独立祓魔官の愛ある日常 ~鬼喰らいと鬼姫のワルツ~
ハローハロー、漆黒猫でございます。
王様ゲーム×鏡鈴×水族館デート。
より正確には、伶路と鈴鹿が互いを意識する前日譚、といった感じですが。
義兄妹スレスレの掛け算? 掛け算スレスレの義兄妹?
個人的に鈴鹿ちゃんの恋愛遍歴は、
伶路(無自覚な初恋)
↓
春虎(自覚ある初恋、失恋してからは友愛)
↓
伶路(色々あって相応に傷も負ったけどメンタルも成長して、
最後に名前を呼びたくなる相手は伶路、みたいな。)
だと思ってます。えぇ、ホントに個人的に。
ドマイナー万歳。
ていうかホント、鏡鈴? 伶鈴? の未来ある可能性を考えたい。
大前提として、春虎君は夏目ちゃんのモノな訳で。
伶路と鈴鹿、共通項は色々あると思うのですが。
服の趣味から、口の悪さから、醒め具合から、呪術界の暗部という生まれから。
『鈴鹿』って名前、田村麻呂伝説の鬼『鈴鹿御前』からですよね、きっと。
倉橋長官直属として実質監禁されてる鈴鹿ちゃん(敵の思惑を探る為)と、
変わらず十二神将として独立祓魔官(呪捜官異動希望。冬児・大膳と繋がり済)やってる伶路。
2人の会話がすっごい気になる・・・。
その辺りまで書けたらいいなぁ・・・。
あ、この話時点の2人は、鈴鹿ちゃんが『事件』を起こす1年くらい前、
鈴鹿ちゃん14歳、伶路21か22歳くらいで考えてます。
彼女が春虎たちの1学年下、伶路が、24歳のマリリンより少し下、という事でしたので。
7、8歳の年齢差なら充分イケるって・・・!!
あ、動物園で動物に餌付けしてはいけませんよ伶路さん。
こんなドマイナーな話ですが、少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。
独立祓魔官の愛ある日常 ~鬼喰らいと鬼姫のワルツ~
王様ゲーム。
・・・というモノがある。名前そのままの、特定のクジを引き当てた者が絶対者で、その絶対者の命令には1つ絶対服従、というアレだ。
「鏡~♪ 王様ゲームやろうぜっ♪」
「イヤだよ!!
ナニ爽やかにエグイ事言ってんだ、この錆び刀っ!!」
『絶対』服従。
目付け役の先輩を捕まえて、相手の二つ名『神通剣』に引っ掛けて『錆び刀』呼びする生意気・・もとい、意気軒高な後輩を、絶対服従させ得るゲーム。
陰陽師同士でやると『当て物合戦』と化し、中々刺激的なゲーム。
「大連寺もやらないか? やった事ないって言ってたろ、教えてやるよ。」
「騙されるなクソガキっ!! 木暮先輩の出す命令の、何つーエグイ事か・・・!!」
「・・・・・・。」
爽やかオーラを惜しみなく展開する禅次朗と、凶悪な殺気を如何なく発揮する伶路。
どちらの言を信じるかなど、自明である。
「1回だけっ、1回だけ付き合ってあげるんだからねっ?!」
相応に祓魔官としてキャリアを積み、戦闘慣れもして、日々成長中の伶路と鈴鹿。しかし当て物に関しては、まだまだ禅次朗が上である。
王様ゲームで伶路に無理難題を吹っ掛ける事。
それが最近の禅次朗の、お気に入りの遊びだった。
2時間後。
「疲れた・・・。」
「目ぇ痛ぇ・・・。」
「まだまだだなぁ、鏡、大連寺♪ それじゃ2人共、『王様』からの命令はしっかりこなしてくれ☆
『2人でお出掛け』×30回。簡単だろ?」
「冗談じゃねぇっ!! こんなクソガキのお守りが30回とか、有り得ねぇだろっ!!」
「30回ゲームして、30回とも俺が王様だったんだから当然だろ?
『ラブラブデート』としたい所を、俺もソコは譲歩してるんだ。あ、残業一緒するとか、同じ任務で共闘するとかはノーカンな。
必ず、オフの日に、私服で、2人セットで、3時間以上連続して外出する事。
って事は、ちょっとそこまでコンビニ行って、デートした事にしちゃうってのも無しな訳だ。な、簡単だろ?」
「滅茶滅茶指定してんじゃねぇかっ!!
っ、そうだ、私服っ!!
コイツ、陰陽庁の広告塔じゃん?! イメージってモンがあるだろ? 俺みてぇなシルバーアクセじゃらじゃらのピアスしまくりの、見るからにヤクザな男と街歩いてみろよ。
陰陽庁はヤクザと癒着してんのかって、すぐにネットに広まっちまうぜ?」
「ヤクザヤクザと・・・鏡、お前自覚があるならもう少し自重ってものをだな、」
「やるわ。」
「大連寺?」
「げっ、マジか?!」
当て物疲れの眼精疲労で、ぐったりと机に突っ伏していた鈴鹿がユラリと顔を上げた。
鮮青色の瞳が据わっている。
「確かにあたしは、陰陽庁の広告塔・・・別にそこに不満はない・・・仕事の一環よ。
でもねっ、アイドルにだって私生活ってモンがあんのよっ!! いや違うわ、『アイドル扱いされてる陰陽師』であって、あたしはアイドルじゃないの、陰陽師なのっ!!
ドルヲタストーカーキモ過ぎ乙っっ!!!」
「最近ストーカーが捕まったらしいんだよ、それでな・・・。」
「あぁ・・・。」
禅次朗の耳打ちに、流石の伶路も同情の視線を禁じ得ない。
十二神将ともなれば、尊敬と共に理想像を押し付けてくる者は後を絶たない。その理想像を裏切られたと感じた時、実力行使で型に嵌めようとしてくる者も。
大前提として、武力で十二神将に敵う筈はないのだ。必ずしも戦闘に長けている者ばかりではないとはいえ、少なくとも独立祓魔官の中に、ストーカー如きに後れを取る者は居ない。
そういうのと遭遇した場合、伶路は鼻であしらって容赦なくタコ殴りにする。禅次朗にしても似たようなモノだ。彼がいくら温厚爽やか好青年といっても、その手合いにまで優しくする気はない。
鈴鹿も武力で後れを取らないのは一緒だが、2人とは感じ方が違う。そもそも10代前半女子にとって、年上の男にストーキングされる事自体が本能的な恐怖だろう。陰陽師としての矜持が高い程、タレントとしてしか見ない『自称ファン』とも相容れない筈だ。
彼女が所属しているのは陰陽庁であって、芸能事務所ではない。
やらせている当の陰陽庁官・源司や直属の上司・磐夫が気にかけ、管轄違いながら呪捜部部長・大膳がよく声を掛ける所以。堅物で鈴鹿のようなタイプが苦手そうな先輩女性祓魔官・麻里までもが、危なっかしい所のある鈴鹿を心配してしまう理由でもあった。
愛情深い人間がストーカーになるのではない。
『好意』ではなく『興味』を持った相手に、子供じみた所有欲しか抱けない人間が、ストーカーになるのだ。
ストーカーなど所詮、ただの殺人犯予備軍だと伶路は思っている。
「え~と? それなら尚更外に出ない方がいいんじゃね?」
「鏡・・・アンタあたしに『家に閉じこもってキモいストーカー連中にビクついてろ。』って言いたい訳?」
「いやいやいや、何でそうなるっ!」
「外出ってコトなら、任務でいくらでも外出するじゃない。
あたしはあたしの好きな時に、好きなように動くわ。ストーカー連中の意味の無い理想像なんて、こっちから破壊してやろうじゃないの。
鏡、いくらアンタでも『カレッジリング』、捨ててないでしょ?」
「あぁ、まぁ・・・身分証代わりだって、天海のジジイに言われたからな。」
カレッジリング。
ファッション感覚で身に着ける向きもあるが、本来は学校を卒業する際、あるいは職人がステータスを上げた際など、人生の節目に作る『記念指輪』の事だ。学校名や卒業年度、学科などが彫られ、石も記念事にあやかった宝石を使う。『自分たちはコレを付けるに値する人間である。』という自負を現わす指輪である。
十二神将に選ばれる=陰陽1種試験に合格すると、その証として共通デザインのリングが渡される。それを通称して『カレッジリング』と呼んでいるのだ。制服アリ・私服OKの私立高における制服のようなモノで、着用の義務はない。着用の義務はないが、保管の義務はある。
十二神将の立場を隠している『黒子(シャドウ)』=陣も、家の何処かには転がしている筈である。
土御門夜光が、『そういうの』が好きな人物だったらしい。
「あのリング、見えるトコに付けときなさい。チェーン通してペンダントにしててもいいわ。十二神将だってコト強調しとけば、癒着を疑われる事は無いでしょ。
それに広報部に、アンタが任務こなしてる映像、用意しとくように言っとくから。
何か言われたら、その映像叩き付けて免罪符にすればいいのよ。」
「そこまでムキにならんでも、」
「なぁに?」
「・・・・・。」
「鏡せんぱ~い☆ 鈴鹿に群がる悪いストーカーは、先輩がカッコよくやっつけてくれるって信じてます☆」
超訳=あたしのストーカーを減らす為に、アンタのヤクザっぷりを利用させてもらうわ。
「・・・・・・・・・・その胸糞悪ぃブリッコを、俺の前でしない事。
ソレが条件だ。」
「おおっ、流石は鏡、男前♪」
「木暮先輩・・・後でツラ貸せや、ていうかマジホント殴らせて下さいお願いします。」
「あぁ、いいとも☆ 初デートの相談だな☆☆」
「・・・アンタもアンタのダチも、いつか絶対ぶっ殺してやる。」
プランナー不在では無かった事にされかねない、と。強引且つ爽やかな笑顔でゴリ押ししてくるもう1人の広告塔に、伶路の額に青筋が増える。
まぁ良い。『デート』という形容詞には違和感しかないが、即席の妹でも出来たと思えば良いのだ。幸い鈴鹿の容姿は、連れ歩くには悪くない。私服の趣味も、伶路のストリート系と近いモノがある。伶路自身は他人の服など興味も関心も無いが、ピンクレースたっぷりで日傘常備のお姫様趣味とか言ったら、そのセットは通行人の目にテロとしか映るまい。
取り敢えず、今度の非番に行きたいトコ連れてってやるか。
デートとは、女の子を楽しませるイベントである。男が楽しもうと思ってはいけない。
禅次朗に手解きされるまでもなく、伶路は極意をしっかりと身に付けていた。
で、来たのが。
「信じられない・・・鏡がココを知ってたなんて・・・。」
「うっせぇな、テメェのリクは満たしてんだろうが。
今から別ンとこ行きたいってんなら、俺はそれでもいいけど?」
「いや、ココでいいわ。むしろ『ココが』いいわ。」
「あそ、じゃ入んぞ。」
自分でも我が侭で気紛れと自覚している鈴鹿の好みを、ココまでピンポイントに当てるとは。リアルな賞賛の込められた彼女の言葉にも、伶路は特に感慨を見せずに、淡々と入場券を取り出している。既に手配済みという訳だ。
鈴鹿のリクエストは『水族館』。それも『クラゲが居る』水族館。
一緒に聞いていた禅次朗が、選択肢が思い浮かばずにしばらくフリーズしていたものだ。が、伶路は意外にも、すぐにドコの事か察していた。
「ウチの黒い使役式は、この手のテーマパークが好きでな。
やれ新しい園が出来たから連れてけの、あそこがリニューアルしたから連れてけの。一度なんかリスが見たいが為に朝っぱらから動物園並びだぜ?
そりゃ詳しくもなるわ。」
「リス? 何ソレあたしも見たいっ。」
「ケージに入ってない動物ってのは、確かに新鮮だったな。温室みたいなドームに放し飼いになってんだよ。足許をチョロチョロ走り回ってるから、下手すりゃ踏んじまう。
通い詰めて餌付けでもすれば、一匹くらい触らせてくれんじゃねぇの?」
「いーないーな、見るだけでも面白そう。
じゃ次の『お出掛け』はそこに決まりね。」
「はいはい。チケット買っとくよ。
そういうテメェは、何でまた『水族館』? ゴスロリショップで財布代わりにされるかと思ったぜ。」
「アンタあたしを何だと思ってんのよ。」
隣を歩む背の高い男を見上げ、鈴鹿は嘆息した。長時間見上げると、首が痛くなりそうな程に身の丈が違う。ただ、足はそれ程疲れないだろうと思った。歩調を合わせてくれているのだ、伶路の方で。
同じ任務と言っても、独立祓魔官同士、戦略上当然のように離される。背を預け合うなどまず有り得ないし、お互いそういう性格でもない。平時、本来待機室に詰めているべき時間には伶路はほっつき歩き、鈴鹿も・・・彼の事を責められない程度には、好きにしている。彼女の場合は、広告塔の仕事があるのだと言い訳したい所だが。
鈴鹿は研究室育ち、伶路は星宿寺という、陰陽師界の暗部育ち。共通項など無いと思っていた・・・少なくとも、鈴鹿は。
こうして日の当たる場所を、隣り合って歩いているのが不思議に思えてくる。
「正直、水場はあんまり好きじゃないのよ。
好き嫌いで言うなら、むしろ山より海の方が好きなんだけど。『1人で』海とか水族館とかの水場に、それも人の多いトコに行くってのがね。
式符が濡れるでしょ? 霊力通してるんだから、ヘタって使えなくなる事は無い、筈なのは知ってるんだけど。何かイヤなのよ。いざって時、思うように戦えない気がして。
戦力半減してる時に、それこそドルヲタストーカー野郎共に徒党でも組まれた日には・・・っていうヤクザには度し難いであろう繊細な乙女心がある訳。」
「・・・・・。」
度し難いと言われた事より、他の事が気になった伶路は渋面で沈黙した。
透けてる本音が何と言っているのか、理解しているのだろうかこのクソガキはしてないなうん、確実にしてない。
それはつまり『その手の本能的恐怖を感じさせる輩から、伶路なら守ってくれるでしょ。見捨てたりしないって信じてる☆ ガチで怖くて独りで行けない場所も、伶路と一緒なら心置きなく楽しめるわ♪♪♪』と言っているのと同じ事だというのに。
鈴鹿の性格について伶路もそう詳しくはないが、打算で打ち破れる程、『あの手』の輩の持つ『本能的な恐怖』は易くあるまい。
無意識の無垢な信頼感。そんなモノは、猫っ可愛がりしてくる呪捜部長にでも向けておけば良いものを。
陰陽師なら言霊には気を遣えってんだ。
「保護者付きじゃなきゃ、水遊びも出来ねぇって?
仕方ねぇ、動物園の次は、海にでも連れてってやるよ。」
「ホントっ?! 男なら口に出した事は守りなさいよね、鏡っ♪♪」
「はいはい。」
高飛車ながら頬を紅潮させ、キラキラした碧眼で見上げて来る少女。
もしかして、伶路が思うよりずっと海が好きで、だが今まで我慢していたのだろうか。
その瞳は素直に綺麗だと思うし、染めでなく地毛と判る、光を弾く艶々の金髪も。ヤクザな彼の外見に物怖じせず、ポンポン飛び出てくる悪態も。可愛げがあると言われれば、そうかなと思わないでもないが。
ライトアップされたクラゲの水槽を、ご満悦で見上げる背中を眺めて、伶路は苦笑するしかない。
「何なんでしょうねぇ、先輩方。隠形、解けかけてんですけど。」
『鏡・・・大連寺の事、まさかガチだとか言わないよな?』
「さ~て、どうかなぁ。つかセッティングして散々『デート』って単語使ってたのはアンタだろ、木暮先輩。」
『俺は純粋に兄として、人見知りな大連寺の人脈を広げようと・・・!!』
『僕も思わぬ誤算なんやけど。何なん? 鏡クン意外と女の子の扱い、上手いんやねぇ。
彼女とか見た事ないから、知らんかったわ。』
「そういう大友先輩の彼女も、見た事ないですけど。
那智で慣れてるんですよ、我が侭なガキのお守りは。」
『あぁ、あの黒い式鬼ちゃん。』
「鏡、鏡♪ あたしもアレ飼いたい♪
飼い方知ってる? 難しい?」
鈴鹿が振り向いた途端、隠形が強化されて伶路でも追えなくなる。シスコンな『兄貴たち』は、彼女にだけは気付かれたくないらしい。
まぁ確かに『同僚との『お出掛け』を、仕組んだ当の先輩たちが隠形しつつ陰から見守っていた。』などと。ストーカーにトラウマレベルの嫌悪感を持つ鈴鹿が知った日には、彼女からの信頼は地に墜ちるだろう。
別に自業自得の先輩たちがどうなろうと、伶路の知った事では無い。
無いが・・・。
実際人見知りな鈴鹿が、今以上に孤立するのを見るのは忍びないので、黙っておく・・・その程度には、伶路は鈴鹿の事を気に入っていた。
「クラゲがペットか。悪くねぇし、飼い方も知ってる。
でも簡単にはいかねぇぞ。クラゲ専用の水槽だの餌だのは売ってるし、難しい部類じゃぁねぇが。水質の管理が難しいんだ。それにサイズが大きいヤツでも、柔らかいからすぐ濾過器に吸い込まれて死んじまう。カサが少し傷んだだけで死ぬしな、こいつら。
ふわふわ浮かんでるのが癒やされるっつって、流行ってるらしいが・・・地味にアクアリウム上級者向けだぜ。
任務で数日帰れない事もザラだろ。俺ら向きの生き物じゃねぇよ。」
「うう・・・鏡にダメ出しされると、結構へこむ・・・。」
「何だそりゃ。
飼うのは無理だが、見るのはいつでも出来るだろ。クラゲ程度、いつでも見せてやる。暇な時ならな。」
「鏡が暇じゃない時なんてあるの? いっつもほっつき歩いてるクセに。」
「うっせぇな、俺にも都合くらいあるんだよっ。
『炎魔』のヒゲの火界呪に炙られたり、『神扇』のジジイの幻術から逃げ回ったり、『天将』ントコのエセ家族ごっこに付き合わされたり、『黒子』にいびられたり、『神通剣』に『神童』のお守り押し付けられたりなっ。」
「最後の2つは、かなり自業自得だと思うけど。
改めて考えると、鏡の周りの面子ってかなり豪華よね。」
伶路の火界呪の師・宮地磐夫は、言わずと知れた彼と彼女の上司。火界呪の巧みさから『炎魔』と謳われる、祓魔局修祓司令室室長。
暇潰しと称し、彼に頻繁に幻術を仕掛けてくる(=幻術解除の実技演習を強制してくる)天海大膳は、呪術犯罪捜査部部長。
血縁の誕生日が来る度に『上司命令だ。』と、堂々と職権濫用を宣言してケーキを作らせてくる倉橋源司に至っては、陰陽庁長官兼祓魔局局長だ。
「豪華・・・豪華か。まぁ肩書も、それに見合う実力もある面子だとは認めるが・・・。
だがしかし、コレだけは言いたい。
『天将』っ、テメェ、俺の作った料理をテメェで作ったっつって家族の前に出すのヤメロ、マジでっ!! 俺はテメェのゴースト料理人かっ!!?」
「倉橋長官の奥さん、アンタの作ったシフォンケーキ食べて離婚思い留まったんでしょ?
娘さんも、雑誌のインタビューで『仕事人間の父ですけど、誕生日にだけは忘れずに、お手製のケーキ焼いてくれるんです♪♪♪ 逆に言うとそれだけが家族の絆っていうか☆ 一度でも忘れたらマジ殺す♪♪』とか言ってたって。
それ読んで長官、黙って涙目になってたって宮地のヒゲが。
やー、上司のなけなしの『うっすら家族愛』を濃く偽装する為に、乙種言霊を使う部下。文字通り、陰陽師の鑑だわ。」
「棒読みかよ。
しかも俺を使う理由が、『妻の行動範囲を把握していない。下手に有名店のモノを買うと、何処でバレるか判ったものではない。』って。
どんだけ相手に興味ないんだっつの。」
「でも美味しいのはホントなんでしょ?
『結び姫』が褒めてたわよ? プロのパティシエ並の味だったって。『黒子』も『日本一ギャルソンエプロンの似合う陰陽師』だって。」
「そういや、そんな事もあったな。
まだテメェが十二神将になる前の話だ。木暮先輩に『紅一点の為に何かしてやれ。』とかまた無理難題吹っ掛けられてよ、ムカついたから、腕により掛けて誕生日プレゼントにバースデーケーキ焼いたった♪♪♪
あの時の『神通剣』の顔は見ものだったね。『結び姫』の顔はもっと見ものだったが。」
「・・・いーなぁ・・・。」
「どっちが? 何が?」
「!!! べ、別にっ!?
独学でソコまで行けたのが凄いとか、誕生日にケーキ焼いてもらった『結び姫』が羨ましいとか、そんなの全っ然、全く、これっぽっちも思ってないんだからねっ?!」
「はいはい。
独学云々ってのは、育ちのせいでナメられたくねぇっつってムキになってただけなんだが。菓子作りとか、陰陽師にはいかにも必要ねぇだろ? 名門相手に、余裕見せたいガキの見栄ってヤツだ。結果的には那智とシェイバの餌付けに役立ったけどな。
アイツら、甘味食わせとけば大人しいからよ。」
「・・・あたしの誕生日、知ってるでしょ。」
「知らねぇな。
広告塔サマの誕生日だ、公式サイト見りゃ載ってるのかも知れねぇが。他人のプライバシーは尊重する主義だからよ。
その手の事は、本人の口から直接聞くようにしてる。」
「――――っ、2月22日よっ!
聞いたからには、忘れたら許さないんだからねっ!!」
「半年以上も先だな。
上等じゃねぇか。その時一番好きな食材で、一流ホテル並に美味くて豪華なホールケーキを焼いてやるよ。」
「・・・っ、」
「おっ、イルカショーの時間だ。
ココのショーは面白いんだぜ。」
呵々大笑しながら、伶路が鈴鹿を手招いてイルカプールに導く。
その背中を付いて歩きながら、鈴鹿は何とも負けた気分になっていた。誕生日を自分の口から語らされた、ただそれだけだというのに、妙なモヤモヤが胸中に漂う。コレはアレだ、研究開発課に居た頃、実験が上手くいかなくて、でもその先が知りたくて、頭の中が渦巻いていた感覚に似ている。何だろう、知識欲? 敗北感? よく判らない。
しまった。
伶路の誕生日を聞きそびれた。
「この水族館、ジンベエザメが居るんだぜ?
デカくてカッコイイんだ。」
「うわっ、好きそう。鏡そういうの好きそう。
まぁでも、ジンベエザメはあたしも好きかな。テレビで観た事があるだけだけど、悠然としててカッコイイわよね。」
「だろ?」
褒めたのはジンベエザメの事であって、伶路の事ではないのだが。
我が事のように自慢げに笑う彼に、鈴鹿も苦笑してしまう。
王様ゲームも悪くないと思った。
『楽しそうだな、鏡っ☆』
「隠形しながら爽やかな笑顔すんのヤメロ錆び刀。リアルに怖ぇわヤンデレ野郎。」
『・・・・・・。』
すっぱりと斬って捨てた伶路の悪態に、今は彼にしか視えていない『神通剣』が膝を抱える。鈴鹿と並ぶ陰陽庁の広告塔。堂々と姿を現わしてからならともかく、お目当ての『神童』から姿を隠しながらでは、その爽やかさも180度意味合いを変えるというものだ。
妹分を思い『過ぎる』が故の行動と、知っていなかったら速攻で火界呪モノである。
ストーカーを怖れる鈴鹿の心理が、少しだけ判った気がした。
『鏡クン、鈴鹿クンがおらん内に、コレ、渡しとくな?』
「・・・常識的なんだか非常識なんだか判んねぇ内容だな。」
水族館内のレストランで食事して、鈴鹿は今トイレに行っている。
その隙? を突いて、今は二つ名通り『黒子』となっている陣が渡してきた紙切れ。走り書きの文字で書いてあったのは、十二神将全員の誕生日だ。
つまりは、誕生日ケーキを作れ、という意味である。
全ては鈴鹿に作る誕生日ケーキの『特別感』を失わせる為に。
『別に、テメェのだけが腕によりを掛けた特別製って訳じゃねぇんだからなっ!! 勘違いすんなよ、クソガキっ!!』と、伶路に言わせる為に。
その為だけに、名前と二つ名くらいしか知らない、他所の課の十二神将にまでホールケーキを作れと?
「くっだらねぇ。
それ100周回ってあからさまなツンデレじゃね?」
『大丈夫や、鏡クン。他にも偽装工作はぎょうさん仕掛けるさかいな。
恋愛初心者の鈴鹿クンが悪い男に誑かされんよう見守るのも、大人の務めやで。』
「恋愛・・って、大友、それマジで言ってやがるのか?
イイトコ兄妹か、バディ(相棒)がせいぜいだろ。」
『ソレや、それ。そゆコト本気で言う辺りが、悪い男や言うねん。
今の内に言うといたるけどな、鏡クン。現時点で、鈴鹿クンのキミへの好感度は相当高いで? メロメロになるんも時間の問題やと、僕は思う。
一体ドコであんなスマートなエスコート覚えたん?』
「別にフツーでしょ、あの程度。
スマートも何も、別に作ってねぇし。シェイバ相手に限らず、一般人含めて普段から散々暴力事件起こしてんの見てんだろ、あのクソガキも。
多少機嫌良くなる事はあっても、そんな暴力野郎相手にメロメロとか絶対ねぇわ。」
『またまた、いつも自信満々なキミが、そんなトコばっか謙虚なんは何でや? 逆に怪しいわ~♪ あ~んな可愛い子に身近で微笑まれて、キミも満更でもないんやろ?
なぁ、鏡クン♪』
「うっぜぇ・・・後輩のデート付け回してねぇで、とっとと自分たちのオンナ捕まえて来いよこの年増ども。
アイツも十二神将の端くれだぜ? 『今の内に言っといてやる』、いつ隠形が見破られても、俺はフォローしねぇからな。」
『あ、ちょぉ待ち、』
「お待たせ、鏡。悪かったわね。」
「別に? ケーキの中身考えてたからな。」
ちょうど戻って来た鈴鹿を憚って、陣と禅次朗の気配が再び消える。
別に嘘ではない。ケーキネタが出てきたのは本当だ。
立ち上がり際、さりげなく鈴鹿の横顔を観察する。混じり気の無い綺麗な青が、今は水族館への好奇心でキラキラと輝いている。その瞳は、確かに悪くない。
伶路は昔から、何でも『本物』が好きだった。付け焼き刃ではない、本物の知識や武力。鍍金ではない、本物のシルバーアクセ。合皮ではない、本物の革製品。
揺らぎのない、掌を返したりしない、本物の。
「? 何よ、どうかした?」
「別に~? テメェの目の色が、な。
じっくり見たのは今回が初めてだが、海の色みたいだなと思っただけだ。ジンベエザメの泳ぐ海の色だな、と。」
人体実験の被験者として、実の両親から散々『観察』されて育ったという鈴鹿は、今でも『観察する眼』に敏感だ。よくもまぁ広告塔の仕事が務まるものだと感心する程に、視線に敏感である。その辺りは本人の言う通り『仕事』と割り切っているのだろうが。
加えて頭の回転も速い彼女は、偽りも誤魔化しもすぐ気付く。
要するに本音で接し、言えないような事ならば上手くオブラートに包んだ上で、自信満々に言えば良いのだ。
彼女以上に頭が切れる男、それも自信過剰なくらいの男でなくば、鈴鹿が安心して恋愛を楽しむ事は出来まい。
「な、何言ってんのよ鏡のクセにっ。
そういうアンタの目は何色なの? いつもグラサン標準装備で、目の色とか見た事ないんですけどっ。」
「はっはっは~♪ 見たけりゃ勝手に見ろよ。
それにはもう少し、身の丈が無いと無理だろうがな。」
「なっ、屈んでもくれないなんて、何ていう不親切仕様っ。
あたしの成長期はまだまだこれからなんですからね、鏡の背丈なんて、絶対追い越してやるんだからっ。」
「はいはい。頑張れ、超頑張れ。」
伶路の上着に細い指先を絡め、どうにかサングラスの奥を覗こうと背伸びする鈴鹿・・・じゃれついているようにしか見えない。戦闘ではなく研究開発が本領の彼女は、白い指先に傷もなく、ほっそりしている。
どう足掻いても無理なのにと、止めるでもなく鈴鹿の好きにさせている伶路・・・敢えて顔を背けて彼女を見ない辺り、『いつでも見られる』的な『男』の余裕を感じさせる。どう贔屓目に見ても『義兄』という雰囲気ではない。
『・・・・・。』
言葉を失い、顔の上半分がベタ塗りになる禅次朗。そんな親友の肩を、陣が気の毒そうなカオで叩き、労わる。
『信じられるか、禅次朗。
あいつら、あないな恥ずかしい空気撒き散らしといて付き合うてへんねんて。』
『お・・・お兄ちゃんは許しませんよっ?! あんなDV野郎っ!!』
『何で口調がオカンなんや禅次朗。』
DVねぇ・・と、禅次朗を宥めながら、陣は肩を竦めた。
シェイバへの態度が態度だし、日頃の行いからの先入観、それに実際、一度振るいだせば目を引くほどに派手にヤルので『暴力衝動をコントロール出来ない、幼稚で無節操な乱暴者』というイメージが先行しがちだが。
指導官だった陣は知っている。伶路が決して『そう』ではない事を。
伶路が暴力を振るう相手というのが、大別して3種類居るのだ。
シェイバのように、何度言い聞かせても従わない相手。シェイバの暴走は陣はじめ、他の十二神将でも厄介だ。実は伶路の接し方が一番正解に近い。
呪捜官時代に散々ボコり倒したような、呪術犯罪者。あるいは祓魔官として、人間にちょっかいを掛けてくる妖怪、自然現象である霊災。
この辺りはもう、『そう』接するしかない相手である。
通りすがりに意味もなく喧嘩を吹っ掛けてくるような一般人や、才能を嫉妬して低俗なイジメに走るモブ祓魔官・呪捜官、育ちを見下してくる名門出身者。つまり有象無象の三下ども。
最後のひとつがあるから、凶暴『そうな』見た目と相俟って、誤解されがちなのだろうが・・・本人の性格も、世辞にも聖人君子とは言い難いし。
陣は知っている。
伶路は『敵ではない女』には暴力を振るわない男だ。
どれ程派手な痴話喧嘩をしようと、そんな事で相手の女に暴力など振るわない。これまでごく稀かつ短期間居た『彼女』たちは皆、『他人』に力を揮う彼を見て、勝手に怯えて勝手に去っていったのだ。
大前提として、厳しい修行に耐えなければ術のひとつも身に着けられない陰陽師という人種に、自制心が備わっていない筈がないのだ。一部の狂人を除いて、だが。幸い伶路は、そっち方向の狂人ではなかった。聖人君子ではないにしても。
『ああっ、陣、大連寺が鏡と行ってしまう・・・!!』
『多方面に誤解を招く言い方はやめぃや、禅次朗。
普通にレジで会計済ますだけやないの。』
陣の実況通り、伶路が先を行き、鈴鹿がその後ろをちょこちょこと付いて行く。多分鈴鹿は、自分で会計した事がないのだろう。そもそもこの手のテーマパークに、今まで来た事があるのかどうかすら怪しいのだ。
物珍しそうに、財布からカードを取り出す伶路の手許を見つめている。
その様もまた、フィルターの掛かった『兄貴たち』の目には、心安からざる光景として映るのだが・・・『ウチの子は可愛かろう・・・!!』と誇らしい反面、その可愛らしさが、伶路に伝わって欲しくないような、でも欲しいような。
だがしかしそういうのは、伝わって欲しくない相手に限って伝わってしまうモノだ。
「お客様、お先にカードの方、お返し致します。」
「あぁ。」
「当館をご利用ありがとうございます。
お連れ様、お菓子をどうぞ。」
「??」
「貰っときな。」
純粋無垢な青い瞳に見上げられて、伶路が肩を竦める。普段の欠片も繕っていない素の彼を知っていて、この信頼感は何なのか。伶路が嘘を教えたら、鵜呑みにしそうだ。
世間知らず・・・つまりは、伶路の色に染め得る・・『女』未満、だ。
レジ係の掌に乗せられた飴玉を、鈴鹿の白い指先が摘まもうとする。
途端にシャコガイも真っ青の反射神経で、レジ係の右手が鈴鹿の右手を鷲掴みにした。
「や・・っ!!」
「お会いできて光栄です、アイドルの」
グシャッ!!
「生憎だなぁ、コイツはアイドルでもなきゃテメェの女でもねぇよ。
俺のツレに触んなクソ野郎。」
「ひぃ・・っ!!」
「行くぞ、鈴鹿。」
「っ、うん♪」
速攻でレジ係の前腕に拳を叩き付け、へし折った伶路は、そのままの勢いで鈴鹿の右手を取ると場を後にした。息をするように傷害事件を起こした後だというのに、逃げる雰囲気という訳でもなく、泰然としたものだ。
変質者まがいに触られた鈴鹿の右手に、伶路の左手から温もりが染み渡る。
気持ち悪い感触が浄化されていくようだった。
「ね、鏡。さっき『鈴鹿』って名前で呼んでくれたわね。」
「まさか固定しろとか言うんじゃねぇだろな?
調子乗んなクソガキ。」
「フフフ♪」
『へぇ、普通に格好えぇやないの。やり過ぎてもおらんし。
鈴鹿クンも怖がってへんし、あの2人、意外とイイ線行くかも知れないで、禅次朗。敵の多い鈴鹿クンには、あれくらい凶暴な番犬が居てもいいんちゃう?』
『・・・傷害事件、は、・・・きっと倉橋長官が揉み消してくれるよな。
あのヒトは・・あのヒトですら、大連寺に甘いし。』
『せやねぇ。実の娘の誕生日は鏡クンに言われるまで忘れとっても、鈴鹿クンの誕生日には自分でプレゼント買いに行くくらいやから。
そら大甘や。』
『・・・・・・・。』
『邪魔したるなや、禅次朗。
妹可愛がり過ぎて婚期逃させるなんて、兄貴のする事やないで? 嫁にしたい訳やないのやろ?』
『・・・・・・うん。』
素直に頷きつつ、それでも落ち込みを隠せない禅次朗に、陣が苦笑する。鈴鹿からどれ程の悪態を投げられようと、『禅次朗にとっては』『彼自身が』可愛がりたい妹、なのだ。一方的と言われようが、『いとしい』と思う事自体は止められない。
鈴鹿の事は、もう伶路に任せよう。
陣は本気で錆び付きかねない『神通剣』を引き摺って、隠形しながら水族館を楽しむ事に専念した。
鈴鹿の買ってきたストラップが、大膳の私用携帯で揺れている。
「大友から聞いたぜぃ、鏡~♪
オレの誕生日にゃデカいケーキ焼いてくれるんだろ?」
「誰が焼くかっ!!!
どうせ焼くならテメェの骨だ、クソジジイっ!」
「死んだ後ならソレもアリかもな。火葬場の生ぬるい火に炙られるより、宮地仕込みの火界呪に焼き砕かれた方がオレらしいや。
という訳で、生きてる間はケーキで頼むぜ。9月9日。『日本茶』ケーキ楽しみにしてるからな。いいか、『抹茶』じゃないぞ、『日本茶』だぞ?」
「細けぇなオイっ! つか作んねぇよ!!」
「けしかけた俺が言うのもアレだが・・・大連寺、楽しかったか?
その、ホント『見てない』俺には、2人の様子が今イチ判らないんだが。鏡と出掛けてもつまらん、場が保たんってコトなら、あと29回、キャンセルしてもいいんだぞ?
ほら、所詮は待機時間の暇潰しに遊んだ『ゲーム』なんだし、」
「何を焦ってるのよ、『神通剣』。
予想以上に楽しかったけど?
クラゲがライトアップされててね、すごい綺麗だったの。ペンギンとアザラシとイルカに触ってきたわ。自分用のお土産ね、ぬいぐるみとガラス細工で迷って、結局LLサイズの特大ジンベエザメのぬいぐるみにしたの。あたしの背丈よりずっと大きくてね、宅配使って、次の非番の日に届けてもらう事にしたの♪♪♪
次の非番重なった日に動物園、その次は海に連れてってくれるって鏡が。檻に入ってないリスの居る動物園があるんだって♪
あとね、料理教えてくれるって。
先々自炊する事もあるかも知れないし、包丁の使い方くらい知っとけって鏡が言うの。鏡のクセにって思うけど、実際アイツが知っててあたしが知らない事があるは癪だし、『習ってあげる』んだ♪♪♪」
「へ、へぇ・・・良かったな、大連寺。」
「うんっ♪」
『教えてもらえるのが嬉しくてしょうがない。』というカオで、よくもまぁ、『習ってあげる。』などと言えたものだ。
互いの非番が重なる日を確認し合っている伶路と鈴鹿、その姿に禅次朗の動作は軋みっ放しである。
「陣・・弓削・・・。」
「自業自得や阿呆。」
「同感です、先輩。」
「う・・うわーんっ、俺の可愛い妹がヤクザに取られた―――!!」
「ソコうっさいっ、誰が誰の妹よ?!」
『神童』が放った消しゴムが、見事に『神通剣』の後頭にクリーンヒットする。
祓魔局は今日も平和だった。
―FIN―
独立祓魔官の愛ある日常 ~鬼喰らいと鬼姫のワルツ~