あなたへ 久しぶりに手紙を書きます

あなたへ

今年は、暖かくなるのが早くて、もう、今にも、桜が咲きそうです。どんなに余裕のない日々を送っていても、桜が咲くと、1年経ってまた春が来たことに気づかされます。

私、これまで何人の人と、「次に桜が咲いたら一緒に見ようね」って約束したんだろう。果たせない約束のほうが多い私は、今日もまた、「私、嘘はつかないから」って言葉で、命を削る。桜を一緒に見られることを心から祈ったことに嘘はない。けど、祈りながらも、見られないことはわかってた。もう、そんな嘘はつきたくなくて、今ここにいるはずなのに。

言葉を話せるばっかりに、重たい頭を抱えながら、言葉を放つ。伝えなくて後悔するよりも、なにかを伝えて後悔するほうが、よっぽどましかなって思うから。それは人それぞれだけれども、でも、私には、あの人みたいな悲しみ、抱えきれない。

あの人は、ひとりぼっちだった。この世界に生きてて、そんなことはあり得ないんだけど、でも、ひとりぼっちだった。ちゃんと、人となりの生活を送って、あの年齢まで生きてきたんだから、「これが私の人生」って、「ひとりで気楽」って、堂々と生きていればいいのに。誰かと生きてこられなかった自分を責めているようにも見えた。大事な人がいたくせに、こんな私じゃ人と一緒に居られないって、その大事な心は封印して、生きてきた。いざ、その人がいなくなって、今度はどうしたかって?「私、ずっとひとりでいたから、寂しいとか、わからないの。変なのよ。」って、寂しい気持ちまで封印しようとした。そのときの顔は、今にも泣き出しそうで、でも、涙が流れてくることは、封印された悲しみが形となって漏れ出ることは、きっと一生ないんだろうなって、思った。

そんな風に、気持ちを自分の中だけに抱えて生きていくのは、美しくもあるけれど、でも、悲しいことね。だから、私は、あなたに、こうやって手紙を送るの。

なんか、久しぶりに書いたら、長くなってしまいました。続きはまた今度。

あなたへ 久しぶりに手紙を書きます

あなたへ 久しぶりに手紙を書きます

  • 小説
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  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-03-07

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