交差点にて

『交差点にて』

 電話ボックスの中には電話がある。
 交番の中には、机と、制服があり、あと、警察官がいる。
 道には老人が歩いている。車も走っている。
 向こうの公園に犬がいる。猫も見かける。
 空にはちぎれた雲が浮かんでいた。
 鳥もちらほら飛んでいる。旅客機が轟音を立てて、遥か彼方へ去って行く。
 老人が郵便局へ入って行った。
 郵便局の前にはポストがある。赤く、四角く、一本足である。
 郵便局の向かいにはコンビニがあった。
 コンビニの隣りには、八百屋があった。
 八百屋の店先にはたくさんの野菜と果物が並んでいた。
 キャベツやジャガイモ、ニンジン。タマネギにキュウリ。リンゴ、オレンジ、アボガド、みかん。
 タクシーが交差点で、信号の変わるのを待っていた。
 タクシーの後ろには灰色のワゴンがいて、その後ろには軽トラがいた。
 色とりどりのランドセルを背負った子供がはしゃぎながら、公園の中の、体育館の前を通り過ぎて行った。
 
 孤独が差し迫って来ていた。
 開いた両手のひらにみすぼらしさが染みてくる。
 公園の時計の針がほんの少し、右に触れた。

交差点にて

かつてCessnaという名前で投稿したものです。

交差点にて

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-11

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