スケッチ

『スケッチ』

 水彩に滲んだ空から
 滴る
 思いの雫が
 ぴた、と
 土を撃つ

 風が湿った空を
 カラカラにして、
 赤い、
 赤い雲が
 流れていく

 追う
 無数の眼差しは
 星になる
 濃紺の気配が漂う

 地を這う虫が
 翅を震わしている
 猫がひっそり
 忍び寄って来る

 忘れられた小ささを
 胎内の深い奥に
 宿しながら
 母は宵に目を瞑った

 草いきれの中から立ちのぼる
 甘酸っぱい匂い

 小川が一筋、細々と流れていく
 どこまでも

スケッチ

かつてCessnaという名前で投稿したものです。

スケッチ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-11

Copyrighted
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