在りし火
『在りし火』
白装束の列が行く
暗闇の中
手にはそれぞれ、
明かりを灯した手蜀を持っている
ほのかな、燈色のともしびは
彼らの大切な、
大切な……
ずっと昔、彼らは
貧しく、幼かった頃に火を点けた
ぬくもりは翳した手のひらに伝わって
染みて、深く
彼らをあっためた
身体がどうしようもなく凍えて、凍てついた日も
火はまだ燃えて、
彼らをあっためた
彼らは、だから、死者となっても火を離さない
行列は延々と続いていく
手蜀の灯は風に煽られて、
あやうく揺れている
愚かな彼らは、知らない
その火の燃えるが故に
凍え、
歩き続けるということを
……
在りし火
かつてCessnaという名前で投稿したものです。