俺のバスケ(The Answer)

このお話は今よりちょっと先の未来、2034年の7月から始まる。
この時代の日本では空前のバスケブームが巻き起こっていた。
街を歩けばボールをつく音が聞こえ、TVをつけるとプロバスケの試合中継が放送されている。
子供たちの将来の夢は野球選手やサッカー選手を抑え、バスケ選手がダントツなほどだ。
それに伴い、国は日本バスケを大改革した。
その一部として中学からのアメリカへのバスケ留学があった。

第1話 小さな巨人

「ラスト1分だ!走れ!!」
監督の声がアリーナに響く。
今日は2034年7月25日、本格的に夏が到来して、エアコンが効いているアリーナ内でも蒸し暑いくらいだ。
観客は汗を拭いながら小さなコートにこれまた熱い視線を送っていた。
そんな小さなコートに一際輝きを放つ小さな巨人がいた。
榊原心一、小学6年生である。
心一は自分より10cmは高いであろう巨人たちをかわしてシュートを放つ。美しい放物線を描いたシュートはリングに吸い込まれていった。
「っしゃあ!!!」
心一はその小さな身体を大きく使い渾身のガッツポーズを見せた。
そんな心一の熱い姿に比例して観客席もヒートアップしていく。
スコアは45対45。大熱戦だ。
「大和、信虎最後だ!いけ!!」
残り6秒、心一がリバウンドを奪取し、チームメイトの比江島信虎にパスを出す。信虎がパスを受け取った瞬間、相手チーム2人が立ち塞がる。獣が獲物を捕らえる時のように信虎のボール目掛けて飛びつく。しかし、信虎はその2人のディフェンスをあざ笑うかのようにあっさり抜き去る。
しかし、信虎は焦ったのか身体が流れた状態でシュートを打ってしまった。
信虎が放ったシュートはボール1つ分右にずれていた。
残り時間は2秒。
外れた、延長戦だ。
と味方チームを含めアリーナ内にいる全ての人間はそう思った。この3人を除いては。
「決めろ、大和!!」
心一は叫ぶ。と同時に沖田大和が勢いよく飛び出してきた。残り時間は1.4秒。もうボールは落ちてきている。
「ナイスパァァァァス!!!」
大和はそう叫び、ボールを空中で掴み、リングに押し込んだ。ガシャッという鈍い音が聞こえ、一瞬会場が静まる。
ビーーーーッッ!!!
審判の笛が鳴る。試合終了だ。
その笛を引き金に一瞬静まった反動なのか会場が今日1番の盛り上がりを見せた。席を立ち上がり拳を空に突き上げている者もいた。
「47対45で沖田ミニバスケットボールチームの勝ち、礼!!」

「いやぁ、あそこでアリウープを決めるとはとても小学生とは思えない精神力だな」
「あの小さな身体でリバウンドを取ったあの子もすごいよ」
「いやいや、ほんの一瞬でディフェンス2人を抜いた子もかなりのものでしょ」
会場では未だに熱戦の余韻がある。
全国ミニバスケットボール大会、通称全ミニ。全国の名だたるクラブチームが参加し、全国一を決める大会だ。そこで好成績を残した選手数名をアメリカへ留学させる権利を獲得できる。そんな大会で心一たちは優勝したのだ。当然、心一たち3人はアメリカ留学という言葉が頭をよぎる。
「おい!ミーティング始めるぞ!」
監督の声にはっとして我に返る。心一たちは監督のもとへ急いだ。

俺のバスケ(The Answer)

俺のバスケ(The Answer)

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-02-16

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