるの」
セラ「全く分からないけど…ユイはメイサの詰問で役を言わなかったから今夜確かめても良いかも。」
シロ「ユイは誰かと組んでいたら、今夜咬めません。様子を見ましょう。今夜は確実に警察官を消しましょう」
ルナ「厄介ね」
シロ「このゲームは感情が大きく絡みます。それが後々ヒントになります」
ルナ「今夜守られなそうな人は?」
シロ「雅、メイサ、光、マリリン、バニィ、ピエロ君、黒江、ロイ」
ルナ「バニィの発言はとっておきたいわ。情緒不安定なのよ。」
シロ「整理するとアンジェラ、メイサ、マリリン、光、ロイ」
セラ「光は…殺っちゃ駄目な気がする」
シロ「なぜそう感じたのですか」
セラ「付き合いが有るのよ。余裕ぶってる、何も考えていない、私に話し掛けてきた。彼は…多分…」
シロ「猫又の可能性」
セラ「明日、彼に確認してみる」
そういう仲なのかと、ルナもシロも聞かなかった。セラの淡々と喋る口調がきりりとしていて、正直な目をしているのに、変なところは不器用なのか。
ルナ「…ロイはモカが居るからきっとなにか浮いてくる筈よ。アンジェラかマリリンね。アンジェラが警察官なら確実に仕留めたい」
シロ「部屋をノックして、反応がある方を。警察官なら起きている可能性が有りますし、何らかの反応が有るかもしれません。」
セラ「いい案ね。もうあまり時間が無いし、そうしよう。私なら一発で仕留められる。声を上げた方を窓から突き落とす。」
コンコン。ルナとセラがドアの両脇についてノックする。
―アンジェラは静かね。何の物音もしないわ。二人は目を合わせる。
一応、マリリンの部屋をノックする。
マリリン「キャァアアア!!誰なの?!ルナ?!」
ルナ「?!!」
すかさずセラが扉を開けマリリンに猛突進。ボギィという音と共にマリリンの首の骨が粉砕、ねじ曲がった首の根を掴み窓から突き落とした。 パリィンとガラスが割れる。ブスン!という鈍い音とガラスの破片が突き刺さりグチャグチャになった肉片、変に折れ曲がった死体が窓の下に落ちている。外は星空。とても静かだ。
セラ「ルナ、見て」
ルナはテレビを見る。そこには『人狼 ルナ』の文字が。
セラ「警察官だったのね。」
ルナ「運が良かったのか悪かったのか。ハァ。私か」
セラはテレビのモニターを粉砕する。残りの警察官はあと二人。 情報を共有している筈だ。しかし『人狼 ルナ』の文字が映ったテレビをルナの横でそのままにしておく気分にはなれなかった。
ルナ「シロ、ギリギリまで私を吊ろうとした人や、投票を見ておくのよ。」
ルナはマリリンのバッグから、美容パックを取り出す。こんな物、要らないのに。ねぇ、私の友達…いや親友だったのよ。いつも貴方は何でもない時に私を笑わせてくれた。一瞬ここに居ることだって忘れたのよ。オネエとか変わってるとか関係無かった。胸が、胸が痛すぎて、表情が変わってしまう。思いと共に窓の外に、美容パックを力一杯投げ捨てた。
ルナ「明日確実に仕留める。わかった?」
シロ「はい」
セラ「…」
セラは後ろから茫然とルナを見る。
月明かりに照らされながら窓の外を見上げるルナは、どれ程美しかっただろう。
これが覚悟か。こんな形じゃなくてもっと早く彼女みたいな女性と知り合いになりたかったな。
2日目、朝
これが粉で、いっきに鼻からスニるの
あぁ!ブッ飛ぶ!ブッ飛ぶ!
宇宙、宇宙
ブラックホールに吸い込まれて、脳天がミキサーでかき混ぜられたみたい…
ロイ「おい!モカ大丈夫か?!」
モカは虚に、目を大きく見開く。
モカ「夢を見たの…」
ロイ「無事で本当に良かった」
ロイはモカに抱き付く。
モカ「どうして?怖かったけど…大丈夫だよ」
ロイ「今気分はどうだ?」
モカ「あぁ、あの頃の夢を見た。クラブで…」
ロイ「今は忘れて暫く部屋でゆっくり休め。それで昨日は誰を占ったんだ?」
モカは微笑みながら、ロイを見る。
モカ「ロイだよ」
――――――――
ホテルの屋上
質素なコンクリート造りに、換気扇の音が響く。17階からの眺め。ちょっといい?と、ざわつく廊下でルナはユイに声をかけた。
ユイ「どうしたのルナ?」
ルナ「まさか見てないの?紙」
ユイ「見たよ」
ルナ「信じてる?」
ユイ「…」
ルナ「私が狼だって」
ルナは背を向けて景色を観る。風に当たりたかった。
ルナ「私に聞かないの?」
ユイ「狼とか関係ないでしょう。ここに呼んだって事はつまり、」
言葉に詰まるがユイは続ける。
ユイ「友達として話したかった」
ルナ「後から核心を付いてくるところが変わらないね。あんな紙、仕事が終わって部屋に戻った時には無かったんだけど。」
『ルナ狼』と書かれた紙がマリリンの部屋にばら撒かれていた。
ユイ「それで、何か話したいことがあって此処に呼んだんでしょ」
ルナ「ええ。このゲームの参加者には関係性がある。何処かで皆必ず繋がってるとしたら?。マリリンと私、ピエロ君と貴女はサシでしょ。でもマリリンとピエロ君が私達意外の誰かと繋がっていたら?このゲームを解く何か鍵になると思わない?」
ユイ「うん。だけどどうしてそれを私に?」
ルナ「貴女に嫉妬してたからかな。遺言。生き残ったらクロに伝えて」
ユイ「分かった。だけど私は貴女のこと嫉妬なんてしてない。憧れていた。頭が良くて、綺麗で手が届かなくて。目で追ってた」
ルナ「私はクロを目で追ってた。クロは貴女のことを」
ユイ「報われた事なんてないよ。ずっと一方通行だと思う」
ルナは少し黙った後、ねぇと静かに言った。
ルナ「最後にユイ、イジワル言ってもいい?」
ルナはしゃがみこむ。
ユイは静かにうん、とだけ答えた。
ルナ「ハァ、あのね彼が16歳位の時に、ある女の子を死なせたの」
ユイは眉をひそめた。
ルナ「貴女に雰囲気が似てた子だった。理由は聞かなかったけど、死ぬ所を見たみたい。私の家に駆け込んで酷く取り乱していた。たぶんクロの初めての人。好きだったと思う。」
ユイは唇を噛んだ。
ユイ「それで?」
ルナ「彼女はヤク中で、売人と絡んでいた。実際に腕に針の跡も有ったし、臭いで分かった。 クロを裏切ったからクロに殺されたか、やむ終えず殺したか、一緒にキメて彼女だけが死んだか。どちらにせよ、私には振り向いてくれなかった。宿が無かった時には部屋を貸してあげてたのに、私から物を勝手に取っていっては返さなかったわ。特に医学書は困った。これでも勉強中だったから」
しかし彼女が亡くなった後すぐに、ルナが慰めのつもりで抱かれたことはユイに言わなかった。ユイは引いたような顔つきをしている。ユイはついにしゃがみこんでしまった。
ルナ「でも3年前に貴女と再会したときに、クロの目が変わって見えた。あの子も当時の貴女のように黒髪で前髪があって、スレンダーでミステリアスだった」
ユイは少し顔を歪めながら涙を流す。
ルナ「イジワルよね、私。」
ユイは、大きくため息を声に出す。
ユイ「知れて良かったよ」
ルナ「えっ?ムカつくでしょ?」
ユイ「ちょっと前の私なら、私が代わり?とか馬鹿なこと言って騒いでたかも。ねぇ、タバコ吸わない?」
ルナは意外な顔をして振り向く。
ユイ「ほら、持ってないならあげる」
ルナ「…馬鹿ね」
ユイは地面に寝そべってタバコを吹かす。人は変わるものだなとルナは思った。ルナも座り込んだ。
ルナ「一本だけ付き合ったら、弟の所に行くから。ねぇ、ユイ聞いてくれてありがとう」
ユイ「タバコ吸うならもう一本持っていっていいよ。」
ふふっと二人は笑った。
クロの初恋のあの子が、なんとなくクロの手で殺されていたならいいなって、いつ、いま、どちらが思ったのだろう。どちらも思ったに違いない。今なら私かな。
一人になったユイはぼんやりと空を眺める。
ねぇ、なんだか悔しいよ。何も考えたくない。
取り敢えず弟に会おうと、鉄の扉を開けて非常階段降りるルナはクロと鉢合わせた。
クロ「ルナ、ユイと上でなにしてた?下は大騒ぎだぜ」
ルナ「別に」
クロ「マリリンっていう奴、お前の友達だろ」
ルナは手摺を握り締める。
ルナ「うるさい!!!あぁぁぁあ!!!!」
ルナは初めて人前で大声で泣いた。息を絶え絶えにしてクロを睨み付ける。普段クールなルナがこうなるとクロは何て言って良いか分からなかった。
ルナ「それで貴方はあの時、あの子を自分の手で殺したの?」
クロは口を歪ませる。
クロ「…もう昔の事だろう。なぁルナ。」
その時はいつも通りの私らしく、それもそうね。なんて言えなかった。
言いたいことなんて沢山有る。口を閉じ、涙をぼろぼろと溢しながら、ルナは階段を降りていく。
ヒールの音だけが、カツン、カツンと時を刻むように、しかし均等ではない。
クロはおい待てよ、と言いたかったがルナを引き留められなかった。ルナとすれ違うようにクロは階段を上がっていく。その時、
「ねぇクロ、ユイを屋上から突き落とせる?」
急に耳に入ったその言葉に固まった。
クロ「はぁ?それはルール違反だろ」
ルナ「そうよ。じゃあもし貴方が狼側の人間なら、ユイを殺せるの?」
クロ「当たり前だろ」
それだけ聞くとルナは何も言わずに扉の中に消えた。そう答えるしか無いわよね。本当は好きだったなんて言えず、これも過去のこと。ルナは振り向かずにホテル内部へ続く扉の中へ入っていった。
天気がいい。
クロは屋上にいるユイを探す。ユイは相変わらず寝そべっていた。雲の形を動物に連想しても、羊かソフトクリームか飛行機といった在り来たりなものになってしまう。固いコンクリート、自室のベッドで昼寝でもしようか、そう考えていた所だった。
クロ「何してる?ルナと二人きりで居たなんて知れたら皆に怪しまれるぞ。」
ユイはその声にはっと起き上がる。返す言葉が見付からない。
クロ「秘密の会話か?」
引き出すような口振りはクロの得意技。
ユイ「そう。秘密の会話」
ユイはしっかりと答えた後、じっとクロの目を見る。
ユイ「ねぇルナが可哀想だと思わないの?」
クロ「可哀想だと?この流れだとルナは今夜死んじまうだろ。その言葉はあんまりじゃないか。お前は甘い」
ユイ「ルナはクロの事が好きだよ」
クロ「そんな好意は全く知らなかった。」
本当は知っていたけど、無視していただけだ。その気持ちに答えられないから。
ユイ「私はクロのこと好きだよ、それ分かる?」
クロ「…」
言葉に詰まるクロ。ユイは先程まで眠気が襲ってきていたが、また涙が溢れそうだった。
クロ「今は良いだろ」
ユイ「今言わないと、もう言えないと思って」
クロ「はぁ?死ぬ気なのか?」
ユイは深くため息をつく。
ユイ「私が生き残ったら…?いや、話す時間が最後に有ったら、ルナから聞いたこと言うね。正直興味無いんだ。誰がどうとか、謎を解こうとか…はぁ」
そうか。とクロは空を見上げた。正直何を話されたのか、敵なのか味方なのか、ルナと策略でも練っていたのか気になったが、ユイの憂い顔はいつも正直だ。もしも、もしあの事を聞かれたら正直に話すつもりだったのに。
クロ「そろそろ下に戻るぞ」
ユイ「うん、お昼寝する。疲れちゃった」
二人は共に階段を下りた。
腐敗
イタリア系の美人で高級クラブのオーナー、アンジェラは、モカの部屋を出たロイに聞く。
アンジェラ「それで、貴方の彼女は誰を占ったって言っていたのかしら?」
ロイ「俺だ」
まるで強盗事件があったかの様なマリリンの部屋の前で答える。
メイサ「何でお前なんだよ。結果を聞く必要もねえじゃねえか」
窓の下の肉片と大きな赤茶色の染みを見下ろしながらメイサは言った。
アンジェラ「それで、彼女はもう見たの?この紙」
『ルナ狼』の紙を人差し指と中指の間でサッと見せ付けた。
ロイ「いや、朝一でモカの安全を確認しに行ったから見てない。それに今休んでるんだ」
メイサ「休んでるって?」
ロイ「疲れてるんだ」
メイサ「ハァ??」
ロイにガンを飛ばすメイサにアンジェラは諭すように言う。
アンジェラ「ふふ。メイサ、この状況で病まない子なんて普通じゃないわよ。」
メイサ「だけど、コイツ等がグルだったら?朝イチで話を合わせてこの紙をこの男が撒いてたら?」
アレハンドロ「おはよー。なんだよ、コレ。ルナちゃんがぁ…えーっと?」
アンジェラの弟、アレハンドロが怠そうに歩いてきた。甘いマスクにすっと背が高く香水臭い。どこからどう見てもビッチ受けがいい煩い男が来たなと、メイサはチッと舌打ちする。
アンジェラ「これで、この紙を見たのは、少なくとも今此処に居る、後ろの彼等も含めてリリィとその子供のミズキ、セラ、そこの軍人のターキッシュ、ロイ、そこのルナの弟に、その彼女のフローラに、黒髪の貴方と…まぁ後は通りすがりにでも入って見たんじゃないかしら?だってこんな状態よ。」
雅「あー。後、妹の死体は確認したよ」
ふっと鼻で笑う雅。余りにも冷たい。
シロ「あの犯行はやり慣れてそうですね」
シロが後ろから歩いてきた。アレハンドロが場を乱す様に言う。
アレハンドロ「バニィちゃんはぐっすり寝てるぜ」
呆れて突っ込むのを止めたメイサ。
メイサ「後は?」
後ろから歩いてくるクロ
クロ「ルナは見ただろうよ。後の奴等は寝てるか、なんかしてるんじゃねえの。それで、モカの占い結果は聞いたのかよ」
ロイ「あー。なんと言うか、まぁ村人だよ。」
メイサ「だろうな。私が直接あの女に聞いてくるよ」
アンジェラ「あははっ。メイサ、貴女が行ったら脅えるだけだって。ここぞというときに頼むわ。こんな時はそうね、モカと全く関係の無さそうなリリィ。中立の彼女に話を聞かせるわ。優しそうな顔だし。そして私。後はルナ。」
リリィ「わ、分かりました」
ロイ「おい、リリィとアンジェラは分かったとして、なんで狼って書かれてあるルナが行くんだ」
クロ「モカはまだ知らねーからだろ」
シロ「いい案だと思います。ルナの反応も見れますし」
アンジェラ「そういうことで、ロイ、貴方の痴情の縺れで死んだリンダの死体の掃除よろしく。」
ロイ「なんだよそれ。あんまりじゃないか」
アンジェラ「死んだ彼女にもう責任は無いわ。血が吹き出ない様に殺してくれたメイサに感謝するべきよ。私は綺麗好きなの。ナイフを抜いたらきっと血が漏れるわよ。分かった?死体が腐敗する前に後始末くらいしなさい。」
ロイ「おいおい、どうすりゃいいんだよ。窓から捨てたらまた散らかるだろう」
クロ「手伝ってやるよ。」
アンジェラ「リリィ、じゃあ私達はモカの部屋へ行くわよ。それでルナはどこかしら?」
見渡すアンジェラ。
皆が知らないという顔をしていた時、弟レオの後ろから歩いてきた。通り際に優しく弟の背中を撫でて。
ルナ「私はここよ。」
すっと前に出る。
人狼ゲーム FUNNY
私は見ている。
ゲームの中とカメラの外から。
一番近くで、人間の行動を見ている。
主催者は微笑む。
謎をとけ、人形たちよ。