プロパガンダっていい響き

プロパガンダじゃい‼︎

私の名前は立花 晴香!
高校一年生!
今日も親友の長瀬 香織ちゃんと斎藤 絢香ちゃんと登校なんだ!
急げ、急げ〜。香織ちゃんはおっとりしてるんだけど、それが私たちの癒しになってるの!絢香ちゃんはツッコむことが多いけど、それが私たちの会話に彩りを添えるの!そんな二人を私は大好きだよ!
「っていう夢を見たんだ」
「お前も話に混じらんかい」
「いた!叩くことないじゃん!」
「叩くと働くってなんか仲間って感じがするよね〜」
「あ!なんかわかる」
「わかんのかよ」
「だって、暴力振りかざして社員を働かせるじゃん」
「ブラックだなおい」
「なにそれ〜」
映像部に入部した私、晴香、香織は先輩から「一年生で1年間の間でなんか作って」と言われ、夏休み初日からファミレスで絶賛考え中であった。
「でも、先輩もいきなりだよね。撮ってこい!だなんて」
「撮ってこいと追ってこいってなんか家族って感じ〜」
「あ!なんかわかる」
「わかんのかよ」
といった風にだべっては笑い、何か作ることを話そうしては話が脱線しを繰り返していた。

それにしても、さっきから店員の目線を感じる。それもそのはずで、実は私たちは開店直後からいて、今は昼なのでザッと数時間はいることになるからだ。 そりぁ、店員さんも迷惑だよね。
もうそろそろファミレス定員に退いてくださいって言われるやつかな。
なら話まとめて、とっと撤退しよう。
「香織はなんか作りたいものある?」
「ちょっと絢香ちゃん!あたしに聞いてよ!」
「晴香に聞くと絶対変な方向いくじゃん」
「フッフッフッ、あたしも舐められたもんよ。あ、でも絢香ちゃんに舐められるのは大丈夫だよ」
「気持ちワル!」
てかなんでとってくけたようなんだ。
「香織ちゃーん、絢香ちゃんがあたしのこと気持ちワルいって‥。泣きそうだよ、撫でて〜」
「はーい、良い子、良い子」
なんだこの状況。

3分後

「じゃあ、茶色い番も終わったことだし言っちゃうよ!」
茶番のことか‥。
「そう!なんか学校を紹介するなんかのビデオなんか」
「『なんか』多いな」
「それってシーエムのこと?」
「違うよ香織ちゃん!これはね‥」
そう言いその場で立ち上がり脇を締め、手をグーの形にしてガッツポーズのようなポージングをして次の瞬間言い放った。
「そう、これはプロパガンダじゃい!!」
「プロパガンダっていい響きだよね」
「確かに。なんかカッコいいね」
「だしょ、だしょ。だからプロパガンダ作ろ♡」
今なんか語尾にハートマークがついたような気がした。
「でも、それってシーエムのことだよね」
「そうともいう」
「そうといった方が分かりやすいわ」
「絢香ちゃんはわかってないな〜、この言葉の響きの良さを」
イラっ。
「プロパガンダ、プロパガンダ、プロパガンダ」
「どうした香織。晴香のアホがうつったか?」
「酷いよ絢香ちゃん!あたしは馬鹿だよ!」
馬鹿ならいいのか。

「プロパガンダっていう発音なんかいい〜」
頬を手で押さえ、うっとりした様子の香織。
「ほら〜、やっぱり〜」
なにがやっぱりなんだ。
「絢香ちゃんも言ってごらんよプロパガンダ。なんかいいよ〜」
「ほらほら絢香さん。香織姫もそう言ってますし、ささどうぞ」
「何キャラなんだそれ」
「雌牛の女房」
ほんとなんだそれ。
「ほらほら」「はやく、はやく」
すっかりプロパガンダという響きに魅了された二人からプロパガンダを言うよう促さられる私。
言うしかないよね‥。
「‥‥プロパガンダ」
「「え?なんて?」」
こいつら‥。
「プロパガンダ!」
「プロパガンダ!」「プロパガンダ!」
「「プロパガンダ!!」」「プロパガンダ!」
なんかいいなコレ。
「「「プロパガンダ!!!」」」
「「「プロパガンダ!!!!」」」
こうして、プロパガンダと連呼した私たちは店員に注意されながら、3人で作るものはプロパガンダ(学校紹介VTR)に決まったのでした。

映像でえ〜ぞー

夏休み3日目。
昨日軽く話し合いをした結果、まずはビデオが必要だという結論に至り、私たち3人は学校に向かうことになった。
私たちの学校は駅からバスで10分、自転車で30分の坂の上にそびえ立っている。周りにはこれといったものはなく、ただただ自然があるだけだ。だから当然、この季節になると虫もいっぱい出てくるのだ。
「絢香ちゃん、私、血、吸われちゃった‥‥。吸血鬼になっても一緒にいて‥くれる?」
「何馬鹿のなこと言ってんだよ。黙って‥自転車を漕げ‥」
今、私たちは学校までもう少しの所までのところまで来ているが、なかなか進まない。それもそのはずで、そこには何メートルあるかわからない坂がある。通称ベル坂。急な斜面に長い距離を持つ私たち自転車通学者の敵だ。
「香織ちゃん、も‥う着いてるかな?」
「‥流石にもう‥着いてるだろ」
ちなみに香織はバス通学だ。
「それにしても、誰が‥この坂‥作ったんだ‥」
「‥ごめん。これ作ったの‥あたしだ‥」
「‥お前だった‥のか」
「‥ああ、あたしだ」
「‥神々の」
「‥つまらない」
「遊び」「‥‥遊び」
‥‥‥‥。
「‥ズレたね」
「ああ、ズレた」
こうして私と晴香は死にそうになりながらも学校に着いたのであった。


学校に着いた私と晴香は自転車を駐輪所に置き、部室のある本館3階暗室といういつもなぜこの名前にしたのか聴きたくなる教室に向かった。
部室に入るとそこには涼しげな顔した香織と2年の柳瀬先輩が談笑していた。
「「先輩、こんにちは〜」」
「おー、ハルちゃんにあやちゃんじゃん。こんにちは〜」
映像部の上下関係はザッとこんなもんだ。
「晴香ちゃん、絢香ちゃん、遅かったね〜。汗かいてる〜」
「こいつめ〜。この晴香ちゃん直々にお前の体温奪ってやるぅ〜」
「いや〜」
『お前、それって全然得してないぞ』というツッコミは抑えて、私は柳瀬先輩に部室に来た目的を話した。
「それならそこに置いてあるヤツを使うといいよ。誰も使ってないし、結構使い易いし」
そこに置いてあったのは『パナソニック w870m』と書かれた付箋が付いてある白いビデオカメラだった。
「それ去年部費で買ったんだけど、一回しか使わなかったから新品同然だよ。説明書はないけど、ネット見たら分かるし大丈夫」
「ありがとうございます。大事に使いますね」
「うん。動画編集するときは、オススメの編集ソフトとか教えるしメールしてよ」
「わかりました」
さて目的達成したけど、どうしたものか。今から試し撮りでもしていこうか。
そんなことを考えているそばで香織と晴香はアイスを口いっぱい頬張っていた。
「‥お前ら」
「大丈夫!香織ちゃんの体温は奪ってから食べたから!」
何が大丈夫なんだ。
「‥‥私のは‥」
「あるよ。ハイ」
そう言って、香織は私の好きなソフトクリームを差し出した。香織はこういうところ昔からちゃっかりしている。
「ぐへへ。アイスクリーム食べる絢香ちゃんも可愛いな〜」
「ねぇ〜」
「‥キモい」
「見た!?香織ちゃん!先輩!顔赤らめながら『‥キモい』って!可愛すぎだろおい!」
「ねぇ〜」
「相変わらず仲良いな3人」
そう言って先輩もアイスクリームを頬張っていた。
「ただ晴香がひたすら絡んでくるだけですよ」
「褒められちった」
「褒めてねぇよ」
このくだりも何回やったことか。

「そういえば先輩、なんでいるんですか?」
「それはテメェ邪魔だから帰れってことかい?ハルちゃん」
「いやいや違いますよ〜。てっきり私は村中先輩がいるもんかと」
「あ〜確かに〜。絢香ちゃん経由で連絡したの村中先輩だったしね」
確かに昨日連絡したのはもう一人の二年生村中先輩だった。別に他意はなく、ただ部長だからという理由で連絡したのは言うまでもない。
「あー、それは村中から頼まれたんだよ。『3人にビデオ教えてあげてって』ってさ。それに私もついでに見せてあげたくて、これ」
そう言って、部室に一つあるパソコンに『これ』といったDVDを入れ、再生させた。
そこに映ったのは、村中先輩、柳瀬先輩、それと誰かはわからない人だった。
「これさ、私たちが一年の時撮ったヤツ。私たちの街っていうお題で作ったんだよ」
誰かはわからない人リポーターのもとで村中先輩がナレーター、柳瀬先輩がビデオを撮るという布陣の様だ。
ビデオが流れて数分経った頃、急に晴香が話し始めた。
「香織ちゃん‥、この人‥もしかして」
「うん、晴香ちゃん。この人は‥」
「あれ?二人ともこいつのこと知ってんの?」
「「全然」」
「なんだ〜それ〜」
「いや〜、静かになると急に話したくなって‥。若気の至りってヤツですな」
「いや、まだ至ってないだろ」
「お?絢香ちゃん、まだ若者気取りか?」
「そういうお前はなんだよ?」
「変態」
よくわかってるな。
「で、先輩。この人誰なんですか?」
「お?それ聞いちゃうかい、かおちゃん」
「聞いちゃいます」
フンスと鼻を鳴らす香織。
こういうところは香織悪い癖だ。
「そうだね。こいつは私のライバル」
「へぇ〜、ライバルですか」
「そお、ライバル。でもライバルって言っても、親友って書いてライバルと読む」
「「「おぉ〜」」」
言った後も少しも恥ずかしがる様子もない先輩。
どうやら本当らしい。
「こいつはリポートが上手くてさ。他にも台本とか編集とかも上手かった」
私から見たら柳瀬先輩も十分すごいのに、その柳瀬先輩が言うから相当なものなんだろう。
「私はその頃から映像編集に没頭してたんだけどね全然こいつの技術というかセンスに追いつかなくてさ。めっさ辛酸舐めた記憶がある」
「凄い人だったんですね」
「確かに今思えば凄いヤツだったなぁ〜」
「でもこの先輩私たち見たことないですけど、どうしたんですか」
「おい、香織」「香織ちゃん‥」
珍しく晴香も真剣な表情を浮かべている。思っていることはやはり一緒のようだ。
「あ!すみません先輩!こういうの私、グイグイ聞いちゃうので。その、すみません」
「いいよ3人ともそんな硬くならなくても。こいつはその後転校しちゃっただけだから。それにこれ見せたのは、こいつのリポーターとしての技術を見てもらいたくてさ。やっぱ、上手いし」
見直してみるととても分かりやすく、伝わりやすくリポートをしていた。
そしてもう数分見たところでビデオは終了した。

「じゃあ、私はこれ見せたし、ビデオを渡せたし先帰るね。部室は閉めなくてもいいから」
「あ、はい」
「じゃあね3人とも。わからないことあったらメールして」
バイバイの手を振って部室をそそくさと出て行く先輩。

先輩が帰った後、この微妙な空気を破ったのは香織だった。
「‥ごめんね、二人とも」
「いいよ香織ちゃん。自覚してるなら中学校の頃よりレベルアップップしてるよ!」
「まぁ、確かに中学校の頃は酷かった」
中学校の頃、香織は今よりずっと好奇心の塊で、いつもはおっとりしているクセに気になることがあればとことん探求する中学生だった。その癖が少し気の弱い先生を本当に泣かしたり、怒らせたりする学校からしたら面倒な子だった。
「やめてよ〜、あの頃はただ気になって調べたらああなっちゃたんだもん」
「だけどそういうところも香織ちゃんの長所だとあたしは思うよ」
「‥そうだな、(面倒だけど)」
「今、絢香ちゃん面倒って言わなかった!言った!言ってよ!」
「言ってよってなんだよ」
「ほんとそれ」
「も〜二人して笑わないでよ〜」
噛んじゃっただけだからー!と次第に笑う香織と私と晴香。
そんな中でも私は不思議と脳裏に柳瀬先輩先輩が部室から出て行くときの姿がはっきりと浮かんでいた。

プロパガンダっていい響き

プロパガンダっていい響き

映像部の部員晴香、香織、絢香は先輩から何か一年で作れと言われ、3人で学校PRビデオを作ることに。 「柳瀬先輩や村中先輩、そして『こいつ』先輩たちに負けないヤツつくっちゃお!」 ちょっとドタバタとしたり、ほんわかしたりそんな一年を過ごす彼女たちの高校ライフ。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-01-20

Copyrighted
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  1. プロパガンダじゃい‼︎
  2. 映像でえ〜ぞー