テスト

テストです。

テストなのだ。

テスト。そんなものが作られてから僕達人間は、テストに縛られて生きてきた。
身体能力、知能、学力、入学、入社。あらゆる場面でテストは行われ、僕達に点数をつける。
ある時、ある脳科学者が提唱した。
「人間能力を完璧にテストする方法がある」
そのテストが発表されるや否や、そのテストは世界中のあらゆる場所で行われ、本来テストを受ける必要のなかった人々から、もう全てのテストを終えたはずの人まで、全ての人を苦痛の底に突き落とした。
しかしこのテストを経て、いくらかの人はテスト以前以上に評価されることになる。このテストは「人間能力」、つまり記憶力や身体能力といった単純な判定基準に捕らわれず、人間として総合的に能力を評価するテストなのだが、これによって今まで不当に過小評価されてきた人たちが正当な評価を得られるようになったのだ。
その中には政府官僚だった人もいれば、貧民街で貧しい暮らしを強いられていた人もいた。
しかし、すべての人が前より良くなったわけではなく、当然その逆もいる。
僕も、そのうちの一人だ。
僕は今まで、政府高官だった父のおかげで、大分豪勢な暮らしをしてきた。朝は必ず美味しいモーニングがあり、あらゆるゲームや娯楽に囲まれて生きてきた。それが、全て崩れ去った。
父は持ち前の頭脳と判断力が評価され、今まで通りの地位が保たれたが、僕はそうならなかった。
今までぬるま湯に使ってきたつけがまわって来たのだ。回転の遅い脳、低い運動神経、優柔不断な性格、おまけで低い鼻、悪い目つき。すべてを統合的に評価した結果、僕は人類最下位レベルの地位を手に入れることができた。なんと、学習の権利はなく、日の食事は一度まで。与えられるのは朝から晩まで計14時間を超える労働の義務と、泥水が出てくるシャワー。
僕は、それでもまだいい方だと思う。赤ん坊なんかは知能テストや脳力テストをして、規定値に達しなければそのまま殺処分されると聞く。
また、生き残った子どもも母親と一緒に暮らすことは許されず、育成施設預かりとなるそうだ。

最初の頃、テストが出た本当に最初の方は、テストのこのやり方に反対する人たちもいくらかいたが、残念ながらその中には優秀な人がいなかったらしく、無能な人間がその露見を恐れて喚いていただけ、とその声はかき消されてしまった。
僕達が、あの人たちの正しさに気付いたのは、自分たちがあの人たちと同じか、それ以下に能力が低いのだと判明した、その時だった。ただ、採点は全人類に大してほぼ間もなく行われていたため、僕たちはあの人たちの真似をすることすらなく、この地獄に追いやられることとなった。

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テスト

テストでした。

テスト

テストですと。

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-14

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