列車

『列車』

 仄暗い虹が差している
 僕はうっすらと開けた目で
 それを眺めた

 むせるような夏の、にわか雨の湿気が
 肌に纏わりつく

 帰省の列車はまだ来ない

 雨上がりの空に虹はぼんやりと輝き
 小虫が一匹、僕のまわりを飛び回っている

 もやっとした灰色の空は相変わらず
 莫大な不安を抱えていた

 大きくて
 今にも 落ちてきそうだ

 大地から漂う草いきれが急き立てる
 
 「はやく」

 列車はその声を聞いてか、聞かずか
 ぐんぐん迫って来る

 僕は真っ向に立ってそれを見た

 あの轟きが、もうすぐ
 この漠然とした空と虹を
 引き裂いてくれるから

列車

かつてCessnaという名前で投稿したものです。

列車

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-11

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