何でもない日

2016/01/23


 好物だと言っていたものが美味しいと感じられなくなってしまった。


 ケーキもただ甘いだけ。
 キムチもただ辛いだけ。
 味噌汁もただ暖かいだけ。
 アイスもただ冷たいだけ。


 寒くて感覚が鈍っているのだろうと、いっそのこと思ってしまいたかった。


 かじかむつま先を包んで、冷たい窓際に寄り添った。


 吐く息でガラスが曇った。


 これで私は生きているんだと確認する。


 部屋の中に目をやった。


 組み立てた安いテーブルの上に食べかけのまま放置されたかつての好物。 


 なぜ好きだったのかが思い出せない。


 味ではないものが好きだったのかもしれない。


 今の私には何の付加価値もなくなってしまった。


 美味しくないものは食べたくなかった。


 

何でもない日

何でもない日

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-23

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