独立祓魔官の愛ある日常 ~炎魔のアリア~
ハローハロー、漆黒猫でございます。
『炎魔』から見た『神童』。
陰陽庁内部の仲間内で、長官の双角会繋がりを知っていた、殆ど唯一の人物・宮地磐夫氏。
『相馬至道の娘』を、どう見てたのかな、と。
色々と、複雑な心理があったのでは、と。
表向き『どうも何も、長官の為のただの駒だ。』とか何とか思ってるのでしょうけども。
何も伝える気は無いし、知ってしまったとして、逆らうならば処分するまで、みたいな。
天海さんに対するのと同じように。
だがしかし、躍起になって『仕事だ、仕事の内なんだ、こんな子供ひとり、いつでも殺せるんだ・・・!』って
思ってる相手に限って、いざという時、振り上げた刃を下ろせなかったり♪
サラッとさりげなく、オリジナルの呪具とか出してますが。
独鈷だって数珠だって日本刀だって、陰陽師の使う道具は皆『呪具』なのですよ。
『炎魔』ほどになると、特定の人物に合わせたオリジナルの呪具くらい、サラッと
作れちゃったりするに違いない。
そして宮地さんは、それもまた『仕事の内だ。』で片付けちゃうに違いない。
最初は防具にもなるように、と考えて、
籠手(ガントレット)という形を考えてたのですが。
『籠手って、英語でガントレットで良いんだよね?』とウィキ先生に訊いた時、
妙なモノまで検索に引っかかってきたのでヤメマシタ。
『ガントレット=軍隊内部の裏切り者用刑罰』だと・・・?!
ご興味のある御方は、ウィキ先生に訊いてみて下さいまし。
宮地さんから鈴鹿ちゃんへの贈り物として、
『洒落にならねぇ・・・!』と思いました、はい。
別の話の頭として考えていたのですが、思いの外長くなったので、単品として提出。
泰純さんを出したかったんですが、出す前にまとまってしまった。
長官と泰純さんは、面識あったんだろうな、と漠然と思います。
アニメで長官が『野心の無いヤツ』的に、泰純氏の事をよく知ってるっぽい言い方をしてましたし、
一応でも遠縁で、一応でも、土御門家が倉橋家の主家、なのでしょうし。
年末年始、盆暮れ正月くらいは、顔を合わせる機会もあったのかな、と。
鈴鹿ちゃんを連れて行く場は、慎重に選びそうですが。
そんな感じで、ものっそい短編ですが。
少しでもお楽しみ頂ければ、幸いでございます。
独立祓魔官の愛ある日常 ~炎魔のアリア~
救いだった・・・と言うと、少し大袈裟かも知れない。
それでも・・・長い目で見れば、ほんの僅かの時間でも。『この子』が傍で笑ってくれた。それを救いと思っても良い筈だった。
いつか成長した姿の『彼女』に、糾弾される日が来るとしても。
柔らかな手の温もりに、二度と触れられなくなるのだとしても。
「み~やちさんっ♪
何見てるの?」
祓魔局修祓司令室・室長室。
逆さ(さかさ)言葉のような名前のココが、『炎魔』宮地磐夫の城だ。個性派揃いの祓魔官たちに、ココから指令を出し、適材適所・東京の西へ東へ駒のように動かしていくのが、磐夫の仕事である。
上司の部屋に無断で入り込み、躊躇いもなく背後から抱きつき、あまつさえ機密事項の目一杯詰まったPC画面を覗き込んだ、金髪碧眼のゴスロリ少女。彼女もまた、彼が動かす『駒』の1人だ。
そう・・・彼女は、ただの『駒』。
「倉橋長官の予定表だよ、大連寺。
今度の金曜、急に来客の予定が入ってな。どかした分の予定を、何処かに捻じ込まなきゃならん。その調整をしてたんだが・・・中々穴が見つからなくて困ってた所だ。」
「倉橋長官、忙しい人だものね。
その『来客』って、『土御門泰純』さんでしょ? 倉橋長官があたしも同席しなさいって。宮地さんも一緒で、宮地さんから離れないようにしなさいって。
珍しいわよね、倉橋長官が『土御門』の人と会うのって。
『泰純』さんて、今の当主なんでしょう? 難しい人? 怖い人? 変な人?」
「難しくも怖くも変人や狂人の類でもないが・・・強いて言えば、物静か過ぎて考えが読みづらい。大友も飄々として見えはするが、ああいうのともまた違う手合いでな。
鏡だの木暮だの、普段から判り易い面子に囲まれてるお前にとっては、戸惑う相手かも知れん。ま、急に襲い掛かってくるような男ではないよ。」
「ふ~ん・・・。」
「そろそろ離れろ、大連寺。
彼氏持ちが、あまり他の男にベタベタするモンじゃない。」
「鏡なら大丈夫だもんっ、宮地さん相手に妬く筈ないしっ。」
「大連寺。」
「・・・ごめんなさい・・・。
だって最近、寒いから・・・特に右腕が。」
「右、か。まだ、霊気の流れにムラがあるようだな。」
窘める声音で、強く名を呼ばれた鈴鹿は大人しく磐夫から離れていく。
必要な躾以外に関してはド甘い源司に代わって、時に強い言葉も使って彼女を窘めるのも、磐夫の仕事の内だった。陣や禅次朗辺りには『コワモテ両親悦♪』などとよく揶揄われるものだが。
『仕事』の内、だ。
疲労時特有の悪夢が、暗所に閉じ込められ、泣いている鈴鹿の姿だとしても・・・両膝下がミンチになった上、右腕がズタボロになって神経の千切れた鈴鹿の姿など、二度と見たくないと思うのも。
全て、全力で、仕事の内だ。
俯き加減で立ち尽くす鈴鹿に、椅子に座したまま向き直る。磐夫の手は彼女の左手に装着した呪具に触れていた。
コレを与えたのもまた、仕事の内。
伶路の身に付けるシルバーアクセに添うよう、地金シルバーの、オニキスとアメジストを使った花冠デザインにしたのも・・・源司は鈴鹿を翡翠で彩るのが気に入りだが、磐夫は更に加えて、普段使いする宝石として紫水晶を推したい。透明感と深みを併せ持つ、史上最も尊貴な色・紫。鈴鹿の明るい碧眼をよく引き立てるのだ。
・・・アメジストも黒瑪瑙も、地味に伝統ある霊石である。
選択の理由など、所詮その程度の事だ。
「右手に変えよう、鈴鹿。その上で少し強めるぞ。」
「うん。」
「どうだ? 温かくなったのなら、ちゃんと霊気が補正されている証拠だ。」
「わぁ・・・!
うん、あったかい♪ ありがとう宮地さん♪♪♪」
「そいつはどうも。
付け外しはしにくいだろうが、ソコは鏡にでも頼むといい。」
「宮地さんがイイ。毎日毎晩、宮地さんにやってもらう♪」
「勘弁しろ。俺の死亡フラグ何本立てる気だ。」
微笑ましいと、誰もが思うだろう。会話だけを聞けば。『ただの上司』らしからぬ穏やかな磐夫の手と、小生意気な台詞を吐きながらも、彼に頭を撫でられてご機嫌の鈴鹿の表情。その光景を見れば。
霊気補正用呪具『銀月(ぎんげつ)』。
『浄瑠璃会館で爆破テロに巻き込まれて以来、未だ整い切らぬ霊気を補正し、再び自然に流れるようになるのを助ける。』。
その名目で鈴鹿に身に付けさせている、ブレスレット状の呪具は。
「宮地さん、飴玉あげる。『神通剣』に貰ったの。
和栗と抹茶、どっちがいい?」
「俺は抹茶でいい。お前、和栗が食べたいんだろう?」
「フフフ♪ バレた?」
鈴鹿が源司に逆らった時、彼女を速やかに殺す為の保険。刃物だ。
磐夫が創った、鈴鹿の首輪。彼が遠隔操作で鈴鹿の霊気を堰き止めるだけで、『秘蔵っ子』の心の臓には、霊気が届かなくなる。鈴鹿が源司を糾弾する前に。
鈴鹿が笑う。楽しそうに笑う。
彼女を慈しむのもまた、仕事の内だ。
―FIN―
独立祓魔官の愛ある日常 ~炎魔のアリア~