鬼

 私。心の中に鬼がいます。巨大な青い鬼です。紫色のパンツを身につけています。その鬼は、良く親友いじめをします。ここは、あえて彼と呼ばせてください。鬼に性別があるのかどうか私に、わかりません。ただ、彼は私を下劣な視線で見ています。ゴミ箱に紙くずを入れなかったことがあります。悪いことをしている気持ちは、ありませんでした。ただ、私が入れようが入れまいが、どうでもいい、と思ったのです。こんな時、彼は、私を見て笑います。その笑いは、高い音で、いっそう不気味なのです。そんな私ですが、たまに鬼を見つめています。一人で部屋にいる夜。私は、鬼の青さを血管の静脈を見るように、見とれてしまうのです。この時、鬼は私に向かって殴りかかるのです。私は、息も絶え絶え苦しくなって、鬼に許しを求めます。鬼は、この時、荒い息づかいで、私をじっと見つめるのです。こんなささやき声が聞こえてきそうな表情で。「もう殴らないよ。だから、君のそばにいていいだろ」
 ふざけるな!!私は自由だ!!怒りをこめて、こう思うのですが、何しろ鬼は、私の心を見透かしてるのです。自由にしたって、お前に何ができる。お前は、一人では何もできない人間だってな。悲しいね。鬼にまで見下されて、親友までにも見放されて、私は、とうとう疲れてしまったよ。自傷行為は、さらに激しくなった。肉体ではなく、精神の自傷行為。そんな言葉を知っているかい?たとえば、好きでもない男と寝たりね。親の見てないところで、幼児の頭を殴ったり。それこそ、いろんなことやったよ。
 その間、鬼は、いつも下品な笑い声をあげていた。これじゃ、あいつの思い通りじゃないか。でも、一人では、どうしようもないんだ。弱音を吐いたよ。本当に、鬼と二人きりなんだから。この鬼と私の肉体を破壊するしか道はないようだった。結論を出す。
 ビルの屋上を目指す。屋上のドアは、開いてなかった。警備員の男が気づいて、私の話を聞いてくれたよ。「あなたは、鬼と一緒に生きていくべきだ」男は、私を抱かなかった。そのことで、私は鬼と話し合ったよ。鬼は真顔で、「恋だな」と、つぶやく。青さが、かえって冷たい愛を予感させたよ。男と二度目に会った夜。鬼は、最後の抵抗を試みたようだ。私は、男を滅茶苦茶に殴った。男は、すべての私のこぶしを受けきり、月明かりの下で私を抱いた。それが、昨日の夜。
 今日私の鬼は、どこかへ行ってしまった。私は、温かいものが心の中に住んでいるのに気づいた。赤い鬼だった。「さあ、幸せになろう」「君は温かいね」それが、私と鬼のすべてです。

物語作家七夕ハル。 略歴:地獄一丁目小学校卒業。爆裂男塾中学校卒業。シーザー高校卒業。アルハンブラ大学卒業。 受賞歴:第1億2千万回虻ちゃん文学賞準入選。第1回バルタザール物語賞大賞。 初代新世界文章協会会長。 世界を哲学する。私の世界はどれほど傷つこうとも、大樹となるだろう。ユグドラシルに似ている。黄昏に全て燃え尽くされようとも、私は進み続ける。かつての物語作家のように。私の考えは、やがて闇に至る。それでも、光は天から降ってくるだろう。 twitter:tanabataharu4 ホームページ「物語作家七夕ハル 救いの物語」 URL:http://tanabataharu.net/wp/

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更新日
登録日
2016-02-05

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