霧
『霧』
雨が降ると川に泥が流れる
川辺の街には灰色に濁った
重たく、冷たい霧が掛かる
荒く波立つ茶色い水面
立ち込めるのは湿った
殺気と、停滞する大気
野鳥が一羽、空から舞い降りてきた
男はそのことに気付いて足を止め
堤防からその鳥の様子を見守った
水面すれすれを鳥が飛んでいく
茶色い翼がふと、風を受止める
雄々しく広げた翼と
水面に刺さる、鋭い
無慈悲な、かぎづめ
魚がその爪に突き刺さっていた
[見通しの利かぬ、霧の渦中にて]
霧
かつてCessnaという名前で投稿したものです。