列車
『列車』
仄暗い虹が差している
僕はうっすらと開けた目で
それを眺めた
むせるような夏の、にわか雨の湿気が
肌に纏わりつく
帰省の列車はまだ来ない
雨上がりの空に虹はぼんやりと輝き
小虫が一匹、僕のまわりを飛び回っている
もやっとした灰色の空は相変わらず
莫大な不安を抱えていた
大きくて
今にも 落ちてきそうだ
大地から漂う草いきれが急き立てる
「はやく」
列車はその声を聞いてか、聞かずか
ぐんぐん迫って来る
僕は真っ向に立ってそれを見た
あの轟きが、もうすぐ
この漠然とした空と虹を
引き裂いてくれるから
列車
かつてCessnaという名前で投稿したものです。