見ちゃったんだ。聞いちゃったんだ。ぼく…

見ちゃったんだ。聞いちゃったんだ。ぼく…

桜庭 美帆

桜庭 美帆

 いつもぼくは見ている。
人の見えないもの、弱みを─────…

「ふふ…桜庭(さくらば)さん。こんなことしてたのを彼氏に言っちゃっていいのかな?」

 ぼくは悪魔のごとく笑う。弱みを握り、慌てるヤツを……。

「なっ…叶城(かなしろ)さん!やめて!」

ほら、そう言うでしょ…

浮気現場の写真を見ただけで、やめて、か…。

「お願い!やめて」

「ふぅ~ん、どうしようかな?迷っちゃうな?」

わざと、わざと。
本当は晒すつもりなんだよ─────…

仲を引き裂いて置かなくっちゃね。

ワルイコはぼくの腕の中…

叶城(かなしろ)君!やめて!」

 やめてやめてと騒ぐうるさい桜庭(さくらば)美帆(みほ)
自分が何をしたのか分からないのかな───…?

 ぼくは桜庭(さくらば)のあごをあげた。

「自分が何したか……分かってる?
愛してる人を裏切ったんだよ?」

 目から光を放ちそうな叶城(かなしろ)華斗(はなと)
その瞳からは怖さを感じさせる────…

「裏切ってるけど…愛してなんかない」

 君は知らないだけだね。彼のすべてを見ていないからそう言えるのだろう……?

「そう言うか、でも君の彼氏は君を想ってるよ?」

「……な、なんて?」

 もう彼の想いを知らない君には関係ないことだと思うけどね。

「あぁ美帆(みほ)はボクのことを振り向きもしない
ボクはがり勉だけど美帆(みほ)のことを想ってる…
だってさ」

君は何を想うかな?
何を感じるのかな─────…?

「そ、そうっ。知らないわ
あのがり勉野郎が私のことを想うとか……
キモいんですけど」

「…ふふ」

全部録音した。
すまないね、桜庭(さくらば)美帆(みほ)─────…

ぼくにとっては仕事だからねぇ……

桜庭(さくらば)の彼氏 夜桜(よざくら)夢兎(むと)に報告しておかなくちゃね

「も、もう話終わりよね?」

「うん、終わりだよ」

最後に桜庭(さくらば)美帆(みほ)の体を引き寄せ、キスをした…

「ご協力ありがとう、桜庭(さくらば)美帆(みほ)

 桜庭(さくらば)は気持ち悪い、ゴミのような目でぼくを見つめたが、そういうのはどうでもいい。
協力ありがとうの証としてやっただけだ。

……楽しみだねぇ。

夜桜 夢兎

桜庭(さくらば)さん……残念だね
夜桜(よざくら)さんに報告しなくちゃいけないんだな~」

見ちゃったんだ。聞いちゃったんだ。ぼく…

見ちゃったんだ。聞いちゃったんだ。ぼく…

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2016-01-29

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  1. 桜庭 美帆
  2. 夜桜 夢兎