サボテンと愛の歌

『サボテンと愛の歌』

 ふたつの頬が、ほんのりと朱に染まる
 柔らかな微笑みが、語り合っている

 茜差す
 窓辺には街の明かりと、
 影の溜まったサボテンと

 部屋にながく落ちる、ふたりの影

 時の経つのも忘れるぐらい、静かに
 今いるこの場所が、地上に残った
 最後の隠れ家でもあるように

 ふたりはあたたかな涙を流す
 お互いの身体の小さな震えが、愛おしい

 夜が訪れたなら
 ふたりは抱き合い、祈るだろう
 こっそりと

 サボテンの
 その棘の、変わらぬ鋭さを
 尖った針は、ふたりの魂の形であるから

 永久に続く痛みをふたりは願う
 お互いをいつまでも感じ続けるために、
 震える身体を寄せて、
 ぬくい身体を抱きしめて

サボテンと愛の歌

かつてCessnaという名前で投稿したものです。

サボテンと愛の歌

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-11

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