独立祓魔官の愛ある日常 ~光の中で歌う間奏曲~
ハローハロー、漆黒猫でございます。
極悪非道な大人の代表格扱いされている源司さんですが、
根本、願っている事は『こういう事』なのじゃないかな、という掌編。
鈴鹿ちゃんたち若手の陰陽師の、才能や働きが正当に評価されて欲しい、みたいな。
倉橋長官と鈴鹿ちゃんが話してるだけの話です。
名前だけ宮地さんも(磐→源、あるいは磐×源を推して参る。)。
倉橋家の悲願『陰陽師の社会的地位の向上』って、そういう事ですよね、結局。
終わりの無い、随分とストイックな悲願だな、と思いますが。
相馬家の悲願は、また別にあると思ってます。
相馬家の悲願を叶える事が倉橋家の悲願達成に繋がるから、
倉橋家が相馬家に手を貸してる、みたいな構図かと。
倉橋長官内部における、京子嬢と鈴鹿嬢の扱いの差について。
政略結婚で美代お母さんから押し付けられた嫁は愛せなくて、
嫁との間の娘(京子嬢)も愛せなかったけど、
根っこの所では愛情深いヒトだから、無意識レベルで『猫っ可愛がりしてイイ子』を探してて、
ソレが鈴鹿ちゃんだった、みたいな。
捏造、捏造。
『荒野に咲いた望みの花』ってのは、知ってる御方はお気付きかも知れませんが、
某アニメーションのEDの歌詞の一部です。
ぶっちゃけこの歌詞から派生した、思い付きのド短編ですが。
少しでもお楽しみ頂ければ幸いです♪
独立祓魔官の愛ある日常 ~光の中で歌う間奏曲~
昔、もう何年前だったか。
源司相手に、何の気なしに訊ねた事がある。長官の望みは何ですか、と。
『荒野に咲いた望みの花、だよ。
鈴鹿。』
それが源司の返事だった。鎌倉の屋敷で、2人で書斎に居た時の事だ。
まだ双角会との繋がりなど知る由もない頃だった。窓から差し込む光が、源司の穏やかな表情を照らしていた。
『望みの、花・・・。』
稚い口調で復唱する『愛娘』の金髪を、『師父』の大きな手が撫でていく。
その温もりは、鈴鹿にとって無二の物。実の両親には、終ぞ期待し得なかった物だった。
『『一粒の麦』と同じ意味合いの言葉だが、私はこちらの言い回しの方が好きでね。
痩せた大地に、奇跡的に咲いた花。それが枯れて一握の黒土となり、その繰り返しが、やがては豊穣の大地を作り出していく。肥沃な大地も、一輪の花が枯れなければ始まらない。
私はね、鈴鹿。
陰陽道という深遠を支える者、黒土の一部になりたいのだよ。』
『あたしもっ、あたしも長官の傍で咲く花がイイです。
お一人は寂しいでしょう? あたし、長官の傍で咲きたい♪』
『寂しくはないさ。宮地が共に咲いてくれるからな。』
『宮地さんなら仕方ない、か・・・。』
『それよりお前は、黒土の上で咲く花になりなさい、鈴鹿。
私や宮地が礎となった陰陽道の先で、その才を如何なく発揮し、満開に開かせる。そんな大輪の花に。陰陽師も一般人も、誰もがお前に拍手喝采を送り、褒めそやすだろう。
いつかそういう日が来る事を願いながら、私も宮地も戦っている。』
『はい、倉橋長官♪
あたし、長官と宮地さんが自慢に思ってくれるような陰陽師になる♪♪』
源司が笑って、鈴鹿の頭を撫でる。
庭の桜が綻び始めた、春先の会話だった。
―FIN―
独立祓魔官の愛ある日常 ~光の中で歌う間奏曲~